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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.3-162 その思考は上の権限で

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 良い考えだ、これを実行しよう。
 そう思って動くと、半々ぐらいの確率で成功か大失敗になることがある。

 考えついた本人にしてみれば可能だと思えても、実際に周囲の状況、環境、感情等々の要素が後出しジャンケンのようについてくるので、100%成功するというわけではないのである。

 そして今、記者が思いついた張り込み作戦も、その半々の確率から…残念ながら悪い方になってしまったようだ。


【…まさか、禁則事項に接触するとは思わなかっタ】
【私の方の主がうっかりやなのもありましたが、かぎつかれたのは不味かったですネ。でも、それを撮ろうとして何故、こんなものを撮影したのでしょうカ】

 ゼバズジャンの撮影した、一枚の写真。
 本来であれば、そこには当初の目的の謎の生命体に関して激写したものになり、主である記者にとって大スクープになったものであろう。

 だがしかし、予想の斜め上を超えて撮影してしまったのが…いや、この情報を聞きつけてどうにかやめさせようとやってきたロロも見てしまったもの。


【なるほど…少々、この辺の空間が不安定になっていたようですネ。そのせいで、破けやすく、その隙間から除くものが…】
【本当に、気が付いて辞めてよかっタ】
【まともな人間が見たら、いわゆるSAN値直葬…直送と言う方なのか、やばいのが映ってますからネ】

 
 こんなもの、撮影する気はなかった。
 大スクープなのは間違いないのだが、迂闊に見られたらカオスになる状況があっただろう。
 それで済めば良い方で、最悪の場合は考えたくもない事態になりかねない。



 とにもかくにも、対応できる業者に頼んだので、今後はこの地で同じものが撮影されることはない。
 もしもあったとしても、見た人が発狂して闇へ葬られ…それはそれで大惨事だとは思うが、確率としては相当低くなったはずである。


【我が主様のためにやっていた中で、こんな事態になるのは想定外だっタ】
【無理もないデス。こういう輩の出現というのは、観測が難しいですからネ…まぁ、それはそうとしてここでの撮影目的に関しては、別にお話が必要ですけれどネ】
【ウグッ…】

 厄介事が片付いたのは良いのだが、どうやらまだ残っているらしい。
 せっかくのスクープにできそうな話が、このままではダメになるだろう。
 
 一応、ALで雇われている身ゆえに支払いが無くなれば無と返す関係だが、多少の情が無いわけではない。

【そのあたりを、どうにかできないでしょうカ…】

 そのため、方法を模索する。
 このスクープはもう、手に入らない可能性が大きい。
 それでもどうにかできないかと、お願いしてみるゼバズジャン。

【ふむ…】

 使用人同士、主に対しての救済措置を求めるような動きをする思いは、わからないでもない。
 今回の件、やばいものが写ってしまったのは別として、ネタにしようとしていたものがものなので難しいところである。

 けれども、ここで突き放せばそれはそれでなんとなく気分が悪くなりそうだ。
 関係ない話にあるとはいえ、使用人同士。

 主との関係性がそれぞれ異なるようだが、それでもどうにかしたいと思う気持ちがわからなくもない。

【…ですが、このスクープはできませんネ。詳細を明かすには、そちらの情報開示可能階級が低いためにできないですけれどネ】
【そうか…理解できるとはいえ、きついかナ】
【その代わりと言っては何ですが…】











「…え、妖精姿が撮影されていたの?」
【完全に撮影ではなく、カメラによる目撃だったようですが…主様、油断しすぎなのがいけないのデス】

…何やら用事があると言って本日家にいなかったロロ。
 三日ほど家をあけており、珍しいなと思っていたのだが、どうやら僕がやらかしていたらしい不祥事の始末をしていたらしい。

 どうにかして世の中に出回ることは避けられたようだが…それでも、いつの間にか目撃者が出ていたのは消すことが出来ない事実。
 こちらが悪いわけではないのだが、流石に妖精の体に関しては世間にばれるといろいろ不味いので、対策をとる必要があるだろう。

【そもそも主様が、自身が人外の領域にずっぽりハマっている自覚を持っていないのが悪いですからネ】
「ぐっ…い、いやまだ、人間…」
「女神になっている時点で、とっくの昔に人間卒業しているような気がするけど」
「…」

 話を聞いていたミーちゃんの言葉に、ぐぅのねも出ない。
 常識漬けをした意味が、有るのだろうか。いや、あるからこそ、自分が今、どれだけ人間としての領域から抜け出ているのか目をそらしたくなるほどの事実を理解させられていたりする。

「私が言うのもなんだけど、人外の身である以上、一番気を付けないのは本当に人の目だよ。見られていない、ここなら大丈夫だろう、自分なら安心…そういう慢心が、悲劇を生むからね!!」
「真祖のミーちゃんが言うと説得力あるなぁ…」
【女神の主様も、自覚してくだサイ】
「はい」

 言われて何も言えないのであれば、ここは素直に従ったほうが良い。
 ここ最近、妖精になっての花の中での休息はちょっと楽しみになっていたのだが…うーん、こういう時に人外部分の辛さが出てくるのか。

「残念だけど、目撃者が出た以上は自重しないといけないか…」
【一応、色々とやりましたのでどうにかなりましたが…結構大変でしたの主様、明日から三日ほど妖精状態でニュゲルバッチョンズで睡眠をとって反省してくだサイ】
「なんかさらっと罰せられているような…ん?ニュゲルバッチョじゃなくて、ニュゲルバッチョンズ?何、ソレ」
【有名どころ食虫植物混ぜ合わせの姿を獲得した、ニュゲルバッチョの交配種ですネ。別件対応した中の一つに、これの回収がありまして…】

 ほうほう、交配種…え、ソレって妖精の姿で入ったらアウトなんじゃ…


 自業自得とはいえ、おとなしくお仕置きを受けるしかなさそうであった。





「…ところで、ロロ。ハルへの罰はそれで済ませるけど、本件の元となったことに関して、こっちは何か処置をとったの?」
【妖精の姿のスクープは不味いので取り下げてもらいつつ、ちょっとばかりバレないように記憶操作を行って…せっかくなので、少しばかり新しいものを出して、そちらに注目してもらうように誘導いたしまシタ】
「新しいモノ?」
【ハイ。今回の件で主様が反省してくれれば大丈夫ですが、多少人外の身で不便を強いるのは心苦しくありますからネ。前々からちょっと上の方から動こうとしていることがありまして、これを利用して出すことにしました。うまくいけば多少は…この世界の人外の方々が生活しやすくなるはずデス】
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