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第二章
強くなりたい、だからそれまではバイバイ。
しおりを挟む━︎━︎━︎━︎━︎━︎…
「あ、あの……ここは?」
「……ん」
「ん?」じゃ、答えになってないよ。私はここはどこなのかを聞いてるのに。
……まぁ、のこのここの男に付いてきたのがいけないんだろうけどさ。
「…俺の家。」
「は?」
「だから、俺の家だって。」
い、家…………。私、知らない人のしかも男性の家に来ちゃったわけ…?
冷静になった私にはやばいんじゃないかと焦ってきた。
だけど、手首を掴まれてるから拒否なんてできない……自業自得か。
「どうぞ、入って。良かったら履いてね」
彼はドアを開けると、スリッパをスッと出した。
意外と優しい……かも。
部屋の中に入るとソファに誘導され、座るように言われる。
「君、ココアは飲める?」
「え、あ…うん。飲めます……」
そういえば、髪の色…綺麗だなぁ
なんだろう……金髪じゃないんだけどキャラメル色??
「はい、どうぞ。今日冷えるしあったまるよ」
「……ありがとうございます。」
湯気がふわふわ出てて、見てるだけであったかくなる。あったかいココアを口にする。すごくあったかくて甘さが控えめでちょうど良かった。
「……あの、何も聞かないんですか?」
率直に聞いてみる。だって彼はなんも聞かないんだもん…不思議すぎて。
「聞いて欲しいの?」
「……え、いや…」
彼は、自分のマグカップを机に置いて私を見た。
「言いたくないことを無理に聞かないよ。誰だって触れて欲しくないことあるだろ」
「……や、優しいんですね」
「優しいか?俺は優しくなんてないよ。ただ、君が……いや、なんでもない。」
そう言った彼は、ココアを一気に飲むと立ち上がった。
「……飲めた?」
「うん……」
「貸して。片付けるからさ……あ、そうだ。俺、早川 陽平(はやかわ ようへい)。名前言ってなかったから」
彼はそう言うと私のカップも持つ。私も、名前…………
「……陽愛。私も名前…言ってなかったから」
「ひより、ね……先に風呂入りなよ。俺のスエット貸すから。」
お風呂…………?
え!お風呂⁈
「何もしないから安心しろよ。初めて会った奴を襲うようなことしねーよ。」
お、襲うって……どういうこと?
だけど頭をポンっと軽く触れるとスエットを差し出した。
「タオルは入って右のカラーボックスに入れてるから自由に使いなよ。洗濯物は洗濯機に入れておいて後から回すから」
「あ、はい……」
「あと、それから…」
な、長い……まだなんかあるの?
「…ちゃんとあったまれよ。一応のぼせないようにな。」
この人、すごく優しいのかも……だけど、分からないよね。優しくして後から落とすのかもしれない…あの人たちのように。
彼に言われた通り、タオルを出してからシャワーを浴びる。
浴槽に浸かるとなんかいろいろ考えてしまう……もう帰りたくない。帰ったら、1人だって現実を受け止めなきゃいけない。まだ受け入れたくないよ。
「出よう……一人でいたらいろんなこと考えちゃう」
入ったばかりだと言うのに浴槽から出た。貸してもらったスエットを着て鏡を見る……髪、切ろうかな。ずっと意味なく伸ばしていた髪。もういっそのことショートにしてしまおうか。
そんなこと考えながら、浴室から出た。リビングのドアを開けるとなんか美味しそうな匂いがした。
「お、陽愛……お腹空いただろ?」
「え…大丈夫です」
ご飯までご馳走になるなんて…図々しいし……と思った瞬間。室内にお腹の音が盛大に響いた。
「…お腹空いてんじゃん。俺、シャワー浴びてくるから食べてよ。髪、ちゃんと乾かせよ~~」
髪、濡れたままだった…早川さんが投げたタオルで髪を乾かしてテーブルの上にあるスープを飲む。
「…おいしい」
なんだか、空っぽだった私の心が少しだけ何かに包まれたような気がした。あったかいスープを飲むと、キッチンにある食器洗浄機に器を入れてスイッチを入れてから私はソファに座って彼が出てくるのを待った。
○
…んっ…………
…………、
「あれ……ここは?」
朝起きると知らない天井。
