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Ver.2.0 ~広がる大海原の世界~

ver.2.0-6 使い道は、考え方次第

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 ブラッククラーケンも倒しつつ、アサシン島もある程度楽しんだところで、そろそろ次の場所へ向かいたいと思う今日この頃。
 現実では4日が過ぎた頃合いで、僕らは今隠れ里に訪れていた。

「…‥‥サブ職業を手に入れたのはいいけれども、聞いて良いでしょうか?」
「なんですかぁ?」

 隠れ里内で、サブ職業「アサシン」や「忍者」、「情報屋」などが得られる話を聞いて、せっかくだから記念にそのサブ職業を狙ってみようと思い、NPCたちと交流したのは良いだろう。そのかいもあって、色々と教えてくれるようになって、ある程度の入手可能なサブ職業が手に入ったのは嬉しい事だ。
 だがしかし、コレは流石に聴いていない。

「何で、男の僕に『くノ一』のサブ職業が入るのでしょうか?どう考えてもバグだと思うんですが…‥」
「いやいやぁ、馬鹿を言っちゃいけねぇよ。ここで手に入るのは、その人に合ったサブ職業‥‥‥男であっても、似合うのならば得てもおかしくはないねぇ」
「いやおかしいよね!?」
「文句は受け付けませんでぇ、それではおさらば!!」

 どろんっと煙を捲いて逃げたNPCを追う事もできず、行き場のない手が宙を仰ぐ。
 確かに、スキルに「女体化」があるとは言え、このサブ職業は流石に得る気はなかった。むしろどうしてとる羽目にならなきゃいけないんだ。

「これ、絶対に港で今燃え尽きているミートン一家には口が裂けても言えないなぁ‥‥‥」
【あの方々、三日三晩島中を駆け巡ってくノ一に会えなかったという話でしたからネ。それどころか、アサシン島限定の『忍びオーク』たちに遭遇して酷い目に遭ったようですので、言った瞬間に狂気を見せるでしょウ】

 僕のつぶやきに対して、そう答えるロロ。
 うん、今一番聞かせたくない集団にこの話を聞かせたら暴走するのが目に見えているだろう。あれだけ滅茶苦茶意気込んでいたミートン一家は、結局何の成果も得られなかったと嘆いていたからなぁ‥‥‥その上、まさかのテイム成功で得てしまったのが、筋肉もりもり『マッスルオーク』と言うのは、どういう悲劇と言うのやら。

「テイムの条件を満たしても、確率は低いはずなのに、何でこういう時に限ってうっかり成功させるのやら」

 なお、ミートン一家も流石に意志を持ってテイムしたわけではない。
 必死になってオークたちと戦闘しまくり、どうにか勝利した時に相当疲労していたようで、疲れ切ってうっかり選択ミスをして得てしまっただけなのである。
 しかも意外にもステータスやレベルも高くて、戦力としてはかなり強力なのだが‥‥‥あの憔悴しきったミートン一家の絶望顔はすごかった。逃がせばいいとは思うが、流石にテイムしたからには責任を持つらしいけれど、あの様子だとどのぐらい精神が持つのやら。





 何にしてもそんな悲劇な喜劇と言う様な状況は、ちょっと見ていられなかったので一応希望の光を見せてはいる。彼らは女っ気が無いから苦労しているというのならば、女性のような見た目のモンスターのテイムを今度はやればいいと助言したのである。

「だが、そんなのいないだろ!!こちらとてそちらのモンスターたちの羨ましさは分かるが、どれもこれも最初からその姿だったわけではないだろ!!」
「そうだよ。でもね、モンスターの図鑑説明の中にこういうのがあるんだよ」

 そう言って僕が見せたのは、リンの種族に関しての一部である。

―――――
『ヒューマンレオパルド』
(省略)。密林を主な住みかにしており群れで暮らす・・・・・・のだが、~~
―――――

「この説明がどうしたって‥‥‥ん?」
「ちょっと待て、『群れで暮らす』ってことは‥‥‥」
「そう。ver.1だと見かけることは無かったけど、大型アップデートで海の向こうにも行けるようになったよね?という事はさ、彼女のような種族が暮らしている場所も当然あるんじゃないかなって」
「「「…‥‥おおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 希望の光を見出し、ミートンさんやスッケンさん、カックウさんの目に生気が戻った。
 そう、可能性としてはあり得なくはないのだ。それに、彼女たち以外にも似たような種族が他のエリアにいない可能性もなく、彼らが巡り合える可能性もある。

