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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.0-32 やる気はあるんですが

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…空間からはみ出ていた、謎の触手は消失した。
 その影響か周囲の空間の異変も消え失せ、通常のモノへと切り替わる。

 そして、その場に今いるのは…

「「…」」

 傷が癒されて、何とか立てるようになったミント。
 その目の前には、触手を消し飛ばした存在…何故か、またこの世界に顕現した黒き女神の姿がある。

 いや、何故かという疑問に関しては理由があることを彼女は知っている。
 以前にも、顕現したことがあり…その中身は、変わっていないはずだ。

「…えっと、春、もしくは黒き女神、どっちで良いのかな」

 とりあえずまずは確認するために、呼びかけてみる。
 胸元に一度穴が開いたが、女神の力で何をどうしたのかふさがり、声を発するのに支障はない。
 問いかけると、黒き女神はミントの姿をじっと見ながら、近づき…

ぎゅっ
「!?」
「…良かった、ミーちゃんが無事で。見たとき、なんか思いっきり死にかけていたから物凄く不安になったけど…大丈夫そうで、本当に良かった」
「は、ははははは、春か今!!」

 抱きしめられて、出てきた言葉に対して慌てて答えるミント。
 突然の出来事に思わず動揺しつつも、すぐに中身を理解した。

「そうだよ、ミーちゃん。僕/私だよ、春だけど、それ以外の何者でもないよね」
「いやいやいや、春なのはわかったけど、今の姿って黒き女神の姿になっているよね!?それ、どうしたの!!」
「えーっと…うーん、なんと言えばいいのかな?コレ?」
「問いかけたいのは私の方なんだけど!!」

 回答が回答にならず、思わずツッコミを入れるミント。
 本人が分かっていないことを、他人が理解できることはあるだろうか。





 とにもかくにもいったん離れ、落ち着いたところでお互いにかくかくしかじかと情報を交換し、今の現状が何をどうしてそうなったのかということを理解しあった。
 その結果、ある程度の情報が見えてきた。

「なるほど…何かしらの怪しい組織の基地に進入、発見、大騒動、全力戦闘からのあの触手が出てきたってことか…」
「物凄く端折られた感じがする。そして、春のほうは何か嫌な予感を感じて、慌てて動いたら女神になっちゃったってそれはそれでどういうことなの?」
「それを僕/私に言われても、何がどうなってるのかわからないかなぁ。うーん、僕自身はしっかり式はあると思うけど、なんだろうこの感じ。女神の感覚もあるけど混ざっているんだよなぁ」

 ミント側の事情は理解されたようだが、春側のほうはいまいちわからない。
 ただ一つだけ言えるとすれば、いまだに女神の姿でありながらも以前現実に出てきた時とは違って春の意識がメインのままというべきだろうか。

「それでも完全に春メイン…かな?」
「そうだと思いたいけど、何とも言えない。僕/私の意識は…変わっていない、よね?」

 わからないが、考えていても仕方がないこと。
 今はまず、この場所から離れるべきだろう。

 空間から出ていた触手は失せて、その本体もおそらく消失した。
 そうなると安全になったと思いそうだが、それでも先ほどまで異常な空間になっていた場所なので、何が起こるのかはわからない。

「あとは、お母さんをとっさに投げたけど無事かどうかの確認もしたいし…春、一緒に探してくれないかな?」
「別に良いよ。ミーちゃんが無事だったことを知らせるためにも…あれ、そうなるとこの姿を見せることになるかもしれないけど、どう説明しようか」
「しなくてもいいんじゃないかな?ほら、昔ヒコモノノッスッポスを連れてきても、飼っちゃ駄目よ程度の注意で、そんな変なことがあっても特に気にすることが無いと思うからね。いざとなれば、普通にこの辺りに迷い込んだただの女神です、って説明で十分納得すると思うよ」
「ただの女神が迷い込むって状況がおかしいと思うんだけど…うん、なんだろう、納得して何も言わない伯母さんの姿が想像できるよ」

