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ver.1.0 ~始まりの音色~

ver.1.1.1-35話 修正は多少、入っているのだが

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 レイドバトルなどが始まる前に、到着できた大樹の村。
 エルフたちが住まう場所というだけあって、自然が溢れる場所だが、何よりも驚くのであれば、外で赤い夜が発生しても、ここには影響がない事だろう。
 どうやら様々な検証が短時間の間に行われていたようだが、町や村などの場所では赤い夜から逃げる安全地帯としての役割があるようで、いざとなればここに逃げ込めばいいようである。
 まぁ、新規の人なんかは難しかったりするし、HPやNP、道具の消耗などを考えると連戦とかになったら相当きついので、休める場所は当然必要になるのだろう。落ち着いて回復してから挑めばいいのだ。

 とはいえそれは逆に言うと、一歩外に出れば赤い夜が発生している可能性もあり、気を抜かずにしないという事でもある。そのあたりはもうちょっと、予報とかあったら楽にできそうだけどなぁ‥‥プレイヤー間のメールなどで知ることが出来るから、手が加えられるのはもうちょっと後になりそう。


 とにもかくにも、ようやくやってきたエルフだらけの場所だが、今がイベント中というのもあってか、プレイヤーの数はさほど多くはない。
 しかしながら、それとは別に気になるものとして‥‥‥


「あのー、すいません、少しお尋ねして良いでしょうか?」
「おや?どうしたのかな?」

 とあるものが気になったので、僕は手近なところにいた村民エルフの人に問いかけた。

「あの大きな、顔写真だらけの看板は何でしょうか?よく見ると、プレイヤーとしか思えないような顔写真しかないようなんですが‥‥‥」
「ああ、あれねぇ‥‥‥この村で今、出入り禁止になった人たちの手配書だよ。村長がなんやかんやの秘術を使って出入りできないようにしているけれども、それはあくまでもこの村の中だけであって外までは通じないからね。万が一のことも考えて、危険な人物を周知させるためにああやって置いているのさ」

 話を聞いたところ、あの村の中央にでかでかと置かれている顔写真だらけの立て看板は、ここでやらかしたプレイヤーたちを覚えさせるための手配写真だそうだ。
 なんでも、エルフたちは基本的に美男美女が多くて目の保養になるというほどプレイヤーたちから人気があったらしいが、NPCたちとはいえそれでもある程度の意思などが確認されているというのに、それを無視しての迷惑行為をしようと企んだ者たちがいたらしい。
 それで、ある程度の自衛権も許されているようで、反撃したり捕まえてお仕置きしたりしたのは良いのだが、それでも復活して懲りずに狙う馬鹿や、むしろそのお仕置きで目覚めてしまった者たちが出てしまったそうで、仕方がなく強制的な排除をするための結界のような物が村に敷かれたそうだ。
 それでもなお、村の外でのやらかしが想定できるために、こうやって警告も兼ねて手配写真がさらされているようであった。

「‥‥‥何と言うか、同郷といえるような人たちが迷惑をかけたようで、すいません」
「いやいや、あんたはまだここに来て間もなさそうだし、そういう輩とは違うんだろう?話しかけられてちょっと見たが、まともすぎるように見えるねぇ」

 なんというか同じプレイヤーとして迷惑をかけたようで申しわけなくなったが、話しかけた村民エルフの人は笑ってそう答えてくれた。
 流石にエルフたちもすべてのプレイヤーが迷惑をかけるような人たちでもないと分かっているそうで、そもそもそんな迷惑な人たちが入らないようにしている今、ここに入ってこられるのはそんな輩ではないことが確定しているので安心しているそうだ。

‥‥‥だったら最初からそうやって安全対策をしておけばよかったんじゃ、という話にもなりそうだが、システム的にはおそらくアップデートでによって追加された可能性もあるんだよなぁ。
 不具合、NPCの一部不具合の話もあったらしいし、今回のアップデートはそのあたりの迷惑行為に対する取り締まりも兼ねて施されているかもしれない。徹底的に排除し過ぎるとこんどはそれで文句を現実で言う人が出るだろうし、なかなか難しいだろうけれどね。

