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Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.0-17 逃げ損ねているので、ぐぐっと

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――空の世界でもある天界にも、海はある。
 でも、そこは水が満ち足りた場所ではなく、あるのは‥‥‥

ザッバァァァァァン!!

 雲海を突き抜けて物凄い勢いでの水しぶき、いや、雲飛沫が宙を舞い、そこに一隻の船が浮上したのであった…‥‥



【ワープ完了デス。ハウスシステム内から、天界・表門近くの雲海へ浮上しまシタ】
「すっごい勢いで、雲が吹っ飛んだなぁ‥‥‥」

 魔導船もとい魔導戦艦へ変貌したグレイ号の試運転という事で、とりあえず適当な場所として展開を選んでみたのだが、どうも新しくついた機能のワープというかルー〇のようなものには制限があったようだ。
 一度訪れたフィールドに瞬時に移動することが可能だと言うが、一応あくまでも船であり、できれば水辺の近くに出現するようになっているらしい。ないなら可能な場所が自動的に選択されるそうだが、今のところ天界ではそこまで奥深くまで探索していないせいか、天界門近くの雲海に出たようである。

「うわぁ、お兄ちゃんの船に乗ったけど、凄いかも‥‥‥門までかかる時間も飛ばして、あっと言う間だったの!」
【手伝ったとはいえ、この船自体の性能が凄まじいゼ。一体どこで、こんな船を手に入れたんだゼ?】
【そこは色々あったのデス。まぁ、元々船を手に入れた目的としては、魔界の方で諸事情があったのですが‥‥‥後は自力で入手したほうが良いですヨ】

 甲板に出て、周囲の光景を確認しながら僕らはそう口にしあう。
 安全も考えて艦橋に入っていたが、平常時であれば甲板に出ていても特に問題もなさそうだ。



「それにしても、天界門近くとは言うが…‥‥それでもちょっとキリがあるから、気が付く人はいないかな?」
【念のために、艦全体が遠方から見にくいように、雲に紛れられるスモークを焚いていマス。主様は目立つのを好まれないので、事前に用意しておきまシタ】

 用意が良いなぁ、このメイド。でもまぁ、確かにはでな雲飛沫が上がったが、直ぐに黙々と薄い煙が全あ値に漂って来たので、そうそうみられることはないだろう。

【ちなみに、このスモークは先日の裏魔界突入時の経験で、いざとなれば目隠しして逃走するのにも役に立つはずデス】
「あ、そこの対策もしていたのか」
【ハイ。船の攻撃力が増大したとはいえ、それでも逃げなければいけない事態が発生することを想定して、逃走用の様々な仕掛けも増やしておきまシタ】

 戦艦と化したことで大きなモンスターが出現しても、主砲をぶちかませばふっ飛ばせないことも無いが、それでもここはアルケディア・オンラインの世界。
 どう考えても斜め上の対策を運営が練っていないわけもないし、逃げるための手段がいくらあっても困ることはないのである。

‥‥‥そもそも、この戦艦で戦うような事態はそうそうないとは思うしな。あのドラゴンとの逃走劇は例外だが、追いかけられるようなことはそんなにあるまい。




 とにもかくにも試運転の一発目は成功したようなので、今はとりあえず天界の地に降り立っておく。

【ヨーヨーヨー!】
【ヨー!!】

 ウッドからアイアンへ変わったマリーンズたちに船を一旦任せ、僕らは下船して天界探索へ向けて歩くことにする。
 放置しても大丈夫なのか、そのあたりの試験も兼ねてだが…‥‥


「ところでのぅ、そろそろ開放してくれないかのぅ?」
「ダーメ、絶対に逃げるもん!!」
「逃げるしかないじゃろ!!そもそも自分、エルフの住みかの方のNPCなんじゃけど!?無理矢理連れてこられて振り回されているこの状況、現実世界じゃと誘拐拉致監禁じゃろうがぁぁぁぁぁぁ!!」

 ぐるぐると、逃れられないように厳重に拘束しつつ、ニコニコとのじゃロリを抱きしめるトーカ。

 ここで逃げたら、再来訪時に確実に姿を見せなくなると理解しているようで、ならばその前に逃げられないほどガッチガチに固めてしまえと思ったのだろう。

 我が妹ながら、思い切りが良すぎる行動が怖ろしい‥‥‥うちの家族、変な部分で飛びぬけた人が多いけど、トーカの場合は可愛いものを前にした行動が無茶苦茶すぎるのだからどうしようもない。


【まるで主様は全然関係ないと言う様な目をしてますネ】
「だって本当のことだからね…‥‥まぁ、うちの家族は色々特殊だと思ってほしい。というか、ゲーム内で遭遇することが無いように願いたい」
【シャゲシャゲェ】

 遠い目をしてつぶやいた言葉に、何となく察してくれたのかテイムモンスターたちがポンッと肩に手を載せてくれる。
 いや本当に、僕の現実の方での家族は色々あり過ぎて…‥‥就職して早々、実家を出て一人暮らしにしている理由なのはそれが大きな原因であるという事は否定しない。まだ存命のお婆ちゃんあたりは確か、石油を掘り当てようとしたら鉱山を掘り当てまくったという逸話があるぐらいだしね。結局石油を得られずに世界を股にかけて活躍する大社長になった人だが、今は気にすることも無い。



 とにもかくにも、天界のほうに再び訪れたのは試運転以外にも訳も合って、一応魔界ほどまだ探索をしていないので、ある程度もっと探索を進めようと思ったのだ。

「さてと、船の方はマリーンズたちにまた後で迎えに来るように任せて‥‥‥トーカ、天使たちが住まう町でも、もっと大きなところがあるって調べておいたし、行ってみようよ」
「うん!いくいく!!そこにはもっと、可愛いものが良そうだもの!!」
「ならその前に放してほしいのじゃがなぁあぁぁ!!」


 びちびちとまな板の上のコイのごとく跳ねて逃走を図ろうとするも、まったく逃れられない状態ののじゃロリ。

 一応、彼女のあの哀れすぎる姿を見て少々同情したので、逃れられるようにより大きな餌を用意しようと思ったのも、ここでの探索を決めた理由でもあった…‥‥ネットで見た情報だと、確実にトーカに食いつきそうなものがあるだろうし、それさえあれば解放されると思いたいなぁ…‥‥


【スノー!!スノノ!!】
「おー、コユキ喜んでいるなぁ。生まれて早々、珍しいものを見て興奮しているのだろうか」
【この状況で動じず、全身全霊で楽しめているのは大物感がありますネ】

‥‥‥宙を舞い、くるくると回って喜んでいるコユキを見て癒されておこう。生まれたての子供と言うのは、本当にかわいいものだ。

【でも、主様の家族の話を聞くと、主様も何かしらおかしなものを持ってないでしょうカ?というか、私達が言うのもなんですガ‥‥‥】
【ガウガウ】
【バルルルゥ】

 それは聞いてないふりを通す。


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