そしてなんかふわふわのベット。
陽が差している場所を見れば知らないカーテンがあって……
「陽愛、起きた……?」
「…へっ⁈」
すると急にドアが開いて驚く。
「…早川、さん……?」
「そうだよー、ご飯できたからおいでよ」
私が頷くと微笑んでドアを閉めて行ってしまった。そうか、昨日早川さんを待っていて途中で寝ちゃったんだ。
「おはようございます……」
リビングのドアを開けて入ると美味しそうないい香り…
「おはよう、よく寝れたかな?」
「はい…ご飯ありがとうございます」
テーブルの上には昨日の洋風のスープとは違って和食が並ぶ。
「…私、こんなにいいんですか?」
「ん?いいんだよ?陽愛のために作ったんだし、朝ごはんはちゃんと食べなきゃ元気出ないでしょ?さあ、座って座って」
彼に促されイスに座ると箸を渡される。
礼儀正しく彼が「いただきます」と言ったから私も慌てて手を合わせる。
「あ、美味しい……」
この煮物も、お味噌汁も……朝ごはんなのに手が込んでて美味しい。
「そっか良かった。そう言って貰えれば俺も嬉しいよ。作った甲斐があったなぁ」
なんて言いながら彼もお味噌汁を一口飲んだ。
「そうだ、陽愛は日中どうする?俺学校行こうと思ってるけど」
学校……は、7日は休めることになってるから今日は行かなくていい。
……連絡してないかもしれない連絡しなきゃ……。
「家にいるなら俺も行かないけど。」
「え?」
「たまにはいいじゃん?」
いや、良くないよね……⁈
大丈夫なの?
「あの早川さん、私も一度家に帰るので……学校行ってください。」
「なら、陽愛の家に一緒に行く。誰かに攫われたら大変だし。」
いや、攫われないと思うんだけど……
「それに、俺陽平。陽平って呼んで」
彼はそう言った時にはもう食べ終えていて流しに行って食器を濯いで食洗機に入れていた。
「じゃあ、着替えてくるわ。皿は流しに置いておいて。」
彼はリビングから出て行った。急いで食べて片付けよう……片付けまでしてもらってたら悪いし居候なんだから。
「あれ?食洗機やってくれたの?ありがとう」
「いえ……あのはや、陽平くん私昨日洗濯機いれちゃって…」
私は着替えがない。
昨日洗濯機に入れちゃったし……どうしよう。
「あ、大丈夫だよ。乾いたから」
彼の手には私の昨日着ていたワンピースが乗っていて渡される。
ワンピースは、洗濯されているはずなのに皺1つ見つからない。
「着替え来なよ。着替えたら呼んで」
そういう彼は、もうVネックのTシャツにジーパンを履いていてすぐに出かけられそうな格好をしていた。
返事をする間もなく、彼はリビングの外に出てしまったのでササっとワンピースに着替えた。
━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎━︎…
「陽愛、バイクがいいか徒歩がいいか車か」
「え、陽平くんって高校生だよね?車の免許は……」
さっき学校って言ってた。高校生なら車の免許は持ってないはずだし、まさかの無免許………
「大丈夫、無免許じゃないから。」
「え?」
「俺、高校生だけどさ休学してたからもう19なんだよ」
「え、えぇ⁈じゃあ、ちゃんと……」
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えっ……えええ⁉︎
う、嘘でしょっっ……‼︎
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・
・
・
原付に揺られて30分くらいで家の近くに来た。家の前に立つと昨日もいたはずの場所なのになんだか懐かしく感じてしまう。
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ここには想い出が詰まりすぎてるから……強くなれたらまた戻って来る。
早く、帰るね…それまでバイバイ。
家に鍵をかけると彼の原付に乗った。私が「いいよ」と言えば陽平くんがエンジンをかけて走り出した。
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