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そこには走り込みをしている百目鬼がいた。
河川敷の広い部分を行ったり来たりしている百目鬼を土手から見下ろす。
きちんとトレーニングをしているやつなのだ。実際強かった。
なのに、まるで俺が弱いやつみたいに手を抜かれた。
思わず奥歯を噛みしめる。
これじゃあ、こっちがあいつに恋してるみたいだ。
と思ってしまったところで、そもそも向こうだって恋していた訳じゃないのかと思い至る。
怒鳴ってやろうかと一瞬考える。それとも勝負をやり直してほしいと頼むか。
そんなことばかりが脳内に浮かんでくる。
そもそも、あいつには辟易としてた筈なのだ。
何にせよもう関わらないのであればそちらの方がいい筈なのに、こうやっていかにあいつと関わろうか考えてしまう。
もうやめよう。そう思った時だった。
多分、偶然だ。
百目鬼がこちらを見たのだ。
こういう時どうしたらいいのか分からない。
挨拶をすればいいのか、無視を決め込めばいいのかさえも分からなかった。
呆然と立ち尽くすというほど大袈裟じゃないけれどそのまま動けずにいると百目鬼がこちらに駆け寄ってくる。
「おはよう。」
「あ、ああ……。」
そうか、もう言わないという約束の勝負だったのだ。普通に挨拶をしてくる百目鬼に少しだけ拍子抜けしてしまう。
「こっちはいつものルートじゃないけど、どうしたんだ?」
百目鬼に聞かれ「道場、しばらく使えないから。」と思わず答えてしまった。
そこで、気が付く。
今までそんな話しはしたことが無かったのだ。
あったのは気持ちの悪い告白もどきばかりだった。
格闘技をやってることも、まして、朝ランニングをしていることも一度も言った事なんか無かった。
表情を変えずに文句を言ってやるべきだったのだ。
けれど、思わず訝し気に百目鬼の事を見つめてしまった。
「あ、あー。」
百目鬼が変な声を出す。そんな声を出したいのは俺の方だ。
「いや、そういうんじゃなくてな?」
「どういうんだよ。」
思わず突っ込んでしまう。
そういうのっていうのがストーカー的ななにかを指してるんだって察しは付く。
けれど、どちらにせよそれは百目鬼が以前から俺を見ていたことに変わりは無くて、少し頭が追い付かない。
「あれは罰ゲームの類じゃなかったのか?」
だって、正直それ以外考えられなかったし、クラスメイトだってそんな雰囲気だった。
百目鬼だってそれに気が付いていない筈がないのだ。
「少なくとも誰かと賭けの対象にはしてないから。」
百目鬼はそう返した。
河川敷の広い部分を行ったり来たりしている百目鬼を土手から見下ろす。
きちんとトレーニングをしているやつなのだ。実際強かった。
なのに、まるで俺が弱いやつみたいに手を抜かれた。
思わず奥歯を噛みしめる。
これじゃあ、こっちがあいつに恋してるみたいだ。
と思ってしまったところで、そもそも向こうだって恋していた訳じゃないのかと思い至る。
怒鳴ってやろうかと一瞬考える。それとも勝負をやり直してほしいと頼むか。
そんなことばかりが脳内に浮かんでくる。
そもそも、あいつには辟易としてた筈なのだ。
何にせよもう関わらないのであればそちらの方がいい筈なのに、こうやっていかにあいつと関わろうか考えてしまう。
もうやめよう。そう思った時だった。
多分、偶然だ。
百目鬼がこちらを見たのだ。
こういう時どうしたらいいのか分からない。
挨拶をすればいいのか、無視を決め込めばいいのかさえも分からなかった。
呆然と立ち尽くすというほど大袈裟じゃないけれどそのまま動けずにいると百目鬼がこちらに駆け寄ってくる。
「おはよう。」
「あ、ああ……。」
そうか、もう言わないという約束の勝負だったのだ。普通に挨拶をしてくる百目鬼に少しだけ拍子抜けしてしまう。
「こっちはいつものルートじゃないけど、どうしたんだ?」
百目鬼に聞かれ「道場、しばらく使えないから。」と思わず答えてしまった。
そこで、気が付く。
今までそんな話しはしたことが無かったのだ。
あったのは気持ちの悪い告白もどきばかりだった。
格闘技をやってることも、まして、朝ランニングをしていることも一度も言った事なんか無かった。
表情を変えずに文句を言ってやるべきだったのだ。
けれど、思わず訝し気に百目鬼の事を見つめてしまった。
「あ、あー。」
百目鬼が変な声を出す。そんな声を出したいのは俺の方だ。
「いや、そういうんじゃなくてな?」
「どういうんだよ。」
思わず突っ込んでしまう。
そういうのっていうのがストーカー的ななにかを指してるんだって察しは付く。
けれど、どちらにせよそれは百目鬼が以前から俺を見ていたことに変わりは無くて、少し頭が追い付かない。
「あれは罰ゲームの類じゃなかったのか?」
だって、正直それ以外考えられなかったし、クラスメイトだってそんな雰囲気だった。
百目鬼だってそれに気が付いていない筈がないのだ。
「少なくとも誰かと賭けの対象にはしてないから。」
百目鬼はそう返した。
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