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2.元傾国の悪女は、平凡な今世を熱望する

1.平凡な日々をぶち壊す、俺様プリンス(3)

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「――――――どうやら、ちゃんと条件は守ってもらえたらしいな」

「……何がですか?」


 気づけば、わたしの目の前に、エルヴィス殿下によく似た男性が立っていた。
 わたしのことを上から下までじろじろ眺めて値踏みしつつ、殿下はニヤリと口の端を上げる。意地の悪い笑み。だけど、そういうのに耐性のないお上品な令嬢方がメロメロになりそうな、そんな表情にも見える。
 怪訝な表情を浮かべるわたしに、殿下はクッと喉を鳴らした。


「この俺が生徒会長なんてクソ面倒くさい役割を務めるんだ。役員はあいつらだけじゃダメだって言うし、最後の一人の条件として、控えめで口が堅い、堅実な人間を要望した。ここでのことを口外しようとか、妃になろうって野心を持つような人間だけは寄こすなと言っておいたんだが」


 満足気な笑み。何だか腹が立ってきて、眉間にそっと皺を寄せる。


「……つまり、殿下に興味が無く、かつ殿下の本性を口外しないような人間を希望されていた、という認識でよろしいんでしょうか?」

「そういうこと。話が早いじゃん」


 答えつつ、殿下はケラケラと声を上げて笑った。
 言葉遣いといい、普段とは異なる風貌と言い、本当にエルヴィス殿下なのか疑わしい。だけど、実際にこの部屋を駆け回っているのは彼の側近たちだし。本人がわざわざ条件云々言うんだから間違いないのだろう。


(……好都合と言うべきか、不都合と言うべきか)


 正直、王族なんて一生関わりたくないって今でも強く思っている。でも、関わると決まってしまったからには、このぐらい分かりやすい人間の方がやりやすい。しっかりと距離を保って、一年間を適当にやり過ごせば済みそうだ。


「名前は?」


 殿下がそう言って楽し気に目を細める。目の前に、殿下の手が差し出されていた。


「ザラ・ポートマンです。口の堅さはお約束しますが、あんまり仕事できませんよ、わたし」

「別にいいよ。容赦なく扱き使うからさ」


 ため息を吐きつつ手を握り返すと、殿下は小さく笑った。

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