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Ver.6.0 ~揺らぎと蕩けと混ざる世界~
ver.6.1-100 愚者にはそれ相応の礼を
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…見入漬内は、焦っていた。
アルケディア・オンラインと関わりのる企業を探ることで、スクープを…もしかしたら長い間、その正体は不明とされている黒き女神に関しての情報を得ることができるかもしれない。
会社を辞めさせられそうな瀬戸際で、様々な情報を探り当てようと動いたのだが…どういうわけか、どれもこれも失敗に終わっている。
盗聴器は初日で動かなくなり、裏ルートでの探偵に頼めば行方不明となり、盗撮用のドローンを使えば即座にバッテリー切れになったり途中で動作せずに川へ落ちたりと、散々な結果になっている。
そればかりか、初日の盗聴器がどういうわけか、色々と調べられたようで…
「…我が社への警察の捜査命令が出てきたのだが、どういうことなのかね」
「えっと、その…わかりません」
会社に何をどうしてなのか、警察の捜査の手が及んできたらしい。
幸い、ゴシップ雑誌の企業だけにほんの少しばかり他のほうのネタを差し出して少しの被害で済みそうなのだが、それでも彼への捜査の目は向いたままのようだ。
「何をしでかしたのかは知らんが…そのままやらかしたままだと、いずれやっていけなくなるぞ」
「し、しかしそれでもスクープが無ければ…」
「当然、クビになるのは間違いないだろう。しかし、それでも世の中には触れてはいけない暗黙の了解というべきか、それとも眠れる虎の尾や触れてはいけない龍の逆鱗、変態の前の…いや、その他にも手を出してはいけないものがあるというのは存在している。もしも、スクープに必死過ぎてその手の類に触れようものならば、会社をクビになるどころか、より不味いことが起きるだろうな」
呼び出され、そう告げられた見入。
スクープを得なければ死活問題になるのだが、その得ようとしているところが何かしらの問題があるようで、会社は手を引かせたいようだ。
できるだけ別方面の、問題ないものを撮れということなのだろうが…今の彼には、そういったものを見つけることはできない。
いや、もしかすると既に見限られており、これはまだ穏やかな最終通告的なものなのかもしれない。
「この案件からは手を引けと…ふざけるな!!これ以上のものなんて、どこにあるんだ!!」
いったん引き下がったが、外に出てそう叫ぶ見入。
追い詰められている以上、ここでまだ変える方針であれば多少の慈悲があったかもしれないが…彼は、その判断が出来なくなっていた。
愚かさゆえの、引き際を見誤ったのか。
それともまだ、自分には才能があるという愚かな虚構の自信を持っているからか。
そのどちらにせよ、ここで道を盛大に踏み外したのは間違いないだろう。
「こうなれば、いっそどうなっても良い…確実にスクープを狙うには…!!」
…カタカタと計画を思いつくままに打ち込み、没頭する見入。
その執念深さは呆れを通り越して感嘆の域に達するだろうが、その方向性が間違っている。
そのせいで、下手をすれば犯罪者…盗聴の時点でそうじゃないかと言うツッコミがあるが、それ以上のことをしでかす可能性は見ての通り。
ただ、このまま彼だけであれば未遂に終わり、永遠にシャバの空気を味わえないことになったのだろうが…人の思い、中でもひときわ強いものというのは、善悪を問わず何かを引き寄せてしまう。
彼は気が付いているだろうか。じわりじわりと狭まる包囲網の中、隠れた場所から手を伸ばすものが出ていたということを。
それは彼にとって救いの手になったかもしれないが…周囲からすれば、ドが付くほど大迷惑な代物。
いや、むしろそれは彼自身が呼び寄せてしまった破滅の手と言うべきか。
「うぉおおおおおおお!!燃やすぜ心、すっぱ抜くぞスクープ!!虎穴に入らずんば虎子を得ず、危ない場所だからこそ大逆転の手が秘められているのであれば、爆薬すらも投げ込んで‥‥!!」
…引き返す機会と言うのは、呼び出された時だろう。
そこでおとなしく身を引けばよかったのに…既に、戻ることはできない。
