上 下
511 / 718
Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-95 懐潜れば別の者も

しおりを挟む
『エンジン出力良好、エネルギー伝達完了!!掃射開始!!』

 亜空間潜航による回避を終え、急速浮上したグレイ号。
 宇宙空間へ舞い戻ると同時にエンジンを勢いよく稼働させ、一気に敵陣の中へ突撃する。

『魔導列車側もボイラー圧力上昇!!グレイ号より離脱し、他敵艦を壊滅させる!!』

 ボォォォっと汽笛を上げ、収納されていた魔導列車が飛び出し、周辺の殲滅へと動く。

 ミーちゃん側のほうは任せて良いとして、僕らはあの攻撃を行ってきた敵側に対して、同じようなことやそれ以上のことが出来ないようにしなければならない。


「状況は!!」
【味方艦隊、恒星クラスのエネルギー通過により、回避行動に成功していた艦以外は大損害を被っている模様。ただ。敵もまた攻撃に巻き込まれないように回避していたところがあり、大きな穴を埋め戻すまで、隙が生じていマス】

 あの攻撃は強力だったが、同時に味方を滅ぼしかねない一撃だった。
 ゆえに、巻き込まないように攻撃の直線状から艦を避難させていただろうが、そのコースの先に攻撃した艦がいることを示しているだろう、

 相手も馬鹿ではなく、こちらの意図に気が付いたようで進路を防ぐ形で艦を再び戻そうとしているようだが、問答無用で推し進めさせてもらう。

「火力を前方へ集中!!エネルギーリングで周辺攻撃を弾き飛ばしつつ、敵超兵器と思われるものだけを殲滅するために動け!!」
『了解!!』

 艦の主砲や副砲、その他火力を前方へ向け解き放つ。
 戦艦の構造上、後方部分や側面の武装が意味をなさないことになるが、その分のエネルギーも推進力と火力へ回し、無茶苦茶に突き進む。
 まぁ、念のために有り余るエネルギーをリングのほうにも回しておくことで、守りも固めておく。
 攻めへ転じつつも、全部火力に割り振るほど馬鹿ではない。


「敵兵器の座標は」
【すでに索敵範囲内、数か所確認済デス】

 砲撃を放ちつつ、驀進する中で相手の位置を確認する。
 こちらの目的に気が付いたのか、回避行動をとるものや、やられる前に撃ち落とそうとして攻撃準備をし始めるものがいるようだ。

 まぁ、普通は戦艦が艦隊に突っ込んでくる状況なんて想定しにくいから、早めに行動できている相手の評価をすべきなのだろうが…それでも、動きとしては遅れていると言って良いだろう。

「グレイ号、やれるか?」
『問題ないですネ。各砲塔エネルギー充填、マルチロック!!』

 まだ距離があるようだが、グレイ号の射程範囲は改造によって相当広がっている。
 距離が開いている分、威力の減退が考えられそうだが、有り余るエネルギーが十分すぎるほど補い、命中率に関しても高速計算によって補正されて、相手の動きを予測したうえで狙えるようだ。

『機関部等敵急所測定完了!!砲撃開始!!』

 合図とともに一気にすべての砲門からエネルギーが解き放たれた。
 ただ強大なエネルギーを込めただけではなく、微妙に回転を行って貫通力を向上させたものや、相手の内部で爆発四散させてダメージを増やすようにされたものなど、相手によって打ち分けて次々と砲撃を放つ。


ズドォォォォォォン!!
ドッゴォォォォン!!

 
 次々と相手を狙い撃ち、轟沈させていくグレイ号。
 純粋に戦艦としての高火力を発揮し、何隻か重なって防御しようとしたものさえもまとめて貫通して葬り去る。

 このままグレイ号の攻撃だけで終わりそうな…その時だった。




―――ビシッ、バシッ
「ん?なんだ、今の音?」

 何かが割れるような、嫌な音が突然聞こえてきた。
 無茶な火力を発揮した代償でもあったのかと思ったが、グレイ号自身にダメージを負ったような形跡はない。
 外の敵艦は次々と轟沈されているが、ほぼ爆発ばかりで関係ない音しかない。


【これは…一部空間に、歪みを感知。何か、データにない何かがいますネ】

 グレイ号の観測装置でも分かるらしいが、正体を掴めないらしい。
 分かるのは、何かしらの力が今、このイベント用の宇宙フィールドに干渉していることぐらいか。

「放置して置いたら?」
【ほぼ確実に、その何かが空間を破壊して侵入してきますネ】
 
 何者かはわからないが、この状況で干渉をかけようとしてくる時点で、相当面倒な予感しかないだろう。

「グレイ号、防げるか?」
『空間圧縮遅延弾で、時間稼ぎはできそうですが…厳しいですネ。相手が不明な以上、効力が発揮するかは確信を持てまセン』
「無いより良いと思う。敵艦隊への砲撃に加えて、干渉個所へ遅延弾を掃射してくれ」
『了解デス』

 砲撃を行っている主砲や副砲以外に、ミサイルを連射する連射砲の一つに弾を込め、干渉個所へ向けて撃って奥。

 何者かが来るのを遅らせるだけになるらしいが、時間がかかるようなら干渉を諦める可能性もある。

 そう思い、攻撃を続けていくが…事態は、思いもよらないほうへ動くのであった…



「…ところで、何その遅延弾って」
『特殊砲弾の一つデス。防御兵装でもあり、爆発した周辺の空間を拡張し、相手の攻撃到達を遅延させたり、ビーム系ならば到達前に拡散して無力化させるだけの時間稼ぎが可能なのデス』
「エネルギーリングとかいう防御兵装があるのに、そんなのもあるのか‥‥」
『あとは、万が一の変態流星群が降り注いだ時の時間稼ぎですネ。到達前に、全火力をぶち込めるようにしまシタ』

…対策として用意していたのか。でも、確かに効果的かもしれない。直接防ぐと接触するが、到達を遅延させれば僅か時間でもエネルギーをあっという間に溜めて…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...