上 下
242 / 718
Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.0-33 使って見なければ、わからない

しおりを挟む
…色々あり、少なくはない犠牲が出たとはいえ、この星で得られた者はあるだろう。

「そもそも、犠牲に数えて良いのだろうか」
「あ、今お婆ちゃんから連絡あったわ。…ええ、犠牲に数えて良いって」

 ジェリアさんがそう告げたが、犠牲に数えて良いってことは…うん、まぁ深く考えないようにしよう。
 彼らの安寧を、永遠の眠りを祈るだけである。

「あやつら、永眠しそうにも無いんじゃがな…」
「可能性がありそうなのが、怖いんだけど」

 実際に、あの変態共が眠りにつく時があるのだろうか?煮ても焼いても食えぬ、まず食べるような奴もいないような、ゲテモノカイザーと言って良いようなあの人たちが、そう簡単にくたばるだろうか。
 いや、くたばることはないだろう。そうでなければ、今日まで雑草のように生き延びていることはない。
 そう考えるのはある意味酷いかもしれんが、あの欲望戦隊だと納得の結論になる…言って何だが、あれ本当に人間なのかと問いたい。欲望突っ走り過ぎて、獣以上の獣になっている気がする。




 そんな事はさておき、こうやって話している間にも深淵の底から彼らが這い上がって来てここに出現しかねないので、話を切り替える。
 元々、この惑星には、カイザーシルクワームさんに頼まれて、石材を確保しに来た目的があるのだ。
 ドラゴンだとかオーガとか、そんなものに巻き込まれてしまったが、きちんと当初の目的を僕らは忘れてはいけない。


「でもそういう事があったせいで、かなりあっさり手に入ったな‥‥これで、後は届けるだけでいいのか」
【シャゲシャゲェ】

 オーガたちに踏み荒された道を逆走し、あとは真っ直ぐに目的地に向かって採掘するだけで、目的の石材が手に入った。
 こうもあっさり手に入った事を考えると、あの騒動に巻き込まれたのは本当に損しかなかったか。

 しかし、それで結局は龍のテイムモンスターを得られるかもしれない召喚札を手にすることが出来た事を考えると、一概に害しかなかったとは言えないし…むぅ、複雑なところだ。


「何にしても、これで僕らの方も終わったけど、そっちは良いの?欲望戦隊が得たかったものは得られなかったけど」
「大丈夫よ。お爺ちゃんたちが欲しがっていただけで、またくればいい話だもの」
「当分は来られぬじゃろうけれどな」
「何で?」
「お仕置きもそうじゃが、あのドラゴン…ズドラーズドと言ったか。あやつの攻撃を受けて即死した場合、プレイヤーにかかる通常のデスペナルティが、更に重くかつ長くかかるからのぅ。再び来てもステータスががっつり下がっておったら、二の舞じゃろうて」

 それもそうか。また来ても弱体化してたら、同じような目に遭う可能性は非常に高い。
 また湖に毒物を投げ込んだりするような対処法を取っても‥‥


【今度したら、更にやばいのやるからな】
「具体的には?」
【あやつら、見る感じ無類の女好きだったようだが…ならばこそ、そういうものにとっての地獄へ送ることもできる。何も、プレイヤーが復活する場所はプレイヤー自身が決めた場所になると決まっておるだけでもないだろう?】

…そう言って、ニヤリと笑みを浮かべたズドラーズドを思い出す。次に同じようなことをやらかしたら、今度はお仕置きよりも酷い目にあうのが目に見えるだろう。
 流石、この湖の主…その座についているだけあって、対処はできているか。


 まぁ、その後はまた湖へズドラーズドは戻り潜っていったが…これで、今回はお別れと言ったところか。
 再び会うには毒物以外の何かがあるだろうし、今回の縁は大事にしておこう。


「後は、この星から去ってカイザーシルクワームさんの元へ帰ってクエストを達成するだけど…ふと気が付いたんだが、ジェリアさんとアティさん、帰る宛はあるの?」
「個人用の宇宙船を持っているのよね」
「あ奴らの元に、一人で乗り込みたくないからのぅ…ゆえに、別れて乗船していたのじゃ」

 なるほど、脱出できないことはなかったと。欲望戦隊が全滅したからこの星から移動できなくなっているんじゃないかと思ったが、その心配は杞憂だった。
 ならもう、特に気にするようなこともないかな。

「それじゃ、ここで僕らの方も石材を取り終えたし、帰還するだけか…せっかくだし、最後にちょっと試してみようかな」
「ああ、召喚札のことね。いいわね、私達のほうも試してみましょうか」
「むぅ、プレイヤーしかもらえぬのがちょっと残念じゃが…まぁ、帰る前に見るのも良さそうじゃ」

 せっかくなので、ついでの用事として今回得た召喚札を使用し、新しいテイムモンスターをこの場で得るのも悪くはない。
 相性とかその他事情も考慮して、テイム可能なモンスターが出てくるというが、何が出るのかは出してみるまで分からない。ソシャゲで言う所のガチャに近いが、テイムモンスターが出るのは確立としては悪くはない。


