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6.ポンコツ魔女の惚れ薬が予想外に効果を発揮した件について
4.(end)
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そうしてわたしが惚れ薬を最初に使ってから、30日が経った。
小瓶の中に残っている最後の一吹き。これを吹きかけてから24時間後、キース様のわたしへの恋心は失われる。
結局最後まで、キース様はわたしにキスしてくれなかった。
好きだよ、って言ってくれるのに。可愛いって言ってくれるのに。それだけはどうしても許してくれなかった。
「ハナ」
今日もキラキラした微笑みを浮かべて、キース様がわたしを出迎えてくれる。胸を蝕む罪悪感と、どうしようもない幸福感。小さく笑いながら、わたしはキース様の元へ駆け寄った。
「キース様にお願いがあります」
彼にバレないよう、そっと惚れ薬の最後の一吹きを吹き付けながら、わたしはそう口にした。キース様は「なに?」って首を傾げながら、わたしのことを見つめている。優しい笑顔に胸が苦しくなって、わたしは首を横に振った。
「明日のお休み、わたしと一緒に過ごしてもらえませんか?」
この30日間、彼と会わない日は無かった。だって、会わなかったら薬が切れちゃう。だから、わたしがお休みの日も、キース様がお休みの日も、何だかんだ理由を付けて会う様にしていたのだけど。
「良いよ」
キース様はそう言って、わたしと手を繋いだ。温かい手のひら。涙が溢れそうになるのを必死で堪える。
「楽しみにしてる」
彼の言葉を聞きながら、わたしはコクリと頷いた。
次の日。初めてのデートとは全く違う心持で、わたしは待ち合わせ場所に立っていた。死刑宣告を待つ囚人みたいな、そんな気分。待ち合わせの時間とキース様の薬の効果が切れる時間はピッタリ合うように設定した。
(わたしはきちんと、罰を受けなければならない)
魔法で大好きな人を苦しめた。彼だけじゃなく、彼の大切な人まで苦しめた。その報いをきちんと受けなければならない。だからわたしは、今日この日をキース様と一緒に迎えるって決めていた。
ゴーン、ゴーンと鐘の音が鳴る。キース様に掛けた魔法が溶ける合図だ。
「ハナ」
その時、少し離れた場所でキース様がわたしの名前を呼んだ。距離にしてほんの数歩。けれど、わたしにとっては物凄く長い距離に感じられた。
一歩、また一歩とキース様が近づいてくる。わたしは決死の覚悟で目を見開き、キース様を見つめた。心臓がバクバクと鳴り響き、瞳いっぱいに涙が溜まる。
(ごめんなさい! ごめんなさいっ!)
キース様の眉間には皺が刻まれていて、口はへの字に曲がっている。きっとめちゃくちゃ呆れている。ううん、物凄く怒っているに違いない。
顔を背けたくなる衝動を、わたしは必死で堪えた。そうしたところで、わたしの罪が軽くなるわけじゃないけれど。
「君って子は」
見上げなければならないほどの至近距離にキース様は立っていた。彼の右手がわたしに伸びる。
(ぶたれる)
頬を差し出すように突き出し、必死に歯を喰いしばる。
けれど、頬を叩く代わりに、キース様はわたしを優しく抱き締めた。
「…………えっ?」
思わぬことにわたしは素っ頓狂な声を上げる。
昨日薬を使ってから、間違いなく24時間が経過している。絶対に勘違いってことは無い。それなのに。
「どうして?」
思わずわたしはそう呟いた。
さっきとは違う意味で心臓がバクバク鳴っていた。周りの雑音は何にも聴こえなくて、キース様しか見えなくて、混乱で頭がまともに働かない。
「一か月間、長かったなぁ。ここまで我慢した俺を褒めてほしいぐらい」
「あっ……! その、ごめんなさい」
その時になってわたしは、紳士だから女性に手を上げられないのだと気づいた。手を挙げる代わりに、わたしを目に入れないよう、こうして抱き締めているんだろう。
「わたし、自分の魔法は成功しないからって。ものすごく軽い気持ちでこんなことを……キース様に惚れ薬を使ってしまって――――」
「本当だよ」
じわっと涙が込み上げた。
今日までずっと、何度も何度も、ありとあらゆる言葉で詰られる自分を想像してきたというのに。わたしに涙を流す資格なんて無いって分かっているのに。心が苦しくて堪らなかった。
「おかげで、一世一代の告白なのに、偽物だって勘違いされた」
「……え?」
キース様はわたしをギュッて抱き締めなおしながら、スリスリと頬擦りをする。
(一世一代の、告白?)
