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Ver.3.0 ~動き始める大きな世界~

ver.3.0-10 魔法少女、お約束事?

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「うわぁお、お兄ちゃんがまさかお姉ちゃんに‥‥‥いや、これはこれでありね!!」
「絶対に、他の奴らには言うなよ?もし言ったらそうだな…‥‥母さんのお気に入りのバッグを勝手に使って、うっかり中にジュースをぶちまけた処理に関して、暴露するからね?」
「絶対に言いません!!」

 ぐっと指を立てた状態から一転し、びしっと身を引き締めるトーカ。

 そう、僕は今魔法少女のクエストをするのに必要な装備品を着ているのだが、いつもの男性アバターではなく、黒き女神のスキルを使用した姿になって、女性としての状態で着用しているのだ。
 見た目的に「少女」と言うにはちょっとズレている気がしなくもないが、ギリギリセーフだと思いたい。いや、そもそも魔法少女用の衣服を普通に堂々と着こなすゴリマッチョな人などもいるから、このぐらい多少の誤差なのかもしれないな。しかし、こうひらひらした衣装と言うのは現実で着ていないと分かっているとはいえ、やはりちょっと違和感がある。

―――――
>特殊クエスト解放用の衣装装備の一つ、「魔法少女ダークネス」の着用が確認されました。
>『天使を救え魔法少女たち!!』というクエストが解放、時間経過・場所移動によって下っ端戦闘員たちとの戦闘が発生します。

『天使を救え魔法少女たち!!』
魔法少女となった者たちに課せられる、特殊な使命。その使命の一つとして、彼女達には天使を救うものがある。
さぁ、天界に赴き、天使たちに害を与えかねない闇の組織『イーファイブ』から派遣される下っ端戦闘員たちを撃ち倒し、平和を守るのだ!!

報酬:初回限定『モンスターの卵(ランダム)』。報酬を受け取った後、時間経過で孵化してテイムモンスターとして加わってくれます。ランダムなので何が出るのかは不明ですが、アルケディア・オンラインの世界で友として、家族として、心強い仲間として過ごすことが出来るでしょう。
なお、ランダムとは言え一応種族の強さも考慮して、ある程度のランク付けがされています。
―――――

「本当に発生したけど…‥‥これ、受け取る卵のモンスターって本当に大丈夫だよね?」
「どういうことなの?おにい、もといお姉ちゃん?」

 なんかこう、魔法少女の使い魔のイメージを考えてこの報酬が出来たんだろうけれども、何となくいいイメージが少ない気がする。
 なぜかは分からないし、にわかだけど有名なのがいるせいなのか…‥‥うーん、でもまあ、上限も増えているからできても問題ないか。




 そう思いつつ、どうやらクエストがきちんと動くためには天界に向かう必要があるようなので、天界門・表をくぐり僕らは天界へ訪れた。
 雲の上のこのフィールドは平和のようだが、それでもこんな意味不明な組織が出る事を考えると、凄く平和って訳でもないのかもしれない。まぁ、魔界は魔界で弱肉強食の世界だったから、こっちでも何かとんでもないものが隠されていてもおかしくはないかな。

「っと、来たよお姉ちゃん!!」

 念のためにバレるのを防止する目的で姉として呼ばれているが、トーカが言うと同時にログの方に表示が出てきた。

―――――
>緊急事態発生!!ココから南西の方にある天使の村に、イーファイブの下っ端たちが出現!!
>付近の魔法少女たちはすぐさま出動し、殲滅を開始せよ!!
―――――

 そう言えば、魔法少女用のクエストだというのに、なんか物騒な感じのログなんだよなぁ。

「そこは気にしなくてもいいの!!ほら、他の魔法少女なプレイヤーたちが気が付いて、直ぐに向かっているわ!」
「あ、本当だ。良く見たら同じような魔法少女コスチュームの装備になっている人たちが案外多い‥‥‥そして変態のような風貌になっている人も多いなぁ‥‥‥」

「うぉぉぉぉぉぉ!!卵卵卵ぉぉぉぉ!!」
「魔法少女魔法少女魔法少女!!」
「はははははは!!すっきりしてきもちがいーーーーー!!」

…‥‥これ、魔法少女用クエストだよね?新しい変態発掘クエストじゃないよね?





