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出会いましょう、新しい世界と共に
閑話 張り切り過ぎだよ皇女様
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…メラドゥス帝国にて、その日、一つの良いニュースが流れた。
しばらくの間姿を見せなかった、第二皇女のディアが、久しぶりに公の場に現れて、元気な姿を見せてくれたということを。
噂では何か良からぬ呪いにかけられて眠り続けていたというが、様子を見る限りだとそんなことを関いさせないほどの活発さを得ているようで、不安な要素はなかった。
いや、しいて言うのであれば…その皇女様が復帰するのと近い時期に、一部の貴族たちの姿が見えなくなったことぐらいだろうか。
まぁ、元々あまり良くない噂しかない者たちだったようだし、貴族たちの世界はいつでも虎視眈々と上を狙っていく者たちが多いので、いなくなるのはそれはそれで他の者たちにとっては好都合なことである。
そのため、大して悪いようには受け取られることはなかったのだが…元気な姿を見せて早々に、皇女はあることをやらかした。
「というわけで、怪しい研究所を5つ、違法な商売をしていた商会を8つ、お兄様やお姉様たちを狙う気だったらしい間者や暗殺者、情報狙いの密偵など30人以上は捕縛できましたわ」
「…なぁ、娘よ。それ、人に頼んでやったことか?」
「いいえ、わたくし自らが出向いてやったことですわ。安心してくださいませ、しっかりと証拠などつかみまくって、帝国の害になりそうなものたちをいつでも潰せるようになっていますわ」
「いやいやいや、妹よ!!それ、普通は皇女の立場の人が、直接やって良いことじゃないからな!?」
「身の安全を保障されるのは良いですけれども、この間まで眠りについていたよね!?しばらくの間、出来ればゆっくりと養生なさるのが良いと、王国のほうの聖女様の診断が下っているのよ!!」
「ふふん、その程度の心配はご無用ですわ!!そう、今のわたくしは第二皇女にしてこの帝国に尽くす役目を持った華麗なる皇族!!聖女候補の身もあるけれども、世のため人のために動くのであれば、民を導く皇族が動かなくてどうしますのよ!!」
「「「正論っぽいけど、もうちょっと身分を考えて動いてくれぇぇぇぇぇぇ!!」」」
第二皇女ディアの言葉に対して、思わずツッコミを入れているのは、この国の皇帝、皇子・皇女、その他正妃など家族たち。
本来であれば皇位継承権やら聖女候補だからこその権力に関して等、何かと争うべき立場でもあるはずだったのだが…今、第二皇女が元気になり過ぎたがゆえに、逆に元気を吸われるような状態になっていた。
皇族としての自覚を持ち、一生懸命働く様は民に対して良い印象を与え、全体的な支持率の向上などに役に立つのは良いだろう。
だがしかし、一応権力争いなどで争う部分があるとはいえ、家族仲は悪いわけでもなく…それでいて、眠りにつく前よりもはるかに元気すぎる皇女の活発さに、手を焼くどころか大火傷を負わされていた。
「そのせいで、いくつかの貴族家がヤバいのはわかったけど、多少は清濁を併せのまないといけないからな!!」
「国としては健全な方向に向かうのは良いことだが、動き過ぎだって!!本当にこの前、呪いにかかって寝ていたのかって疑いたくなるぐらいだぞ!!」
「ふふん、これも王国で受けた加護のおかげですわ!!そう、今ならやる気がモリモリ湧いて、まだまだやりたいことたくさんやっていきたいのですもの!!」
「「「やり過ぎたって言っているだろうがぁぁぁぁぁぁ!!」」」
ああ、どうしてだろうか。
確かに呪いによって眠りについていた時は、また元気な姿を見たいとは願っていた。
けれども、確かにその願いは叶ったようなのだが…いかんせん、やりすぎな部分がある。
「というか、王国の聖女の加護よりも…その、なんだ、報告に上がっていた蜘蛛の魔獣の娘の加護によるものなんだよな、その活発さ」
「恐らくそうですわ!!おかげでほら、滅茶苦茶体が軽くて、空中百回ひねりや湖平泳ぎ二百周、山を制覇し谷を踏破してもなお、有り余るほどですわぁぁぁ!!」
どうやら、ここまでの活発さの元凶は王国のほうで施してもらった加護にあるらしい。
呪いが二度とかからないようにという思いでかけられたのだろうが、もうちょっとどうにか加減できただろうと言いたくもなる。
「そんな加護を施せる蜘蛛の魔獣がいるとはな…聖女ではないようだが、かなりの才能の持ち主というべきか、警戒すべきなのか…」
「噂にはあったけど、まさかここまでとは…実際に見て確かめたほうが良いのだろうか」
「まずは、この動きまくる妹をどうにかしたほうが良いんじゃないかな?」
「「それもそうなんだよなぁ…」」」
出まくる問題を解決してくれるのは良いのだが、後始末やらなんやらで追われる身にもなってほしい。
可能ならば、加護を何とか貫通しておとなしくしてくれる程度の呪いをかけてくれる人がいないかと、その場にいた者たちは本気で考えかけるのであった…
「…あ、でもできたとしても、また解呪して、さらにヤバい加護がかけなおされたりしたら本末転倒だよなぁ」
