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第1章

◇王国騎士団のおかえりです。

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「いらっしゃいませ~お好きなお席にどうぞ」
 討伐が終了したという知らせが届いてから一週間経った。あれから男たちが帰ってきて少し賑わいが戻って来ていた。
「ミミちゃん! 今日も可愛いねぇ」
「ふふ、ありがとうございます。今、お水持ってきます」
 だけど、フェルさんは本当に帰ってこなかった。まだ戦死したという知らせは届いていないが、彼と共にいた騎士さんが私を訪ねてきて手紙を持って来てくれたのだ。フェルさんは、元々怪我をしてうまく動かない身体だった。怪我の前は前線で活躍する騎士だったため皆が期待をし警備員なのに前線に送ってしまったのだと教えてくれた。仲間を庇ったんだとフェルさんらしいな、なんて思った。
 でも、それを受け入れることはできなくて手紙を読んで優しい彼に恋をしていたんだと自覚した。
「ミミちゃん、元気かい?」
「はい、げんきですよ!」
「そうか、ならいいんだけど……」
 私はそれから、仕事に集中した。仕事をしていればフェルさんのことも一瞬忘れられる。
 そんな時、突然お店の扉が開いた。
「お食事ですか?」
「いえ、私共は王宮に仕える王宮第一騎士団です。治癒魔法士を探しているのだが、この辺りで知らないだろうか」
「……なぜ、探しているのですか?」
「討伐にて騎士団長が大怪我をし重症を負われたのだ……だから治癒魔法士を探している」
 討伐で、怪我……
「他の治癒魔法士はいないのですか?」
「はい、皆ダメで……ですが、モリス王国に近いこちらから聖魔法を使える方がいるかもしれないと思いこちらに来たのですが」
「……っ……」
 もし、ここで手を挙げなかったらその人は死んでしまう。今消えそうな命があるのに動かないなんて、私はそんなことできない……元聖女として許せないことだ。
「ここにはいないよ、騎士さん。悪いけど帰ってくれ、客もいるからね」
 そうステラさんが言うと、悲しい表情をした騎士さんは綺麗なお辞儀をした。
「そうですね、申し訳ない。では――」
 私は彼の言葉を遮り、手を挙げた。
「私、聖魔法が使えます」
 少し俯きそう言った。
「本当か!?」
 騎士さんは私の肩を持ち喜んだ。だけど、ステラさんたちはとても驚いている。そりゃ、この国の人間はほとんど魔力はない。あるとしたら貴族や移民とかだけだ。
「ミミ、お前魔力持ちだったのかい?」
「はい。秘密にして申し訳ありませんでした」
 ステラさんに謝ると私は騎士さんについてこの店を後にした。大丈夫、すぐ帰れるだろうと願いながら……。


「ご同行いただき感謝いたします、……失礼ですが、名前を教えていただいてもよろしいですか?」
「はい、ミシュリーヌと申します。すみません名乗りもせず……」
 馬車に乗ると私は先ほど会話した騎士さんと話をしていた。その方はルーカスさんと言って騎士団長のそばにいたらしい。
「そんなことありません、こちらこそいきなり連れ出すようなことしてしまい申し訳ありません。ですが、医師も治癒魔法士も匙を投げてしまったのです……」
「そうなんですか」
 それだけ大変な傷なのか、もしくは怪我の他に何かあるのか……
「すみません、ここから転移魔法使います」
「て、転移魔法!? ルーカスさん、魔法使えるのですか?」
「一応、貴族でして魔力を受け継いだだけです。一分一秒も無駄にはできないので」
 彼の転移魔法で一瞬で王宮に到着した私は、王宮の広い場所に案内された。そこには重傷の騎士様がたくさんいて床に寝かせられている。
「ミシュリーヌ様、こちらです」
 ルーカスさんに案内された先は綺麗に整っている部屋、そこに横たわっているのがきっと騎士団長なんだろう。
「この方です、どうでしょうか?」
 近くで見ると処置されているから包帯ぐるぐる巻きで、顔とかわからない。だけど胸が上下しているから息はあるが苦しそう。
 私は以前していたように手をかざす。傷口は縫われているが縫われているだけの状態でこのままでは助からない。それに彼は黒いモヤがかかっていて毒をと呪いを受けていた。
「……慈愛に満ちたる天の光よ、それは天使の息吹なり――エンジェルブレス」
 髪が舞い上がり金色の光がふわふわと輝いた。すると、彼にあった傷などが退いて綺麗になっていくのがわかる。それを確認すると体に回ってしまいそうな毒や呪いを解く呪文を唱える。すると、彼の体から黒いモヤがなくなった。
「……ルーカスさん、これで大丈夫だと思います。団長様は、毒と同時に呪いも受けていたのです。それも浄化致しましたのでご安心ください」
「ほ、本当ですか! ありがとうございますっ」
「いえ……私は」
 役目は終わった。
 もう帰ろう……そう思ったのに、団長さんの指が微かに動き目が開いた。
「フェル様っ!」
 ――フェル? まさかね……フェルさんは団長さんじゃないもの。
「お目覚めですか!?」
「あぁ……俺は、どうして……」
 彼は起き上がると私を見た。すると目を見開く。
「この方が助けてくださったのです!」
「……っ……」
 なんで、だろう。
 生きていてくれて嬉しいのに、ここで会いたくなかったと思う。
「君は、ミミちゃん……?」
「……っわ、私はもう帰ります。失礼します」
 私は部屋を飛び出すとさっきの大広間を素通りできず全体にヒールを施して走って王宮から出た。だがしかし、久しぶりに聖魔法を使ったせいで王宮を出たすぐそこで倒れてしまい目を開けた時には王宮に戻っていた。

 
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