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Ver.2.0 ~広がる大海原の世界~

ver.2.5-52 社長命令、全員集合:後編-2

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‥‥‥大抵のプレイヤーがテイムするモンスターに求めるものとしては、大ざわっぱに分けると、大体の場合二つの目的に分けられるだろう。
 一つは、戦力としての目的。時間をかけて強くなる類もいるが、ソロプレイにこだわりたい人や友人が少ない人にとっては、一人では厳しい戦闘が幾つもあるのでそれに対応するために、戦闘に適したモンスターのテイムを狙う。
 そしてもう一つは、ペット的な癒しやこだわり重視の目的である。現実では厳しいペットも、ゲームの中であればある程度ならば自由がきき、より親しみやすく触れ合いやすい。まぁ、テイムできたとしても懐くかどうかは別物でもあるが、それでも現実ではできない欲求が満たせるだろう。また、同じ種族のモンスターをテイムして揃えたい、コレクター魂のようなものもある場合、個の種族だけをテイムするというこだわりも持つのだ。

 そしてその両方の目的をもっている人も多いのだが‥‥‥まぁ、大抵の人の場合、まずテイムできる確率の低さという壁の前にやられることが多い。
 けれども諦めずに挑戦し続け、得られた時にはその目的を忘れて感動を味わえるだろう。中にはテイムできた嬉しさのあまり興奮しまくって、勢いのままSNS上で拡散してしまい、後の黒歴史を増産する人もいるのだが、それは特殊な例だと思いたい…‥‥一度ネットの海に流れると、二度と回収できないのでご愁傷様としか言いようがない。



 とにもかくにも、色々な目的がありつつ、テイムできるモンスターを一度に出せる上限があっても、制限までテイムできることはそんなにない。
 それなのに今、彼らの目の前に立つ人物はその上限の数をそろえており、見た目や強さが多くの目的を満たしている様を目にしていた。

【ガウガウガーウ!!】
【バルルルゥ!!】

 槍を使ってドリルに正面からぶつかり合い、受け止めたすきを狙って空いている脇や腹を素早く蹴り上げ、ギガ・モグドリラーの体勢が崩れていく。

【シャゲェェ!!】
【オォォォォン!!】
【ギャベェェ!!】

 周囲からは猛毒に黒い炎、電撃と攻められて、じわりじわりと攻められていく。

「す、すげぇぇ‥‥‥テイムモンスター5体で、あそこまでできるんか」
「というか、ボスモンスター相手だよね?相手の方がかなり大きいはずなのに何だろう、この蛇に狩られるカエルみたいな感じの光景」
「一体、蛇の身体を持っているから間違ってないが…‥‥いや、見ている場合じゃねぇ!!」
「全員、戦闘に戻れ戻れ!!任せっきりだと『なんか美女っぽいモンスターに任せるだけの傍観している観衆』という絵面になるぞ!!」
「「「「言い方ぁ!!」」」」

 あっけにとられながらも、出てきた言葉にツッコミを入れつつ、全員攻撃に移りだす。
 たった5体のテイムモンスターに押されている中で、他のプレイヤーたちが次々と参戦してきたことによって、ギガ・モグドリラーはあっという間に討伐されゆくのであった。

【モグォォォォォン!?】





―――――
>‥‥‥ボスモンスターが討伐されました。
>条件達成により、ボスモンスターと戦闘して攻撃を加えていたプレイヤー全員に『モグラ叩き』の称号が配布されます。

『モグラ叩き』
ギガ・モグドリラーを討伐したことによって得られる称号。
地面に潜る、掘る、耕すなどの攻撃手段を持つモンスターと対峙した場合、与えるダメージがわずかに上昇する効果を常に持つようになる。
―――――

「なんか地味だけど馬鹿にできない称号来たぁぁぁぁ!!」
「攻撃が当てにくいのが多いから、ダメージをつみ重ねやすくなるのはありがたい!!」

 ギガ・モグドリラーが討伐され、出て来た称号に喜ぶ同僚たち。
 飲み会のはずが突然のボス戦になって動揺していたのだけれども、無事にやり切って達成感が溢れているようである。

「それじゃ、ボスがいなくなってログアウトできるから僕はそろそろこの辺りで‥‥‥」
「「「「ちょっと待って、ハルさん」」」」

 がしぃっと肩をつかまれ、振り返ってみれば先ほどまで喜んでいたはずの同僚たち。
 しかしながらその目は僕を、いや、マリーたちの方に向けていた。


「春さん、いえ、ハルさんの姿を見て何かこう気になっていたけれども」
「今ようやくわかった。彼女達…‥‥滅茶苦茶美女のモンスターを引き連れている、錬金術師のプレイヤー!!」
「ニガ団子の伝道師、美女モンスター娘ハーレム屋さん、黒き女神に近い人…‥‥色々噂になっている人だよね!?」
「前者はまだ心当たりあるけど、後者何!?」

 いやまぁ、ニガ団子での攻撃手段に関しては最初のころにあったから納得はするが、後者の2つは何なのかとツッコミを入れたい。
 でも客観的に見ればそのように見えてもおかしくは無いし、色々と言っている時点で他にも何か言われていることが推測できるだろう。

‥‥‥あ、でも近い人と言われているけど、確定していないのか。まぁ、あの姿は女性だし、今の僕の姿は男の子だから性別違いで結び付けられないのか。

 とにもかくにも、どうしたものだろうかこの状況。ここで説明をせずに逃げたとしても、出社したら結局質問攻めにあうのが目に見えている。
 それを回避するには何かこう、もうちょっと別のことにそらせそうな話題を‥‥‥あ。

「そう言えば、タローンさんってアリスを狙って頑張っていた時があったよね」
「「「「!!」」」」
「うぉぅ!?」

 何かないか周囲をきょろきょろと見渡せば、ちょうどアリスの姿が目に入り、ついその言葉が出てしまった。いやまぁ、間違ったことは言ってない。正確には欲望戦隊が女の子の入隊を求めて動いていたので、そこにタローンがいたぐらいだ。

 しかしながら、この一言はどうも色々と受け取れたようで、瞬時に女性社員の方々の目がタローンの方へ向いていく。

「ちょ、ちょっとハルさん!?何を言っているんだ!?」
「でも間違ってなかったよね?あの時、戦隊全員がテイムをがんばっていたじゃん」
「それもそうだけどさ!!確かにこちらが全員根性でやろうとしていたのに全然できなくて、ハルさんがあっさりテイムしたから負けじと繰り返したけれどさ!!」

 間違ったことは言っていない。そして説明になっているのだが‥‥‥タローンさん、それは悪手です。
 他にも繰り返した、見た目が女の子のモンスター相手にと言うのは、字面だけでもなんか犯罪チックなことになってます。

「え、ちょっとまって、なんで他の人達も距離を。いや、これには本当にふか~~いわけがあって…‥だからなんで全員装備を、現実ではできないようなこともできたとしてもこれはこれはこれはこれは…‥‥」






‥‥‥後日、アルケディア・オンラインのアップデート時に、利用規約が追加されていた。
 特殊なプレイを求める方専用の課金部屋を用意するから、やりたい方はそちらへ移ってくれてもいいという内容だった。

 まぁ、あれがその類に入るのかは分からないのだが…‥‥一つ言えるとすれば、1週間は太郎丸さんは有給休暇を取ってほとぼりが冷めるのを待っていたことぐらいか。
 言葉に責任を持つようにしたいが、今回ばかりはどうすればいいのか悩まされたのであった‥‥‥‥でも、うやむやにできたから良しとするか。




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