 色々と不安を抱えつつ、駆け付けてみればそこには話に聞いていた下っ端たちとやらが暴れまわっていた。

【イーイーイーイーイー!!】
【イーイー!!】
【イイイイイイイイイイイ!!】

「うわぁ、コッテコテの全身真っ黒下っ端団員だ」
「ふふふ、全滅させて卵を得るよお姉ちゃん!!」

 出る場所、ライダー系の何かと間違えていないかなと思うツッコミはさておき、周囲では他の魔法少女(?)たちが下っ端たちの殲滅作業を始めていたので、僕らもすることにした。
 とは言え、テイムモンスターたちを引っ込めている状況なので普段とは戦い方が違うのだが、どうやらこの魔法少女クエスト中にこのコスチュームだと攻撃力が自然と増加するらしく、珍しくソロで戦いやすい状態となっている。

「でも、範囲攻撃がないとなかなか面倒!!スキルはそのまま使えるから、使えるものは全部使って片付けるわよー!!『ナイフ・レイン』!!」
 
 ぶぉんっと、トーカがナイフを上に投げたかと思った次の瞬間、大量のナイフの雨あられが下っ端たちに襲い掛かる。

ドドドドドザクザクザクザクゥ!!
【【【イイイイイイイイイ!?】】】
「えげつない攻撃なんだけど!?」
「道化師の職業で極めたジャグリングが、何をどうしてかこんな攻撃に転換されたのよ!!なかなか便利だけどね!!」

 ただし、範囲攻撃とは言え一回の攻撃に付きナイフ一本がロストするようなので、予備の購入でちょっとコストがかかるらしい。便利な反面きちんとデメリットもあったようだが、これはこれで楽ができそうな気がする。

「けど、妹ばかりに任せては兄としての立場が廃るかな?ここはこちらもやらないと!」
「今はお姉ちゃんよね?」
「細かいのは別に良い!!とりあえずこっちはそうだな、ルトの電撃でどうだ!!」

 テイムモンスターの持つ能力を使えるスキルもそのまま使用できるようなので、思い切って範囲攻撃向けのものをやりまくる。

 電撃に、毒ガス、そこに火を出しての着火で大爆発と、普段と戦法があまり変わらない。

 でも、どちらかと言えばこっちの方が魔法を使って攻撃しているようで、魔法少女の魔法部分をしっかりと強調できているのではないだろうか?

「おおお!!お姉ちゃん凄い!!なんでそんな攻撃が出来るの!?おっぱい大きいから!?」
「胸の大きさ関係ないよね!?」

 確かにこの黒き女神のスキル、ちょっと大きくなるけど攻撃範囲と関係ないよ!!


 そうツッコミをいれつつ、他の魔法少女(?)たちも殲滅作業を行っていたので、徐々に下っ端たちの数が減ってゆく。
 このままあっけなく、全滅させて終わりかという空気が流れていた…‥‥その時だった。


【イーイー!!イイイイイイイ!!】
【イ!?イィィィィィ!!】

「何?下っ端たちの様子がおかしくないかな?」
「本当ね?何か慌てているような‥‥‥」

―――――
>‥‥‥本日も敗色濃厚な気配がする中、上司たちが報告を聞き見かねたらしい。
>下っ端たちの数が一定以上減り、魔法少女クエストに参加しているプレイヤーの数が一定数を越え、同時に合計レベルもある程度達したので、解放されました。

>緊急クエスト!!『イーファイブの中間管理職』もとい『欲望五人衆』を討伐せよ!
―――――

 突然ログに流れ出した新しいクエストに、周囲の魔法少女(?)たちは驚き始める。

 どうやら今まで見たことが無かったようで、突然発生したクエストに身構える中、その五人衆とやらが雷鳴と共に出現した。


ドンガラガッシャァァァン!!

「‥‥‥ふはははははは!!ふがいないふがいない、下っ端どもよ今日はもう帰って休むが良い!!」
「下の者の後始末ならば、上の者がしっかり拭うのが世の務め!」
「そして見よ、魔法少女たちよ!!我々がお前たちの相手を今からしてやろう!!」
「抗えるなら、抗って見せろ!!」
【ブモーーーーー!!】


 黙々と土煙が立ちこめるなか、影が映りだし声が流れ出す。‥‥‥でも何でかな?なんかこう、ものすっごく聞き覚えのあるような感じがするぞ?

「さぁ、魔法少女たちよ、その浴びせる様な目を向けよ、その可愛らしい姿を見せてほしい!!変なコスプレマンとかはどこか行ってくれ!!」
「女子いるところに我らあり、そしてどうか相手をして欲しいのぅ!!」
「色々と落ちたけど、今が一番幸せなのかもしれない!!」
「でもまぁ、面白いから良いんじゃない?」
「「「「我ら、戦隊改め欲望五人衆!!ここに見参!!」」」」
【ブモォォォォ!!】


 土煙も晴れ、姿を表した五人衆。けれども、その姿は初めて見るものではない。
 以前のカラフルな色合いから一転し、全員真っ黒なカラーに染色されなおし、剣などを構えてはおらず全員大きな趣味の悪そうなおばちゃんの顔がプリントアウトされた盾を構えているが、どう見たってあれはそう…‥‥欲望戦隊だ。


(何やってんのあの人たちはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)

 叫んだら多分バレかねないので、心の中で僕はそうツッコミをいれるのであった…‥‥



‥‥‥戦隊も堕ちるところに堕ちて、悪役となったのか。でも、語呂的にはこっちのほうが良いかもしれない。
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