「外れしか出ない大爆死よりは、十分マシかな?」
「そうかも。ああ、お爺ちゃんたちがこれを得ても、駄目だった可能性もありますし、私が取ってよかったかもしれませんね」
「え?何で?あの欲望戦隊、確かに女運とかは無さそうだけど、しぶとさとか見ると、そこそこ他の運はありそうなんだけど」
「‥‥0が7ケタ分ほど、あるソシャゲにつぎ込んで出てきたのが全て激辛料理系しかなくて、狙っていたキャラを全く出せなかったという記録があるの」
「‥‥そりゃまた、何とまぁ」


 何とも言えない、爆死の話。
 そういや昔の友人で、重課金大爆死者がいて、株に手を出して儲けを出して、それをつぎ込んでも全くできなかった奴がいるが‥‥うん、まぁ気にする必要もあるまい。

「とりあえず、そんな話も星の彼方へ投げ込むとして、今はこっちの召喚札の方を使って見ようか」
「そうですね。そっちはドラゴン系が確定みたいですが…さて、私の方は何が来るのかしら」

 大損する人の話は何処かへ葬りつつ、今はこっちの召喚札を利用する。
 使用者に合わせたようなテイムモンスターが出ると言うが、何が出るのか。個人的にはこう、背中に乗って飛び回れるような奴が良いなぁ‥‥あ、でも竜じゃなくて龍だと、ちょっと漫〇日本〇話のOP風のような…もっと違うのもあったか。
 あるいは、黒き女神のスキルが影響して邪龍とか黒龍とか、そういうのが出てもいいかもしれない。ああ、でもマリーたちの例もあるし、女性型が出ても…うん、その可能性はそうそうないと思いたい。竜人とかそうそう聞く話はないと言いたい。


「さて、それじゃ同時にやってみようか?」
「ええ、ではいっせーので…」
「「それっ!!」」


 同時に召喚札を取り出し、使用した瞬間、札がカッとまばゆい光を放つ。
 それと同時に、黙々と煙が噴き出し、視界が少し奪われ‥‥札が破れる音がしつつ、ニュルっと何かが飛び出した影が見えた。

 そして、煙が晴れて、その姿を現す。

【ペェェェェェェン!!】

 ジェリアさんが使った札から出現したのは、物凄く大きなモヒカンを持ったペンギン。
 いかついサングラスを掛けつつ、ペンギンだけど白黒じゃなくて白黄色の体色をしており、背中には太鼓のようなものを背負い、バチを持っている。

―――――
『サンボルトペンギン』
3Vとも読めなくもないが、実際のところそれ以上の電圧を持つ、電気のペンギン。
電撃を操ることが可能なペンギンで、背中の太鼓を鳴らすことでより高圧・高威力な電撃を発生させ、周囲一帯を痺れさせることが出来る。
なお、今回呼びだされたのはネームドモンスターであり『ボルティア』という名前を有している。
―――――

【ピュイィィィィ!!】

 一方で、僕が召喚したほうはドラゴン系…何だろうけど、ちょっとほっとしたところがあった。
 人型でも何でもない…これ、ドラゴン?

「なんか、真っ黒な霧みたいな姿をしているんだけど」
「あやふやというか、つかみどころがないかも」

―――――
『邪龍幼体霧』
ドラゴン族の中で、邪龍の一族に連なる竜の幼体。
おぼろげな存在でもあり、成長することによってよりはっきりとした姿を保てるようになる。
存在意義が確定するまでは実態を持つことが出来ず、本来は黒い霧のような姿で自然界を漂うだけの存在でもある。
なお、今回呼びだされたのはネームドモンスターであり『シア』という名前を有してる。
―――――

 なるほど、まだ実態があるという訳でもない感じなのか。
 自分の進化先によって姿が確定し、そこで実体化するような…うーん、どちらかと言えば、ファンタジーとかにあるような自然の意志とか、そういうのに近いものなのだろうか。


「何にしても、これはこれでよかったかもしれない…そう、マリーたちと違ってしっかりと存在意義をちゃんとした竜の方向に出来たら、良い感じのモンスターに育つだろう!!」
「でもなんか、ハルさんのことだし、うっかりやらかしてゴスロリ系の小さな女の子の竜人にしかねない気もするのだけれども」
「その可能性はありそうじゃような。面子的に、どういう方向に育つのか目に見えそうなんじゃが」
「いやいや、そんな未来はないと思う…多分。なったらなったで、今度は欲望戦隊に狙われかねないしなぁ」

 アリスの時の例もあるし、そんな方向性になってほしくはない。
 まぁ、なったらなったでそんなことを欲望戦隊がやらかした時は、全力逃亡か黒き女神第3形態で殲滅か‥‥前者の方が良いな。後者でも殲滅できそうだけど、なんか生き残りそうな気がする。

 そんな事を思いつつも、最初から普通の黒い霧っぽい姿のシアに、何となく久し振りにまともなモンスターを手に入れたことに、ほっと安堵の息を吐くのであった…


「ゴスロリに300ALね」
「ならダークエルフ風な感じになるのに450ALじゃ」

「賭けをしないで欲しいんだけどなぁ‥‥」
しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...