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出会いましょう、新しい世界と共に
第四十三話 迫る危機はすぐそこに
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【…ぜぇ…ぜぇ…さ、流石に…きつかった…です】
「ハクロ、大丈夫?」
ぷしゅううううっとすさまじい湯気を出して、ぐったりと倒れこむハクロ。
流石に馬数頭、馬車数台、乗車している人数の重量もあわせると相当なものなうえに…
「まさか、辺境の地から王都まで一週間はかかる距離を、一時間はかからずに全力疾走するなんて…無茶苦茶し過ぎよ」
【だ、旦那様の身の安全のために、振り切っても余裕があるようにとして…力を使い過ぎました】
ぽううっと光を手から放ち、ハクロを癒すのは聖女クラウディア様。
先ほど、王都に到着した際に騒ぎに気が付いてすぐに駆け付けてくださったようで、体力を使い果たして動けなくなったハクロへ癒しの魔法をかけてくれているのである。
「それにしても、モンスターハザードとは…道中の村々は大丈夫なのか?」
「駆け抜けながら急いで知らせつつ、すぐに守りを固めるようにしてもらったけど、かなりやばそうだな」
ハクロやルド、その他馬車に乗っていた面々の説明を聞いて集まった騎士たちがすぐに対応するために動きつつ、そう口を漏らす。
モンスターハザード、名前の通り魔獣による災害というのもあって対応が遅れればそれだけ被害が甚大になるというのもあり、誤った情報で動かないように正確な情報を整理して、適切な対応を行おうとしているようだ。
【でも、アレはただのモンスターハザードではなさそうですよ】
「どういうことかしら?」
【聖女様、先日の話ですけれども、帝国の皇女様への襲撃事件がありましたよね】
何とか回復魔法によって癒されて、ぐぐっと身を起こしながらハクロが感じていたことを話す。
【あの時、賊の一人が明らかにヤバそうな魔道具を使って化け物になったことがありましたが…今回の件、そのハザードの魔獣たちからも…同じような、気配を感じたんです】
「…そう考えると、これは相当不味いわね。もしかして、人為的なものかしら」
【可能性はあるかと…っと、近づいてきたようです】
『王都内緊急連絡および避難勧告!!モンスターハザードによる魔獣たちの進撃での砂埃が確認された!!聖女様の結界があるが、万が一に備えて各自王都内の中央避難エリアへ移動せよ!!繰り返す繰り返す!!』
王都全体に魔道具によって響き渡る、緊急警告の声。
どうやらただ事ではないのは間違いないようで、既に魔獣たちの群れは王都まで接近しているようだ。
「早いわね、道中の人々を襲わずに、一直線に駆け抜けてきたのかしら」
【というよりも…ええ、間違いないです。彼らの声に、目的があります】
「目的?」
【私自身も魔獣なので、魔獣の声の中身が分かるのですが…不気味な声でずっと、叫んでます。『結界を壊せ、王都を蹂躙しろ』と…明確な、悪意が感じ取れます】
「「「明らかにヤバい奴だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
王都の外にて、取り囲むように集いつつある魔獣の群れ。
聖女クラウディアの手によって結界が施されており、そうたやすく魔獣が侵入することは叶わないだろう。
結界周辺に設けられている都市防衛用の城壁から、衛兵たちが遠距離で魔法などによる攻撃を与えて駆逐することで、自然とモンスターハザードに加わっていた魔獣の数が減っていき、その脅威は抑えられる…はずだった。
しかしそれは、あくまでも自然発生したものに対してのこと。
人為的にゆがめて作り上げられた、このハザードはただ引き起こされたものではない。
それを証明するように、離れた場所からその光景を見ている者たちがいた。
「…凄まじいものだな。辺境の地より、あっという間にここまで踏破してしまうとは…命令に忠実にさせつつ、限界を超えて酷使させるだけでこうもうまくいくとは」
「元々、魔獣の身体能力に関しては人と同じように、生きていく以上の力を発揮することは本来ない。だが、我々の開発した魔道具によってその枷を外して従わせるだけで、ここまでのポテンシャルが発揮できるのだ。忠実すぎたがゆえに、道中の村や町を蹂躙しきれなかったが…それでも、ここまでやるのは大成功と言えるだろう」
集まりつつ観察しつつ、その状況を見てそう口にする。
「しかし、結局は聖女の結界によって阻められてしまうか」
「そこは仕方がないことだが、問題はない。既に、手は打ってある。外からの魔獣に対しては、確かに聖女の結界は効力を発揮する。だが、それがすでに内部にいる魔獣の手であれば…どうだ」
「入り込んでいる者には効力はない、か…うまくいくだろうか」
「何も知らずに、奴らが駆逐を続ければ…減り過ぎたら内部がどうにかできても厳しくなるが…程よいところで、発芽し、牙を向けられるはずだろう。何しろ、結界は確かに魔獣の肉体を通すことはないが…それ以外のモノならば…ふふふ」
不気味な声を上げ、様子を観察する者たち。
実験の過程である程度の段階は成功していることを確認しており、十分なデータはとれている。
