3 / 6
3
しおりを挟む
がしゃーんと派手な音がして目の前に水の入ったバケツが落ちる。
見上げると走り去る制服のスカートが見えた。
朝から、下駄箱の上靴はずたずたで机の中は滅茶苦茶だった。
ここ一週間ほど嫌がらせの様なことをされていた。
ただ、それほど悲しくないし、困ってもいない。
前世で自分がやっていた手口だ。何を考えて、どう嫌がらせを進めていくか、手に取るようにわかる。
それに、正直俺のほうが上手くやる自信がある程度にはこいつらの手際は悪かった。
だからこそ普通に逃げてまわれている訳だが、最初の一手だった上靴だけはどうにもならなかった。
教科書も私物もほとんど無事だし、今も水がはねた程度だ。
正体を明かしていじめるのは馬鹿のすることだし、正体をばれないようにしてできることは限られてくる。
それに、誰がについて首謀者は知らないが、何のためにやっているのかは手に取るように分かる。
そのときどんな気持ちだったかもよく知っているし、それがどんな結果になるかも知っている。
最上級の馬鹿が、馬鹿だからこそやる行為だ。
ただ、自分のときと違うのは、やられている側が誰かから愛されるはずの無い人間だから見当違いもいいところだってだけだ。
「やあ、今日の下校、一緒に帰らないかい?」
もはや芝居がかっている台詞を前世で因縁があった男が吐く。
ちらり。見たはずのバケツの話は出てこない。
ああ、そういうことか。
もはや、これは態とやっているようにしか見えなかった。
「前世の仕返しって訳ですか?」
とはいえ、ただ記憶としての映像を知っている俺にとってはそんなものにつき合わされるのはゴメンだった。
「え?ゴメン。何のことだい?
仕返しって愛おしい君にそんな事するわけ無いじゃないか。」
愛おしい人間が職員用スリッパを履いていようがお構い無しで目の前の男は言う。
「残念ながら貴方の知っているとおり、悪役の心得は熟知していますから。」
自分のファンが暴走している事は多分分かっている筈だ。だけどそれが?何か?という気分なのだ。
もし、それを狙ってやっているとしてもダメージが無いのだ。ただひたすら無駄な時間を過ごすだけなのだからやめて欲しい。
「こんな馬鹿な事をしていても、なんの慰めにもならないでしょうに。
保健室の一件含めて全部お忘れになった方がよろしいのでは?」
俺の言った言葉の何が琴線に触れたのか、蕩ける様な笑みを浮かべる元伯爵様に、ただただ溜息をこぼすしかなかった。
見上げると走り去る制服のスカートが見えた。
朝から、下駄箱の上靴はずたずたで机の中は滅茶苦茶だった。
ここ一週間ほど嫌がらせの様なことをされていた。
ただ、それほど悲しくないし、困ってもいない。
前世で自分がやっていた手口だ。何を考えて、どう嫌がらせを進めていくか、手に取るようにわかる。
それに、正直俺のほうが上手くやる自信がある程度にはこいつらの手際は悪かった。
だからこそ普通に逃げてまわれている訳だが、最初の一手だった上靴だけはどうにもならなかった。
教科書も私物もほとんど無事だし、今も水がはねた程度だ。
正体を明かしていじめるのは馬鹿のすることだし、正体をばれないようにしてできることは限られてくる。
それに、誰がについて首謀者は知らないが、何のためにやっているのかは手に取るように分かる。
そのときどんな気持ちだったかもよく知っているし、それがどんな結果になるかも知っている。
最上級の馬鹿が、馬鹿だからこそやる行為だ。
ただ、自分のときと違うのは、やられている側が誰かから愛されるはずの無い人間だから見当違いもいいところだってだけだ。
「やあ、今日の下校、一緒に帰らないかい?」
もはや芝居がかっている台詞を前世で因縁があった男が吐く。
ちらり。見たはずのバケツの話は出てこない。
ああ、そういうことか。
もはや、これは態とやっているようにしか見えなかった。
「前世の仕返しって訳ですか?」
とはいえ、ただ記憶としての映像を知っている俺にとってはそんなものにつき合わされるのはゴメンだった。
「え?ゴメン。何のことだい?
仕返しって愛おしい君にそんな事するわけ無いじゃないか。」
愛おしい人間が職員用スリッパを履いていようがお構い無しで目の前の男は言う。
「残念ながら貴方の知っているとおり、悪役の心得は熟知していますから。」
自分のファンが暴走している事は多分分かっている筈だ。だけどそれが?何か?という気分なのだ。
もし、それを狙ってやっているとしてもダメージが無いのだ。ただひたすら無駄な時間を過ごすだけなのだからやめて欲しい。
「こんな馬鹿な事をしていても、なんの慰めにもならないでしょうに。
保健室の一件含めて全部お忘れになった方がよろしいのでは?」
俺の言った言葉の何が琴線に触れたのか、蕩ける様な笑みを浮かべる元伯爵様に、ただただ溜息をこぼすしかなかった。
108
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
推しを擁護したくて何が悪い!
人生1919回血迷った人
BL
所謂王道学園と呼ばれる東雲学園で風紀委員副委員長として活動している彩凪知晴には学園内に推しがいる。
その推しである鈴谷凛は我儘でぶりっ子な性格の悪いお坊ちゃんだという噂が流れており、実際の性格はともかく学園中の嫌われ者だ。
理不尽な悪意を受ける凛を知晴は陰ながら支えたいと思っており、バレないように後をつけたり知らない所で凛への悪意を排除していたりしてした。
そんな中、学園の人気者たちに何故か好かれる転校生が転入してきて学園は荒れに荒れる。ある日、転校生に嫉妬した生徒会長親衛隊員である生徒が転校生を呼び出して──────────。
「凛に危害を加えるやつは許さない。」
※王道学園モノですがBLかと言われるとL要素が少なすぎます。BLよりも王道学園の設定が好きなだけの腐った奴による小説です。
※簡潔にこの話を書くと嫌われからの総愛され系親衛隊隊長のことが推しとして大好きなクールビューティで寡黙な主人公が制裁現場を上手く推しを擁護して解決する話です。
ある意味王道ですが何か?
ひまり
BL
どこかにある王道学園にやってきたこれまた王道的な転校生に気に入られてしまった、庶民クラスの少年。
さまざまな敵意を向けられるのだが、彼は動じなかった。
だって庶民は逞しいので。
知らないうちに実ってた
キトー
BL
※BLです。
専門学生の蓮は同級生の翔に告白をするが快い返事はもらえなかった。
振られたショックで逃げて裏路地で泣いていたら追いかけてきた人物がいて──
fujossyや小説家になろうにも掲載中。
感想など反応もらえると嬉しいです!
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
尊敬している先輩が王子のことを口説いていた話
天使の輪っか
BL
新米騎士として王宮に勤めるリクの教育係、レオ。
レオは若くして団長候補にもなっている有力団員である。
ある日、リクが王宮内を巡回していると、レオが第三王子であるハヤトを口説いているところに遭遇してしまった。
リクはこの事を墓まで持っていくことにしたのだが......?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる