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コモンセンスシティ生活編

たまには街から離れた場所で

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「おーい!!ルーシアそこで待機してくれ!!」
「了解ニャ!!」

 ルーシアに叫び、ディーは素早くそこからジャンプをして、狙った獲物の上空に飛び跳ねた。


「『ミミックスタンプただののしかかり』!!」

 重量はそこそこあるので、ただののしかかりだろうとある程度の高さからの落下物は十分な凶器となり得る。

 


「グガァァァァァァァァ!!」


 ズッシーン!!っと鈍器で殴られたかのような衝撃を受けたモンスターは、ディーの下敷きになって地面に押し付けられる。

「今だ!!」
「頸動脈を狙うニャ!!」

 ディーの合図を共に、待機していたルーシアが素早くナイフで切り付け、下敷きになっていたモンスターを絶命させるのであった……







「よっと、今日のドロップは何だろうかな?」
「良いものだと良いんだけどニャ」

 ワクワクしながら、俺とルーシアはたった今討伐した「プラントイータ」とかいう食虫植物のお化けみたいなモンスターがアイテムに代わるのを待った。


ポンッ!


「お、出てきたのは……『プラントワイン』か」

 絶命して、完全に息絶えたのでモンスターの身体が消え失せ、そこには一本のボトルがあった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
『プラントイータ』
巨大なあごをもち、近くを通りかかる獲物にかぶりつき、己の養分にする巨大食虫植物のモンスター。
植物だから火に弱いかと思いきや、逆に火に強くてむしろその熱で成長し、凶暴化する。
物理的な攻撃が有効であり、特にでかい顎を持つ花の部分が弱点でもある。

『プラントワイン』
プラントイータからたまにドロップするそこそこレアなアイテム。
緑色の液体だが、酸味と甘みが良い感じに調和されていて人気がある。
プラントイータの状態によっては、さらに細かな味の違いがあるという。
ただし、アルコール度数70%と高めなので、一気飲みはNG。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「鑑定眼」で詳細を見てみたけど、結構アルコール度数が高いのか。

 まぁ、飲まないけどな。

「これはギルドの方で買い取ってもらったほうが良いかな」
「そうニャね。私も飲まないし、売って何か別の物を買ったほうが良いニャよ」

 ルーシアに確認を取って、売るまでとりあえず俺の中に収納する。

 こういう時に、某〇次元ポケットのようなことができる「収納」のスキルはすごい便利だ。

 荷物がかさばらなくて済むし、取り出したい時は取り出せる。

 でも、たまに整理しないと慌てたときに違うもんを出すからな……








 今日は、ルーシアと共にディーはコモンセンスシティから少し離れた平原に来ていた。

 別にギルドの依頼で討伐とかがあったわけではない。




「個人的な気まぐれに付き合ってくれてありがとうニャよディーさん」
「まぁいいよ。一応ルーシアのところに預かりの身だし、こういうのも悪くないからな」

 尻尾を振ってご機嫌なルーシアの言葉に対して、俺は返答する。

 今日この平原に来たのは、彼女の気まぐれだ。





 冒険者でもあるルーシアだが、猫の獣人故か気まぐれなところがあるらしい。

 そして、その気まぐれという事で、今日は特に目的もなく適当に平原でモンスターを狩ることにしたのだ。

 モンスターは基本的に人を襲う物が多く、こうやって気まぐれに討伐するのは咎められていない。

 依頼ではないため報酬とかはないが、討伐すれば出てくるドロップアイテムをギルドに売れば、そこそこの稼ぎが期待できるのだ。




 まぁ、狩り過ぎは厳禁らしいけどな。他の冒険者たちがとる分が無くなるのだとか。

 また、余りにも計画性もなく討伐しすぎると、別のモンスターが住み着き、手に負えなくなる可能性もあるらしい。

 そう考えると、この世界はなかなか複雑だ。討伐する相手を減らし過ぎず、増やし過ぎずに調整するその境界線の区別が難しい。


「しかしまぁ、プラントイータってなんかあれに似ているんだよなぁ」
「あれって何なのニャ?」
「いや、こっちがふと思っただけだからね」

 とあるゲームの某配管工の敵キャラパック〇フラワーに似ているなと思ったんだよね。この世界の人にそれが分かるとは思えないけど……



 そうこうしているうちに、いつの間にかお昼時になっていたようで、太陽が真上に来ていた。


「そろそろ昼食にするか?」
「そうするニャ」

 安全性の確保のために、とりあえず平原の中でも見わたしのいい場所に移動する。

 いざという時に素早く見つけて動けるようにしつつ、収納していたお弁当を取り出す。

 現在、ルーシアと共に宿泊している宿のサービスのようなものでお弁当を作ってくれているようだが、これがなかなかうまい。

「今日はから揚げにつくねに卵焼きっと」
「あとはトーストにカリッと揚げられているフライニャ」

 今日のメニューはどうやら揚げ物中心のようである。

 カロリーとかがどうなのだとか言いたいけど……そういえば、このミミックの身体って食生活を気にする必要性があるのかな?

