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志位斗 茂家波

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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.1-69 誰が最初から、対等にやると

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…ハイジャックから数時間が経過し、犯人たちにも交渉疲れが見え始めていた。
 最初こそは無茶苦茶な要求の中に、まだ楽そうに片づけられるであろうものを入れることによって、簡単に事を進められると思っていたところもあったのだろう。
 だが、その目論見は甘すぎたようで、いまだに交渉は難航しているようだ、

「ぐぬぬぬ…政府の犬どもめ。中々乗らぬとは」
「思った以上に苦戦するが…だが、まだ時間はあるだろう」

 ハイジャック犯たちもといテロリスト集団「政治蚊取り線香」のものたちはいら立ちを見せつつも、それでもまだまだやる気はあるらしい。
 
(…乗客にも疲れが見え始めているし、状況は好転しないまま…何かあればいいのだけれども)

 交渉中の隙を見て、こっそりと手足の拘束を緩め、いつでも動けるようにしているミント。
 この程度の拘束であれば3分もかからずに解くことができるが、やったところで人質がある状況では、すぐに動くこともできない。
 何かこう、ちょっとした隙でもあれば、どうにか事態を動かせそうだと思いつつ、機を窺っていた…その時だった。


「ん?リーダー!外の様子が変ですぜ!!」
「何だと?」

 何やら外の見張りをしていたものがそう口にして、窓から外の様子を見るものができるものたちは何が起きたのかと思い、確認してみる。
 本日は晴天ですっきりした状態だったはずだが…いつの間にか、その景色が変わっていた。

「…なんだ?濃霧みたいにすっごい霧になってないか?」
「やつらが煙幕でも使っているのか?だが、やる意味が分からんな…」

 どこからか、いつからか、詳細は不明だが気が付けば外がもくもくと何やらものすごく濃い霧に覆われていた。
 煙幕でも張ったように見えるが、やる意味が分からない。人質たちが捕らえられている状況なので、この煙幕に紛れて突撃してきたとしても、すぐに対応はできるはずである。
 そんなことが分からない相手でもないはずだが、ならばどうして発生しているのか。

 その理由に誰も答えられず、交渉していたものたちが先方に確認の連絡を取るも、どうやら相手のほうも知らないらしい。
 つまり、自然発生したものか…もしくは誰かが意図的にやったもの。
 前者ならばまだ何かしらのこじつけで説明ができそうだが、後者の場合目的が分からない。

「うーむ、それ以外に特に異常はないようだが…引き続き警戒を緩めるな!こういう怪しい現象があったときは、続けて同じように怪しいことが起きる可能性があるからな!」
「わかりました!!」
「こういう時に奇襲してくる輩がいるかもしれな、」
ぱりっ
「ビモグベッベェェブ!?」
「「「!?」」」

 犯人たちの一人が返答をしている中、何か妙な静電気のような音がしたかと思えば、次の瞬間に奇声を上げてぶっ倒れた。

「お、おい、大丈夫か!!」
「なんか感電後の焦げアフロみたいになっているんだが!?何をどうしてこうなったんだ!?」
「お、落ち着けお前らぁ!!」

 古典的表現の例と言っていいような、焦げアフロになって気絶した仲間に動揺したようだが、彼らの指揮を執っているリーダーが声を上げる。

「ここで慌てふためくな!!そんな動揺が、余計な被害を生むかもしれんぞ!!」
「ですが、何があってこんなものに、」
ぷすっ
「すやぁ」
「「「今度は何だぁぁ!?」」」

 リーダーの言葉に反論しようとして、突如としてまた一人倒れていく。

「これは…普通に寝ているだけだ!!なにか麻酔弾でも撃たれたかもしれん!!」
「遠距離から狙ってくるスナイパーでもいるのか!?」
「だが、ここ一応室内だぞ!!外からやるにしても、厳しいとは思うんだが!!」
「だから落ち着け!!」

 慌てふためくハイジャック犯たちに驚愕する乗客たち。
 相手が勝手に倒れていくのは喜ばしいのだが、正体不明の何かに狙われている状況は同時に恐怖も生み出す。

「乗客ども、衣服を貸せ!!もしかすると我々の露出部分を狙って攻撃している可能性があるからな!!」
「いや、貸すどこから奪わせてもらうぞ!!狙われたくねぇ!!」
「次に狙われるとしたらこんどは、」
ごっす!!
「ほげえぇぇぇ!?」
「「「頭を狙ってきやがったぁぁぁぁ!!」」」

 叫ぶ中で、また一人…今度は彼らのリーダーに何かが殴ったような音が聞こえ、倒れさせていく。
 明らかに何か鈍器で殴ったような音だったが、たった今目にしている中でも、誰かが背後に立っていたりなどはしていない。

