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熱2
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「これはあの不可思議な御業を使った影響か?」
静かに、聞かれた。
神の使者でも便利な能力でもない事を説明するために、ある程度の言霊の情報はあの時伝えてしまった。
迂闊だったのかもしれない。
けれどアラタの目の前の男はただ心配そうにアラタを見下ろすだけだった。
「別にすぐ戻るわこんなもん」
事実そうだった。そこまで影響の強い術式は使っていない。
命を賭けるほどの状況でもないのにそんな事をするのは愚か者のすることだ。
この熱も明日にはひく。
「せめて体重をこちらに預けていろ」
この熱じゃ立ってるのもつらかったんじゃないのか? そう聞かれるが、別にこの程度言霊使いなら慣れている事だ。
魂を大幅に削られるより、一時的な肉体の不調の方がマシ。そういう常識の中でアラタは生きてきた。
だから、意味不明に優しくされるとどうしたらいいのか分からない。
騎士団長に体を預けながら何故だか泣きそうになってしまった。
* * *
着いた宿場町はこじんまりとしていた。
馬を預けた騎士団長はこじんまりとした宿場町のこじんまりとした宿に泊まる準備をしていた。
宿帳に名前を書く彼をアラタは横で眺めている。
「ふうん。リーンって言うのあんさん」
「この世界の文字が読めるのか」
「さすがに全く読めない状態じゃ仕事ができないからなあ……」
アンタも仕事してるとこ見とるやろ。そうアラタは言う。
「君の故郷の文字と共通点はあるのかい?」
「君、じゃなくてアラタや」
きょとんとした顔でリーンはアラタを見た。
「ああ、アラタ……伴侶殿」
結婚しようという話は続いていたのかとアラタは驚く。
それほどこの国にとって御子は必要なものなのだろう。
宿の部屋は同じだったが、勿論何も無かった。
リーンはアラタをベッドに寝かせると、それ以上彼の事も、御子にについても、言霊についても何もきかなかった。
ただ、どこからか持ってきた果物を綺麗に切ったものをアラタに手渡した。
この国では果物は木の実の様なモノを除いて割と高級品だった筈だ。
ただ、そこでそれを指摘するのも野暮な気がしてアラタはリンゴと梨をたした様な味がするそれを黙って食べた。
眠気はすぐに来てしまった。
試行回数が多かった所為で思ったよりも体力を使ったのかもしれない。
それとも、切られた時に失敗されたときの傷が治りきっていないのかもしれない。
どちらでもよかった。
ただ、眠くて目を瞑る。
髪の毛を撫でられた気がした。
そんな事親にもされたことが無い。
だから、思い出が感傷になって錯覚したのではないだろう。
アラタはだるい体で、何故そんなことをするのか尋ねてみたかったけれど、言葉は上手く言葉にならず。
意識は泥の中に沈み込む様に、深く深く眠りの底に落ちて行った。
静かに、聞かれた。
神の使者でも便利な能力でもない事を説明するために、ある程度の言霊の情報はあの時伝えてしまった。
迂闊だったのかもしれない。
けれどアラタの目の前の男はただ心配そうにアラタを見下ろすだけだった。
「別にすぐ戻るわこんなもん」
事実そうだった。そこまで影響の強い術式は使っていない。
命を賭けるほどの状況でもないのにそんな事をするのは愚か者のすることだ。
この熱も明日にはひく。
「せめて体重をこちらに預けていろ」
この熱じゃ立ってるのもつらかったんじゃないのか? そう聞かれるが、別にこの程度言霊使いなら慣れている事だ。
魂を大幅に削られるより、一時的な肉体の不調の方がマシ。そういう常識の中でアラタは生きてきた。
だから、意味不明に優しくされるとどうしたらいいのか分からない。
騎士団長に体を預けながら何故だか泣きそうになってしまった。
* * *
着いた宿場町はこじんまりとしていた。
馬を預けた騎士団長はこじんまりとした宿場町のこじんまりとした宿に泊まる準備をしていた。
宿帳に名前を書く彼をアラタは横で眺めている。
「ふうん。リーンって言うのあんさん」
「この世界の文字が読めるのか」
「さすがに全く読めない状態じゃ仕事ができないからなあ……」
アンタも仕事してるとこ見とるやろ。そうアラタは言う。
「君の故郷の文字と共通点はあるのかい?」
「君、じゃなくてアラタや」
きょとんとした顔でリーンはアラタを見た。
「ああ、アラタ……伴侶殿」
結婚しようという話は続いていたのかとアラタは驚く。
それほどこの国にとって御子は必要なものなのだろう。
宿の部屋は同じだったが、勿論何も無かった。
リーンはアラタをベッドに寝かせると、それ以上彼の事も、御子にについても、言霊についても何もきかなかった。
ただ、どこからか持ってきた果物を綺麗に切ったものをアラタに手渡した。
この国では果物は木の実の様なモノを除いて割と高級品だった筈だ。
ただ、そこでそれを指摘するのも野暮な気がしてアラタはリンゴと梨をたした様な味がするそれを黙って食べた。
眠気はすぐに来てしまった。
試行回数が多かった所為で思ったよりも体力を使ったのかもしれない。
それとも、切られた時に失敗されたときの傷が治りきっていないのかもしれない。
どちらでもよかった。
ただ、眠くて目を瞑る。
髪の毛を撫でられた気がした。
そんな事親にもされたことが無い。
だから、思い出が感傷になって錯覚したのではないだろう。
アラタはだるい体で、何故そんなことをするのか尋ねてみたかったけれど、言葉は上手く言葉にならず。
意識は泥の中に沈み込む様に、深く深く眠りの底に落ちて行った。
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