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2.元傾国の悪女は、平凡な今世を熱望する
1.平凡な日々をぶち壊す、俺様プリンス(1)
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わたしには前世の記憶がある。
「ザラ、今帰り?」
振り向けば、そこには幼馴染で同じ魔術科に通っているオースティンがいた。
良心の塊みたいな優しい男で、平均的な顔立ち。一緒にいるとすごく落ち着く人間だ。
「ううん、今日から生徒会だから」
わたしが転生したこの世界では、魔力を持つ人間は丁重に扱われる。幼くして給金が与えられる他、国から色んな特権を与えられる。
だけど、その代わりに将来は国のために働くことが決まっている。わたしたちがこの学園に通っているのも、国からの要請だ。
そんなわけで、生徒会なんてただ面倒なだけの集まりだけど、指名されたからには役目を果たさなければならない。ため息を一つ、わたしは首を横に振った。
「あぁ、ザラは優秀だもんね。先生に目を付けられちゃったんだ」
「……どこが? 至って平凡だと思うけど」
言い返しながら、ついつい眉間に皺が寄る。『優秀』なんて、わたしの人生には無用の長物。寧ろ忌避すべき単語だ。
学園でのわたしは、筆記も実技も成績は中の中を保ってきた。積極的でも消極的でもない、至って普通の魔女だった。優秀だと判断される要素は1ミリだってなかったはずなのに。
「控えめで先生の頼みもよく聞くしさ。優秀って成績だけを言うんじゃないと思うけど」
オースティンはわたしのことを撫でながら穏やかに笑う。
(そういうもん? そっか……これからはもっと気を付けないと)
認識を新たに、わたしは静かにため息を吐く。
「だけど、ザラはついてるよ」
「ついてる? なにが?」
「あのね、今年の生徒会はエルヴィス殿下が会長を務めるんだって」
「エルヴィス、殿下? そんな……嘘でしょう⁉」
思わぬ情報に、唖然としてしまう。
(信じられない。まさか、生徒会なんて面倒な仕事を王族に押し付けるとは……)
平民で足りないなら、貴族のボンボンで良いじゃない。それとも、最も高貴な人を差し置いて、長を立てることは出来ないと思ったのだろうか?
「確かな情報筋から聞いた話だから本当だよ。多分、殿下が生徒会に入るってバレたら、女の子たち皆が手を挙げて大変なことになるから、今日まで伏せられてたんだと思う」
オースティンはわたしの気持ちに構うことなく、淡々と事実を述べる。
どちらにせよ、わたしの読みが浅かったことは事実だ。緊張で背筋がビリビリと震える。逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
エルヴィス殿下っていうのはこの国の第二王子で、容姿端麗、文武両道。皆に優しくて、皆に愛される、絵に描いたような完璧な王子様だ。
まだ婚約もしていないから、貴族の御令嬢方はこぞって彼の側に付き纏い、虎視眈々と未来の王弟妃の座を狙っている。
彼にお近づきになりたい――――そんな女性が大挙し、生徒会が大変なことになるのを避けたかったって事情は分からなくもない。
エルヴィス殿下のことは、学園内で何度か目にしたことがある。いつ見ても、たくさんの人に囲まれて、キラキラしい笑顔を浮かべていた。
だけど、そんな表情すらわたしにとっては害悪。酷い胸やけを起こした記憶しかない。絶対にお近づきになりたくない人間ナンバーワンだ。
「ザラ、今帰り?」
振り向けば、そこには幼馴染で同じ魔術科に通っているオースティンがいた。
良心の塊みたいな優しい男で、平均的な顔立ち。一緒にいるとすごく落ち着く人間だ。
「ううん、今日から生徒会だから」
わたしが転生したこの世界では、魔力を持つ人間は丁重に扱われる。幼くして給金が与えられる他、国から色んな特権を与えられる。
だけど、その代わりに将来は国のために働くことが決まっている。わたしたちがこの学園に通っているのも、国からの要請だ。
そんなわけで、生徒会なんてただ面倒なだけの集まりだけど、指名されたからには役目を果たさなければならない。ため息を一つ、わたしは首を横に振った。
「あぁ、ザラは優秀だもんね。先生に目を付けられちゃったんだ」
「……どこが? 至って平凡だと思うけど」
言い返しながら、ついつい眉間に皺が寄る。『優秀』なんて、わたしの人生には無用の長物。寧ろ忌避すべき単語だ。
学園でのわたしは、筆記も実技も成績は中の中を保ってきた。積極的でも消極的でもない、至って普通の魔女だった。優秀だと判断される要素は1ミリだってなかったはずなのに。
「控えめで先生の頼みもよく聞くしさ。優秀って成績だけを言うんじゃないと思うけど」
オースティンはわたしのことを撫でながら穏やかに笑う。
(そういうもん? そっか……これからはもっと気を付けないと)
認識を新たに、わたしは静かにため息を吐く。
「だけど、ザラはついてるよ」
「ついてる? なにが?」
「あのね、今年の生徒会はエルヴィス殿下が会長を務めるんだって」
「エルヴィス、殿下? そんな……嘘でしょう⁉」
思わぬ情報に、唖然としてしまう。
(信じられない。まさか、生徒会なんて面倒な仕事を王族に押し付けるとは……)
平民で足りないなら、貴族のボンボンで良いじゃない。それとも、最も高貴な人を差し置いて、長を立てることは出来ないと思ったのだろうか?
「確かな情報筋から聞いた話だから本当だよ。多分、殿下が生徒会に入るってバレたら、女の子たち皆が手を挙げて大変なことになるから、今日まで伏せられてたんだと思う」
オースティンはわたしの気持ちに構うことなく、淡々と事実を述べる。
どちらにせよ、わたしの読みが浅かったことは事実だ。緊張で背筋がビリビリと震える。逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
エルヴィス殿下っていうのはこの国の第二王子で、容姿端麗、文武両道。皆に優しくて、皆に愛される、絵に描いたような完璧な王子様だ。
まだ婚約もしていないから、貴族の御令嬢方はこぞって彼の側に付き纏い、虎視眈々と未来の王弟妃の座を狙っている。
彼にお近づきになりたい――――そんな女性が大挙し、生徒会が大変なことになるのを避けたかったって事情は分からなくもない。
エルヴィス殿下のことは、学園内で何度か目にしたことがある。いつ見ても、たくさんの人に囲まれて、キラキラしい笑顔を浮かべていた。
だけど、そんな表情すらわたしにとっては害悪。酷い胸やけを起こした記憶しかない。絶対にお近づきになりたくない人間ナンバーワンだ。
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