言霊の國

渡辺 佐倉

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責任3

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「合理的であることに魂を捧げてる様な人間が、するような表情じゃないよそれ」

リツがアラタに言う。

「自分でもそう思うんやけどどうにもならん」

そういう気持ちを隠す練習なんて今までしてこなかったからとアラタが笑う。

「なんで笑ってるんだよ。アラタ、お前、自分の好きな人に敵《かたき》扱いされてるんだぞ」
「そうみたいやんなあ」

先ほどまでと変わらない調子でアラタが答えたことに、リツは驚きを隠せなかった。

「俺が誰を好きだったとしても、それはあくまでも俺の脳の動きだ」

アラタの言葉が一瞬でまるでテレビのアナウンサーの様なものに変わる。

「単なる俺の脳の動きは俺以外誰にも関係の無い事だろう?」

そうですねとはリツには言えなかった。

どうでもいい。と言っているのと同義だ。
それは本来のアラタらしいと言えばそれまでなのだけれど、彼の表情が、今までと違うという事を物語っている。

「本当にそれでいいのか?」

リツの問いかけにアラタは答えなかった。
その代わり「律はこっちへ来て変わってしもたんやね」と返した。

「君も、多分変わったんだと思うよ。それを認めた方がいい」

リツは言うけれどアラタは「そうやなあ」と答えるだけだった。

「もし、あの人がアラタが御子であることを希《こいねが》ったとしても、何もしないつもりかい?」
「きちんと仕組みを導入するつもりや、言うとるやん」
「俺は、蜘蛛に体を喰われてる人を何人か見たよ」

リツはアラタをしっかりと見据えて言った。

「あれ、君の力なら何とかなるんじゃないの?」
「……魂を差し出せれば」

しばらく間を置いてアラタが答えた。

「元いた世界では魂なんて必要なかったはずだ」

語気を強めてリツが言った。
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