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とある妖精の話 その6
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‥‥‥深夜、城内は静まり返っていた。
誰もが眠り、起きているとしても城門の門番程度で、平和なこの国では攻めてくる者もいないようで、彼らもやや寝ぼけている。
そんな中、城内にふとある音が響き始めた。
ピュルル~♪ヒュルルル~♪
ピュヒュルルル~♪
まるで幼稚な笛の音、されども誰も起きず、その音は響き渡り続ける。
ピュルル~♪ピュピュピュ~♪
なり続ける笛の音の中、城内で扉が開かれた。
王女の部屋の扉が開かれ、中から王女が‥‥‥いや、中身は妖精のディアは、まるで誘われるように歩いていく。
そして先へ進むと、玉座のある謁見室へとたどり着いた。
その玉座には…‥‥
「くくく…、まさか、本当にこれで呼び寄せられるとはなぁ」
にやりと、笛を手に持った医師、ボラインはそうつぶやいた。
その表情は、昼間の人の良さそうな物とは異なり、邪悪そうな、欲望に満ちた顔である。
「さぁ、王女よ…‥‥いや、その体に入った愚かで哀れな妖精よ。この笛の音にあやつられているのであれば、我が元へ来い」
玉座に座りなおし、笛を吹きながらそう命じるボライン。
その笛の音に合わせるように、ディアのその王女の身体は勝手に動き、彼の前に跪く。
「ふふふふふ、これで操れることが分かったのだし‥‥‥‥そうだな、せっかくだからここでいただくのも悪くはない」
邪悪な笑みを浮かべ、手をかけようとした‥‥‥‥その時であった。
「…‥‥やっぱり、そういう事だったのか」
「っ!!何者だ!!」
突然、聞こえてきた声にボラインはそう声を上げ、その声の方を向いた。
だがしかし、そこには誰もいない。
気のせいかと思いたかったが…‥‥次の瞬間。
バチィッ!!
「がっ!?」
突然、ボラインは手に強烈な痛みを感じ、自身の手を見た。
そこには笛を持っていたはずなのだが、その笛が、いや、彼の手首から先までもが失われていた。
切り取られたかと思いきや、血が流れ出ている様子はなく、それでいて猛烈な激痛が走る。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
痛みに耐えられず、悲鳴を上げるボライン。
「‥‥‥やれやれ、やはりというか、こういうことだったのか」
王女、いや、ディアの横に影が差したかともうと、いつの間にかそこには誰かが立っていた。
銀の髪色が月夜に映え、薄暗い室内をその赤い目が不気味に輝く。
「な、何者だお前は!!」
痛みに何とかこらえ、問いただすボライン。
だが、その回答はその謎の青年が答えるよりも早く、別のものが答えた。
「…‥‥悪魔、ゼリアス。やはり来てくれたのですか」
「っつ、王女⁉いや、その中にいるはずの妖精、いつの間に!!」
彼の隣に立っていたディアが起きており、はっきりと口にしたことにボラインは驚愕した。
「いつの間にも何も、その笛の音が聞こえてきてからですよ」
「ば、馬鹿な!!妖精であれば確実にこの、」
「『魔笛:フェアリーソング』で操れるはずだ、身体は人でも中身が妖精であれば‥‥‥とでも、言うのだろう?」
「!?」
その謎の青年、いや、悪魔ゼリアスの言葉に、ボラインは驚愕の表情を浮かべるのであった。
―――――――――――――――――――――――
‥‥‥魔笛、それは元々、とある部族が持っていた儀式用の笛。
妖精を操れる効果があるとされたが、本来の利用方法は妖精を呼び寄せ、話を聞くだけ。
妖精は自然と共に過ごすので、その分天候などに敏感で有り、農作業を行う際に重要な情報を聞きやすいのだ。
けれども、その記録は今では残っていない。
なぜならば、その部族は当の昔に何らかの原因で滅び、そして笛だけが残ったのだ。
だが、その笛を偶々見つけた人物がいた。
それが、この医師ボライン。
今から数十年前、まだ若かった彼は、医療のために薬剤の材料となる薬草を捜していた時に、ふと埋まっていたこの笛を偶然にも見つけ出し、掘り出したのだ。
当初は何の欲望もなく、綺麗にすれば使えそうで、音楽を聞かせて患者をリラックスさせられると思っていたのだ。
けれども、数回ほど試しに吹いていた中、ふとあることに気が付いた。
その笛の音を響かせている時に、どこからともかく翅を生やした小さな小人のような者が寄って来て、笛の音に合わせて動いたのだ。
実験として繰り返し行い、ボラインはその小さな小人のような者は妖精であり、その笛の音には妖精を操る事が出来るということを発見した。
ただこれで操るだけであれば、特に意味もないのでしまっていた。
それから数十年後、だいぶ年を老いてきたある時、ふとその笛をの事を思い出した。
当時は利用価値もないと思っていたのだが…‥‥年月を経て、彼は様々な薬剤の知識を蓄えていた。
医療でも、倫理的にも禁忌とされるような類の事も覚えておき、いざという時に使えるようにと思っていただけだが‥‥‥それが、その笛の利用方法として結びついてしまった。
「‥‥‥あれとこれ、それに他の物を利用すれば…‥‥もしや」
最初は単純な思い付きであったが、実現可能そうなことであると結論付けた時、それは邪悪な野望へと変わった。
都合よく、今のこの国には王女がおり、まだ未婚。
婚約者を選定したほうが良いのだが、まだまだしなくていいというか、国王にとっては大事な娘なので手元匂いいておきたいのだろう。
その王女を利用し、自身がこの国を牛耳れるという野望を、彼は抱き、そして実行に移したのであった…‥‥
――――――――――――――
「まずは、王女に近づくために、医師としての築き上げてきた人脈を利用し、信頼を得て王城へ乗り込めるようになった。そして、王女を時々診察し、機会を伺い…‥‥まずは、昏睡状態になる薬をもったのか」
痛みが耐えきれなくなり、悲鳴を再び上げ始めたボラインを手刀で気絶させたゼリアスが、彼の身体をしっかりと拘束し、その記憶をどうやってか抜き出し、映し出す。
‥‥‥実は、医師が来る数時間前に、ようやく彼と連絡を取れていたディア。
その笛の音を防ぐ道具を貰い、こうしてわざと罠にかけたのだが‥‥‥‥気絶したボラインが、非常に醜い怪物のように見えていた。
「そして、その診察の際にある薬品…‥‥禁忌とされる、魂を入れ替えると言われるものを投与したのか」
魔笛の効果は、妖精を操る事。
ならば、その妖精をどうにかして王女に出来れば、笛で操り、既成事実を得て実験を得ようという企みだったようだ。
ゆえに、彼は様々な方法を模索し、まずはその禁忌の薬に手を付けたのである。
「いや、正確には違うな。魂を抹消し、別の魂を受け入れらるようにした薬か。それで王女の魂を消し、生きた屍として昏睡させて……」
「次に、私たちを狙ったという事ですか」
妖精たちを捕獲し、その妖精を煎じさせる際に、こっそり薬を混ぜ、王女に呑ませる。
魂を失ったその体には呑まれた妖精の魂が入り込み、別人のようになると思われたが…‥‥
「だけど、妖精とてバカではない。怪しまれないように動くだろうとかけていたのか」
様々な要因が絡み、不確定要素ばかりなものであるが、野望を抱いたボラインにはそこまで考える頭が無かった。
いや、元が悪人ではなかったがゆえに、小悪党というべき様な、大物にはなれぬ器であったせいだろう。
「でも、特殊な翅をもった妖精を望んでいたのは‥‥‥」
「普通の妖精を飲ませると言うよりも、希少性を盛る事で信憑性を少しでも高めようとしていたようだな」
やれやれと呆れたように、肩をすくめるゼリアス。
「自身の欲望のために、王女をたばかり、妖精の魂を入れ、笛で操って国を牛耳ろうとした、たいそうな事をやろうとした感じだが…‥‥色々と甘いし、所詮は何にもなれぬ雑魚だったんだな」
‥‥‥己の欲望を満たすためだけに、その愚かな望みのために、妖精たちは犠牲にされた。