けれども、やれそうであれば勢いを利用し、より活用できる情報を増やしたい。
その欲望は、ゆっくりと王都へ向かって悪意の形で発現していくのであった…
「ハクロ、大丈夫?」
ぷしゅううううっとすさまじい湯気を出して、ぐったりと倒れこむハクロ。
流石に馬数頭、馬車数台、乗車している人数の重量もあわせると相当なものなうえに…
「まさか、辺境の地から王都まで一週間はかかる距離を、一時間はかからずに全力疾走するなんて…無茶苦茶し過ぎよ」
【だ、旦那様の身の安全のために、振り切っても余裕があるようにとして…力を使い過ぎました】
ぽううっと光を手から放ち、ハクロを癒すのは聖女クラウディア様。
先ほど、王都に到着した際に騒ぎに気が付いてすぐに駆け付けてくださったようで、体力を使い果たして動けなくなったハクロへ癒しの魔法をかけてくれているのである。
「それにしても、モンスターハザードとは…道中の村々は大丈夫なのか?」
「駆け抜けながら急いで知らせつつ、すぐに守りを固めるようにしてもらったけど、かなりやばそうだな」
ハクロやルド、その他馬車に乗っていた面々の説明を聞いて集まった騎士たちがすぐに対応するために動きつつ、そう口を漏らす。
モンスターハザード、名前の通り魔獣による災害というのもあって対応が遅れればそれだけ被害が甚大になるというのもあり、誤った情報で動かないように正確な情報を整理して、適切な対応を行おうとしているようだ。
【でも、アレはただのモンスターハザードではなさそうですよ】
「どういうことかしら?」
【聖女様、先日の話ですけれども、帝国の皇女様への襲撃事件がありましたよね】
何とか回復魔法によって癒されて、ぐぐっと身を起こしながらハクロが感じていたことを話す。
【あの時、賊の一人が明らかにヤバそうな魔道具を使って化け物になったことがありましたが…今回の件、そのハザードの魔獣たちからも…同じような、気配を感じたんです】
「…そう考えると、これは相当不味いわね。もしかして、人為的なものかしら」
【可能性はあるかと…っと、近づいてきたようです】
『王都内緊急連絡および避難勧告!!モンスターハザードによる魔獣たちの進撃での砂埃が確認された!!聖女様の結界があるが、万が一に備えて各自王都内の中央避難エリアへ移動せよ!!繰り返す繰り返す!!』
王都全体に魔道具によって響き渡る、緊急警告の声。
どうやらただ事ではないのは間違いないようで、既に魔獣たちの群れは王都まで接近しているようだ。
「早いわね、道中の人々を襲わずに、一直線に駆け抜けてきたのかしら」
【というよりも…ええ、間違いないです。彼らの声に、目的があります】
「目的?」
【私自身も魔獣なので、魔獣の声の中身が分かるのですが…不気味な声でずっと、叫んでます。『結界を壊せ、王都を蹂躙しろ』と…明確な、悪意が感じ取れます】
「「「明らかにヤバい奴だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
王都の外にて、取り囲むように集いつつある魔獣の群れ。
聖女クラウディアの手によって結界が施されており、そうたやすく魔獣が侵入することは叶わないだろう。
結界周辺に設けられている都市防衛用の城壁から、衛兵たちが遠距離で魔法などによる攻撃を与えて駆逐することで、自然とモンスターハザードに加わっていた魔獣の数が減っていき、その脅威は抑えられる…はずだった。
しかしそれは、あくまでも自然発生したものに対してのこと。
人為的にゆがめて作り上げられた、このハザードはただ引き起こされたものではない。
それを証明するように、離れた場所からその光景を見ている者たちがいた。
「…凄まじいものだな。辺境の地より、あっという間にここまで踏破してしまうとは…命令に忠実にさせつつ、限界を超えて酷使させるだけでこうもうまくいくとは」
「元々、魔獣の身体能力に関しては人と同じように、生きていく以上の力を発揮することは本来ない。だが、我々の開発した魔道具によってその枷を外して従わせるだけで、ここまでのポテンシャルが発揮できるのだ。忠実すぎたがゆえに、道中の村や町を蹂躙しきれなかったが…それでも、ここまでやるのは大成功と言えるだろう」
集まりつつ観察しつつ、その状況を見てそう口にする。
「しかし、結局は聖女の結界によって阻められてしまうか」
「そこは仕方がないことだが、問題はない。既に、手は打ってある。外からの魔獣に対しては、確かに聖女の結界は効力を発揮する。だが、それがすでに内部にいる魔獣の手であれば…どうだ」
「入り込んでいる者には効力はない、か…うまくいくだろうか」
「何も知らずに、奴らが駆逐を続ければ…減り過ぎたら内部がどうにかできても厳しくなるが…程よいところで、発芽し、牙を向けられるはずだろう。何しろ、結界は確かに魔獣の肉体を通すことはないが…それ以外のモノならば…ふふふ」
不気味な声を上げ、様子を観察する者たち。
実験の過程である程度の段階は成功していることを確認しており、十分なデータはとれている。
けれども、やれそうであれば勢いを利用し、より活用できる情報を増やしたい。
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