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麗しの令嬢
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「アラタに蜘蛛をわざと取り憑かせるのか?」
早いほうがいい。リツはそう付け加えた。
「まさか。切り離すのが難しいところまで待ってる間に禄でも無いことになる」
「じゃあ、誰か、体の深くまで侵食された人間からその状況を貰い受けるってことか」
アラタがリツを見つめる。
「御子とかいうバカバカしいもんにはなりたくはないけど、律の国の人から蜘蛛を貰い受けるわけにはいかんよな。
国同士のパワーバランスが崩れてまう」
奇跡を起こした御子のいる国っていうのがどれ位この世界にとって価値があるかはわからないけれど外交カードになりかねない事態は避けたかった。
「あの人、連れてきてくれるか?」
アラタは静かに言った。
シエラという人について話す時、彼は過去形を使っていなかった。
その人が無事であればいいのか、過去の人となっている方がいいのか。
アラタは目を細める。
生きていたほうがいい。絶対的な恩は弱みになる。
御子とかいう馬鹿げたシステムに組み込まないための逃げ道を作れる。
リツの国の関係者ではなく、情報がこれ以上もれない人間経由での斡旋。
それが一番合理的だからそれを選ぶだけだ。
自分の感情は何も関係ない。
アラタはそれなのに、妙に冴えていく頭が嫌だった。
余計なことを考えてしまいそうだった。
目の前に来た人はこちらを相変わらず憎悪のこもった目で見ている。
アラタは「シエラさんて人ここに呼んでください」とだけ言った。
「何故だ!!」
警戒心をむき出しの声でその人は言った。
「治療ができるか確認させてください」
何も答えないアラタに代わってリツが静かに言う。
「なるべく内密に、できれば治療と悟られないようにやな」
アラタが言う。
「リツに覚悟があるなら、俺も覚悟決めるしかのおなる」
「のお?」
この世界では使われていない言葉なのだろう。聞き返されて少しだけアラタは笑顔を浮かべる「大阪語で、無いって意味やな。西日本共和国の方言なんやけど」この世界では聞かん言葉だからなあと返した。
「ああ!御子様のお陰なのですね」
すぐ呼びに戻ります。
元々転地療養中ですので。
アラタはリツと話し続ける騎士団長を見ながら、紙に何かを書きつける。
「これは誓約書」
「は?」
チラリとその紙を見てから琥珀の国の騎士団長の唇が戦慄く。
「俺のこと誰にも言ったらあかんよっていう縛りや」
書き付けには言霊が込められていた。
心を操ることはできなくても短い期間の行動を制約するくらいならアラタにもできる。
「アンタのお姫様早く連れてきてや」
本当に蜘蛛と呼ばれるものからこの世界を救うつもりなら急ぐべきなのだろう。
そのつもりでアラタの口から出た言葉なのに言われた騎士団長は舌打ちをした。
意味が分からなかった。
けれど、そんな感情どうでもいいのかと思い直す。
「ここで準備をしてもええか?」
「勿論」
リツが返す言葉にアラタは無表情のまま床に筆を走らせ始めた。
早いほうがいい。リツはそう付け加えた。
「まさか。切り離すのが難しいところまで待ってる間に禄でも無いことになる」
「じゃあ、誰か、体の深くまで侵食された人間からその状況を貰い受けるってことか」
アラタがリツを見つめる。
「御子とかいうバカバカしいもんにはなりたくはないけど、律の国の人から蜘蛛を貰い受けるわけにはいかんよな。
国同士のパワーバランスが崩れてまう」
奇跡を起こした御子のいる国っていうのがどれ位この世界にとって価値があるかはわからないけれど外交カードになりかねない事態は避けたかった。
「あの人、連れてきてくれるか?」
アラタは静かに言った。
シエラという人について話す時、彼は過去形を使っていなかった。
その人が無事であればいいのか、過去の人となっている方がいいのか。
アラタは目を細める。
生きていたほうがいい。絶対的な恩は弱みになる。
御子とかいう馬鹿げたシステムに組み込まないための逃げ道を作れる。
リツの国の関係者ではなく、情報がこれ以上もれない人間経由での斡旋。
それが一番合理的だからそれを選ぶだけだ。
自分の感情は何も関係ない。
アラタはそれなのに、妙に冴えていく頭が嫌だった。
余計なことを考えてしまいそうだった。
目の前に来た人はこちらを相変わらず憎悪のこもった目で見ている。
アラタは「シエラさんて人ここに呼んでください」とだけ言った。
「何故だ!!」
警戒心をむき出しの声でその人は言った。
「治療ができるか確認させてください」
何も答えないアラタに代わってリツが静かに言う。
「なるべく内密に、できれば治療と悟られないようにやな」
アラタが言う。
「リツに覚悟があるなら、俺も覚悟決めるしかのおなる」
「のお?」
この世界では使われていない言葉なのだろう。聞き返されて少しだけアラタは笑顔を浮かべる「大阪語で、無いって意味やな。西日本共和国の方言なんやけど」この世界では聞かん言葉だからなあと返した。
「ああ!御子様のお陰なのですね」
すぐ呼びに戻ります。
元々転地療養中ですので。
アラタはリツと話し続ける騎士団長を見ながら、紙に何かを書きつける。
「これは誓約書」
「は?」
チラリとその紙を見てから琥珀の国の騎士団長の唇が戦慄く。
「俺のこと誰にも言ったらあかんよっていう縛りや」
書き付けには言霊が込められていた。
心を操ることはできなくても短い期間の行動を制約するくらいならアラタにもできる。
「アンタのお姫様早く連れてきてや」
本当に蜘蛛と呼ばれるものからこの世界を救うつもりなら急ぐべきなのだろう。
そのつもりでアラタの口から出た言葉なのに言われた騎士団長は舌打ちをした。
意味が分からなかった。
けれど、そんな感情どうでもいいのかと思い直す。
「ここで準備をしてもええか?」
「勿論」
リツが返す言葉にアラタは無表情のまま床に筆を走らせ始めた。
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