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【終章】物語の終わりとはじまり
【番外編】王太子婚約者の恋愛事情(後編)
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ヨハネスとクララは、宮殿までの道のりを並んで歩いた。クララは王太子の婚約者で、密室で異性と二人きりになるべきではないし『内緒話をする時は外の方が良い』とヨハネスが言うからだ。
「コソコソするから怪しまれるんだよ。堂々としている方が余程良い。もっとも、今から君に話すのは機密事項ではないけどね」
勿体つけた言い方に、クララは僅かに片眉を上げる。
「機密事項じゃないけど提供したい情報? 一体どんな?」
「もうすぐ隣国の王女が来訪することはクララも知っているだろう?」
「ええ、それはもちろん」
四方を海で囲まれたシャルゾネリア王国。渡航には大きな危険を伴うため、外交には大使を立てられることが多い。
けれど今回、コーエンの王太子即位と、クララとの婚約を祝うため、王女アリスの来訪が決まっていた。
「アリス王女はね、絶世の美女らしいんだ」
ヨハネスはそう言って、悪戯っぽく瞳を細める。それで?と視線で先を促してみても、彼はニコニコと微笑むばかり。
「…………へーー、そうなんですね」
思っていたよりずっと、情報の重要性が低い。クララの眉間がピクピク動いた。
「大事なことだろう? 美しいっていうのは大きな武器だよ。なんでも、世話役にフリードとジェシカが指名されたらしいし、警戒しておいた方が良いんじゃないかなぁと思って」
「コーエンとジェシカ殿下が?」
これにはクララも驚いた。コーエンは婚約を祝われる側であり、世話役に指名されることは通常ありえないからだ。
「意地が悪いですね……情報提供するならそっちを先に言ってくださいよ」
クララの言葉に、ヨハネスは扇で口元を隠す。どうやら笑っているらしい。クララはムッと唇を尖らせた。
「本来なら、僕やカールが世話役を務めるべきだし、実際そのように準備をしていたんだ。だけど、先方の希望じゃ仕方ない。今頃父上がフリードに打診をしている頃だろうよ」
「なるほどね」
先程のジェシカとのやり取りを思い返しつつ、クララは小さく唸り声を上げる。
祝われる対象であるコーエンを世話役に立てる意味――――しかもコーエンは王太子で、相手は隣国の王女だ。
「隣国はアリス殿下とコーエンとの結婚を望んでいる?」
「……そうだね、その可能性が高いと僕は思っている」
クララと婚約を結んだばかりで考えたくないが、あり得ないことではない。
事は王族の婚姻。ひいては国同士の力関係や友好度合いにも関わってくる。己の知らぬ間に、全てが根底から覆されてしまう――――そんな可能性だって大いにあるのだ。
「情報を持っているのといないのとじゃ、戦い方が違うだろう?」
ヨハネスはもう笑っていなかった。淡々と意見を述べつつ、クララの表情を窺っている。
「そうね。教えてくれてありがとう」
きっとコーエンは、クララには何も言わないだろう。クララは日中王妃教育を受けている時間が長いし、国賓の接待は大事な公務だ。仰々しく構えられたくはないだろう。
「何かあったら、遠慮なく僕を頼ると良い」
ヨハネスはそう言って、クララの頭をポンと撫でた。明るい表の顔とも、ほの暗い裏の顔とも違う真摯な表情。どんな表情を返せば良いか分からず、クララは思わず俯いてしまう。
けれど、次の瞬間
「――――隣国の王女なんて、いかにも利用し甲斐が有りそうだからね。元々は僕が取り入る予定だったんだし、そちらの方が丁度いい。王太子でなくとも、金と権力は持っておいた方が良いだろう?」
