一から百まで

渡辺 佐倉

文字の大きさ
上 下
25 / 101

25

しおりを挟む


ランニングは大会の前日まで一緒に走っていた。
別に毎日どうでもいい様な話しかしていない。

そのはずなのに、百目鬼は時々変なスイッチが入ったみたい抱きたいという様な事は言っていた。
それはもう、大会の前日まで。

だから、という訳でも無い。
翌日応援に行ったときにどんな顔をして会うつもりだったのかは自分でも分からない。

多分、その時自分の中で気持ちが高ぶってしまっていたのかもしれない。
自分の大会でもなんでもないのに。

「じゃあ、全国大会で優勝したら抱かせてやろうか。」

さむいなんていうのを通り越して、痛い。馬鹿なことを言ったとすぐに思った。
なんだよ、抱かせてやろうかって。なんでそんな上から目線なんだと自分でも思う。
いつもこんな物言いになってしまう。

案の定、百目鬼は「はっ」という馬鹿にしたような笑い声を出した。
当たり前だ。

悪い、と謝る前に百目鬼がランニングのペースを上げる。
慌てて追いかけようとした。

「覚えておけよ。本気にするから。」

小さな小さな声だった。
怒ってるならそう言えばいい。冗談にしたいならそうすればいい。

いつも百目鬼が言ってるのと同じだろうと思わなくもない。

だけど、百目鬼の言葉をど捉えていいのかよく分からない。
結局、その日はぎくしゃくしたままランニングを終えてしまった。

昼休みも放課後も百目鬼とは会えなかった。
明日から大会が始まるのだ。当たり前だ。



柔道の大会は地元の体育館ホールでやると聞いていた。
地区大会だから、それほど人がいないだろうと思っていた会場は思ったより人が多い。

本格的なカメラを持っている大人も何人もいて、それが百目鬼を撮るためなのだと気が付くのにさほど時間はかからなかった。

観客用の席がアリーナにある。
固いベンチに腰をかけていると、こちらを見上げた百目鬼と目があった。
これから試合が始まるところなのだろう。

おっ! と思い片手を上げると、嬉しそうな表情をした。
けれどそれも一瞬で、ふいっと視線を顔ごとそらされる。

これは応援に来た意味があるのかと思わなくもないけれど、一度百目鬼が柔道をするところを見たかった。

それに、闘志を宿した視線を見れば百目鬼が昨日の事に関わらずやる気になっていることはちゃんと分かっている。


そりゃあそうだ。
俺だって誰かと仕合う時、他の事なんか考えていない。

百目鬼の対戦相手が少しばかり羨ましいと思いながら試合を見つめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです

卯ノ花
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話

男の子たちの変態的な日常

M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

僕の調教監禁生活。

まぐろ
BL
ごく普通の中学生、鈴谷悠佳(すずやはるか)。 ある日、見ず知らずのお兄さんに誘拐されてしまう! ※♡喘ぎ注意です 若干気持ち悪い描写(痛々しい?)あるかもです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件

水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。 そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。 この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…? ※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

処理中です...