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とある修道女の話 その3
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「はぁ、はぁ、ぜはぁ…‥‥ここはどこかしら?」
あの謎の怪物たちが出てきてから、ルミアは必死に逃げ、そして何処かの森へたどり着いていた。
無我夢中で逃げ回っていたためにどこに逃げ切れたのか、良く分からないのである。
「にゃぁ‥‥‥にゃ」
「え?なにかあるの?」
と、一緒に逃げてきた黒猫のゼリアスがすそを引いてきたのを見て、何かを見つけたらしいという事が分かり、とりあえずその場所へ向かって見ると、そこには湖があった。
「うわぁ…‥綺麗な湖。って、ますますどこなのよここ…‥‥」
教会周辺の地理程度であればそれなりにわかるのだが、ここまで大きく、美しい湖がある森と言うのを彼女は聞いたことがなかった。
どうもおかしなところに迷い込んでしまったというべきであろうか。
何にせよ、このままの状況は不味いという事だけははっきりわかった。
ルミアは修道女。
一応、ある貴族家の子女でもあったが…‥‥どっちにしろ、自衛する手段がない。
何しろ毎日を神への祈りを捧げ、穏やかに暮らしていたのだ。
か弱い淑女がたった一人で、この先どうにかできそうにもない。
最悪の場合、悪党とかに見つかって、女としての尊厳を踏みにじられる可能性を考え、彼女が絶望を味わいそうになった、その時であった。
「にゃぁ!」
「ん?」
ふと、ゼリアスが何か鳴いたので見てみると、何か大きな物体がある事に気が付いた。
湖からのっそりと姿を現したのは…‥‥大きな魚のようなものであた。
「な、何あれ‥‥‥」
そのあまりにも巨大な魚に唖然とするルミア。
気が付けば、その魚は岸辺にいたルミアたちの元にまで寄ってきていた。
「ま、まさか……私たちを食べる気なの!?」
――――――いや、そんなことはしない。
恐怖で足がすくみ、動けない彼女の頭に、何か声が響いた。
辺りに人はいないし、はっきり聞こえた声の主を探し、そして気が付いた。
「‥‥‥え?あなたがしゃべっているの?」
―――――ああ、そうだ。
目の前にいる巨大魚。その魚が、頭の中に直接言葉を送っていることに、ルミアは思い当たり、目を丸くした。
この世界には大きなモンスターとかの話を聞くときがあるとはいえ、ここまで大きな魚が言葉をはするなどと、誰が想像できたであろうか。
――――――ふと、泳いでいる時に妙な力を二つ感じて見て見れば、まさか人間がここにいるとは…‥それに、その猫も‥‥
「え?え、え?ちょっとまって?何の話なの?」
巨大魚が話すという事実に混乱している中で、相手はお構いなく話を続けてきたので、ルミアは混乱していく。
奇妙な力というが、自分に何があるのだろうか。
いや、そんなことよりも、その力が二つあるという事は、一つは自分ということで、もう一つがゼリアスの方にあるのだろうか?
そう考えていると、ゼリアスがルミアの前に出てきた。
「にゃぁぁぁぁ!!」
―――――ほぅ、なるほど。これはこれは、面白いというか、珍しいな。まさか貴方がここにいるとはな。
「にゃ、にゃ、にゃぁぁぁぁ!!」
―――――あー、アレにやられたのか。しかもそのせいで呪いを受けて、その姿になっているとはなぁ。
「え?」
巨大魚の言葉に、ルミアは思わずそう声に出した。
今、ゼリアスに向けて話した言葉に驚いたのである。
「ちょっと待って、ゼリアスって黒猫じゃないの?呪いでこの姿になっているの?」
―――――ああ、こやつは猫ではない。いや、元々持っていた姿に固定する呪いが駆けられたようだから、間違ってもないのか?
ルミアの問いかけに、巨大魚は答える。
猫ではないとするのであれば…‥‥一体何なのだろうか。
いや、そもそも人の話を理解し、文字を書き、色々とできている時点で相当怪しい黒猫かもと思ったことがあったが…‥‥。
―――――何にせよ、我には関係ない話しだ。湖に害を及ぼす可能性があるのならば喰らおうと思ったが、お主たちはそういう物ではないとわかった。なんにせよ、人間が一人でうろつくのは危ないが‥‥‥そやつがいれば安心だということぐらいは、親切心で言ってやろう。
「え、ちょっと!!どういうこと!!」
何を言いたいのか、言うだけ言って巨大魚は方向転換し、湖の中へ沈んでいった。
気になる事が色々あったが、その疑問の数を増やすだけ増やして帰ってしまった巨大魚にルミアは怒りを覚えたが、それと同時にその疑問に不安を覚えた。
「‥‥‥ねぇ、ゼリアス。あなたって何者なの?呪いをかけられた者とか言っていたけれど、どういうことなの?」
「…‥‥」
ルミアはゼリアスに問いかけるが、ゼリアスはそっぽを向いて、答える気はないようだ。
というかそもそも、「にゃぁ」とか猫の言葉しか言えていないので、説明しようがない‥‥‥
「ん?待って?あなたって文字をかけたようね?文章で説明できるんじゃ?」
「‥‥‥にゃ!?」
その事実に気が付き、ルミアが問いかけると、ゼリアスが驚愕の表情を浮かべた。
どうやらこの猫自身、全くその事に気が付いていなかったようである。