ヨハネスは妖しく目を細め、口の端にニヤリと笑みを浮かべた。すっかりいつも通りのヨハネスだ。
(何よ。ちょっとだけ、動揺しちゃったじゃない)
ほっと胸を撫でおろしつつ、クララは居住まいをただした。
「状況は分かりました。わたしもそのつもりで動きます」
言えばヨハネスは満足そうに微笑み、ヒラヒラと手を振った。
***
(とはいえ)
もしも王女が本気でコーエンとの結婚を望んでいるなら、クララにはどうすることも出来ない。
『クララじゃないとダメだから、ずっと俺の側にいて欲しい』
求婚の際、コーエンはそう言ってくれた。
けれど、状況は刻一刻と変わっていく。プロポーズの言葉と国益とじゃ、後者の方が圧倒的に重い。
コーエンがクララとの婚約を破棄したとしても、誰も彼を責めないだろう。クララとて受け入れるしかないと思っている。
(思っているんだけど)
理性と感情は別物だ。
本音を言えば、コーエンにはクララを選んで欲しい。クララ以外を愛する気はないと。唯一の妻だと言って欲しい。
(まだ、アリス殿下がどんな腹積もりかは分からないけど)
ついついため息が漏れてしまう。
「クララ、戻ってる?」
その時、執務室の扉が開き、コーエンが顔を覗かせる。クララは微笑みつつ、急いでコーエンを出迎えた。
「お帰りなさい、コーエン」
二人きりの執務室内、ギュッと力強く抱き締められる。コーエンの温もりが、香が、酷く懐かしい。ヨハネスの情報提供のせいだろうか。目頭がほんのりと熱い。
(もしかしたらわたし、情緒不安定なのかも)
そんな自分を誤魔化すかのように、クララはコーエンの胸に顔を埋めた。
「陛下のお話は? 何だったの?」
「ああ――――なんでも、近々ジェシカと剣舞を披露しなきゃいけないんだってさ」
「剣舞を?」
てっきりはぐらかされると思っていたため、クララはいささか驚いてしまう。
(もしかして、アリス殿下の話じゃ無かったのかしら?)
本当のところは分からないが、ヨハネスの勇み足ということも十分にありうる。情報とはそういうもの。収集、分析、取捨選択し、適切に動かなければならない。
為政者は我慢強くあれ、とはヨハネスの教えだ。もう少し踏み込んでみたいところだが、これ以上の詮索は無用だろう。
「公務ばっかで身体が鈍ってるし、感覚も忘れてるから練習しなきゃな」
コーエンはそう言って、小さくため息を吐く。
「頑張ってね、コーエン」
頬にそっと口づければ、コーエンは至極嬉しそうに笑った。
***
ヨハネスの事前情報通り、アリス殿下は大層美しい姫君だった。
真っ白な肌にシルクのような光沢を放つ髪、紅い瞳が神秘的で、同性であるクララでさえ思わず息を呑んでしまう。
「この度は御即位、ご婚約、おめでとうございます」
恭しく祝辞を述べられ、コーエンと共に笑顔で応える。
「本来ならば発表の折に参るべきところ、こうしてご挨拶が遅くなってしまったこと、父に代わってお詫び申し上げます」
「とんでもないことです。長旅でお疲れになられたでしょう? まずはごゆるりと身体を休めてください」
コーエンはそう言って、スッと腕を差し出す。傍らには男装姿のジェシカが並んだ。
アリスはパッと瞳を輝かせると、コーエンの腕を取り、美しく微笑む。クララの胸がツキンと痛んだ。
「わたくし、行ってみたい場所が沢山あるのです! 是非、お二人に連れて行っていただきたいわ!」
三人の後をしずしず歩きながら、クララの表情は次第に曇っていく。
『二人』とわざわざ言及したのだ。その中にクララは含まれていない。本当ならば同行したいが、叶わないだろう。
チラリとコーエンを見上げれば、アリスと会話をしながら、楽しそうに微笑んでいた。それが正解だと分かっているが、モヤモヤはする。
(コーエン、わたしは?)