首を傾げるわたしに、キース様はめちゃくちゃ長くて深いため息を吐いた。
「めちゃくちゃ勇気だしたんだよ? ハナに『好き』って言うの」
キース様はそう言って、わたしの顔を真っ直ぐに覗き込んだ。真っ赤に染まった頬。惚れ薬を最初に吹きかけた時よりも潤んだ瞳に、わたしの胸が震えた。
「そ、んな。まさか、そんな……」
(わたしはまた、失敗していた?)
わたしが惚れ薬を吹きかけたその時、キース様が「好きだ」と言ってくれた。けれど、それは本当に偶然の出来事で、実はいつものように魔法が発動しなかったとしたら。
(うそ……)
想像だにしなかった真実に、心臓が変な音を立てる。普段なら自分のポンコツっぷりを嘆くけど、今はそんな余裕すら存在しない。
「おまけに、ハナが『薬の効果だ』って勘違いしてるのに気づくまで、結構時間かかっちゃったし」
最悪、って小さく口にしながら、キース様は子どもみたいに唇を尖らせた。
「本当に? キース様がわたしを……?」
「さっきからそう言ってるんだけど」
キース様はゴツンとわたしに額をぶつけた。衝撃のあまり、わたしは目を見開き、キース様から顔を背けようとする。けれどキース様はわたしの両頬をガシッとホールドした。
(嘘……そんな、キース様がわたしのことを好きだなんて…………!)
そんな、自分に都合のいいことが起きるはずがない。だからこそわたしは、惚れ薬なんて都合の良いものを作ったのだ。自然に偶然に、そんな奇跡みたいなことが起きるなんて信じられない。
「本当に、ほんっとーーに効いてなかったんですか?」
「本当だって。普段なら自分の魔法の方を疑う癖に。タイミングが悪すぎる」
キース様はそう言ってわたしの頬をグニグニと引っ張った。ヒリヒリとした痛みがわたしを襲う。だけどそれは、わたしが覚悟していたものよりもずっと甘くて、優しくて。さっきまで瞳でスタンバってた涙と違う種類の涙が一気に込み上げてくる。
「だって……だって…………! キース様にはマリア様がいるじゃないですか! 婚約者がいる人から告白を受けるなんてミラクル、誰も信じませんよっ」
「俺や姫様が婚約を公言したことは無い。周りの誰かが吹聴して回ったデマが、そのまま広がっただけだ。第一、姫様には別に想い人がいるんだぞ?」
「うそっ! わたしに都合よく話が進みすぎです! そんなっ……そんなことって…………!」
ポロポロと流れる涙を、キース様が唇で拭った。彼の唇がわたしに触れるのはキスを最初に強請ったあの日以来で。心臓が変な音を立てて鳴り響いた。
「どうして教えてくれなかったんですか? 途中で教えてくれたって良かったじゃないですか!」
「こっちは一世一代の告白を偽物扱いされたんだ。このぐらいの仕返ししても、罰は当たらないと思ったんだよ」
キース様はそう言って、意地の悪い笑みを浮かべた。そんなところまで全部、全部好きすぎて、涙が止め処なく流れる。
これが馬鹿なわたしへの罰だって言うなら甘すぎだ。本当だったら『ざまぁ見ろ』ってどん底に突き落とされて然るべきなのに、神様は随分寛容らしい。
「ハナ」
「……はい」
「ハーーーーナ」
「…………はい」
めちゃくちゃ抱き付きたくなる魅惑的な、けれど意地の悪い表情で、キース様は二度、わたしを呼んだ。盛大な焦らしっぷりに悶々としながら、わたしの身体が熱くなる。
抱き締めたい。抱き締めてほしい。
好きって言いたい。好きって言って欲しい。
この一か月間、薬の効果があるからと好き放題やって来たツケが、ここに来て一気に押し寄せてしまった。シラフのまま、これまでみたいに「好き」って言うの、物凄く恥ずかしい。「好きって言って」とか、「抱き締めて欲しい」なんてもっと言えない。