 見つかっても問題ないか。ごまかせるのであればそれでいい。
 なお、ヒコモノノッスッポスというのは、ミーちゃんが名付けた…今にして思えば、あれは本当になったのかと思える謎の生き物だった。子猫かと思ったけど、今にして思えばアレ目玉4つぐらいあったような…真祖が普通にいる時点で、何かがいてもおかしくはないのだろうか。




 そんなことを思いつつ、周辺の探索を二人は行うことにした。
 異常な空間が出来上がっていたことの余波ゆえか、周囲はあちこちがれきの山と化しており、何かの組織の隠れ家だったとしてもその存在は既に埋もれているだろう。
 何があったのかわからなくなっているのであれば、ある意味組織の隠れ家としては豪華雨天なのだろうが…そんなことはさておき、ようやく人影が埋まっているのを見つけ、春たちは掘り出した。


 ミントと一緒の伯母さん及びその仲間たちがいたようだが、幸いなことに全員かすり傷などがあれどっも軽傷で済んでいる様子。
 がれきに埋もれて気絶していたようだが、とっさに身を守るすべを取っていたのか、死者はいなかったようだ。


「良かった…みんな無事で。お母さんも、大丈夫そうだ」
「素人の目で見る限りだけど…息はあるようだし、生存していて良かったよ」

 異常な空間、存在しているだけでも周囲に影響を与えていたかもしれない。
 けれども、その影響は最小限に収まったようで、意識が少々失われる程度で済んだのだろう。


 あとは全員目を覚ましてもらって、改めて状況の説明とかがいるのかもしれない。
 ふと、そこで春はあることに気が付いた。

「あれ?そういえばミーちゃん、ここって何かの組織の基地だったっぽい場所なんだよね?」
「そうだけど、それがどうしたの?」
「その人たちは、どうなったのかなって?」
「あー…銃撃戦とかあったけど…そういえば、皆以外の、敵対していた人たちの姿が、見えないな」

 いるのは、ミントと一緒にいた人たちだけであり、元々ここにいた組織の人たちの姿が見えない。
 この場から逃走したのかと思ったが、確か銃で撃たれた人もいたはずだし、逃げたとしても死体を全て持ち帰れるわけではなさそうなので、何かしらの肉片も残っていておかしくないのだが…それが一つも見当たらないのだ。


「これ絶対に、後々さらに面倒事を引き起こすやつでしょ」
「さらに何倍もの面倒くささを纏って、余計にやばいものへ…あ、でもそのよりどころっぽいのがもしかして、あの触手かも。それ今、春が全部潰したから…やろうとしても、大したことが出来ないのでは?」
「「…」」

 リベンジのためにやらかしてくる可能性、低くなったかもしれない。
 でも、さらなる別の厄介者を呼び出す可能性もあるため、油断することが出来ないだろう。

「いっそ、この女神の力で隠れたやつも全員見つけ出して潰せたら、楽になるかなぁ?」
ボシュン
「あ」
「…戻ったね」

 そしてついでにというように、あっけなく女神の姿が解除されて、元の春の姿へ戻っていた。

「本当に何だったんだろう、コレ。黒き女神、フィギュアじゃないと引きだえなかったのに、現実の肉体が本物の女神になっていたし…うん、混ざっていた感じも、今はないかな?」
「それ、私のほうが聞きたいよ」
「そうだよねぇ。あーあ、こういうのが分かりそうな人がいたら…あ、いるかも」
「え?」

…わからないことがあれば、わかりそうな人に聞きに行くのが一番手っ取り早い。
 そういうことに強そうでかつ、頼れそうなのは…フロンおば、こほん、お姉ちゃん…かも。

 そう思い、後始末等済んだら電話で聞いてみようかと春は考えるのであった…



「おや、電話で聞くより、直接のほうが早いか。えっと、確か家は…どこだっけ?」
「あの人確か、住所不明だよね。昔、お正月でやってきたときあったけど、普段どこに住んでいるのか聞いたことある?」
「連絡先を聞いたことがあるから、電話はできるけど…そういえば、家どこだっけ?」

…何回か家に行った時があるはずなのに、どこだったのか思い出せないのはなぜだろう。
 
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