何度もそう尋ねたくなったが、クララは必死に口を噤んだ。
ヨハネスの情報は正しかった。
世話役――――という言葉が正しいかは分からないが、アリスは連日に渡って、コーエンとジェシカを連れまわした。
歴史的価値の高い神殿や離宮、湖等を見て回り、食事やお茶を共にする。まるで恋人――――いや、婚約者であるクララよりも余程親密だ。クララとコーエンは、滅多にデートなど出来ないのだから。
「――――こんなことをしている場合か?」
尋ねたのはカールだ。
イゾーレと共に汗だくになるまで、クララはひたすら走り続ける。腹筋、腕立て伏せ、剣の素振り等々、毎日クタクタになるまで身体を動かした。
「鍛えろって仰ったのは殿下でしょう?」
そう言って唇を尖らせれば、カールは無言でため息を吐く。
痛々しいことは重々承知。
けれど、執務室に一人で居ると悲しくなる。苦しくなる。王妃教育を受けていても、何だか虚しく、無駄に思えてきて、どうにもやり切れないのだ。
その点、身体を動かしている間は、嫌なことを忘れられる。夜、クララに会いに来たコーエンに対して強がりも言える。
「君は存外不器用だよね」
五日が経過した頃、ヨハネスがクララの元を訪れた。イゾーレやカールは公務があるため、今日はクララ一人きりだ。
ヨハネスの言葉に応えぬまま、クララは静かに汗を拭く。
「困ったときは僕を頼れって言ったのにな」
呆れたような笑い声。クララは俯いたまま、グッと眉間に皺を寄せた。
「フリードとの結婚がダメになったら、僕のところに来れば良いだろ?」
ヨハネスの胸に顔を押し付けられ、クララの目頭が熱くなる。ずっと堪えていた涙が零れ落ち、喉が焼けるように痛くなった。
「――――まだ、ダメになってない!」
「知ってる」
ポンポンと背中を撫でられ、クララの口から嗚咽が漏れる。
「知ってるけど、僕は狡いからね。好きな子が弱っている時に漬け込むのは当然だろう?」
胸が痛む。
けれど、これまで一人で抱えていた重荷が一気に軽くなった気がした。
「君も少しぐらいズルを覚えた方が良いよ。人の好意を――――僕を利用して良いんだ。覚えておいて?」
クララには頷くことも、首を横に振ることも出来なかった。
***
その晩、クララはバルコニーで一人、風にあたっていた。
(コーエンは一体、どうする気だろう?)
もうすぐアリスの帰国の日。けれど、彼からは何も――――婚約解消を匂わせるようなことは言われていない。
けれどコーエンは、ずっとアリスの側に居る。
自信なんて全くない。コーエンがクララを選んでくれること。コーエンの考えを直接尋ねるだけの勇気も。
「クララ!」
けれどその時、扉をドンドンと喧しく叩く音が聞こえた。
「コーエン?」
切羽詰まった声。急いでドアを開ければ、コーエンは勢いよくクララのことを抱き締めた。
「コーエン!? 一体どうしたの!?」
「行くなクララ! 頼むから、婚約破棄なんてしないで! 俺はクララが居ないとダメなのに!」
「……え? なに? どういうこと?」
今にも泣きだしそうなコーエンの様子に、クララは戸惑い首を傾げる。
「どうすれば良い? どうしたら俺と結婚してくれる? ヨハネスじゃなくて、俺と――――」
「ちょっと、待ってよ! 婚約破棄だなんて……そんなこと考えてないわ。そもそもわたしの方からそんなことが出来る筈ないじゃない」
あまりにも訳が分からず、胸が騒めく。
「大体、婚約を破棄しようとしているのはコーエンでしょ!」
「俺が!? そんなこと、する筈ないだろう?」
コーエンは驚きに目を見開き、クララをまじまじと見つめる。
「一体どうしてそんなこと……」