「……今なら、あの日の願いを叶えてあげるのにな」
「……っ!」
キース様はそんなことを言って笑った。
あの日の願いってのは間違いなく『キスして』っていう、わたしのおねだりのことだ。これだけは、どんなにお願いしても叶えてもらえなかったから。
「言って、ハナ」
キース様はそう言って幸せそうに笑った。それがあまりにも嬉しくて、わたしまで一緒に笑ってしまう。
「キース――――」
結局、わたしの言葉は最後まで続くことなく、キース様に奪われた。夢にまで見た彼とのキスは、想像していたより、ずっとずっと甘かった。きっと、『惚れ薬のせい』って思いながらするキスの100倍甘くて、嬉しくて、幸せだ。
(キース様はわたしのことを想っている)
触れ合った熱い肌が、優しい瞳が、彼の全部がわたしにそう伝えてくる。キース様は、わたしがちゃんと彼の想いを実感できる日を――――今日という日をずっと、待ってくれていたのだと分かった。
「好きだよ、ハナ」
まるで一番初めに巻き戻ったみたいに、キース様は同じ言葉を口にする。けれどわたしの心は、あの頃よりもずっとずっと、幸せで満ち溢れていた。
「わたしも、キース様が好きですっ!」
そうして、ポンコツ魔女は空っぽになった惚れ薬の小瓶をポイっと投げ捨てるのでした。
小瓶の中に残っている最後の一吹き。これを吹きかけてから24時間後、キース様のわたしへの恋心は失われる。
結局最後まで、キース様はわたしにキスしてくれなかった。
好きだよ、って言ってくれるのに。可愛いって言ってくれるのに。それだけはどうしても許してくれなかった。
「ハナ」
今日もキラキラした微笑みを浮かべて、キース様がわたしを出迎えてくれる。胸を蝕む罪悪感と、どうしようもない幸福感。小さく笑いながら、わたしはキース様の元へ駆け寄った。
「キース様にお願いがあります」
彼にバレないよう、そっと惚れ薬の最後の一吹きを吹き付けながら、わたしはそう口にした。キース様は「なに?」って首を傾げながら、わたしのことを見つめている。優しい笑顔に胸が苦しくなって、わたしは首を横に振った。
「明日のお休み、わたしと一緒に過ごしてもらえませんか?」
この30日間、彼と会わない日は無かった。だって、会わなかったら薬が切れちゃう。だから、わたしがお休みの日も、キース様がお休みの日も、何だかんだ理由を付けて会う様にしていたのだけど。
「良いよ」
キース様はそう言って、わたしと手を繋いだ。温かい手のひら。涙が溢れそうになるのを必死で堪える。
「楽しみにしてる」
彼の言葉を聞きながら、わたしはコクリと頷いた。
次の日。初めてのデートとは全く違う心持で、わたしは待ち合わせ場所に立っていた。死刑宣告を待つ囚人みたいな、そんな気分。待ち合わせの時間とキース様の薬の効果が切れる時間はピッタリ合うように設定した。
(わたしはきちんと、罰を受けなければならない)
魔法で大好きな人を苦しめた。彼だけじゃなく、彼の大切な人まで苦しめた。その報いをきちんと受けなければならない。だからわたしは、今日この日をキース様と一緒に迎えるって決めていた。
ゴーン、ゴーンと鐘の音が鳴る。キース様に掛けた魔法が溶ける合図だ。
「ハナ」
その時、少し離れた場所でキース様がわたしの名前を呼んだ。距離にしてほんの数歩。けれど、わたしにとっては物凄く長い距離に感じられた。
一歩、また一歩とキース様が近づいてくる。わたしは決死の覚悟で目を見開き、キース様を見つめた。心臓がバクバクと鳴り響き、瞳いっぱいに涙が溜まる。
(ごめんなさい! ごめんなさいっ!)