 そう希望を告げると、彼らの失われたやる気は舞い戻った。

「よっしゃいくぞぉスッケンさんにカックウさん!!」
「未知なる女の子との出会いが、待っているのだぁぁ!!」
「うぉぉぉぉぉ!!希望の光はこれほどまでに、まばゆい輝きを持ったのかぁぁ!!」
【ぶひぃぃぃぃ!!】

 ついでに彼らのテイムモンスターであったマッスルオークことマッチョンも鳴き声を上げ、一致団結をして結束を固めたようだ。
 死んだ魚のような目を先ほどまでしていたのに、これほどまでの変わりようは流石に驚かされるだろう。

【ガウ?ガウガウ】

 っと、ここでふとその様子を見ていた中で、リンがぽんぽんっとまだ途中だった説明文のある一文を押していた。

「‥‥‥まぁ、夢を見させるぐらいはやったほうが良いからね。あれだけのやる気なら、多分問題ないはずだよ」
【いや、問題ありますよネ?『悪意ある者に対しては容赦ない蹴りを叩き込む』という一文があるのですが、あの欲望にたぎった眼差しですと悪意判定になると思われマス】

 それは見なかったことにしよう。出会ってからその先は、彼らの行動次第なのだから。夢を魅せることぐらい、別に良いじゃないか…‥‥結果はどうなるのかはわからないけど。
 そう、決してこの島でくノ一の職業を得たやつあたりをしたわけではないと言わせてもらおう。


【キュー】
「っと、そういえば君の方の用事もやらないとね」

 船に戻り、やる気に溢れて自主練に励み始めるミートン一家を見ている中で…‥‥僕らは一緒に来たプチオクトパスに目を向けた。

【キュー、キュー】
【テイム出来たらよかったのですが…‥‥まさか、駄目トハ。ハウス内のマスコットに欲しかったデス】
「仕方が無いだろう。でも、クエストとして出てきたから、関連した何かはあるはずだよ」

 そう答えつつ、僕はログを見た。

―――――
>特別お使いクエストを受理しました。
>『ターちゃんを連れてきて』、開始いたします。
―――――








‥‥‥そう、あのブラッククラーケンとの戦いの後、ちょっとだけマスコット枠として、助けたプチオクトパスをテイムしようと僕らは試みていた。
 だがしかし、残念ながらどうやら既にこの小さなタコは誰かのテイムモンスターだったようで、僕らのもとに来ると手紙を渡してきて、クエストが発生したのである。

「『ソプライの村』へ、このプチオクトパスのターちゃんを、テイムしている人のもとへ届けよ、か…‥次へ向かう予定の島で、ちょうどよかったけれども、こういう類のもあるんだなぁ」

 鍛冶の親方の時以来というか、久しぶりのお使いクエスト。
 しかも、特別と付くからには何か面白い予感がするし、結構楽な類っぽいのでやらない理由が無い。

【バルゥ、バルゥ】
【シャゲェェ!】
「そして、小さなタコに対して、あやすようにお姉さんぶっている皆の姿も面白いかもね」
【ガウガウ】
【まぁ、可愛いものは可愛いので‥‥‥これはこれで、楽しいのデス】

 まだ扱えていない吸盤対策として、吸着防止用の靴下を付けつつ、皆と遊ぶプチオクトパスのターちゃん。幼げな様子は小さな子供のようで、ほっこりとするだろう。
 とにもかくにも、このクエストを受理しておいて、到着までの間僕らは戯れるのであった‥‥‥


「ふぉぉぉぉぉぉぉ!!未知の出会いに儂らは、ワクワクすっぞ!!」
「今度こそ、このメンバーに!!」
「色気やかわいらしさ、ありとあらゆるものこいやぁぁぁぁ!!」
【ぶひぃぃぃぃぃぃん!!】

「‥‥‥そしてあれはあれでどうしよう。希望の光を見えたとはいえ、ちょっと小さな子がいる状況だと少し不味いかも」
【ご安心くだサイ。もう間もなく船を乗り換える島でお別れをするはずデス。ソレと一つ情報もありマス】
「何?」
【使用人仲間との連絡で、あのミートンさんのお孫さんとちょうど繋がりまして、そこで待ち伏せを行うようデス。伝言として「うちのお爺ちゃんやお兄ちゃんたちがうるさくてすいません。しっかり、しばき倒して根性を鍛え直します」というメッセージも貰っておきまシタ】

‥‥‥いつの間に、やっていたの?あとしっかりしたお孫さんのようだけど、希望から絶望のがけっぷちに向かうまでの時間が想像以上に早いのだが…‥‥うん、気にしないほうが良いか。
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