「だって、コーエンったらアリス殿下に気に入られちゃったんでしょう!? 結婚を迫られてるんでしょ!? そしたらわたしは用済みじゃない! 王族同士の結婚の方が、国にとってもメリットが大きいもの!」
堪えていた筈の感情が爆発する。ずっと抑え込んでいたのに、最早我慢が出来なかった。涙がポロポロと零れ落ち、クララの頬を濡らす。コーエンは呆然としながら、クララのことを眺めていた。
「クララ――――俺さ、王太子であることより、クララと一緒に生きることの方が、ずっとずっと大事だよ?」
優しく涙を拭われ、クララは顔をクシャクシャにする。
「もしも隣国が『王太子との婚姻を望む』って言うなら、俺は喜んで王太子の位をカールかヨハネスに明け渡すよ。だけど、クララのことは渡せない。俺はクララじゃないとダメだから」
ずっとずっと欲しかった言葉。不安や葛藤が涙に溶けて、胸を優しく温める。
「嘘……本当に、それで良いの?」
「もちろん。大事なのは王太子の地位じゃない。クララと一緒なら何だってできる。そうだろう?」
コーエンの問い掛けに、クララは肩を震わせる。それからグッと背伸びをし、コーエンの唇を塞いだ。
「コーエン……わたし、すごく寂しかった」
抱き締め、抱き締められる。コーエンは片手でクララを撫でながら、腕にグッと力を込めた。
「俺も。……好きだよ、クララ。クララが好きだ。絶対、放さないから」
コーエンが愛し気にクララを見つめる。二人は微笑み合い、もう一度唇を重ねたのだった。
***
「ジェシカ殿下のファン!?」
「そう。正確には、ボクとフリードのセットが好きなんだってさ」
ようやくアリスが帰国し、すっかり平和の戻った執務室。コーエンとジェシカとお茶を飲みながら、クララは呆気に取られていた。
「何でも、先の宴で大使が持ち帰ったボク達の絵姿が好みで、ずっと来訪の機会を狙ってたんだって。おかげで剣舞も披露する羽目になったし、結構大変だったよ」
アリスが二人を世話役に指名した理由――――事の真相に辿り着き、クララは脱力してしまう。
「だから殿下は、出迎えの場でも男装をしていらっしゃったんですね」
「うん。そういうオーダーだったからね。だから大丈夫。あの子に恋愛感情はないよ。もちろんフリードにも。暇さえあれば『クララに会いたい』って漏らしてたぐらいだから、安心して?」
揶揄するように微笑まれ、クララの頬が紅くなる。同時に、思わぬ形で自分の行動がバレてしまったコーエンは、照れくさそうに顔を背けた。
「それにしても、フリードは言葉足らずというか、不器用というか……クララを不安にさせるとは、まだまだ修行が足りないねぇ。ヨハネスの所に弟子入りでもして来たら?」
その瞬間、ピクリとコーエンの身体が跳ねた。眉間にグッと皺を寄せ、不機嫌そうに唇を尖らせる。
あの夜以来コーエンの前で『ヨハネス』は禁句だ。言えばクララを抱きすくめ、警戒を露に周囲を見回す。
「ねえ、コーエン。どうしてあの夜『わたしが婚約を破棄する』って勘違いしたの? そう言えばあの時、ヨハネス殿下の名前を口にしていたけど……」
「…………」
事情を話したくないのだろう。コーエンは口を噤んだまま、そっぽを向いている。
「コーエン」
「実はね、あの夜ヨハネスから手紙が届いたんだ」
「ジェシカ! 勝手にバラすなって!」
コーエンは真っ赤に顔を染め、バツが悪そうに頭を掻く。
「【クララは僕が貰う。君とは結婚させない。既にクララの承諾は得た】なんて書かれてあってさ。いやぁ、中々に情熱的な手紙だったなぁ。どっかの誰かとは大違いだ」
(そっか。そんなことが……)
コーエンをけし掛けるため、前回同様ヨハネスは策を弄したらしい。
もしも彼が『アリスがコーエンとの結婚を望んでいるわけではない』と知っていたのなら、本気ではなかったのだろうが。
(あれ?)
