言霊の國

渡辺 佐倉

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伴侶というもの1

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アラタが翌朝目を覚ますと熱はすっかり下がっていた。

「大丈夫ですか?」

ベッドから起き出したことに気が付いたリーンはそう聞いてきた。
昨日の権幕も色々な出来事もまるで無かった様な穏やかな表情と声だとアラタは思った。

彼は騎士なのだという。
この国の騎士が実際のところどこまでのものなのかアラタはよくわからないが、彼は少なくとも高級軍人の一種なのだ。
任務のために己を殺す訓練も積んでいるかもしれない。

アラタはまるで彼の国で働いていた時に彼と話していた時の様だと思う。
けれど、そう錯覚できるほどアラタは愚かではなかった。

彼はそういう風に装ってる。
彼はアラタを誰にも直接、言霊使いだと伝えることはできない。そういう術をかけた。
その中でリーンが一晩考えて導きだした結果がこれなのだろう。

伴侶として、必ず隣に置く。
そういった気迫が見えるようだった。

「別にそこまでせんでも、今のところは逃げ出さんよ」

アラタは苦笑いをしたのちリーンにそう言った。

「この世界がどんな場所かと元の世界に戻れるかの研究は続けんとあかんけど、状況がちごうなった」

友人の状況などを確認して少しばかり考えが変わった。
適当に蟲を抑え込んであとは放置するだと、もう一人の言霊使いにいいようにされかねない。

他の言霊使いが一体どのような力を持っているのかを確認して、近い将来あるかもしれない争いに備えねばならない。

「あなたが我が国に居続けてくださるだけで神の恵みがあると言われております。
それに、あの神秘的な御業。ぜひあの奇跡をまた」

にっこりと笑ってリーンは言った。
ようやく見つけた生贄を使いつぶす気満々であるといった様子の笑顔に見えた。


それから、二人は、二人が出会った城下町に帰ってきた。
アラタの家は案の情誰かが荒そうと開けようとした形跡があった。

そうしたときに中のものをすべて消し飛ばす言霊を仕込んでおいてよかった。
ぐちゃぐちゃになった部屋を見てリーンは驚く様子も無かった。

十中八九やったのは彼の手の者なのだろう。

アラタはふう、とため息をつくとぐちゃぐちゃになった部屋から使えそうなものをひょいひょいと拾い集める。

「保障については我が家門が」

リーンはそう言ったが、その辺はどうでもよかった。
元々原価がかかっているものはほとんどない。
俺が何も答えないでいると、リーンは「それでは本日から我が邸でお過ごしください」と言った。

「仕事は?」

思わず聞いてしまう。

「どちらにせよ放りだす予定だったのに?」

いじわるそうな顔を隠しもせずリーンは笑顔を浮かべた。
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