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1.そのままの君が好きだよ

4.君は何も悪くない(2)

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 思えばジャンルカ殿下から、わたくしの好みを聞かれたことは無かった。彼の好みを教えて貰ったことも無かった。食べ物にせよ、装飾品やドレスにしろ、婚約者としての義務だから与えていただけ。ジャンルカ殿下は、本当は何一つわたくしに分け与えたくなかったのだろうなぁと思う。


(なんて……全部全部、自業自得だけれど)


 昨日の殿下の言葉を思い出すと、気持ちが重苦しくなっていく。
 全てはわたくしが殿下に歩み寄らなかったから。殿下の気持ちを考えなかったのがいけないというのに、これではまるで責任転嫁だ。


(これ以上自分のことを嫌いになんてなりたくない)


 わたくしは、わたくし自身を責めなければならない――――そう思ったその時、サムエレ殿下がわたくしを見つめていることに気づいた。


「あのさ……昨日の今日だから無理かもしれないけど」


 そう言ってサムエレ殿下はわたくしの手を握る。思わぬことに、わたくしは目を見開いた。


「兄上のことを考えるのは止めなよ」



 殿下の言葉に、わたくしの胸が震える。


(なんてお答えしたら良いのだろう?)


 そんなことを思いながら殿下のことを見つめていると、彼はふ、と目を細めた。


「――――まぁ、忘れられるように俺が頑張れって話なんだけどさ」


 サムエレ殿下は言いながら、バツの悪そうな表情を浮かべる。わたくしはフルフルと首を横に振った。


「いえ! 殿下は何も悪くありません。婚約破棄の原因もそう――――悪いのは全部わたくしで……」

「ディアーナは何も悪くないよ」


 けれどその時、一切迷いのない口調で、サムエレ殿下はそう口にした。


「……え?」

「ディアーナは何も悪くない」


 サムエレ殿下は真剣な表情でそう繰り返す。その瞬間、何の予兆もなく、涙がぽたりと零れ落ちた。


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