ボラインにとっては、操れるだけの小物であると思っていたのだろうけれども…‥‥彼らにも、意志はある。
「…‥‥ゼリアス、私はどうすればいいでしょうか?」
抑えきれない様な、妖精たち全員の怒りを背負うように、ディアはそう口にする。
彼曰く、薬でこの王女の身体に入れられてしまった者は、もう二度と戻せないそうだ。
ディアはもう二度と要請に戻れず、この国の王女として生きていくしかない。
そしてこの国の王女であった者は、この愚かな者のせいで、人生を奪われた。
そして、妖精たちはこの愚か者のせいで、命を多く奪われた。
「そこまでは、俺は責任を持てない。いや、元々この俺がいる森へ逃げようとした妖精たちを、こいつのせいで奪われたという事であれば怒りを覚えるが…‥‥真実を、そう簡単に明かせないからな」
ここですべてを表に出してしまえば、ここにいるディアは王女ではないとされる。
体は王女だが、その中身は妖精のディア。
偽物として処分される可能性も否定できない‥‥‥‥あの国王は、そう非情なものではないとは思うが。
また、この詳細を人々が知れば、同じような企みを行うような輩は出るだろう。
…‥‥では、どうすればいいのだ。
「表には出せないこと、されどもこのままではどうしようもない。ならば…‥‥」
「‥‥‥何か、手段があるのでしょうか?」
「ああ、あると言えばある。けれども、それは悪魔としてはどうなのかと言うような方法でもある」
ゼリアスに対してディアは問いかけると、彼は非常に複雑そうな表情をした。
「でもなぁ、この件を聞いた妹的には、きちんとしないといけないと言っているし…‥‥どうにかする方法があるのならば、そっちを取ったほうが良いのか」
そう言うと、ゼリアスは懐を探り、一枚の書類のようなものを取り出した。
「何ですか、これ…‥‥契約書?」
「そうだ。悪魔が他者との契約をする際に、絶対に破らないようにするためのものだ。それでだな、妖精…‥ディアと言ったか。お前にちょっとした提案として、ある契約を結びたいが…‥‥良いか?」
ゼリアスの言葉にうなずき、その説明をディアは聞いた。
そしてその詳細を知り、彼女は驚いたが…‥‥その方法が成功すれば、ある程度この件は隠せつつ、この愚か者へ処罰を下せるのだ。
そして契約書に彼女は名前を記し…‥‥‥悪魔との契約が成り立ったのであった…‥‥
誰もが眠り、起きているとしても城門の門番程度で、平和なこの国では攻めてくる者もいないようで、彼らもやや寝ぼけている。
そんな中、城内にふとある音が響き始めた。
ピュルル~♪ヒュルルル~♪
ピュヒュルルル~♪
まるで幼稚な笛の音、されども誰も起きず、その音は響き渡り続ける。
ピュルル~♪ピュピュピュ~♪
なり続ける笛の音の中、城内で扉が開かれた。
王女の部屋の扉が開かれ、中から王女が‥‥‥いや、中身は妖精のディアは、まるで誘われるように歩いていく。
そして先へ進むと、玉座のある謁見室へとたどり着いた。
その玉座には…‥‥
「くくく…、まさか、本当にこれで呼び寄せられるとはなぁ」
にやりと、笛を手に持った医師、ボラインはそうつぶやいた。
その表情は、昼間の人の良さそうな物とは異なり、邪悪そうな、欲望に満ちた顔である。
「さぁ、王女よ…‥‥いや、その体に入った愚かで哀れな妖精よ。この笛の音にあやつられているのであれば、我が元へ来い」
玉座に座りなおし、笛を吹きながらそう命じるボライン。
その笛の音に合わせるように、ディアのその王女の身体は勝手に動き、彼の前に跪く。
「ふふふふふ、これで操れることが分かったのだし‥‥‥‥そうだな、せっかくだからここでいただくのも悪くはない」
邪悪な笑みを浮かべ、手をかけようとした‥‥‥‥その時であった。
「…‥‥やっぱり、そういう事だったのか」
「っ!!何者だ!!」
突然、聞こえてきた声にボラインはそう声を上げ、その声の方を向いた。
だがしかし、そこには誰もいない。
気のせいかと思いたかったが…‥‥次の瞬間。
バチィッ!!