気づけばクララの頬は真っ赤だった。胸がドキドキ鳴り響き、何だか居た堪れない気持ちになる。
「なっ……クララ!? ダメだからな! 絶対、俺と結婚してくれないと!」
コーエンが大慌てで、クララの元に跪く。ジェシカがニヤニヤと笑いながら、二人のことを見つめている。クララは思わず口の端を綻ばせた。
「そうだ、クララ! 今から俺とデートしよう!」
「え? デート? 今から?」
公務は既に終わったが、辺りは薄暗く、出掛けるには向かない時間帯だ。
「ああ。これまで会えなかった分、クララとたくさん一緒に居たい! 俺がどれだけクララのことを想っているか、伝える機会が欲しいんだ!」
コーエンの必死の形相。何だかとても微笑ましくて、心臓が穏やかにときめく。
「どうしようかなぁ~~?」
ヤキモキさせられた分、このぐらいの意地悪は許してほしい。それにコーエンだって少しぐらいは危機感を抱くべきだ。
口の端をニヤニヤさせつつ、クララは颯爽と立ち上がる。
「クララ!」
追いすがるコーエンを前に、クララはクルリと振り返る。それから満面の笑みを浮かべ、コーエンをギュッと抱き締めるのだった。
「コソコソするから怪しまれるんだよ。堂々としている方が余程良い。もっとも、今から君に話すのは機密事項ではないけどね」
勿体つけた言い方に、クララは僅かに片眉を上げる。
「機密事項じゃないけど提供したい情報? 一体どんな?」
「もうすぐ隣国の王女が来訪することはクララも知っているだろう?」
「ええ、それはもちろん」
四方を海で囲まれたシャルゾネリア王国。渡航には大きな危険を伴うため、外交には大使を立てられることが多い。
けれど今回、コーエンの王太子即位と、クララとの婚約を祝うため、王女アリスの来訪が決まっていた。
「アリス王女はね、絶世の美女らしいんだ」
ヨハネスはそう言って、悪戯っぽく瞳を細める。それで?と視線で先を促してみても、彼はニコニコと微笑むばかり。
「…………へーー、そうなんですね」
思っていたよりずっと、情報の重要性が低い。クララの眉間がピクピク動いた。
「大事なことだろう? 美しいっていうのは大きな武器だよ。なんでも、世話役にフリードとジェシカが指名されたらしいし、警戒しておいた方が良いんじゃないかなぁと思って」
「コーエンとジェシカ殿下が?」
これにはクララも驚いた。コーエンは婚約を祝われる側であり、世話役に指名されることは通常ありえないからだ。
「意地が悪いですね……情報提供するならそっちを先に言ってくださいよ」
クララの言葉に、ヨハネスは扇で口元を隠す。どうやら笑っているらしい。クララはムッと唇を尖らせた。
「本来なら、僕やカールが世話役を務めるべきだし、実際そのように準備をしていたんだ。だけど、先方の希望じゃ仕方ない。今頃父上がフリードに打診をしている頃だろうよ」
「なるほどね」
先程のジェシカとのやり取りを思い返しつつ、クララは小さく唸り声を上げる。
祝われる対象であるコーエンを世話役に立てる意味――――しかもコーエンは王太子で、相手は隣国の王女だ。
「隣国はアリス殿下とコーエンとの結婚を望んでいる?」
「……そうだね、その可能性が高いと僕は思っている」
クララと婚約を結んだばかりで考えたくないが、あり得ないことではない。
事は王族の婚姻。ひいては国同士の力関係や友好度合いにも関わってくる。己の知らぬ間に、全てが根底から覆されてしまう――――そんな可能性だって大いにあるのだ。
「情報を持っているのといないのとじゃ、戦い方が違うだろう?」
ヨハネスはもう笑っていなかった。淡々と意見を述べつつ、クララの表情を窺っている。
「そうね。教えてくれてありがとう」
きっとコーエンは、クララには何も言わないだろう。クララは日中王妃教育を受けている時間が長いし、国賓の接待は大事な公務だ。仰々しく構えられたくはないだろう。
「何かあったら、遠慮なく僕を頼ると良い」
ヨハネスはそう言って、クララの頭をポンと撫でた。明るい表の顔とも、ほの暗い裏の顔とも違う真摯な表情。どんな表情を返せば良いか分からず、クララは思わず俯いてしまう。
