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王の責任2
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それでも、ユーリィを守らなければならない義務がある。
その部分だけは分かっている。
「何か問題があったということですね?」
レオニードが聞く。
暴虐王は静かに息を吐き出した。
「軍にいたとき、着替えで周りを気にしたか?」
「……いえ。」
聞かれていることの意味が分からなかった。
「お前の周りで、世話を担当している者たちは皆“命令”を受けてやっている。
それを達成できない事が例えば軍においてどういう扱いを受けるか分かっているか?」
淡々と、けれど暴虐王はレオニードの瞳を真っ直ぐ見据えて言う。
喉元まででかかった「けれど」という言葉をレオニードは飲み込む。
「俺と、俺の部下と、俺の国。貴方が生殺与奪の権利を持っている事は分かりました。
自分と周りを救うために王族と貴方の国のルールに従うという事も。」
「分の悪い敗戦処理の様なものだ。
せめてルールを教えてやるから、素直に学べという事だ。」
まるで友に言うような軽い言い方だった。
少なくとも暴虐王としてその名を知られている皇帝が使う言葉だとは思えなかった。
「石がでっち上げだと思われる事は考えなかったのか?
その石を奪われることは?」
目の前の男に問われ、レオニードは答える事が出来なかった。
暴虐王は面白そうに、けれど哀れなものを見る様に笑った。
「本来であれば、俺とお前は夫婦だ。
初夜を周りに見守られて行わなければならない。
それを回避してるだけありがたいと思って欲しい。」
「……それは、あんたも災難だろうしな。勃たないだろ俺相手に。」
思わず出てしまった率直な感想に暴虐王は声を出して笑った。
「勃たせる方法なんぞ、いくらでもあるだろ。」
それこそ自分の意志に関係なく性欲を高める薬品だっていくらでもあるし、そんなことを気にするやつなんか周りにいない。そう言って暴虐王は笑った。
「それに“暴虐王”は嗜虐趣味があるって話になってなかったか?」
自分自身のことを当たり前の様に暴虐王だと呼んだ事実に思わずぎくりとしてしまう。
「嗜虐趣味なのか?」
恐る恐るレオニードが聞くと暴虐王は意味ありげにニヤリと笑った。
「さあ、どうだろうな。」
それだけ言うと暴虐王はレオニードの前から立ち去ろうとしていた。
「今俺のすべきことは――」
「少なくとも教育中はお前に絶対に危害を加えるなと命令してある。」
後はお前自身で考えろ。
そういうと暴虐王はもう何も言わなかった。
一人に戻った室内でレオニードは大きく息を吐いた。
それから先ほどまでの暴虐王の言葉と笑顔を思い出す。
あの皇帝は自分の望んでないない性行為すら、まるで普通のことの様に言っていた。
基本的に、親が選んだ相手と結婚するのが普通なのだ。
自分の両親だって、少なくとも母が選んで俺を生んだとはとてもじゃないけれど思ってはいない。
それほど子供ではなかったが、なんでも選べそうなあの暴虐王が選べないことを受け入れているということは今思い返してもレオニードには驚きだった。
その部分だけは分かっている。
「何か問題があったということですね?」
レオニードが聞く。
暴虐王は静かに息を吐き出した。
「軍にいたとき、着替えで周りを気にしたか?」
「……いえ。」
聞かれていることの意味が分からなかった。
「お前の周りで、世話を担当している者たちは皆“命令”を受けてやっている。
それを達成できない事が例えば軍においてどういう扱いを受けるか分かっているか?」
淡々と、けれど暴虐王はレオニードの瞳を真っ直ぐ見据えて言う。
喉元まででかかった「けれど」という言葉をレオニードは飲み込む。
「俺と、俺の部下と、俺の国。貴方が生殺与奪の権利を持っている事は分かりました。
自分と周りを救うために王族と貴方の国のルールに従うという事も。」
「分の悪い敗戦処理の様なものだ。
せめてルールを教えてやるから、素直に学べという事だ。」
まるで友に言うような軽い言い方だった。
少なくとも暴虐王としてその名を知られている皇帝が使う言葉だとは思えなかった。
「石がでっち上げだと思われる事は考えなかったのか?
その石を奪われることは?」
目の前の男に問われ、レオニードは答える事が出来なかった。
暴虐王は面白そうに、けれど哀れなものを見る様に笑った。
「本来であれば、俺とお前は夫婦だ。
初夜を周りに見守られて行わなければならない。
それを回避してるだけありがたいと思って欲しい。」
「……それは、あんたも災難だろうしな。勃たないだろ俺相手に。」
思わず出てしまった率直な感想に暴虐王は声を出して笑った。
「勃たせる方法なんぞ、いくらでもあるだろ。」
それこそ自分の意志に関係なく性欲を高める薬品だっていくらでもあるし、そんなことを気にするやつなんか周りにいない。そう言って暴虐王は笑った。
「それに“暴虐王”は嗜虐趣味があるって話になってなかったか?」
自分自身のことを当たり前の様に暴虐王だと呼んだ事実に思わずぎくりとしてしまう。
「嗜虐趣味なのか?」
恐る恐るレオニードが聞くと暴虐王は意味ありげにニヤリと笑った。
「さあ、どうだろうな。」
それだけ言うと暴虐王はレオニードの前から立ち去ろうとしていた。
「今俺のすべきことは――」
「少なくとも教育中はお前に絶対に危害を加えるなと命令してある。」
後はお前自身で考えろ。
そういうと暴虐王はもう何も言わなかった。
一人に戻った室内でレオニードは大きく息を吐いた。
それから先ほどまでの暴虐王の言葉と笑顔を思い出す。
あの皇帝は自分の望んでないない性行為すら、まるで普通のことの様に言っていた。
基本的に、親が選んだ相手と結婚するのが普通なのだ。
自分の両親だって、少なくとも母が選んで俺を生んだとはとてもじゃないけれど思ってはいない。
それほど子供ではなかったが、なんでも選べそうなあの暴虐王が選べないことを受け入れているということは今思い返してもレオニードには驚きだった。
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