「がっ!?」
突然、ボラインは手に強烈な痛みを感じ、自身の手を見た。
そこには笛を持っていたはずなのだが、その笛が、いや、彼の手首から先までもが失われていた。
切り取られたかと思いきや、血が流れ出ている様子はなく、それでいて猛烈な激痛が走る。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
痛みに耐えられず、悲鳴を上げるボライン。
「‥‥‥やれやれ、やはりというか、こういうことだったのか」
王女、いや、ディアの横に影が差したかともうと、いつの間にかそこには誰かが立っていた。
銀の髪色が月夜に映え、薄暗い室内をその赤い目が不気味に輝く。
「な、何者だお前は!!」
痛みに何とかこらえ、問いただすボライン。
だが、その回答はその謎の青年が答えるよりも早く、別のものが答えた。
「…‥‥悪魔、ゼリアス。やはり来てくれたのですか」
「っつ、王女⁉いや、その中にいるはずの妖精、いつの間に!!」
彼の隣に立っていたディアが起きており、はっきりと口にしたことにボラインは驚愕した。
「いつの間にも何も、その笛の音が聞こえてきてからですよ」
「ば、馬鹿な!!妖精であれば確実にこの、」
「『魔笛:フェアリーソング』で操れるはずだ、身体は人でも中身が妖精であれば‥‥‥とでも、言うのだろう?」
「!?」
その謎の青年、いや、悪魔ゼリアスの言葉に、ボラインは驚愕の表情を浮かべるのであった。
―――――――――――――――――――――――
‥‥‥魔笛、それは元々、とある部族が持っていた儀式用の笛。
妖精を操れる効果があるとされたが、本来の利用方法は妖精を呼び寄せ、話を聞くだけ。
妖精は自然と共に過ごすので、その分天候などに敏感で有り、農作業を行う際に重要な情報を聞きやすいのだ。
けれども、その記録は今では残っていない。
なぜならば、その部族は当の昔に何らかの原因で滅び、そして笛だけが残ったのだ。
だが、その笛を偶々見つけた人物がいた。
それが、この医師ボライン。
今から数十年前、まだ若かった彼は、医療のために薬剤の材料となる薬草を捜していた時に、ふと埋まっていたこの笛を偶然にも見つけ出し、掘り出したのだ。
当初は何の欲望もなく、綺麗にすれば使えそうで、音楽を聞かせて患者をリラックスさせられると思っていたのだ。
けれども、数回ほど試しに吹いていた中、ふとあることに気が付いた。
その笛の音を響かせている時に、どこからともかく翅を生やした小さな小人のような者が寄って来て、笛の音に合わせて動いたのだ。
実験として繰り返し行い、ボラインはその小さな小人のような者は妖精であり、その笛の音には妖精を操る事が出来るということを発見した。
ただこれで操るだけであれば、特に意味もないのでしまっていた。
それから数十年後、だいぶ年を老いてきたある時、ふとその笛をの事を思い出した。
当時は利用価値もないと思っていたのだが…‥‥年月を経て、彼は様々な薬剤の知識を蓄えていた。
医療でも、倫理的にも禁忌とされるような類の事も覚えておき、いざという時に使えるようにと思っていただけだが‥‥‥それが、その笛の利用方法として結びついてしまった。
「‥‥‥あれとこれ、それに他の物を利用すれば…‥‥もしや」
最初は単純な思い付きであったが、実現可能そうなことであると結論付けた時、それは邪悪な野望へと変わった。
都合よく、今のこの国には王女がおり、まだ未婚。
婚約者を選定したほうが良いのだが、まだまだしなくていいというか、国王にとっては大事な娘なので手元匂いいておきたいのだろう。
その王女を利用し、自身がこの国を牛耳れるという野望を、彼は抱き、そして実行に移したのであった…‥‥
――――――――――――――
「まずは、王女に近づくために、医師としての築き上げてきた人脈を利用し、信頼を得て王城へ乗り込めるようになった。そして、王女を時々診察し、機会を伺い…‥‥まずは、昏睡状態になる薬をもったのか」
痛みが耐えきれなくなり、悲鳴を再び上げ始めたボラインを手刀で気絶させたゼリアスが、彼の身体をしっかりと拘束し、その記憶をどうやってか抜き出し、映し出す。
‥‥‥実は、医師が来る数時間前に、ようやく彼と連絡を取れていたディア。