 なお、以前からあったテイムモンスターに対する虐待行為のような真似もかなり厳罰化されているようだが、それはまた別の話という事で、ひとまず教えてくれた礼を言いつつ、僕らは村を一回りして巡ってみることにした。

「それにしても、空気が綺麗だな…‥VRMMOだから本当は現実の空気を吸っているはずなんだろうけれども、それでもマイナスイオンのような穏やかさを感じさせられるよ」
【シャゲェ】
【ガウガウ】
【ヒヒーン】

 僕のつぶやきに対して、うんうんと頷くマリー、リン、セレア。
 全員この村の空気の良さが分かっているようで、自然と穏やかな気分になれているようで、赤い夜での緊張感から解かれてリラックスした様子である。
 そう言えば、エルフの村というか、ネット情報だと各種族ごとの集まっている村には特殊な効果が発生しているらしいというネット情報もあったんだっけか。ドワーフのいる村だと鍛冶での製作評価や効果の向上、エルフの村だと気分的な静養に出た後もしばらく魔法攻撃の威力がわずかに上昇するなどの隠し要素があるらしい。アップデートによって、密かに追加された隠し要素は増えているらしく、その探求も中々面白そうだ。

「後は、この村だと舞が有名らしいからそれも見てみたいかな‥‥‥っと、そういえばこれもあったか」

 ふと、のんびりとした空気を楽しんでいる中で、手持ちの中にあったものを取り出す。
 それは以前、のじゃロリに貰って、???な状態だったけれどもアップデートできちんと名前が出た「大樹の祠の許可証」。
 名前から察して祠があり、何かがありそうなのも分かるけれども‥‥‥んー、これを渡してきたのじゃロリがそこにいる可能性を考えると、ちょっと近寄りがたくもあったんだよね。でも、NPCの改善などもされているらしいし、なんとかあののじゃロリにも調整が施されてというか、まともになっていて欲しいような‥‥‥そこはまぁ、実際に目にして見ないと分からないものかな。

 とにもかくにも、思い立ったが吉日とも言うので、僕らはその祠とやらに向かって見ることにした。
 幸いなことに、大樹の村はそれなりに広くとも迷わないように各所に現在地を示す丁寧な地図が置かれており、どこに祠があるのかがすぐに分かった。
 
 エルフの村入り口から奥へ進み、舞が披露されているという場所よりもさらに奥地の、よりうっそうと木々が生い茂っているように思える場所。
 けれども、その中心地にぽつんっと小さな祠が立っていた。

「‥‥‥ここらしいけれども、そもそも人が入れるのかなこれ?」
【シャゲェ?】

 入るための許可証があるが、この目の前の祠はどう見ても人が入れるサイズではない。
 小さな仏道を入れるような、道端に置かれる土地神用の祠サイズであり、どう見たって入るための者があるとは思えない。
 けれども、ぐるっと周囲を回って確認してもそれ以外のものは見当たらず、祠がこれしかないと示しているのだが、入れるような感じもしない。

‥‥‥いや、違うかも。何も、目の前の祠の中に入り込むようなものでもないのかもしれない。
 いつぞやかの神殿のように、まともには入れるように見せることは無く‥‥‥証があるのであれば、それが文字通り鍵になるのかもしれない。

 そう思い、かざしたり近づけてみたりと色々と調べてみると、どうやら当たりを引いたらしい。


ギギギギギギギーーー!!
「おおっ」


 どれが当たったのかは分かりにくいが、ものものしい音を立てて祠が二つに割れたかと思えば、その祠があった空間そのものが歪み、扉となって開錠された。
 その先には道が整備されており、周囲の木々とはまた違った雰囲気を森が広がっており‥‥‥何かの特殊な空間が展開されているのが目に見て取れる。

「さて、どうやら行けるようだし行ってみようかな。行くよ、マリー、リン、セレア」
【シャゲェ!】
【ガウガーウ!】
【バルヒヒーン!!】

 全員でその内部に踏み出し、入り込むと背後の扉が閉じ、どことも知れない空間へ僕らは残される。
 先へ進むしかなさそうだが、面白い仕掛けにちょっとばかり少年心をくすぐられてしまうのであった…‥‥

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