 脂肪ないし、宝箱のような外見だからあまり気にしなくてもいいのかな?

「モンスターってそもそも病気とかにもなるもんかな?」
「さぁ?毒とか効くことがあるし、多分病気も似たようなのがあるからなるんじゃないかニャ?」

 まだまだこの世界で俺の知らないことは多い。

 その中でも、自分についてまだよくわかっていないことが多いなとディーは思うのであった。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――
SIDE騎士王国ナイトガーデン

「失礼いたします女王陛下」

 騎士王国ナイトガーデンの王城にて、今日の執務の事を伝えようと宰相でもあるデルタは女王がいるはずの執務室に入出したのだが……。



「……って、また・・いないじゃないですか!!」

 誰もいない執務室を見て、叫ぶデルタ宰相。




 この国を治める女王ガルティアは、いつもならこの時間にはここで仕事をしているはずである。

 だが、 女王は大抵気まぐれでどこかへ勝手に出かけていくことがあるのだ。

 それも、変装用の魔道具マジックアイテムを装着して、誰にも気が付かれないように出て行き、大抵何かをやらかすことが多い。


ある時は街中の少女に扮して買い物を楽しんでいたり、

またある時は違法な奴隷商売をしていた商会に商品として潜り込んで摘発したり、

そしてまたある時は不正をしていた貴族家のメイドとして働き、内部から自爆するように工作を仕掛けて社会的な抹殺に導いたりと、その行動は破天荒にして無茶苦茶なものが多い。


 結果としては、国にとっても民たちにとってもプラスになることが多いので慕われることは慕われるのだが……その配下の者たちにとっては、心労で禿げそうである。

 いや、すでにストレス性円形脱毛症をデルタ宰相は患っていたのだが。医師にはゆっくり休むと良いですよと勧められている。

 他にも配下の者たちで数名、ストレス性の何かしらの病を患っているようだ。


 とにもかくにも、今回は何をやらかそうとしているのか確認するために、慌ててデルタ宰相は執務室の机の上を見た。

 毎回何かをやらかす前に、予告状をそこに置くという事を女王ガルティアはしているので、行き先だけは特定しやすい。

 そして、今回置かれていた予告状の中身を読むと……

『ヤッホー、多分デルタあたりが読んで居るじゃろうけど、今回も勝手に行動に移してごめんなのじゃ。給料を0.0002%上げるから許してくれなのじゃ』
「いや微妙過ぎる金額上昇ですが!?」


 最初の序文で、デルタ宰相は手紙をたたきつけてツッコミを入れた。


 気を取り直して、次の文を読む。

『さてと、今回わらわはある都市へ適当に赴くのじゃ。ワイバーンで、なぜか叩かれるのを快楽にしておる奴を使って飛ぶから安心するがよい』
「それってあのクビにした騎士たちの奴ですよね!?完全に何かいけないことになっていないですか!?」

 再びツッコミを入れるデルタ宰相。

 先日、クビを決定した騎士たちが所有していたワイバーンのうち、身体が赤い希少種がなぜか変態のようになっていたのだが、その矯正を施してまともにしようと調教師を呼んだばかりである。

 なのに、その調教師が矯正させる前に、女王はそれに乗ってどこかへ飛んでいったようだ。


『ま、ここでこれを読んで居るものがツッコミを入れるのはわかっておる。机の引き出しで上から2段目に、栄養剤を置いておるから、疲れたらそれを飲んでいいのじゃ』

 どうやら女王はすでに予想できていたようで、確かにその指定場所に栄養剤があった。

 ただし、「夜用」と書かれていたことに関してデルタ宰相はツッコミを放棄する。


『冗談はここまでにしておいて、ちょっとダンジョンがある都市に行きたくなってのぅ。騎士たちをクビにした状況報告にあった「知性あるミミック」が気になって見に行くのじゃ。どんな奴なのかこの目で見てみたいし、場合によってはここへ招致してみたいのぅ。ま、1週間以内には城に戻るから、その分の仕事もすでに終わらせているから安心するのじゃよ。
by女王ガルティアより。

追伸:無駄に騒ぎ立てぬことをお勧めするのじゃ。したら隠居した前国王陛下父上が無駄に騒ぐからのぅ。もしかしたら、今度こそ監督不行き届きでお主のクビが吹っ飛ぶかもしれん。
ま、頑張るのじゃぞ(^O^)』



 手紙を読み終え、デルタ宰相はその手紙をもう一度読み直し、そしてびりびりに破る。

「ど、ど、ど、どうしろというのだ女王陛下あの人はぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 デルタ宰相の叫びは城中に響き渡り、その叫び声を聞いた城の者たちは「また苦労しているなあの人は」と、心の底から同情し、あとで優しくしてあげようかと思うのであった。


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