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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-112 堕ちたものは、ただの…

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…イベントも中盤へ差し掛かり、あちこちで撮影会の様なものが始まり始める。
 大体の人数がそろったのもあってか、各作品ごとの集団が名場面の再現するかのようにポーズやエフェクトを何とかやったりして、これはこれで面白い光景である。


「というか、これも現実だと難しいのが多いね。浮いたり気弾のようなものを放ったりすることは現実だとできないけど、オンラインの世界だとアイテムやスキルで解決できるからなぁ…」
「まさか、某有名な溶岩沈みサムズアップも、やり遂げる人がいるとは…その後、デスペナルティを喰らったみたいだけどね」

 イベント内の撮影会を見越してなのか、実は会場にはスキル等で再現が難しい作品内の環境に似せたステージが作られており、そこで順番待ちがあれども撮影が可能になっていたりする。
 なんでも主催者のプレイヤーがコスプレだけではなく、再現性を高めるために極めるのは当然の責務だとか言って用意したそうな。

 その再現のために、どこかのプレイヤーが請け負ったという話も聞くが…まぁ、細かい部分は効く必要は無いだろう。

「あそこも良いな…おお、炎が渦巻く黒煙のフィールド再現しているところもあるな」
「第234話『強制婚姻届け強制既成事実か、絶望の灼熱地獄!!』っぽい気もする」

 ああいう場所があるからこそ、撮影する人たちもよりテンションが上がるんだろうなぁと、なんとなくその気持ちを理解しようとしてた…その時だった。


―――ドッゴォォォォォォォォォォン!!バリィン!!
「「「「「!?」」」」」

 突然の爆音と何かが割れる音が鳴り響き、大きな揺れが会場全体を襲った。


「な、なんだなんだ!?」
「どこかの馬鹿が、爆弾でも使用したか!?」
「見ろ、音が鳴った方向!!何か変な煙が!!」

 突然の異常事態に、会場内の平穏な空気がかき乱される。
 平穏無事に済ませたいこのイベントで、何か馬鹿をやらかす人がいたのだろうか。

 そう思っていた時…ハルは、何が起きたのか続けて出てきたログで理解した。

「…はぁ!?」
「どうしたの、ハル?」
「み、み、ミーちゃん、これを見て!!」

―――――
>黒き女神の結界が、攻撃されました!!
>結界耐久限界を瞬時に上回り、消失しました!!
―――――
「え、嘘ぉ!?」

 慌てて見せたログの内容を理解し、ミーちゃんが驚きの声を上げる。
 無理もないだろう。僕だって、驚いているのだ。

 

 何者にも、悪意があるような類が来れぬように、会場全体を密かに覆っていた黒き女神の結界。
 相当な強度があるはずのそれを、どうやら瞬間的にぶち壊されたようである。

「何がどうなっているの!?」


 色々と最善の手を尽くしてきたはずなのに、何者が手を出してきたのだろうか。
 しかも、女神の結界を破る時点でただ者ではないこともわかってしまう。

「もしや、帰ってきた変態神とかか!?完全に消滅させたとしても、第二第三の変態がいる限り…!!」
「いや、変態が神の結界を壊すかな?」
「…壊す可能性も十分あるよ」
「あるのか…」

 少々ツッコミがありつつ、何者が攻めてきたのかという情報が欲しい。
 念のためにグレイ号へ向けて通信を飛ばし、いつでも指定座標へ主砲を放てるように…

―――――
通信妨害ジャミングされております。
>グレイ号への指示が不可能です。
>また、フレンド間通信など、会場全体の通信関係が遮断されています。
―――――
 
 既に駄目になっていたらしい。
 安否の確認や運営への通報もあるというのに、それらがすべて封じられた状態である。

 かなり不味い状況で、このままではイベントが悲惨なことになりうるだろう。


「とりあえず、なりふり構っていられなさそうだし、すぐに黒き女神の力を使えるように」
―――――
>ERROR!!
>スキル「黒き女神」との通信も遮断!!
―――――

「ことごとく手が潰されているぅぅぅ!?」

 まさかまさかの非常事態が今、コスプレ会場へ降り注ごうとしているのであった。















…会場内が混乱の場になる数分前。
 コスプレイベントが行われている星の大気圏外衛星軌道上にて、グレイ号は周回しながら警備にあたっていた。

 自身の主であるハルからの命令を受け、あらゆる対策を取っているとはいえ、万が一に備え、全感知・探知機能を使用して警戒を行う。
 何事もなければ良いのだが、侵略性宇宙人NPC・モンスターもいるこの宇宙フィールドにおいて、油断せずに厳重に警戒をしても損は無いだろう。

 万が一戦闘になったとしても、魔改造されまくった現在、シャレにならない火力を施行できるからこそ、使うことが無く終わることを祈っていた。

 しかしながら、その祈りも有用しなかったらしい。

ピィィィ!!
【空間測定レーダに反応を確認!!】
【強力なエネルギー、複数!!距離、空間歪曲でショートカットされるも発射地点はおよそ16万光年ほど!!】

 観測機器の反応を見ていたウッドマリーンズ…魔改造を進めた結果、既に木製部分がほぼ無いとはいえ、突然の出来事に対して素早く報告を行ってきた。

『マスター、ハルへ緊急伝達!!エネルギーの着弾を許さないように、空間遮断魚雷を掃射!!』
【了解!!エネルギー着弾地点計測、進路妨害のための遮断魚雷を!!】
【緊急伝達通信回路…っと、ダメです!!通信妨害反応を確認し、連絡が取れない状態になりました!!】


 ここで迎撃を行うとはいえ、多少は取りこぼす可能性もあり、すぐに連絡を取ろうとしたところ、いつの間にかできない状態になっていた。
 警戒していたはずが、どうやら網の隙間を潜り抜けるようにして、いつのまにか妨害を受けていたらしい。

【エネルギー。跳躍測定確認!!もう間もなく、現場宙域上空に出現、放出!!】
【データをすぐに分析し、相手の正体を…これは!!】
『どうシタ!!』
【エネルギー波長、データ前例を確認!!この反応は『孤高なる豚皇帝の咆哮』…個体名、マッチョンがかつて使用したものと同種、いえ、威力・本数が桁違いの…!!】

 報告がされる中、すぐにそのエネルギーが出現し、星へ向かって降り注ぐ。
 いくつかの妨害用のミサイルを放出したが、それでも莫大なエネルギー相手には対応しきれず、いくつかは到達を許してしまう。

 だが、そんなことよりも今、出てきた報告にグレイ号は耳を疑いたくなった。

『マッチョンの技だと…!?何故それが、ここへ降り注グ!?』

 
 グレイ号自身が所有するデータでも、あのオークがこんなことをしでかす様なものではないことを理解している。
 それなのに、大勢へ自ら迷惑をかけるような形で攻撃をするとは思えないし、それに現在も無数に放出されているようで、一体だけではできないような攻撃に驚愕させられる。

 だが、あっけにとられている場合ではないと気持ちを切りかえ、指示を受けられない今、どう動くべきなのか判断を下していくのであった…



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