その笛の音を防ぐ道具を貰い、こうしてわざと罠にかけたのだが‥‥‥‥気絶したボラインが、非常に醜い怪物のように見えていた。
「そして、その診察の際にある薬品…‥‥禁忌とされる、魂を入れ替えると言われるものを投与したのか」
魔笛の効果は、妖精を操る事。
ならば、その妖精をどうにかして王女に出来れば、笛で操り、既成事実を得て実験を得ようという企みだったようだ。
ゆえに、彼は様々な方法を模索し、まずはその禁忌の薬に手を付けたのである。
「いや、正確には違うな。魂を抹消し、別の魂を受け入れらるようにした薬か。それで王女の魂を消し、生きた屍として昏睡させて……」
「次に、私たちを狙ったという事ですか」
妖精たちを捕獲し、その妖精を煎じさせる際に、こっそり薬を混ぜ、王女に呑ませる。
魂を失ったその体には呑まれた妖精の魂が入り込み、別人のようになると思われたが…‥‥
「だけど、妖精とてバカではない。怪しまれないように動くだろうとかけていたのか」
様々な要因が絡み、不確定要素ばかりなものであるが、野望を抱いたボラインにはそこまで考える頭が無かった。
いや、元が悪人ではなかったがゆえに、小悪党というべき様な、大物にはなれぬ器であったせいだろう。
「でも、特殊な翅をもった妖精を望んでいたのは‥‥‥」
「普通の妖精を飲ませると言うよりも、希少性を盛る事で信憑性を少しでも高めようとしていたようだな」
やれやれと呆れたように、肩をすくめるゼリアス。
「自身の欲望のために、王女をたばかり、妖精の魂を入れ、笛で操って国を牛耳ろうとした、たいそうな事をやろうとした感じだが…‥‥色々と甘いし、所詮は何にもなれぬ雑魚だったんだな」
‥‥‥己の欲望を満たすためだけに、その愚かな望みのために、妖精たちは犠牲にされた。
ボラインにとっては、操れるだけの小物であると思っていたのだろうけれども…‥‥彼らにも、意志はある。
「…‥‥ゼリアス、私はどうすればいいでしょうか?」
抑えきれない様な、妖精たち全員の怒りを背負うように、ディアはそう口にする。
彼曰く、薬でこの王女の身体に入れられてしまった者は、もう二度と戻せないそうだ。
ディアはもう二度と要請に戻れず、この国の王女として生きていくしかない。
そしてこの国の王女であった者は、この愚かな者のせいで、人生を奪われた。
そして、妖精たちはこの愚か者のせいで、命を多く奪われた。
「そこまでは、俺は責任を持てない。いや、元々この俺がいる森へ逃げようとした妖精たちを、こいつのせいで奪われたという事であれば怒りを覚えるが…‥‥真実を、そう簡単に明かせないからな」
ここですべてを表に出してしまえば、ここにいるディアは王女ではないとされる。
体は王女だが、その中身は妖精のディア。
偽物として処分される可能性も否定できない‥‥‥‥あの国王は、そう非情なものではないとは思うが。
また、この詳細を人々が知れば、同じような企みを行うような輩は出るだろう。
…‥‥では、どうすればいいのだ。
「表には出せないこと、されどもこのままではどうしようもない。ならば…‥‥」
「‥‥‥何か、手段があるのでしょうか?」
「ああ、あると言えばある。けれども、それは悪魔としてはどうなのかと言うような方法でもある」
ゼリアスに対してディアは問いかけると、彼は非常に複雑そうな表情をした。
「でもなぁ、この件を聞いた妹的には、きちんとしないといけないと言っているし…‥‥どうにかする方法があるのならば、そっちを取ったほうが良いのか」
そう言うと、ゼリアスは懐を探り、一枚の書類のようなものを取り出した。
「何ですか、これ…‥‥契約書?」
「そうだ。悪魔が他者との契約をする際に、絶対に破らないようにするためのものだ。それでだな、妖精…‥ディアと言ったか。お前にちょっとした提案として、ある契約を結びたいが…‥‥良いか?」
ゼリアスの言葉にうなずき、その説明をディアは聞いた。
そしてその詳細を知り、彼女は驚いたが…‥‥その方法が成功すれば、ある程度この件は隠せつつ、この愚か者へ処罰を下せるのだ。
そして契約書に彼女は名前を記し…‥‥‥悪魔との契約が成り立ったのであった…‥‥
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