けれど、次の瞬間
「――――隣国の王女なんて、いかにも利用し甲斐が有りそうだからね。元々は僕が取り入る予定だったんだし、そちらの方が丁度いい。王太子でなくとも、金と権力は持っておいた方が良いだろう?」
ヨハネスは妖しく目を細め、口の端にニヤリと笑みを浮かべた。すっかりいつも通りのヨハネスだ。
(何よ。ちょっとだけ、動揺しちゃったじゃない)
ほっと胸を撫でおろしつつ、クララは居住まいをただした。
「状況は分かりました。わたしもそのつもりで動きます」
言えばヨハネスは満足そうに微笑み、ヒラヒラと手を振った。
***
(とはいえ)
もしも王女が本気でコーエンとの結婚を望んでいるなら、クララにはどうすることも出来ない。
『クララじゃないとダメだから、ずっと俺の側にいて欲しい』
求婚の際、コーエンはそう言ってくれた。
けれど、状況は刻一刻と変わっていく。プロポーズの言葉と国益とじゃ、後者の方が圧倒的に重い。
コーエンがクララとの婚約を破棄したとしても、誰も彼を責めないだろう。クララとて受け入れるしかないと思っている。
(思っているんだけど)
理性と感情は別物だ。
本音を言えば、コーエンにはクララを選んで欲しい。クララ以外を愛する気はないと。唯一の妻だと言って欲しい。
(まだ、アリス殿下がどんな腹積もりかは分からないけど)
ついついため息が漏れてしまう。
「クララ、戻ってる?」
その時、執務室の扉が開き、コーエンが顔を覗かせる。クララは微笑みつつ、急いでコーエンを出迎えた。
「お帰りなさい、コーエン」
二人きりの執務室内、ギュッと力強く抱き締められる。コーエンの温もりが、香が、酷く懐かしい。ヨハネスの情報提供のせいだろうか。目頭がほんのりと熱い。
(もしかしたらわたし、情緒不安定なのかも)
そんな自分を誤魔化すかのように、クララはコーエンの胸に顔を埋めた。
「陛下のお話は? 何だったの?」
「ああ――――なんでも、近々ジェシカと剣舞を披露しなきゃいけないんだってさ」
「剣舞を?」
てっきりはぐらかされると思っていたため、クララはいささか驚いてしまう。
(もしかして、アリス殿下の話じゃ無かったのかしら?)
本当のところは分からないが、ヨハネスの勇み足ということも十分にありうる。情報とはそういうもの。収集、分析、取捨選択し、適切に動かなければならない。
為政者は我慢強くあれ、とはヨハネスの教えだ。もう少し踏み込んでみたいところだが、これ以上の詮索は無用だろう。
「公務ばっかで身体が鈍ってるし、感覚も忘れてるから練習しなきゃな」
コーエンはそう言って、小さくため息を吐く。
「頑張ってね、コーエン」
頬にそっと口づければ、コーエンは至極嬉しそうに笑った。
***
ヨハネスの事前情報通り、アリス殿下は大層美しい姫君だった。
真っ白な肌にシルクのような光沢を放つ髪、紅い瞳が神秘的で、同性であるクララでさえ思わず息を呑んでしまう。
「この度は御即位、ご婚約、おめでとうございます」
恭しく祝辞を述べられ、コーエンと共に笑顔で応える。
「本来ならば発表の折に参るべきところ、こうしてご挨拶が遅くなってしまったこと、父に代わってお詫び申し上げます」
「とんでもないことです。長旅でお疲れになられたでしょう? まずはごゆるりと身体を休めてください」
コーエンはそう言って、スッと腕を差し出す。傍らには男装姿のジェシカが並んだ。
アリスはパッと瞳を輝かせると、コーエンの腕を取り、美しく微笑む。クララの胸がツキンと痛んだ。
「わたくし、行ってみたい場所が沢山あるのです! 是非、お二人に連れて行っていただきたいわ!」
三人の後をしずしず歩きながら、クララの表情は次第に曇っていく。
『二人』とわざわざ言及したのだ。その中にクララは含まれていない。本当ならば同行したいが、叶わないだろう。
チラリとコーエンを見上げれば、アリスと会話をしながら、楽しそうに微笑んでいた。それが正解だと分かっているが、モヤモヤはする。
(コーエン、わたしは?)
