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Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.2-72 こういうのは、普段やることはないのだが

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‥‥‥魔導戦艦グレイ号は現在、改装作業中のためあちこち作り直されているところがあるのだが、必要なシステム自体は支障なく扱えるようになっており、大規模な治療が必要なものだとしても医務室が問題なく利用することが出来るのである。

「とは言え、砕け散らないように慎重に運び入れたとはいえ‥‥‥大丈夫かな?」
「シーサーとロロが治療を行っているけれども、あの状態を見るとかなり不安になるのよ」
「この船内にどこからツッコミをいれるべきかと思うが‥‥‥ハルさん、その妹さん。駆けつけてくれてありがとう」
「いや、こっちとしては色々と事情があって面識ある相手が、今にも逝ってしまいそうな状態なのは複雑なものがあるからね。連絡をくれて、むしろこっちの方が助かった」

 中三病さんが彼女‥‥‥現在、治療を受けている鏡面ののじゃロリことここで名乗っていた名前はアティというようだが、そんな彼女と作り上げた島に向かい、現在の状況に関してお互い情報を交換し合う。
 まさか、あの色々と騒動を引き起こした末に、現実世界に逃亡‥‥‥いや、変態共の底力のせいで色々と地位を確立させられてしまったはずのアティが中三病さんと共にいるとは想像もしていなかった。
 しかもそんな彼女が今、全身がまるで鏡が砕け散る寸前のようにひび割れた状態で意識不明の重体になっているとは、一体何がどうなっているのか。

 とりあえずお互いに情報を交換し合い、どういう事情なのか確認を取る事が出来た。
 僕らの方では敵対しつつ逃亡された相手として、中三病さんとしてはこの島を共に作り上げた友としての事情があるようで、お互いに複雑なものになっているらしい。

「というか、あの可愛いのじゃロリな巫女さんの身体を奪ったままって‥‥‥なんてうらやま、いや、ずる、コホン、酷い事をしているのよ。同じような姿をしているからって、やり過ぎな部分があるよ!!」
「色々と本音が漏れているんだけど?」
「嘘じゃないから良いの!!これで全快したら、罰として全身ぎゅぎゅの一緒にお風呂の添い寝をしてもらう刑を受けてもらうの!!」

 それは確かに、鏡面ののじゃロリことアティにとっては悲惨な罰になりそうではある。妹にとっては罰を与えるというよりも単純に私利私欲を満たしたいだけにしか思えないのだが、ツッコミをいれたところでどうにかなる事ではない。

 そんな事はさておき、事態は中々不味い状態になっているようだった。

ウィィィィ、プシュゥゥゥゥ
【‥‥‥ふぅ、どうにかある程度済みましたネ】
【ぐぅ、元々使用人としての技量ついでに医術も心得ているとはいえ、結構厳しいものだったゼ】

 扉の上にあった明かりが消え、中からロロとシーサーが出てくる。
 結構大変だったようで、血色がよくないのだが、ひとまずは山場をなんとか乗り越えてくれたようだ。

「ロロ、どうだった?」
【うーん、難しい状態というか、今は一時的な応急処置にしかならないというか‥‥‥ひとまずはすぐに消滅をする危機だけは避けられまシタ】
【使用人の間でも伝達されていた、通報を伝えられているNPCコード367-Rだったが、人道的理由から通報よりも治療を優先したゼ。本来ならこのまま放置して消去の方が正しいのかもしれないが、主っちとその兄っちからの頼みだから、全力を尽くしたのだゼ】

 汗をぬぐうようにしながら、そう答える使用人たち。
 話しを聞いてみると、どうやらあの鏡面ののじゃロリの状態としてはかなり最悪な状態にあったようだが、なんとか崩壊しないようにつなぎ合わせることぐらいなら出来たそうである。

【とは言え、完全に治ってないのデス。死期を延ばした程度にしかなっていないのデス】
【大事なブラックボックス部分が、修復不可能だしなぁ‥‥‥一介の使用人に過ぎない俺っちたちでは、どうしようもないのダゼ】
「ブラックボックス?」
【早い話が、核のようなものですネ。このオンラインの中で生きとし生ける者たちの、重要な部分。基本的な肉体構成などのプログラムがぎっしり詰め込まれたもので、他社にまねされないように保護を掛けられているのデス】

 説明を聞くと、アルケディア・オンラインのシステム上、他の企業が入り込んで色々と探ることもあるらしい。
 ファイアウォールやその他防錆システムがあるとは言え、ある程度真似してパクろうとするようなところが出るのを防ぐことが難しいのだ。

 そこで、パクられるのを防ぐために大事な部分を徹底的に保護しまくった結果生まれたのが、ブラックボックス。
 そのNPCやモンスターを構成するために必要な情報をこれでもかと詰め込んでおり、逆に言えばこれが暴かれるとそれこそ色々と危ない部分があるのだが、本来であれば壊れないように・・・・・・・なっているのだという。
 だが、それなのにその部分が壊れているのは何故なのか。
 それは、先日の無茶な現実世界への逃亡が原因のようで、相当な負荷がかかりまくった結果、ブラックボックスに深刻なダメージを受けていたようなのだ。

