上 下
273 / 718
Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.1-62 少数精鋭は理由もある

しおりを挟む
…まさかの欲望変態、こほん、欲望戦隊とこの星で再会するとは思いもしなかった。
 ただ、いつもならば前口上を述べて格好をつける奴らのはずだが、本日は人数があっておらず、その口上を吹っ飛ばし、ひとまずは救助したので事情を聴くことになった。

 適当に変態度が濃すぎないうちに自己紹介をしてもらいつつ、薄めのうちにすぐに離脱できるようにも用意しておくのは忘れない。
 しっかりと様々な変態対策も出して、どういう状況で襲われていたのか、まずはここに来るまでの経緯やいつもの面子じゃないことから聞くことにした。

「…え?カックウさんスッケンさん、のじゃロリやお孫さんは本日ログインしていないの?」
「そうなんじゃよな…青緑の二人は、ちょっと事情があってコンビで休みなのに出張しておる:
「ほかは国家間の話し合いと、普通に現実のほうでのゲーセンで…だから、欲望戦隊としての活動は、本日お休みなんだ」

 ミートンさん、タローンさんの話によると、本日他の面々はそれぞれの用事があり、ログインしていないらしい。
 5人そろっての戦隊ものパーティだから足りないとやる気もなさそうだが、ちょっと違う目的があって今日はここに残りのメンツでやってきたそうだ。

「それが、この羽根つき子豚を連れてきた理由なの?」
「いーなー、可愛いなー。でも、見たことがないような?」
「ないわねぇ…野生でいるならちょっと目撃情報がありそうなものだけど、珍しいわね」
【プモォォ!!】

 妹と母さんになでられ、うれしそうな声を上げる子豚…マッチョンのいる場所に代わりにいる羽根つきの子豚。
 なんだろうと思って問いかけてみたら…なんと、驚くべきことにこの子豚はマッチョンの子供らしい。

「テイムモンスターって子供産めたの!?」
「みたいじゃな…初めて知って調べたが、どうやら3.0あたりですでに確認されていたらしい」
「その子は『プチウィングピッグ』の『プモモン』。孫娘さんが名付けたんだが、マッチョンとその番となったモンスターとの子供らしいんだよね」

 テイムモンスターにも雄雌は確認されていたが、まさかの繁殖要素があったのは驚きである。
 いや、でも考えたらあってもおかしくはないのだろうが…それでも、こうやって新しい命ができていたとは、実際に目にしないと分からないものだ。

 そして何故現在進行形で侵略中の毒虫があふれるこの星に、この子を連れてきたのかといえば…どうもマッチョンたちのほうで面倒ごとが起きたらしい。

「本当なら親ということで、マッチョンたちも連れてきたかったのだが…」
「こっちはこっちでねぇ…実はもう一体生まれそうで、そっちのほうにかかりきりになちゃっているんだよ」
「まだ増えるのか…」

 そのため、本当ならテイムした側の責任ということで一緒に誕生の瞬間を見ようという変態の中の残されていたまともな心の部分もあって考えていたらしいが、プモモンが意見を出したらしい。
 弟か妹かわからないが、その新しい子が出てくるのであれば、先に生まれた立場だからこそ気遣い、プレゼントをあげたいと言ったらしい。
 鳴き声がマッチョンに似た感じの「プモゥ」だけだが、身振り手振りで伝わり…幼子をそのまま勝手に行かせるわけにもいかないので、一緒にこの星でプレゼントを探すことにしたようだ。


 ただ、そんな想う心に対して、まさかの緊急イベントが発生してしまい…

「花をプレゼントしようという中で、見つけた良さそうなのが枯らされそうになって、プモモンが全力で体当たりして一匹吹っ飛ばしたんだ」
「小さな体で親譲りのパワフルさがあったが…吹っ飛ばされた奴が怒って、今に至るというわけなんじゃよ」
「あー…割とまともな感じの理由だったのか」

 欲望戦隊だから何かをしでかして怒りを買ったのかと思っていたが、まだまともな理由だった。
 プレゼントしようとした花を守ろうとして、怒らせっちゃったか…変態たちによる変態乱舞的なものでもやって激怒されたのかと内心疑ってしまったが…うん、そんなことがなくてよかったと思いたい。



 とにもかくにも、緊急イベントに巻き込まれる形になったが、彼らにとってもこの星が侵略者によって枯らされるのはプレゼントができなくなるのが困るということで、いったんここで討伐するプレイヤー同士ということで、組むことになった。
 追われていたようだが…ムシコロリを投げて奴らを殲滅する人手にはちょうどいいだろう。


「まぁ、緊急イベントということでこの惑星上のプレイヤーたちが協力している状態だし、争うこともないしな…協力し合うか」
「うむ…できればカックウたちもいればよかったが、ハルさんがいるなら100人力じゃ」
「それにしても、なんかまた…増えてないかな、ハルさん?なんか見たことない竜のメイドさんっぽいのも混ざっているんだけど」
「…そこはまぁ、色々あってね」
「色々ってなんじゃ、色々って!!」
「可愛い子がなかなか得られないのに何でハルさんばっか可愛い子が集っていくんだよぉぉぉぉぉ!!」

…そんなことを言われても、僕自身どうしてそうなるのかわからない。
 疑問に対しての答えが出せないのだが、ひとまずは協力し合うことにするのであった…


「でも、この状況小さい子は危険だし、ハウスシステムが使えるなら入れておいたほうがいいんじゃ?」
「そうしたんだけど、プモモンがいうことを聞かなくて…自分でプレゼントになる花を獲得したいって」
【プモォォゥ!!】

 まだまだ小さいが、やる気などが溢れているようだ。マッチョンの子供だけど、苦労人には育つなよと思うのであった…
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。 友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。 しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。 「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」 これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。 週一、不定期投稿していきます。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

処理中です...