何度もそう尋ねたくなったが、クララは必死に口を噤んだ。
ヨハネスの情報は正しかった。
世話役――――という言葉が正しいかは分からないが、アリスは連日に渡って、コーエンとジェシカを連れまわした。
歴史的価値の高い神殿や離宮、湖等を見て回り、食事やお茶を共にする。まるで恋人――――いや、婚約者であるクララよりも余程親密だ。クララとコーエンは、滅多にデートなど出来ないのだから。
「――――こんなことをしている場合か?」
尋ねたのはカールだ。
イゾーレと共に汗だくになるまで、クララはひたすら走り続ける。腹筋、腕立て伏せ、剣の素振り等々、毎日クタクタになるまで身体を動かした。
「鍛えろって仰ったのは殿下でしょう?」
そう言って唇を尖らせれば、カールは無言でため息を吐く。
痛々しいことは重々承知。
けれど、執務室に一人で居ると悲しくなる。苦しくなる。王妃教育を受けていても、何だか虚しく、無駄に思えてきて、どうにもやり切れないのだ。
その点、身体を動かしている間は、嫌なことを忘れられる。夜、クララに会いに来たコーエンに対して強がりも言える。
「君は存外不器用だよね」
五日が経過した頃、ヨハネスがクララの元を訪れた。イゾーレやカールは公務があるため、今日はクララ一人きりだ。
ヨハネスの言葉に応えぬまま、クララは静かに汗を拭く。
「困ったときは僕を頼れって言ったのにな」
呆れたような笑い声。クララは俯いたまま、グッと眉間に皺を寄せた。
「フリードとの結婚がダメになったら、僕のところに来れば良いだろ?」
ヨハネスの胸に顔を押し付けられ、クララの目頭が熱くなる。ずっと堪えていた涙が零れ落ち、喉が焼けるように痛くなった。
「――――まだ、ダメになってない!」
「知ってる」
ポンポンと背中を撫でられ、クララの口から嗚咽が漏れる。
「知ってるけど、僕は狡いからね。好きな子が弱っている時に漬け込むのは当然だろう?」
胸が痛む。
けれど、これまで一人で抱えていた重荷が一気に軽くなった気がした。
「君も少しぐらいズルを覚えた方が良いよ。人の好意を――――僕を利用して良いんだ。覚えておいて?」
クララには頷くことも、首を横に振ることも出来なかった。
***
その晩、クララはバルコニーで一人、風にあたっていた。
(コーエンは一体、どうする気だろう?)
もうすぐアリスの帰国の日。けれど、彼からは何も――――婚約解消を匂わせるようなことは言われていない。
けれどコーエンは、ずっとアリスの側に居る。
自信なんて全くない。コーエンがクララを選んでくれること。コーエンの考えを直接尋ねるだけの勇気も。
「クララ!」
けれどその時、扉をドンドンと喧しく叩く音が聞こえた。
「コーエン?」
切羽詰まった声。急いでドアを開ければ、コーエンは勢いよくクララのことを抱き締めた。
「コーエン!? 一体どうしたの!?」
「行くなクララ! 頼むから、婚約破棄なんてしないで! 俺はクララが居ないとダメなのに!」
「……え? なに? どういうこと?」
今にも泣きだしそうなコーエンの様子に、クララは戸惑い首を傾げる。
「どうすれば良い? どうしたら俺と結婚してくれる? ヨハネスじゃなくて、俺と――――」
「ちょっと、待ってよ! 婚約破棄だなんて……そんなこと考えてないわ。そもそもわたしの方からそんなことが出来る筈ないじゃない」
あまりにも訳が分からず、胸が騒めく。
「大体、婚約を破棄しようとしているのはコーエンでしょ!」
「俺が!? そんなこと、する筈ないだろう?」
コーエンは驚きに目を見開き、クララをまじまじと見つめる。
「一体どうしてそんなこと……」
「だって、コーエンったらアリス殿下に気に入られちゃったんでしょう!? 結婚を迫られてるんでしょ!? そしたらわたしは用済みじゃない! 王族同士の結婚の方が、国にとってもメリットが大きいもの!」
堪えていた筈の感情が爆発する。ずっと抑え込んでいたのに、最早我慢が出来なかった。涙がポロポロと零れ落ち、クララの頬を濡らす。コーエンは呆然としながら、クララのことを眺めていた。
「クララ――――俺さ、王太子であることより、クララと一緒に生きることの方が、ずっとずっと大事だよ?」
優しく涙を拭われ、クララは顔をクシャクシャにする。
「もしも隣国が『王太子との婚姻を望む』って言うなら、俺は喜んで王太子の位をカールかヨハネスに明け渡すよ。だけど、クララのことは渡せない。俺はクララじゃないとダメだから」
