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出会いましょう、新しい世界と共に

第四十話 将来を考えて

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…ゆったりと過ごす、夏の日々。
 夏季休暇の期間を考えてあと数日ほどで、王都の方へ戻る馬車に乗る必要があるが、それでもまだまだ時間はある。

 そんな中である晩、ルドは少々悩んでいた。

「うーん、どう書こうかな、コレ…」
【どうかしましたか、旦那様?本日予定していた分の、夏季休暇課題はほぼ終わらせたはずですが…】
「予定した分が計算とかのほうで良いんだけど…こっちがね、そう簡単に書けないんだよなぁ」

 そう言いながらルドが見るのは、休暇課題の一つ…『将来について』との題が書かれた書類。
 夏季休暇中の学園からの課題の中で、将来に関してどのようなことを考えているのかを書くものがあったのだが、これをどう描くのかが難しい。
 なお、毎年出るようになっているらしく、年々現実を知っていく過程でどのように夢が変化しているのかという調査も行われているという噂も聞くが…そんなことはさておき、将来に関してこうやって問われると、具体的なものが出しにくい。

「将来の夢って、出来ればゆったりとした生活でほのぼのした感じが良いんだけど、具体的に書こうと思うと中々でないんだよねぇ」
【そういうものなのでしょうか?】
「そういうものなの。例えばハクロ、将来の夢は?」
【え、私は夢どころか今ですね。旦那様の素敵なお嫁さんですよ!!】

 わかっていたが、即答である。
 ここまではっきり堂々と言えるのを聞くと羨ましく思えるのだが、この課題においてはもっと深彫りしていく必要があるだろう。

「じゃぁ、その具体的な内容としては?」
【具体的に、ですか…ふむ、そうですね…(割愛)】

 あれ、もしかしてこれ、下手すると相当長くなるんじゃ…

【--で、旦那様と(省略)】
【ああ、でも今はまだ旦那様の年齢が惜しいのですが、もっと大きくなったら獣のように(自重省略)】




「…朝日が昇ってきたけど、まだ語れるの?」
【大丈夫ですよ!!旦那様の将来に合わせて、素敵なお嫁さんとしての方法をかなり想定してますからね!!】

…結局、一晩語り明かしても尽きないほどの話を聞く羽目になった。
 延々と聞かされ続けて寝そうになったが、話の内容が大人になってからR18指定になりそうなものにされてしまい、寝るに寝られない状況。
 そうこうしている間に、朝になってしまっていた。

「素敵なお嫁さんとかを目指すなら…まず、睡眠不足にならないようにとかしてくれないかな…ふぁあ、朝なのに滅茶苦茶眠い…」
【あ…申し訳ないです、旦那様】

 しょぼーんっと落ち込むハクロ。
 彼女の想定がどれほどあるのかはわからないが、とりあえずルドの将来に合わせて変化に対応できるようにしているらしく、問題はないらしい。
 むしろ、こういう課題を出してきた学園に対して、ハクロの将来設計に関しての鈍器で殴れる量の文章を投げつけて、同じような目に遭ってほしいと思えるだろう。

…いやこれ、彼女の話す量を考えると何パターンでもできるらしいし、小説書いて撃った方が売れるんじゃないかな。意外な才能というべきか、もしも前世でのネット小説の類がこの世界に会ったら、かなり売れそうなことは間違いない。
 しかし、聞いて書く人にとっては地獄かもしれない…いつ終わるのか、これ。相当削らないと、確実に某有名な鈍器ライトノベルみたいなことになりかねない。



「…しかしなぁ、本当にどう描くべきか」

 ゆったりした、転生先ののんびりとした異世界生活。
 よくあるような冒険もののようにあちこちを行くのも悪くはないと思うけど、それではなくて居を構えてしっかりとした生活を送りたい思いもある。
 メダルナ村での畑仕事を引き継いで…とも考えたことがあったのだが、ここしばらくの発展のせいでメダルナ街へと変わるにつれて、それも難しくなった様子。

 そう考えるともっと、安定した生活となるとより限られてくるだろう。

「王都で家でも買って、どこかの店勤め…いや、いっそ文官あたりを目指すべきか?」

 安定した生活を考えるのであれば、前世の公務員のような職業…この世界でいえば、王城勤めの役職仕事を行うような文官あたりが良いのかもしれない。
 騎士という道も考えたが、体力づくりを一応しているとはいえ大成しづらいし、状況に応じてはあっけなく命を落とす可能性もある。

 それに、王城勤めの文官の類になれれば…場合によっては権力を得て、より安定的な生活も可能になるかもしれない。

「そのほうが良いのかなぁ?あ、でも権力を得ようとすると、確実に貴族関係の面倒事も出てくるから…王城じゃないほうの…どこかの都市の文官のほうが良いのかもしれない」

 そもそも、王城勤めになりやすいのは貴族の子息らのほうが多かったりする。
 何しろ、貴族の子は貴族の子で貴族の世界を見ているのもあって、平民の感覚では計り知れないことをやっていたりする。
 それで国が回っていたりするので、不安も色々とあるが…まぁ、腐っていたら国自体が早々に滅びるので、何かしらの対応策があるのだろう。

「どこかでの文官勤めとでも書こうかな…どこになるかはわからないけど、その方が現実的だろうしね」

 よく冒険者とかハンター、狩人、ニートなどのものが異世界物ではあるようだが、現実的に自身の身で考えると、まずは安定第一だろう。
 そのうえで、しっかりと暮らせるだけのことを考えると、この道を行ったほうが無難なのかもしれない。

 ハクロと一緒に世界を見て回る旅ってのも、それはそれで面白そうだけどね。いっそそれは老後のほうの楽しみみたいにして、資金作りから…ん?

(…あれ?老後の方での楽しみとか考えているけど、なんか結局、ハクロと一緒に過ごすことは確定しているよね、コレ)

 終生まで一緒の付き合いみたいなことになっている事実に、気が付いた。
 意識しない間に、ずっと一緒の選択肢を取らされ結おうとしているような…いや、悪くはないと思っている自分がいるけども、いつの間にか大分浸食されているような。

 ふと気が付いた、今更過ぎる事実に驚かされはしたが、とりあえず今は欠くことはこれしかないかなと思って気にしないようにするのであった…


「それはそれで、悪くはない、か…ああ、それならせっかくだしハクロに聞きたいけど、良いかな?」
【何でしょうか?】
「さっきの超長い将来設計のパターンで思ったんだけど、ハクロの希望としてはどういう場所で生活したいとか思っていたりするの?」
【そうですね…基本的に、旦那様が住まう場所であればどこであろうとも良いのですが…私としては、森の中の小屋とかが良いですね】
「人里離れた場所的な雰囲気が良いってことなの?」
【それもありますけど、現実的なところもありまして…周囲に木々がある方が、蜘蛛の糸を張り巡らせ安いですし、嵐の時とかも家を守る盾代わりにできますし、いざとなればざっくり切り倒して冬場の暖を取る手段にするなど、色々と活用しやすい木々があったほうが生活に楽だと思ったんですよね】

…思った以上に、すらすら出てきた。そっか、確かに森の中の生活もありかもしれない。
 そういう生活の知恵を知っている人がいれば、ちょっと享受してもらおうかな…
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