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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.0-36 自分一応、一般人なんですが

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…想定していなかったわけではない。
 一応、テイムモンスターたちがデフォルメされた姿で限られたスペースの中で顕現する箱庭や、使用人が現実でも働けたり数年後に発売予定のはずの現実に出るドール系統など、アルケディア・オンラインには現実と交差するような機器があるのだ。
 それに、NPCなんかものじゃろりとかその手の類がいるので本当に生きているように感じられ、中には本当に現実に出て過ごす羽目になってしまったやつなんかも見てきたので、この現実世界にいつの日かひょっこりとやってくる可能性も考えられないわけじゃなかったのである。

「技術革新とかも考えて、まだまだ先かもしれないと想像はしていたけど…まさか、本当に現実に出てくるとは思いもしなかったんですが」
「ふふ、人の想像よりも私たちは先に行っていたりするのよね」

 僕の言葉に対して、そういいながら笑う元妖精女王。
 相手がいなくてさまよい暴走していたころとは異なって、今はきちんと結婚した身になったうえに女王の責務もなくなったせいか、どこか余裕あるように見えるだろう。

「というかそもそも、どうやって僕の家を特定してきたんですか。プレイヤーの個人情報は厳重に管理されているはずなんですが」
「その疑問に関してはわたしのほうが答えよう」

 問いかけに対してそう口にするのは、夫の宇宙人のゲシュタリアタコン星人さん。
 こんな見た目が古典的なタコっぽい宇宙人が堂々と訪れた時点でご近所が大騒ぎにならないのかと思うのだが、そこは不思議な宇宙テクノロジーとかでごまかしており、ばれていないようだ。
 どこかのカエル軍曹の道具かな…

 そう思いつつも説明を聞くところによると、運営会社のほうハッキングを仕掛けたりとか他のNPCから情報を抜き取るなどの手段はとっていないそうだ。
 
「単純に、あなたのテイムモンスター…妻の後継者となった新妖精女王の方の反応をこの家から感知して、念入りに調べたうえで確信をもって訪れただけなのです」
「つまり、ネアの反応だけで確信したと」
「そういうことですね。種族としては大幅に変わったようですが、それでも妖精郷の女王には特有の反応があるようで、共通の部分を探し当てたのです」
「ついでに、この星の妖精たちにも聞いたのよね。世界が違うとはいえ、それでも話の分かるいい子たちが多いのよ」
「はぁ!?」

 そんな妖精とか非現実的すぎる存在が、まさか現実にいるとは思い難かった。
 ゲームの中とかなら納得はできるのだが、科学文明の発達しているこの世の中で、そんな空想上の存在がいるとは思い難いような…でもなー…

「…考えたら、物語とかいろいろあるけれども、どこかにその原因というかもとになったものがあるだろうし、実際にいてもおかしくはない…のかな?」
「ええ、普段は見えないようにしているわね」
「そもそも、我々宇宙人とてそう簡単に見つからぬように工夫をしているからな。人に見つかって何かもめ事が起きないためにも、ある程度干渉せずに適度な距離をとっている者たちは多いようだ」

 そんな話をされても、納得はちょっとしづらい。
 でも、可能性としては否定しきれないし、何とも言いようがない気持ちになる。

「まぁ、そのあたりを深く考えないほうがいいか」

 下手に考えるとわからなくなるし、現実と空想の区別がつかなくなるような事態になっても困る。
 ここはそういうものなのだと納得して、穏便に済ませたほうがいいだろうと判断する。

…まぁ、妖精以上に非現実的な変態とかもいたりするからなぁ。前者のほうがいてほしい感はあるのに、なぜか後者のほうが出やすいし、こんなところに原因があるのだと思えばいいか。





 それはさておき、ご近所にもばれず騒ぎになっていないのであれば、焦る必要もないし、難しく考える必要もない。

「それで、そもそもここに訪れたのが…ネアの主である僕のことを見るために来たということですか」
「ええ、そうよ。次期妖精女王をあの場で決めたのはいいけれども、既に誰かに仕えていた身と考えると大丈夫だったのかと少し疑問に思ったのよね」
「そこで、新婚旅行の旅路で寄り道として、この世界のこの星に我々は訪れたのだ」

 来た目的としては、ネアの主であるこちらの様子を直接目にしようということで、特に何かするということもない。
 まぁ、宇宙人とゲームの中の存在がそろって訪れてくるという状況に突っ込みどころしかないのだが、現状何も問題はなさそうだと思ってくれているようだ。

「しかし、どうやってアルケディア・オンラインからここに…いや、知り合いにいろいろあったが末にこっちの世界に顕現することになった人がいますけど、お二人とは事情が違うはずですし…」
「簡単なことよ」
「我々がいたあの世界…君からすれば、アルケディア・オンラインというVRMMOの中の仮想現実の世界だが、実はこことつなぐ路線があるんだ」
「え?路線?」

 かくかくしかじかと話を聞けば、どうもあのアルケディア・オンラインの世界には、何か隠された秘密がいろいろとあるらしい。
 その秘密の中で、この現実世界とつなぐ特殊な列車が走っているところがあるようで、それに乗っていくつか乗り継いで、この近くの駅にまで来てから徒歩でやってきたようだ。

「…そんなものがあるんですか」
「あったのよねぇ。まぁ、私たちは最初知らなかったけれども」
「なぜかある・・という認識がいつの間にか存在していたので、せっかくだから利用したのだ。どうもあの世界にはほかにもいろいろと仕掛けられているようだが…そこはまぁ、運営とやらの知るところでしかない」

 きなくさいような不穏なような、何か怪しい世界の秘密を垣間見たような気がするだろう。
 まぁ、そんなことを知ってもまだ直接何か影響を及ぼしまくるということはないようで、当分の間は気にしなくてもよさそうな感じも…いや、彼らが目のまえに来ている時点で、十分影響していないだろうか。


「箱庭、ドール…そしてそれらも介さずに現実に…うーん、何を目的としているんだろうか」
「わからないわねぇ」
「深く追求しないほうがいいだろう。まぁ、この世界に長居せずに元の世界の宇宙で旅行し続けるだけだから、そこまで気にするようなことでもあるまい」

 僕のことを直接見ていろいろ話すような目的は達成したので、長居する意味もないらしい。
 いろいろと突っ込みどころしかあふれまくる大きな謎を残しつつも、元妖精女王たちは徒歩でまた駅まで戻っていくのであった……


「結局、滅茶苦茶知らなくてもいいような世界の謎を、おいておくだけおいていって、帰ったけど…あ、もしかして運営から来ていたやばい客とかの知らせってこのことなのだろうか?」
「うーん、そうなのでしょうカ?確かにいろいろとやらかしてくれたようですけれども…この程度で、運営側がわざわざ主様に警告の連絡をしますかネ?」
「一個人に、ゲームの中でしか存在しえない、異世界からのお客が来るのも十分やばいことだと思うのだが…いやいや、これ以上とんでもないお客が来ることってないでしょ」

 そうだと思いたい、絶対にこれ以上超えるものが来ないと思いたい。
 ゲームの世界からのお客様の時点でかなりぶっ飛んだ話だし、これこそが運営からの警告に該当するお客なのだと、強く思うのであった……

「…異世界からくる以外に、もっとやばいのってあるのかな?」
「普通に侵略者とかですかネ?」
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