ずっとずっと欲しかった言葉。不安や葛藤が涙に溶けて、胸を優しく温める。
「嘘……本当に、それで良いの?」
「もちろん。大事なのは王太子の地位じゃない。クララと一緒なら何だってできる。そうだろう?」
コーエンの問い掛けに、クララは肩を震わせる。それからグッと背伸びをし、コーエンの唇を塞いだ。
「コーエン……わたし、すごく寂しかった」
抱き締め、抱き締められる。コーエンは片手でクララを撫でながら、腕にグッと力を込めた。
「俺も。……好きだよ、クララ。クララが好きだ。絶対、放さないから」
コーエンが愛し気にクララを見つめる。二人は微笑み合い、もう一度唇を重ねたのだった。
***
「ジェシカ殿下のファン!?」
「そう。正確には、ボクとフリードのセットが好きなんだってさ」
ようやくアリスが帰国し、すっかり平和の戻った執務室。コーエンとジェシカとお茶を飲みながら、クララは呆気に取られていた。
「何でも、先の宴で大使が持ち帰ったボク達の絵姿が好みで、ずっと来訪の機会を狙ってたんだって。おかげで剣舞も披露する羽目になったし、結構大変だったよ」
アリスが二人を世話役に指名した理由――――事の真相に辿り着き、クララは脱力してしまう。
「だから殿下は、出迎えの場でも男装をしていらっしゃったんですね」
「うん。そういうオーダーだったからね。だから大丈夫。あの子に恋愛感情はないよ。もちろんフリードにも。暇さえあれば『クララに会いたい』って漏らしてたぐらいだから、安心して?」
揶揄するように微笑まれ、クララの頬が紅くなる。同時に、思わぬ形で自分の行動がバレてしまったコーエンは、照れくさそうに顔を背けた。
「それにしても、フリードは言葉足らずというか、不器用というか……クララを不安にさせるとは、まだまだ修行が足りないねぇ。ヨハネスの所に弟子入りでもして来たら?」
その瞬間、ピクリとコーエンの身体が跳ねた。眉間にグッと皺を寄せ、不機嫌そうに唇を尖らせる。
あの夜以来コーエンの前で『ヨハネス』は禁句だ。言えばクララを抱きすくめ、警戒を露に周囲を見回す。
「ねえ、コーエン。どうしてあの夜『わたしが婚約を破棄する』って勘違いしたの? そう言えばあの時、ヨハネス殿下の名前を口にしていたけど……」
「…………」
事情を話したくないのだろう。コーエンは口を噤んだまま、そっぽを向いている。
「コーエン」
「実はね、あの夜ヨハネスから手紙が届いたんだ」
「ジェシカ! 勝手にバラすなって!」
コーエンは真っ赤に顔を染め、バツが悪そうに頭を掻く。
「【クララは僕が貰う。君とは結婚させない。既にクララの承諾は得た】なんて書かれてあってさ。いやぁ、中々に情熱的な手紙だったなぁ。どっかの誰かとは大違いだ」
(そっか。そんなことが……)
コーエンをけし掛けるため、前回同様ヨハネスは策を弄したらしい。
もしも彼が『アリスがコーエンとの結婚を望んでいるわけではない』と知っていたのなら、本気ではなかったのだろうが。
(あれ?)
気づけばクララの頬は真っ赤だった。胸がドキドキ鳴り響き、何だか居た堪れない気持ちになる。
「なっ……クララ!? ダメだからな! 絶対、俺と結婚してくれないと!」
コーエンが大慌てで、クララの元に跪く。ジェシカがニヤニヤと笑いながら、二人のことを見つめている。クララは思わず口の端を綻ばせた。
「そうだ、クララ! 今から俺とデートしよう!」
「え? デート? 今から?」
公務は既に終わったが、辺りは薄暗く、出掛けるには向かない時間帯だ。
「ああ。これまで会えなかった分、クララとたくさん一緒に居たい! 俺がどれだけクララのことを想っているか、伝える機会が欲しいんだ!」
コーエンの必死の形相。何だかとても微笑ましくて、心臓が穏やかにときめく。
「どうしようかなぁ~~?」
ヤキモキさせられた分、このぐらいの意地悪は許してほしい。それにコーエンだって少しぐらいは危機感を抱くべきだ。
口の端をニヤニヤさせつつ、クララは颯爽と立ち上がる。
「クララ!」
追いすがるコーエンを前に、クララはクルリと振り返る。それから満面の笑みを浮かべ、コーエンをギュッと抱き締めるのだった。
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