キース様の眉間には皺が刻まれていて、口はへの字に曲がっている。きっとめちゃくちゃ呆れている。ううん、物凄く怒っているに違いない。
顔を背けたくなる衝動を、わたしは必死で堪えた。そうしたところで、わたしの罪が軽くなるわけじゃないけれど。
「君って子は」
見上げなければならないほどの至近距離にキース様は立っていた。彼の右手がわたしに伸びる。
(ぶたれる)
頬を差し出すように突き出し、必死に歯を喰いしばる。
けれど、頬を叩く代わりに、キース様はわたしを優しく抱き締めた。
「…………えっ?」
思わぬことにわたしは素っ頓狂な声を上げる。
昨日薬を使ってから、間違いなく24時間が経過している。絶対に勘違いってことは無い。それなのに。
「どうして?」
思わずわたしはそう呟いた。
さっきとは違う意味で心臓がバクバク鳴っていた。周りの雑音は何にも聴こえなくて、キース様しか見えなくて、混乱で頭がまともに働かない。
「一か月間、長かったなぁ。ここまで我慢した俺を褒めてほしいぐらい」
「あっ……! その、ごめんなさい」
その時になってわたしは、紳士だから女性に手を上げられないのだと気づいた。手を挙げる代わりに、わたしを目に入れないよう、こうして抱き締めているんだろう。
「わたし、自分の魔法は成功しないからって。ものすごく軽い気持ちでこんなことを……キース様に惚れ薬を使ってしまって――――」
「本当だよ」
じわっと涙が込み上げた。
今日までずっと、何度も何度も、ありとあらゆる言葉で詰られる自分を想像してきたというのに。わたしに涙を流す資格なんて無いって分かっているのに。心が苦しくて堪らなかった。
「おかげで、一世一代の告白なのに、偽物だって勘違いされた」
「……え?」
キース様はわたしをギュッて抱き締めなおしながら、スリスリと頬擦りをする。
(一世一代の、告白?)
首を傾げるわたしに、キース様はめちゃくちゃ長くて深いため息を吐いた。
「めちゃくちゃ勇気だしたんだよ? ハナに『好き』って言うの」
キース様はそう言って、わたしの顔を真っ直ぐに覗き込んだ。真っ赤に染まった頬。惚れ薬を最初に吹きかけた時よりも潤んだ瞳に、わたしの胸が震えた。
「そ、んな。まさか、そんな……」
(わたしはまた、失敗していた?)
わたしが惚れ薬を吹きかけたその時、キース様が「好きだ」と言ってくれた。けれど、それは本当に偶然の出来事で、実はいつものように魔法が発動しなかったとしたら。
(うそ……)
想像だにしなかった真実に、心臓が変な音を立てる。普段なら自分のポンコツっぷりを嘆くけど、今はそんな余裕すら存在しない。
「おまけに、ハナが『薬の効果だ』って勘違いしてるのに気づくまで、結構時間かかっちゃったし」
最悪、って小さく口にしながら、キース様は子どもみたいに唇を尖らせた。
「本当に? キース様がわたしを……?」
「さっきからそう言ってるんだけど」
キース様はゴツンとわたしに額をぶつけた。衝撃のあまり、わたしは目を見開き、キース様から顔を背けようとする。けれどキース様はわたしの両頬をガシッとホールドした。
(嘘……そんな、キース様がわたしのことを好きだなんて…………!)