「どうしてこうなった…これでもこの国の第二皇女なのに…」
「悪事を働くよりはましだけど、それ以上に家族の心労のほうが積み重なるよなぁ…」
しばらくの間姿を見せなかった、第二皇女のディアが、久しぶりに公の場に現れて、元気な姿を見せてくれたということを。
噂では何か良からぬ呪いにかけられて眠り続けていたというが、様子を見る限りだとそんなことを関いさせないほどの活発さを得ているようで、不安な要素はなかった。
いや、しいて言うのであれば…その皇女様が復帰するのと近い時期に、一部の貴族たちの姿が見えなくなったことぐらいだろうか。
まぁ、元々あまり良くない噂しかない者たちだったようだし、貴族たちの世界はいつでも虎視眈々と上を狙っていく者たちが多いので、いなくなるのはそれはそれで他の者たちにとっては好都合なことである。
そのため、大して悪いようには受け取られることはなかったのだが…元気な姿を見せて早々に、皇女はあることをやらかした。
「というわけで、怪しい研究所を5つ、違法な商売をしていた商会を8つ、お兄様やお姉様たちを狙う気だったらしい間者や暗殺者、情報狙いの密偵など30人以上は捕縛できましたわ」
「…なぁ、娘よ。それ、人に頼んでやったことか?」
「いいえ、わたくし自らが出向いてやったことですわ。安心してくださいませ、しっかりと証拠などつかみまくって、帝国の害になりそうなものたちをいつでも潰せるようになっていますわ」
「いやいやいや、妹よ!!それ、普通は皇女の立場の人が、直接やって良いことじゃないからな!?」
「身の安全を保障されるのは良いですけれども、この間まで眠りについていたよね!?しばらくの間、出来ればゆっくりと養生なさるのが良いと、王国のほうの聖女様の診断が下っているのよ!!」
「ふふん、その程度の心配はご無用ですわ!!そう、今のわたくしは第二皇女にしてこの帝国に尽くす役目を持った華麗なる皇族!!聖女候補の身もあるけれども、世のため人のために動くのであれば、民を導く皇族が動かなくてどうしますのよ!!」
「「「正論っぽいけど、もうちょっと身分を考えて動いてくれぇぇぇぇぇぇ!!」」」
第二皇女ディアの言葉に対して、思わずツッコミを入れているのは、この国の皇帝、皇子・皇女、その他正妃など家族たち。
本来であれば皇位継承権やら聖女候補だからこその権力に関して等、何かと争うべき立場でもあるはずだったのだが…今、第二皇女が元気になり過ぎたがゆえに、逆に元気を吸われるような状態になっていた。
皇族としての自覚を持ち、一生懸命働く様は民に対して良い印象を与え、全体的な支持率の向上などに役に立つのは良いだろう。
だがしかし、一応権力争いなどで争う部分があるとはいえ、家族仲は悪いわけでもなく…それでいて、眠りにつく前よりもはるかに元気すぎる皇女の活発さに、手を焼くどころか大火傷を負わされていた。
「そのせいで、いくつかの貴族家がヤバいのはわかったけど、多少は清濁を併せのまないといけないからな!!」
「国としては健全な方向に向かうのは良いことだが、動き過ぎだって!!本当にこの前、呪いにかかって寝ていたのかって疑いたくなるぐらいだぞ!!」
「ふふん、これも王国で受けた加護のおかげですわ!!そう、今ならやる気がモリモリ湧いて、まだまだやりたいことたくさんやっていきたいのですもの!!」
「「「やり過ぎたって言っているだろうがぁぁぁぁぁぁ!!」」」
ああ、どうしてだろうか。
確かに呪いによって眠りについていた時は、また元気な姿を見たいとは願っていた。
けれども、確かにその願いは叶ったようなのだが…いかんせん、やりすぎな部分がある。
「というか、王国の聖女の加護よりも…その、なんだ、報告に上がっていた蜘蛛の魔獣の娘の加護によるものなんだよな、その活発さ」
「恐らくそうですわ!!おかげでほら、滅茶苦茶体が軽くて、空中百回ひねりや湖平泳ぎ二百周、山を制覇し谷を踏破してもなお、有り余るほどですわぁぁぁ!!」
どうやら、ここまでの活発さの元凶は王国のほうで施してもらった加護にあるらしい。
呪いが二度とかからないようにという思いでかけられたのだろうが、もうちょっとどうにか加減できただろうと言いたくもなる。
「そんな加護を施せる蜘蛛の魔獣がいるとはな…聖女ではないようだが、かなりの才能の持ち主というべきか、警戒すべきなのか…」
「噂にはあったけど、まさかここまでとは…実際に見て確かめたほうが良いのだろうか」
「まずは、この動きまくる妹をどうにかしたほうが良いんじゃないかな?」
「「それもそうなんだよなぁ…」」」
出まくる問題を解決してくれるのは良いのだが、後始末やらなんやらで追われる身にもなってほしい。
可能ならば、加護を何とか貫通しておとなしくしてくれる程度の呪いをかけてくれる人がいないかと、その場にいた者たちは本気で考えかけるのであった…
「…あ、でもできたとしても、また解呪して、さらにヤバい加護がかけなおされたりしたら本末転倒だよなぁ」
「どうしてこうなった…これでもこの国の第二皇女なのに…」
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