その魔の手に気が付いた時には、既に遅く…いや、出てきてしまった時点で、約束されてしまった破滅の道を引き返えすことは、出来なくなっていたのであった…
アルケディア・オンラインと関わりのる企業を探ることで、スクープを…もしかしたら長い間、その正体は不明とされている黒き女神に関しての情報を得ることができるかもしれない。
会社を辞めさせられそうな瀬戸際で、様々な情報を探り当てようと動いたのだが…どういうわけか、どれもこれも失敗に終わっている。
盗聴器は初日で動かなくなり、裏ルートでの探偵に頼めば行方不明となり、盗撮用のドローンを使えば即座にバッテリー切れになったり途中で動作せずに川へ落ちたりと、散々な結果になっている。
そればかりか、初日の盗聴器がどういうわけか、色々と調べられたようで…
「…我が社への警察の捜査命令が出てきたのだが、どういうことなのかね」
「えっと、その…わかりません」
会社に何をどうしてなのか、警察の捜査の手が及んできたらしい。
幸い、ゴシップ雑誌の企業だけにほんの少しばかり他のほうのネタを差し出して少しの被害で済みそうなのだが、それでも彼への捜査の目は向いたままのようだ。
「何をしでかしたのかは知らんが…そのままやらかしたままだと、いずれやっていけなくなるぞ」
「し、しかしそれでもスクープが無ければ…」
「当然、クビになるのは間違いないだろう。しかし、それでも世の中には触れてはいけない暗黙の了解というべきか、それとも眠れる虎の尾や触れてはいけない龍の逆鱗、変態の前の…いや、その他にも手を出してはいけないものがあるというのは存在している。もしも、スクープに必死過ぎてその手の類に触れようものならば、会社をクビになるどころか、より不味いことが起きるだろうな」
呼び出され、そう告げられた見入。
スクープを得なければ死活問題になるのだが、その得ようとしているところが何かしらの問題があるようで、会社は手を引かせたいようだ。
できるだけ別方面の、問題ないものを撮れということなのだろうが…今の彼には、そういったものを見つけることはできない。
いや、もしかすると既に見限られており、これはまだ穏やかな最終通告的なものなのかもしれない。
「この案件からは手を引けと…ふざけるな!!これ以上のものなんて、どこにあるんだ!!」
いったん引き下がったが、外に出てそう叫ぶ見入。
追い詰められている以上、ここでまだ変える方針であれば多少の慈悲があったかもしれないが…彼は、その判断が出来なくなっていた。
愚かさゆえの、引き際を見誤ったのか。
それともまだ、自分には才能があるという愚かな虚構の自信を持っているからか。
そのどちらにせよ、ここで道を盛大に踏み外したのは間違いないだろう。
「こうなれば、いっそどうなっても良い…確実にスクープを狙うには…!!」
…カタカタと計画を思いつくままに打ち込み、没頭する見入。
その執念深さは呆れを通り越して感嘆の域に達するだろうが、その方向性が間違っている。
そのせいで、下手をすれば犯罪者…盗聴の時点でそうじゃないかと言うツッコミがあるが、それ以上のことをしでかす可能性は見ての通り。
ただ、このまま彼だけであれば未遂に終わり、永遠にシャバの空気を味わえないことになったのだろうが…人の思い、中でもひときわ強いものというのは、善悪を問わず何かを引き寄せてしまう。
彼は気が付いているだろうか。じわりじわりと狭まる包囲網の中、隠れた場所から手を伸ばすものが出ていたということを。
それは彼にとって救いの手になったかもしれないが…周囲からすれば、ドが付くほど大迷惑な代物。
いや、むしろそれは彼自身が呼び寄せてしまった破滅の手と言うべきか。
「うぉおおおおおおお!!燃やすぜ心、すっぱ抜くぞスクープ!!虎穴に入らずんば虎子を得ず、危ない場所だからこそ大逆転の手が秘められているのであれば、爆薬すらも投げ込んで‥‥!!」
…引き返す機会と言うのは、呼び出された時だろう。
そこでおとなしく身を引けばよかったのに…既に、戻ることはできない。
その魔の手に気が付いた時には、既に遅く…いや、出てきてしまった時点で、約束されてしまった破滅の道を引き返えすことは、出来なくなっていたのであった…
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