上 下
540 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-123 目には目をという理屈で言うけど

しおりを挟む
『---ふむ、どうやら戦闘中だったか』

 降り立ち、そう口にするのは純白の色合いをした、巨大なドラゴン。

 ボスモンスターとの戦闘中に、突如として天井を突き破ってきたが、ダンジョンの階層の境目をこうも容易く破壊できるものだっただろうか、

 

 そんなことはさておき、ボス戦の最中だというこの状況。
 ハルたちはあっけにとられていたが、その隙にボスモンスターであるダンゴリアンが動き出す。


【ゴンゴロゴロゴロゴロォドーン!!】

 回転し、凄まじい放電を放ちながら迫りくるダンゴリアン。
 突然の乱入者であろうとも、やってきたものはすべて敵とみなしているのか、ドラゴンにもひるむことなく突撃する。

 単純ながらもその質量と素早さで破壊威力はすさまじく、直撃コースに入っており、まともに受ければどのような相手であっても無事では済まなさそうなものだったが…



ドォォォォォォン!!
【ゴンドロッ!?】
『…なるほど、結構強力な体当たり攻撃だけど…このぐらいならまぁ、大丈夫か』

 確実に直撃したはずなのに、ドラゴンに効果はなかった。
 あれだけの一撃で多少は動きそうなものなのに、一歩も動くことなく、平然としている。

『でも、攻撃されたからちょっとは反撃しても良いよね』

 そう言いながら姿勢を変え、その大きな尻尾を叩きつける。

ドッバシィィィィィン!!
【ゴンゴギュロォォォォォォォォォォォ!?】

 体当たり以上の一撃なのか、ゴルフボールや野球ボールのごとく、かっ飛ばされるダンゴリアン。
 そのまま何度も壁や天井にバウンドし続けるも勢いが収まる様子はなく、延々とダメージを受け続け、肉体のほうが耐え切れなくなったのか、限界が来たとたんに散ってしまった。

―――
>ディザスター・ダンゴリアンが消滅しました。
>『■■帝』の攻撃によるものですが、バウンドによる自傷ダメージ判定です。
>通常ならばドロップ品はありませんが、ボスモンスターは特例として発生します。
―――

 ログに出てきたが、あの勢いそのものが自傷ダメージ扱いされたのだろうか。
 たった一撃を喰らっただけなのに、それで済むことはなかったようである。


「な、な、なんということだべ…」
「あれだけのボスが、あっけなく…!?」

 あまりの衝撃にまだ動けない僕らだが、事態が良くなったわけではない。
 ボスモンスターは討伐されたが、より強力すぎるドラゴンが残っているのだ。

 しかも今は、女神のスキルはまだ回復途中で使用できないので、黒き女神になって応戦することも無理だろう。

『安心しろ、そちらと争う気はない』

 いっそカイニスを出してみようかとも考えている中、ドラゴンが僕らの方に向き直り、そう口にした。

 敵意もなく、争う気がないのは良いのだが…何だろうか、この強大な力を持つ相手は。
 いやまぁ、黒き女神も結構アレな性能と言って良いのだが、それを持っているからこそわかる、相手の底知れぬ強さを感じさせられるのである。

「争う気はない…戦闘中だった僕らのほうも、ボスと同じように戦わないと?」
『そうだ。そもそもここに来たのは、ある気配を感じ取って気になったから来ただけなのだ』
「ある気配?」
『ああ、その通りだが…ふむ、ここへ来て、よく理解したが‥少々都合が悪そうだな。しばし、他の者は眠れ。【マインドスリープ】』
「「「「あふん」」」」
「!?」

 ドラゴンが手をかざし、何かを放った。
 その瞬間、ハル以外の全員が倒れ、寝息を立て始める。

「え、え、え、何どうしたの!?」
『問題は無い。境界を越えて全て一時的に眠ってもらっただけの話だ』
「境界を越えて…まさか、現実の肉体にも影響させたのか!?」
『ほぅ、理解が早いな。普通のものならば、そんなことはできまいと思うだろうが…いや、まだまだ生まれたての発展途上とはいえ、似たようなものを持つならば否定はしないか。…そうなのだろう、現実の肉体すらも、女神になる【黒き女神】とやら』
「!?」

 まだここで遭遇して間もないはずなのに、黒き女神のことも知っているらしいドラゴン。
 何もかも見透かされているで、冷たい汗が流れたような気がしたのであった…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...