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探しましょう、あなたとの夢を
第五十二話 暖かいのも魔なるもの
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…静かな冷え込みが強くなりつつ、目が覚めた今日この頃。
窓の外を見れ見れば、あたり一面が銀世界になっていた。
「うわぁ、雪降ってすっかり真っ白に…」
【まだ薄いようですが、ここから積もってきますね】
ほうっと息を吐けば白くなるような寒さに、身を震わせる。
本日の学園は休日なので寮室から出る必要はないが、それでも寒さは建物中に入ってくるので、対策は必要になる。
とはいえ、学園の寮は何の防寒対策が無いわけでもない。
しっかりと生徒たちが故郷から離れて過ごす場所としての役割がある以上、より過ごしやすいようにする工夫もされており…
「寮室一つ一つに、コタツが支給されたよ!!」
【魔道具式ですが、入りびたりになり過ぎないように事前にこちらの動力装置を全力で回転させて充電してから稼働するようですね】
工夫されてはいるが、入りびたりになり過ぎないように、運動させる工夫がある。
発電機付きの自転車のような魔道具が接続されており、最初はこちらを全力で動かしてからようやく使えるようになるようで、運動して温まる方を優先している形のようにもなっている。
運動不足にならないようにかつ、こたつを稼働させっぱなしで火事が引き起こされないように、適度に離れるための仕掛けとでもいうべきなのか。
【ふふふ…ですがこの程度、私が全力でこぐまでもなく、一瞬で終わります!!】
ハクロが搭乗し、あっという間にこぎ終えてしまい、コタツがすぐに使える状態になった。
試しに入ってつけてみれば、すぐにじんわりと内部が暖かくなり、コタツとしての機能がしっかりとあることが確認できる。
少しだけ寒くなる室内の中、こういう温かいものが中にあるのは物凄く快適なのだが…
「「「「ウゴォォォォォォオオォォ!!」」」」
「…他の部屋の、漕ぐ叫びが凄いね」
【そこは仕方がないことですね…まぁ、私は旦那様のため意外に働く気はないので、自力で頑張ってほしいです】
この部屋のはハクロの手で一瞬にして終わったが、他の部屋はそうはいかない。
自力で全力でこいで使えるようにしなければならず、漕ぎまくり叫びまくり、必死になっている様子がうかがえるようだ。
「全部屋に発電機みたいな動力源があればいいけど…ああ、それでつけっぱなしで火事になっても困るし、寒いから出てこなくなって、運動不足になる可能性もあるからそううまくいく話でもないか。あれ?でもそう考えると、ハクロに任せた俺が運動不足になる可能性もあるかな?」
【大丈夫ですよ、旦那様。たとえ、旦那様がまるまるころころなお姿になっても、旦那様は旦那様なので、私は気にしませんって】
「…何だろう、そういわれると余計に運動しないといけないような気になるな」
気にしないのは良いのだが、なんとなく男としての沽券にかかわるような気がしなくもない。
こたつの稼働に対してハクロに任せてしまうところもあるが、この寒い季節の中でだらしない肉体へ変わることが無いように、適度な運動を取り入れようとルドは誓うのであった…
…そんな寒い季節の中で見られる光景が出てきたその頃。
王都の外の方では、まばらながらも獣の姿があった。
そこにいたのは、獣も魔獣も混ざりあった雪ウサギの群れ。
魔獣になっているモノは異形の造形をしているが、それでも本質的な変化は少なかったようで、お互いに仲良く過ごしている様子。
ふわふわもこもことしている毛並みをしているので、寒さ対策の毛皮として狩られることもあるが、特に必要でないときは、見た目も可愛い獣なので、近くを通る人の癒しにもなっていた。
そんな獣の群れの中、一匹のウサギの耳が立つ。
すると、他の獣や魔獣のウサギたちも同時に何かに気が付いたようで、慌てて場所を移動し始める。
雪ウサギの大移動の光景は、これでかわいらしいものがあるのだが、彼らの一生懸命さに気が付いたものがいれば、どういうことなのか理解できるだろう。
今ここに何かが迫りつつあり、敏感な彼らはそれを察知して逃亡したのだ。
