【中編集】そのままの君が好きだよ

鈴宮(すずみや)

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3.おまえじゃ、ダメだ

7.抜け殻(1)

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 それからしばらくの間、シェイラは抜け殻のように日々を過ごした。
 食事や睡眠といった生命の維持に必要な最低限度の行為は行うし、学園で授業も受けていた。けれど、着替えなどは完全に受け身――侍女たちの着せ替え人形状態で、誰が何を言っても、右から左へと情報が綺麗に流れていく。シェイラの父親や母親、事情を聞いたアルヴィンも含め、皆が彼女を心配していた。


「まぁ……感情を爆発させた結果がその有様ですの? 普通はスッキリして、吹っ切れるものなのでは?」


 そう口にしたのはミンディだった。彼女はその後も、シェイラの向かう先々に現れては、会話を交わしていく。
 といっても、シェイラは学園生活を始めてから三日目以降、ずっとこんな有様なので、ミンディと交わした会話の内容なんて碌に覚えていない。それでもミンディはめげずに、シェイラへと話し掛け続け、ついには事情を聞き出すに至ったのだ。


「スッキリなんてそんな――――サイラス様をビックリさせてしまいましたし、こんな醜い感情を吐き出したんですもの。かえって自分が汚れてしまったような、そんな気分です」


 シェイラはそう言って俯いた。


「まぁ、感覚は人それぞれですけど……わたくしは良いと思いますわ。だって、六年間も吐き出さず、抱え込んでいらっしゃったんでしょう? 人間、言わなければ分からないことって沢山ありますもの。サイラス様も、ほんの数文字の言葉が他人を深く傷つけることもあると、学んだはずですわ」


 それは思わぬ返答だった。シェイラは目を見開き、ミンディのことを凝視する。


「何ですの?」


 ミンディは唇を尖らせ、怪訝な表情でシェイラを見返す。


「いえ……ミンディ様にはてっきり、叱られるものだと思っていましたから」


 幼い頃からミンディは、サイラスのことを崇拝しているように見えた。宰相の孫娘ということも影響しているのだろうが、王家に対する敬意が人一倍厚く、また執着も強い。王太子妃に掛ける想いも、妃教育を受け始めた当初から、一番強かった。


「――――以前のわたくしならば、そうしていたかもしれません」


 ミンディは少し考えてから、そう口にした。どこか懐かしそうな表情に、シェイラの虚ろな心が少しだけ反応する。


「では、一体なにがミンディ様を変えましたの?」

「ふふ……シェイラ様が知る必要のないことですわ」


 尋ねれば、ミンディは顔をクシャッとして笑った。ミンディが穏やかに瞳を細めて膝を抱く。彼女らしからぬ、珍しい行動だった。シェイラも彼女に倣って膝を抱いた。そうすると少しだけ、心が落ち着くような気がした。


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