そんな、自分に都合のいいことが起きるはずがない。だからこそわたしは、惚れ薬なんて都合の良いものを作ったのだ。自然に偶然に、そんな奇跡みたいなことが起きるなんて信じられない。
「本当に、ほんっとーーに効いてなかったんですか?」
「本当だって。普段なら自分の魔法の方を疑う癖に。タイミングが悪すぎる」
キース様はそう言ってわたしの頬をグニグニと引っ張った。ヒリヒリとした痛みがわたしを襲う。だけどそれは、わたしが覚悟していたものよりもずっと甘くて、優しくて。さっきまで瞳でスタンバってた涙と違う種類の涙が一気に込み上げてくる。
「だって……だって…………! キース様にはマリア様がいるじゃないですか! 婚約者がいる人から告白を受けるなんてミラクル、誰も信じませんよっ」
「俺や姫様が婚約を公言したことは無い。周りの誰かが吹聴して回ったデマが、そのまま広がっただけだ。第一、姫様には別に想い人がいるんだぞ?」
「うそっ! わたしに都合よく話が進みすぎです! そんなっ……そんなことって…………!」
ポロポロと流れる涙を、キース様が唇で拭った。彼の唇がわたしに触れるのはキスを最初に強請ったあの日以来で。心臓が変な音を立てて鳴り響いた。
「どうして教えてくれなかったんですか? 途中で教えてくれたって良かったじゃないですか!」
「こっちは一世一代の告白を偽物扱いされたんだ。このぐらいの仕返ししても、罰は当たらないと思ったんだよ」
キース様はそう言って、意地の悪い笑みを浮かべた。そんなところまで全部、全部好きすぎて、涙が止め処なく流れる。
これが馬鹿なわたしへの罰だって言うなら甘すぎだ。本当だったら『ざまぁ見ろ』ってどん底に突き落とされて然るべきなのに、神様は随分寛容らしい。
「ハナ」
「……はい」
「ハーーーーナ」
「…………はい」
めちゃくちゃ抱き付きたくなる魅惑的な、けれど意地の悪い表情で、キース様は二度、わたしを呼んだ。盛大な焦らしっぷりに悶々としながら、わたしの身体が熱くなる。
抱き締めたい。抱き締めてほしい。
好きって言いたい。好きって言って欲しい。
この一か月間、薬の効果があるからと好き放題やって来たツケが、ここに来て一気に押し寄せてしまった。シラフのまま、これまでみたいに「好き」って言うの、物凄く恥ずかしい。「好きって言って」とか、「抱き締めて欲しい」なんてもっと言えない。
「……今なら、あの日の願いを叶えてあげるのにな」
「……っ!」
キース様はそんなことを言って笑った。
あの日の願いってのは間違いなく『キスして』っていう、わたしのおねだりのことだ。これだけは、どんなにお願いしても叶えてもらえなかったから。
「言って、ハナ」
キース様はそう言って幸せそうに笑った。それがあまりにも嬉しくて、わたしまで一緒に笑ってしまう。
「キース――――」
結局、わたしの言葉は最後まで続くことなく、キース様に奪われた。夢にまで見た彼とのキスは、想像していたより、ずっとずっと甘かった。きっと、『惚れ薬のせい』って思いながらするキスの100倍甘くて、嬉しくて、幸せだ。
(キース様はわたしのことを想っている)
触れ合った熱い肌が、優しい瞳が、彼の全部がわたしにそう伝えてくる。キース様は、わたしがちゃんと彼の想いを実感できる日を――――今日という日をずっと、待ってくれていたのだと分かった。
「好きだよ、ハナ」
まるで一番初めに巻き戻ったみたいに、キース様は同じ言葉を口にする。けれどわたしの心は、あの頃よりもずっとずっと、幸せで満ち溢れていた。
「わたしも、キース様が好きですっ!」
そうして、ポンコツ魔女は空っぽになった惚れ薬の小瓶をポイっと投げ捨てるのでした。
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