上 下
530 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-114 改良は改善できるから改良と呼ぶのデス

しおりを挟む
―――以前、まったく解析のできない正体不明の何かに遭遇したことがあった。
 あの時は、戦闘中なのもあってそちらにエネルギーも割いていたが、それでもできないことがあったというのは非常に悔やまれるところである。

 いつ、いかなる時も正確にかつ最適な情報を届けなければ、使用人としての面子もつぶれてしまうので…


【…見直して、解析室の精度をアップさせて正解でしたネ。かなり遠距離にいるようですが、それでも情報がしっかりとれてマス】
『この光線を砲撃しまくっている相手に関して、何かわかったのでしょうカ?』
【ええ、ばっちりとデス】

 衛星軌道上を、半次元潜航状態で航行し、降り注ぐ光線を回避する中、グレイ号に備え付けられている解析室内にて、ロロは相手に関しての情報を分析しまくっていた。

 

 現在、通信妨害によって主であるハルの状態が分からないが、デスペナルティなどのログが無いところを見るに、まだ生存はある模様。
 それとセットでミントも一緒にいるので、同じく生き延びている可能性は高い。

【そもそも、この光線はマッチョンの放っていた技ですが…ええ、似ていましたがエネルギーの比率分析結果から見て別物ですネ。本人に限りなく近いですが、波長のずれからして、コピー品…クローン、もしくは模した何かが撃っているようデス】
『マッチョン本人が操られて乱発しているってことじゃないのカ』
【そうなりマス】

 突然の攻撃で慌てたが、冷静に分析してみたところマッチョンの手によるものではない。
 離れた距離が欲望戦隊の現在いるはずの位置に近いが、彼らが何か狂って攻撃を仕掛けるように命じたわけでもないだろう。
 まぁ、あの変態戦隊は腐っても変態たる矜持ゆえか弱者をいたぶるようなことは無いだろうし…嫌な信頼の仕方にはなるが、悪人へ身を堕とすまではギリギリいかないはずである。
 一時期、悪の幹部の五人衆みたいな感じをしていたが、アレはアレでイベントのノリにのってしまった悪ふざけの延長線上の様なものなはずである。



【ただ、分析結果からすると、マッチョンの何かしらのものが使われているのは不味いですネ。黒き女神の力に匹敵するほどの、勇者オーク…悪用は最悪の事態を招くでしょウ】

 一時期女神と争った際には、かろうじて勝利をもぎったこともある実績があるゆえに、その力が何者かに悪用されるというのは不味いだろう。
 あの欲望戦隊の手に置いてもダメではないかという意見もありそうだが、マッチョン自身の倫理観がまともゆえに、良い感じのストッパーになるのでおくしかないという現実もある。


【それに、これは本気の襲撃とかではないですネ。撃つ場所がランダムすぎますし、恐らくは試し打ちに近いものをしているように思えマス】

 本気でやろうと思えば、乱発している光線を一束にまとめて、星そのものを破壊することも可能なはずである。
 だがしかし、そうはせずに適当なところを撃ちまくっているようで、どことなく試し打ちのような気配が見える。
 良い実験材料として扱われているのか、試射することで今後の使用をどうするのか検討しているのか、相手の目的まではわからない。

 ただ、だんだん撃たれている本数が減ってきていることから、乱発するだけのエネルギーも少なくなってきており、そのうち収まる可能性もある。

【人の多い場所を狙っているようですし…人として発するエネルギーを感知して、攻撃をしているのでしょうカ】
『人としてのエネルギーか…ならば、本艦が先ほどから狙われていないのも納得スル。エンジンから生み出されるエネルギーは莫大なはずだが、それはあくまでも機械的に生み出されたもので…』
【ええ、恐らくは人そのものの活力や感情、生命エネルギーなどの何かを察知し、多い場所を狙っているのでしょウ】

 こうなってくると、相手の目的も少しだけ見えてくる。
 エネルギー量が多い相手を捕食するとかの類ではなく、どちらかといえば数を減らすために動いているのだろう。

 そういった意味では、最もヤバそうなのは欲望戦隊だろうが…あの一味の変態力が強すぎて、流石にかかわりたくないという感情を抱かれている可能性も否定できない。

【とにもかくにも、ある程度分散したのもあってエネルギー量が減った分、相手の攻撃も比例して減少しているようデス。このペースならばそのうちなくなるでしょウ】

 自身の主たちがそう簡単にやられるわけがないだろうし、生き延びることはできるはずである。
 万が一に備えて、ハルたちの装備に他に細工も施しているので、彼らだけが生き残る手段も取れないことはない。

『それでも、攻撃してきている輩がいるのは嫌だな…こちらから、反撃しても良いだろうカ。特殊兵装の中に、超ロングレンジ攻撃が可能な火炎…』
【いえ、それはよしたほうが良いでしょウ。相手のロングレンジ攻撃に対抗して攻撃をやませる前に沈黙させることは可能ですが、今回の攻撃を見る限り、他に強力なマッチョンを模した攻撃手段がこちらに向けられる可能性はありますからネ】

 どのようにして入手したのか、最悪の可能性だって想像できる。
 そこから得られる情報もこの攻撃意外にあるだろうし、女神と対等に戦えるような相手の攻撃をまともに受ける可能性があるのは避けたいところ。
 いくら頑丈にグレイ号が作られているとはいえ、流石に限度はある。

【ひとまず、今は主様たちの位置情報を探しましょウ。そのうち収まる攻撃だと思われますが、安全な船の中に入れたいですからネ…】

 いくら通信妨害が行われているとはいえ、既にどのような仕掛けで行われているのか分析が完了しており、潜り抜ける手段は用意できた。
 あとは連絡を取れるように、それ用の装置を作成するだけであった…




しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

処理中です...