 そう、突然何かが現れて一瞬のうちにやってしまったような…ありえない事態が起きているのである。

「おいおいおい、どうすんだ、我々のリーダーがやられちまったんだが」
「落ち着け落ち着け、亡きリーダーの言葉から、まずは落ち着く方を優先しなければ…」

 まだ息はしているが、勝手に亡き者にされるリーダー。
 最後のほうに残していた言葉を実践しようと、ハイジャック犯たちは各々の落ち着く方法を実践し、平静を取り戻そうとする。


(何が起きているんだ?誰かが背後に立って殴ったようにも見えなかったし、刺したりしびれさせたりするような道具も見えなかったが…)

 相手の様子を見ているなか、考え始めるミント。
 今はまだ相手だけに影響を与えているようだが、正体不明の何かが人質のほうに脅威を向けかねない危険を覚えて、その正体を先に見破ろうと思ったのだ。

 先ほどの次々に倒れていく光景を何とか思い出すも、そのどれもこれもこれと言って怪しい人影が見当たら無い。
 長距離射撃とかは確かに可能そうだが、こんな室内にあちこちの違う場所で当てるのも厳しいので、その可能性はないだろう。
 そう考えると、他にやれる可能性は…

「…まさか」

 ふと、ある可能性に気が付き、彼女は声を出した。
 ばかばかしいし、ありえない話ともいえるが…むしろ、そんなぶっ飛んだバカげた考えのほうが、状況の説明になるのだ。


「おい、そろそろ落ち着いたか」
「ああ、人の字をたくさん手に書いて舐めて、なんとかな」
「素数を数えての方法を試したが、34あたりでわからなくなって…」
「いや、それ素数じゃないぞ」
「ひとまず何とか、全員落ち着いたところで…」

 どうにかこうにか落ち着きを取り戻し、ハイジャック犯たちは各々の持つ銃を構える。
 持ち込みがばれないように小型のものなのだが、それでも殺傷能力は保証されており、正体不明の敵が何であれ、ないよりはましなはずである。
 そう思い、身構えて周囲をゆっくり見渡すが…怪しい人影を見ることはできない。

「人質どもと、倒された奴らか…いったいだれが、どうやって」
「霧に紛れて、何かがやってきたとか…もしかしてお化けとか」
「馬鹿か。お化けが人を殴り倒せるか」
「でも、怖くなって…」

 ガクブルと震えつつ、恐怖を味わうハイジャック犯たち。
 未知の敵が出てきたのは、流石に想定外すぎることであり、どう対応したらいいのかわからないだろう。
 そして、そんな彼らの様子をミントは見ていたが…より注意深く集中してみていたことで、ようやく気が付いた。

「とりあえず、何とか相手をさが、」
ぱ、
「「っ!!そこだぁぁぁ!!」」
ビッタァァァン!!
「ぐべええええええええええええええええ!?」

 ほんのちょっとだけの、小さな音。
 それが聞こえた瞬間、恐怖で気が張っていた犯人たちはとっさに動き、音がしたところへ向かって全力のビンタをかまし、その先にあった肉体へ直撃させる。


「今何か、小さなものが見えたぞ!!」
「虫のような…いや、違う!!」

 ほんのわずかな間だけ、目に見えたその姿。
 それだけでも極限の緊張状態にされた犯人たちはしっかりその姿を目にした。

「何か、人形っぽい何かだったぞ!!」
「あれはどこかで見たことがあるような…そうか、思い出した!!あれはレイドボスの姿で見たことがあるやつ、確か『黒き女神』!!

『---おや、すぐに正体がばれてしまったか』
「「「!?」」」

 犯人の一人が正体に思い当って叫ぶと、周囲に小さいながらもはっきりした声が響く。
 その声の主のいる方向へ、その場にいた全員が目を向ければ…そこには、小さな人影があった。


「間違いない、黒き女神だ…ゲームの中にいた、恐るべき女神」
「でも、なんだこれは…何でこんなに…」
「「「小さいフィギュアのようなのが、動いてしゃべっているんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 まさかの出てきた正体と、そのサイズで二重に驚き、全員驚愕の声を思わずあげてしまうのであった…

(…確かに、あれだけ小さい人形のようなものだと、よっぽど注意深く目を向けないと、すぐにはわからないけど…予想通りの小人っぽいものだったとは。…でも、なんでだろう?何か私はこの中身を知っているような…?)

…そしてミントは自身の予想として、攻撃してきたのは小人のような何か小さいなものだという考えが当たっていたことに驚きつつも、妙な感覚を感じ取るのであった。


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