弱き獣たちはそれに気が付き…巻き込まれぬように、その場から去っていくのであった。
窓の外を見れ見れば、あたり一面が銀世界になっていた。
「うわぁ、雪降ってすっかり真っ白に…」
【まだ薄いようですが、ここから積もってきますね】
ほうっと息を吐けば白くなるような寒さに、身を震わせる。
本日の学園は休日なので寮室から出る必要はないが、それでも寒さは建物中に入ってくるので、対策は必要になる。
とはいえ、学園の寮は何の防寒対策が無いわけでもない。
しっかりと生徒たちが故郷から離れて過ごす場所としての役割がある以上、より過ごしやすいようにする工夫もされており…
「寮室一つ一つに、コタツが支給されたよ!!」
【魔道具式ですが、入りびたりになり過ぎないように事前にこちらの動力装置を全力で回転させて充電してから稼働するようですね】
工夫されてはいるが、入りびたりになり過ぎないように、運動させる工夫がある。
発電機付きの自転車のような魔道具が接続されており、最初はこちらを全力で動かしてからようやく使えるようになるようで、運動して温まる方を優先している形のようにもなっている。
運動不足にならないようにかつ、こたつを稼働させっぱなしで火事が引き起こされないように、適度に離れるための仕掛けとでもいうべきなのか。
【ふふふ…ですがこの程度、私が全力でこぐまでもなく、一瞬で終わります!!】
ハクロが搭乗し、あっという間にこぎ終えてしまい、コタツがすぐに使える状態になった。
試しに入ってつけてみれば、すぐにじんわりと内部が暖かくなり、コタツとしての機能がしっかりとあることが確認できる。
少しだけ寒くなる室内の中、こういう温かいものが中にあるのは物凄く快適なのだが…
「「「「ウゴォォォォォォオオォォ!!」」」」
「…他の部屋の、漕ぐ叫びが凄いね」
【そこは仕方がないことですね…まぁ、私は旦那様のため意外に働く気はないので、自力で頑張ってほしいです】
この部屋のはハクロの手で一瞬にして終わったが、他の部屋はそうはいかない。
自力で全力でこいで使えるようにしなければならず、漕ぎまくり叫びまくり、必死になっている様子がうかがえるようだ。
「全部屋に発電機みたいな動力源があればいいけど…ああ、それでつけっぱなしで火事になっても困るし、寒いから出てこなくなって、運動不足になる可能性もあるからそううまくいく話でもないか。あれ?でもそう考えると、ハクロに任せた俺が運動不足になる可能性もあるかな?」
【大丈夫ですよ、旦那様。たとえ、旦那様がまるまるころころなお姿になっても、旦那様は旦那様なので、私は気にしませんって】
「…何だろう、そういわれると余計に運動しないといけないような気になるな」
気にしないのは良いのだが、なんとなく男としての沽券にかかわるような気がしなくもない。
こたつの稼働に対してハクロに任せてしまうところもあるが、この寒い季節の中でだらしない肉体へ変わることが無いように、適度な運動を取り入れようとルドは誓うのであった…
…そんな寒い季節の中で見られる光景が出てきたその頃。
王都の外の方では、まばらながらも獣の姿があった。
そこにいたのは、獣も魔獣も混ざりあった雪ウサギの群れ。
魔獣になっているモノは異形の造形をしているが、それでも本質的な変化は少なかったようで、お互いに仲良く過ごしている様子。
ふわふわもこもことしている毛並みをしているので、寒さ対策の毛皮として狩られることもあるが、特に必要でないときは、見た目も可愛い獣なので、近くを通る人の癒しにもなっていた。
そんな獣の群れの中、一匹のウサギの耳が立つ。
すると、他の獣や魔獣のウサギたちも同時に何かに気が付いたようで、慌てて場所を移動し始める。
雪ウサギの大移動の光景は、これでかわいらしいものがあるのだが、彼らの一生懸命さに気が付いたものがいれば、どういうことなのか理解できるだろう。
今ここに何かが迫りつつあり、敏感な彼らはそれを察知して逃亡したのだ。
弱き獣たちはそれに気が付き…巻き込まれぬように、その場から去っていくのであった。
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