それからすぐ後、ゼリアスは適当にそのあたりの木の枝を拾ってきて、地面に文章を書いて、ルミアに説明をし始めるのであった‥‥‥‥
あの謎の怪物たちが出てきてから、ルミアは必死に逃げ、そして何処かの森へたどり着いていた。
無我夢中で逃げ回っていたためにどこに逃げ切れたのか、良く分からないのである。
「にゃぁ‥‥‥にゃ」
「え?なにかあるの?」
と、一緒に逃げてきた黒猫のゼリアスがすそを引いてきたのを見て、何かを見つけたらしいという事が分かり、とりあえずその場所へ向かって見ると、そこには湖があった。
「うわぁ…‥綺麗な湖。って、ますますどこなのよここ…‥‥」
教会周辺の地理程度であればそれなりにわかるのだが、ここまで大きく、美しい湖がある森と言うのを彼女は聞いたことがなかった。
どうもおかしなところに迷い込んでしまったというべきであろうか。
何にせよ、このままの状況は不味いという事だけははっきりわかった。
ルミアは修道女。
一応、ある貴族家の子女でもあったが…‥‥どっちにしろ、自衛する手段がない。
何しろ毎日を神への祈りを捧げ、穏やかに暮らしていたのだ。
か弱い淑女がたった一人で、この先どうにかできそうにもない。
最悪の場合、悪党とかに見つかって、女としての尊厳を踏みにじられる可能性を考え、彼女が絶望を味わいそうになった、その時であった。
「にゃぁ!」
「ん?」
ふと、ゼリアスが何か鳴いたので見てみると、何か大きな物体がある事に気が付いた。
湖からのっそりと姿を現したのは…‥‥大きな魚のようなものであた。
「な、何あれ‥‥‥」
そのあまりにも巨大な魚に唖然とするルミア。
気が付けば、その魚は岸辺にいたルミアたちの元にまで寄ってきていた。
「ま、まさか……私たちを食べる気なの!?」
――――――いや、そんなことはしない。
恐怖で足がすくみ、動けない彼女の頭に、何か声が響いた。
辺りに人はいないし、はっきり聞こえた声の主を探し、そして気が付いた。
「‥‥‥え?あなたがしゃべっているの?」
―――――ああ、そうだ。
目の前にいる巨大魚。その魚が、頭の中に直接言葉を送っていることに、ルミアは思い当たり、目を丸くした。
この世界には大きなモンスターとかの話を聞くときがあるとはいえ、ここまで大きな魚が言葉をはするなどと、誰が想像できたであろうか。
――――――ふと、泳いでいる時に妙な力を二つ感じて見て見れば、まさか人間がここにいるとは…‥それに、その猫も‥‥
「え?え、え?ちょっとまって?何の話なの?」
巨大魚が話すという事実に混乱している中で、相手はお構いなく話を続けてきたので、ルミアは混乱していく。
奇妙な力というが、自分に何があるのだろうか。
いや、そんなことよりも、その力が二つあるという事は、一つは自分ということで、もう一つがゼリアスの方にあるのだろうか?
そう考えていると、ゼリアスがルミアの前に出てきた。
「にゃぁぁぁぁ!!」
―――――ほぅ、なるほど。これはこれは、面白いというか、珍しいな。まさか貴方がここにいるとはな。
「にゃ、にゃ、にゃぁぁぁぁ!!」
―――――あー、アレにやられたのか。しかもそのせいで呪いを受けて、その姿になっているとはなぁ。
「え?」
巨大魚の言葉に、ルミアは思わずそう声に出した。
今、ゼリアスに向けて話した言葉に驚いたのである。
「ちょっと待って、ゼリアスって黒猫じゃないの?呪いでこの姿になっているの?」
―――――ああ、こやつは猫ではない。いや、元々持っていた姿に固定する呪いが駆けられたようだから、間違ってもないのか?
ルミアの問いかけに、巨大魚は答える。
猫ではないとするのであれば…‥‥一体何なのだろうか。
いや、そもそも人の話を理解し、文字を書き、色々とできている時点で相当怪しい黒猫かもと思ったことがあったが…‥‥。
―――――何にせよ、我には関係ない話しだ。湖に害を及ぼす可能性があるのならば喰らおうと思ったが、お主たちはそういう物ではないとわかった。なんにせよ、人間が一人でうろつくのは危ないが‥‥‥そやつがいれば安心だということぐらいは、親切心で言ってやろう。
「え、ちょっと!!どういうこと!!」
何を言いたいのか、言うだけ言って巨大魚は方向転換し、湖の中へ沈んでいった。
気になる事が色々あったが、その疑問の数を増やすだけ増やして帰ってしまった巨大魚にルミアは怒りを覚えたが、それと同時にその疑問に不安を覚えた。
「‥‥‥ねぇ、ゼリアス。あなたって何者なの?呪いをかけられた者とか言っていたけれど、どういうことなの?」
「…‥‥」
ルミアはゼリアスに問いかけるが、ゼリアスはそっぽを向いて、答える気はないようだ。
というかそもそも、「にゃぁ」とか猫の言葉しか言えていないので、説明しようがない‥‥‥
「ん?待って?あなたって文字をかけたようね?文章で説明できるんじゃ?」
「‥‥‥にゃ!?」
その事実に気が付き、ルミアが問いかけると、ゼリアスが驚愕の表情を浮かべた。
どうやらこの猫自身、全くその事に気が付いていなかったようである。
それからすぐ後、ゼリアスは適当にそのあたりの木の枝を拾ってきて、地面に文章を書いて、ルミアに説明をし始めるのであった‥‥‥‥
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