「そして今、その限界が来て崩壊し、同時に大事な部分が壊れてしまったからあの状態になったという事か‥‥‥」
【そういう事デス】
【ブラックボックスのダメージは自覚しづらいんだゼ。大事な部分とは言え、それがいきなり砕け散るならまだしも、少しづつ壊れると発見しづらい‥‥‥普通の体調不良やバグならばまだわかりやすいが、大事な部分程沈黙した状態で分かりにくくなるのだゼ】

 要は人間の肝臓や膵臓などが病気になった時にわかりにくいように、大事な部分だけど壊れていくことに気が付きにくいのだとか。
 その為、抜き打ちでのメンテナンスがアルケディア・オンラインの内部で密かに行われており、万が一の事態にすぐに気が付けるはずだが…‥‥このアティはそのメンテナンスすらも潜り抜ける様なプログラムで自己改造で施しており、発覚した時にはもう手遅れな状態だったそうだ。

【とは言え、ここまで壊れるとブラックボックスの方から実は信号が出されるのデス。その為、既に運営の方では確実に分かっているでしょうが…‥‥】
【強制消去命令が出ているようなNPCとは言え、壊れているのが分かるのならば最後の慈悲として放置したのだろうゼ。ここまで壊れていると、もう治しようがないから放棄したともいえるが‥‥‥】
「…‥‥」

…‥‥正直な話、色々な迷惑を鏡面ののじゃロリにやられてきたので、この末路に関して多少は納得できるところはある。
 でも、元はと言えば運営があのウルトラスーパーデラックストラブルメーカーが倍増しそうなのを分かっていそうなものなのに、鏡面世界を作ったことで彼女は生まれたのだ。
 そして様々なミスや要因が積み重なった末に自ら動き、やらかしまくったが…‥‥元凶をただせば、運営の方にあるとしか言えないようなことに、内心いらだちも覚える。

「放置するだけ放置して、いざとなれば消すために動き、結局は放棄…‥‥運営は人の心がないのか?」
【ないと言えばないデス】
【それ、俺っちたちが言って良いことなのかだゼ?】
【いや、いっていい事だと思いますヨ。私も前々から、思っていたことですかラ】

 ロロが賛同したなと思ったが、どうやら彼女の方も思うところがあったらしい。

【もともと私が主様の元に来たのも、運営側のやらかしなどが積み重なった結果もありますしネ。そこそこ長い付き合いになっているのですガ、主様が一番運営に振り回されることが多いので、文句の一つや二つ、言って良いと思うのデス】

 言われてみればそうである。
 様々なことがあったが、一番振りま割れているのは僕だと言っても過言ではないからなぁ‥‥‥マリーから始まったモンスター娘のような進化や、セレアの時のERROR。のじゃロリの自由気まますぎる動きと付けられたスキルで結果得てしまった女体化などのスキルなど、様々な文句を言いたいことが積み重なりまくっており、一発ガツンっとやってやりたく思うこともあるのだ。

「そう考えると、本当にいら立ってきたというか、少々治療できてもどうにもならない鏡面ののじゃロリをどうにかしたくなってくるというか…‥‥責任を果たさせたいな」
「でも、どうするのお兄ちゃん?」
「少々気は進まないところはあるけど‥‥電話するか」
「電話?別に良いけれど何に‥って、まさかお兄ちゃん」

 どうやら妹はすぐに、何をしたいのか理解したようである。
 正直言うと、僕自身はそんなに権力欲などもないし威を借るようなこともする気はない。
 だが、使える時に使わなくて後悔するぐらいならば…‥‥そんなことを気にしている意味はない。

「ちょっとハルさん、何するんだ?運営に直接電話しても、電話応対の人が出るだけで何もならないと思うのだが?」
「いやいや中三病さん。僕自身が運営にかけるわけじゃないよ。というかやったところで、一般市民に過ぎない一顧客の電話で、大企業がそう動く訳もないじゃん」
「ならどうする気だ?」
「‥‥‥‥威を借るようなことでもないけど、動かえそうな人が身内にいるんだよ。ひいがたくさんつくような人だけど‥‥‥いや、人かな、アレ?」

 人じゃなければ人が産まれることはないとは思うし、多分人だと思いたい。
 そういう部分もあってちょっと相手にし辛いというか、繋がるか多少怪しいが、大丈夫だと信じるしかないだろう。

「しいて言うならば、どこに繋がっているか分からないし、国際電話にでもなっているのか後々バカ高い電話料金がきついけど…‥‥そこもお願いしてどうにかしてもらっておこう」


「なぁ、ハルさんの妹さんとやら。彼はどこに電話するんだ?」
「んー‥個人情報を話すと不味いから色々と言いづらいけど…‥‥お兄ちゃんが電話する相手を例えで言うなら、ツァーリ・ボンバーみたいな人かな?」
「何だそれ?」
「水爆」
「‥‥‥‥本当にどういう人なんだ!?」

…‥‥うん、そう叫びたくなるのも分かるけど、多分その例えであっているんだよなぁ。あの人、一回本物の宇宙人とか怪獣とか最強の悪魔とも戦ったと言われているけど、眉唾ものとは思えないようなものなのが怖いんだよねぇ。
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