上 下
699 / 718
Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~

ver.6.1-108 再度船丸ごと来訪で

しおりを挟む
―――以前にも、偶然の事故でワープ先がとんでもないことになったことがあった。

 本来であれば、アルケディア・オンラインの中でグレイ号は活動するもの。

 しかし、何度も改装を経て、以前とは異なり船の出力も大幅に増加したのもあってか…再び、グレイ号は仮想世界から現実世界へと飛び出したようだ。


「でも、前は確か月に墜落して、修理して冥王星あたりの秘密の通路を使っていたけど…今回は、どこに出たんだ?」
【ここは…太平洋海底…深層海流の場所へ、出たようデス。現在、グレイ号はゆっくりと流されていマス】

 前に現実世界へ飛び出した時には、現実のほうの宇宙空間だった。
 しかし、今回は座標がだいぶずれていたようで、海の中に出てしまったらしい。

『重力場及び緊急ワープによる損傷や負担のため、出力低下。エネルギー保持及び修復のため、しばらくメインエンジンを停止し、流れに乗りマス』

 グレイ号への負担はだいぶ減っていたようだが、それでもあの重力場からの脱出によって、ダメージを受けていたようであり、この流れに乗りながらしばらく身を癒すようだ。

「はぁ、ゆったりと海の中を流されるままにか…元は帆船でもあった船なのに、今や潜水艦のような真似をして過ごせるとはなぁ…」
【どうしますか、主様?一応、海底からでもネットは接続状態になっておりますので、一旦ログアウトして自宅のご自身の身のほうに戻られますカ?】
「んー…いや、まだ良いかな。なんとなくここに身を潜めていたほうが良い気もするし…」

 女神の勘としての警鐘は、あの重力場の元凶に強く行われていた。

 世界そのものを飛び越えたたために、今すぐに追いかけられることはおそらくは無いのだろうが、それでも身の安全を考えるのならば、船の中にいたほうが良いような気がするだろう。


「というか、そもそも結局あれは何だったのか…解析はできた?」
【厳しいですが…ああ、でも運営のほうから、情報が来ましたネ。監視部門より、詳細な情報が届きましタ】

 落ち着いたので色々と整理する中、謎の重力場の元凶に関しての、情報がゆっくりと出てきたようだ。

【…あまり、これは人間の主様には見せないほうが良いものになってますネ。下手すれば精神に異常をきたしかねないような、異常な人に見せたらまともになりそうな…】
「どういうものなの、それ」
【分かりやすい例えで言うのであれば、変態戦隊に閲覧させれば、これまでの行いを恥じて修行の旅に即座に旅立ち、悟りを開くような…】
「分かりやすいような分かりにくいような…まぁ、ろくでもないものだというのが分かった」

 それでもちょっと気になるので、大事な部分だけをかいつまんで説明してもらう。

 どうやらアレは、本来オンラインの世界には入ってこれないようなものだったらしい。

【いわゆる別の世界の…もっとやばい存在デス。外なるものと言うか、いあいあしか言えなくなるような…そんなものだと思っていただければいいかト】
「OK、わかった、どうかんがえても触れたらやばい奴だった」

 結構有名な方面での、危険な物。
 そんなものがどうしていたのかはともかく、絶対に遭遇したくない。

「だけど、いたのが怖いなぁ…」
【…オンライン上に入ってきたということは、現実世界にもいるようですけれどネ】

 あの様子ならば、追いかけてきてもおかしくはない。
 幸い、この深層海流に乗っている間はすぐに見つからない可能性も大きいだろうが、それでも時間の問題だ。

 地球上であの重力場みたいなのをやられたら不味いが…さて、どうするべきか。


 ゆったりと海流に乗って揺られながら、考えるのであった…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

処理中です...