上 下
122 / 718
Ver.2.0 ~広がる大海原の世界~

ver.2.6-59 表があるならば、裏もある

しおりを挟む
‥‥‥まさかのクリムゾンクリスタルドラゴンの襲撃を受け、今はどうにか逃げ延びれたことに関して喜びたい。
 いやまぁ、面子的に全力を振るえばどうなったのかは分からないが、それでも大損害を被るような可能性も否定できないので、逃げた選択肢は間違っていないと思う。


「けれども、今の状況の方が余計にピンチな様な…‥‥皆、無事かー?」
【シャゲェェ!】
【ガウガーウ!!】
【ギャビィィ!!】
【バルルル!!】
【オォォォン!!】
【【【ヨーヨー!!】】】
【無事といえば無事ですが、これでよく全員五体満足で助かりましたね…‥‥奇跡と言ったほうが良いぐらいデス】
「まぁ、そうだよね。だって船がなぁ…‥‥」


 魔界の空は黄昏時のはずだが、今の周囲は真っ暗である。そのため現状の確認のために明かりを取り出してみれば、惨状が広がっていた。

「船が思いっきり突っ込んだというか、あちこちボロボロというか…‥‥まだ改装して間もないのに、あっと言う間にボッコボコになっているんだけど」
【一応、船体機能に支障は無いようデス。船の意識自体は気絶しているようなので稼働不可能ですガ、それでも修理は可能でしょウ】

 改装した魔導船グレイ号は今、崖に突き刺さっている状態。ついでに意識があるらしいが気絶してしまった状態で動かないようである。
 そう、今僕らは何処かのわからない断崖絶壁に、船が突き刺さった状態でその甲板に乗っているのだった。




 ログを見直してみれば、どうやらあのドラゴンの攻撃によって影響を受けたのか、魔界の門に変化が起きて魔界の裏へ繋がる門が解放された状態となり、そのまま突っ込んだようである。
 一応、魔界の門の通過はできないのかドラゴンは振り切れたのだが、車は急に止まれないように魔導船も急に停止はできず、勢いそのままで突っ込み、何処かの崖に正面衝突をしたのだ。


「衝撃もすさまじかったけど、乗組員が全員無事なのは奇跡的な確率かなぁ」

 でもそんな奇跡が起きるならば、こんな場所に来たくなかった。

 周囲が思いっきり暗く、不気味な鳴き声も聞こえてくるが…‥‥どうも、魔界の裏の世界らしい。門の名前に「表」があるから裏もあるだろうと想定は出来ていたけれども、こんな形で裏に飛び込む気はなかったよ。



 

 何にしても、今はこの状況をどうするべきだろうか?断崖絶壁の崖に船が突き刺さっている状況だが、どう考えても不安定すぎる状態。
 ちょっとでもバランスを崩せば崖から落下するのが目に見えており、船が気絶している今は飛行することもかなわないようで、全員一緒のひも無しバンジーを味わう羽目になるだろう。

「そもそも魔界の裏ってどこなのか‥‥‥」
【あ、何やら解放されてマス。到達したことでシステムのロックが解けたようで、解説できマスヨ】

 使用人として雇われているロロだが、使用人自体のシステムはこのアルケディア・オンラインのもの。
 
 そのせいなのか最新の情報はすぐにつかめるようになっていたようで、裏の魔界の情報もすぐに知ることが出来た。

―――――
『裏魔界』
表の魔界は弱肉強食の世界。けれども、裏の魔界はそうではない。
ここは表には無い静寂が支配し、太陽の光が注ぐことも無く、深い闇の中に囚われたままの世界。
出現するモンスターもより凶悪なものが多いのだが、闇の中に潜んで静まり返り、ほんの一瞬だけ喧騒があったとしてもすぐに沈められてしまうだろう‥‥‥
―――――

「怖っ!?」

 静まり返るって、それどう考えても無理やり静かにさせられているやつじゃん!!弱肉強食なのも恐ろしいけれども、問答無用で静められるような世界ってのも、なんか怖いぞ。
 あ、いや、ちょっと待って?今の僕らも喧騒というかちょっと騒いでいるのだが‥‥‥もしかして今、相当不味いのでは?

【オゴォォォォォォォォォォン!!】

 ふと、感じ取った嫌な予感。
 次の瞬間、何やら非常に大きな鳴き声が聞こえ、その声の方を振り向けば、闇夜の中でも分かるような真っ黒な怪物たちが目を光らせ、船の横を飛んでいた。

‥‥‥どうやら今、静かにするためのモンスターたちが到着したらしい。これだけ騒いでいたら嫌でも目立つし無理もないが、こんな状況でやってきてほしくなかった。

 早速僕らは、この裏魔界の洗礼を浴びる羽目になるのであった…‥‥









―――断崖絶壁の場で、ハルたちが洗礼を浴びせられていたその頃。

 裏魔界の一角では、ある連絡が届いていた。

「…‥‥いや、それ完全にこちらのミスですよね?というか話から聞くとここに来ている可能性もあると」
「そうなるな。なので、やばいことになる前にすぐさま保護を頼みたい」
「はぁ…‥‥まぁ、分かりました。といっても、直接手が出せないので、ここは別のものを遣わしても大丈夫でしょうか?」
「問題ない」

 動けないのにはそれなりの理由があり、だからこそ普段はこういう時に使わないものを活用できる。

 許可をもらい、直ぐに彼らは動き出す。

「…‥‥そうね、せっかくだからこの子のテストも兼ねておこうかな?新職業の実装前に作ったけど、実力が見たいものねぇ」


しおりを挟む
感想 3,603

あなたにおすすめの小説

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

処理中です...