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蟲
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リツは、馬車に乗るのはできれば避けたかった。
ウィリアムは困った様に笑った後「今回は少し遠いから」と言った。
それから一頭の動物を連れてきた。
それは、おとぎ話の中に出てきたドラゴンの様に見える。
「これに乗って飛んでいくけど、大丈夫かな?」
大丈夫?は先ほどまでの乗り物酔いの件だろう。
そもそもそれ以前に、この生き物は何なんだとリツは驚いてしまう。
同じ言葉を話している。だからある程度は分かることができる世界だと思ったところでこれだ。
こんな生物までいる世界でリツに倒せる蟲とやらがいるのかさえ怪しい。
けれど、それが何か。本当に言霊が効くのかを見なければ始まらない。
その後にきちんとこの世界の事を知らなければならないと思う。
それから、リツのためなのか国のためなのかは分からないけれど力を尽くそうとしてくれているこの人の事も。
リツは自分に、噛んで含む様に言い聞かせる。
「絶対に酔わない。三半規管は強くなっている……」
何度も言葉にする。
それからリツは手を引かれて茶色いドラゴンの背中に乗った。
リツの後ろにウィリアムが乗る。
ベルトの様な紐をでウィリアムとリツの間が繋がれる。
リツがバランスを崩した時に落下しないための物だろう。
ドラゴンが羽を羽ばたかせる。
到底浮かないだろうと思っていた巨体がふわりと宙に浮く。
それから高く高く羽ばたいて、屋敷が小さく見える。
リツは思わず、声を漏らす。
見渡した地平は緑が多く、空は青く美しい。
「国境付近から蟲たちは押し寄せてきている」
地球と同じように太陽が東から昇るならそちらの方向をウィリアムは指さす。
それからドラゴンは一気に加速した。
風を切ってどんどん進んでいくドラゴンはほとんど揺れない。
ただ、猛烈なスピードで風をきって進んでいくのでおしゃべりどころではない。
先に言っておいて欲しいとリツは思ってから、バイクみたいですよなんて同じ尺度で話ができない事を思い出した。
丁度バイクと反対に後ろに乗っているウィリアムがドラゴンを操縦して前に座るリツを抱き込む様にぴったりとくっついている。
ドラゴンの皮膚は蛇のようにすべすべとしていて固い。
どんどんと後ろに流されていく景色を見て、自分の住んでいた場所と全く違う景色にリツは思わずこぶしをぎゅっと握った。
ウィリアムは困った様に笑った後「今回は少し遠いから」と言った。
それから一頭の動物を連れてきた。
それは、おとぎ話の中に出てきたドラゴンの様に見える。
「これに乗って飛んでいくけど、大丈夫かな?」
大丈夫?は先ほどまでの乗り物酔いの件だろう。
そもそもそれ以前に、この生き物は何なんだとリツは驚いてしまう。
同じ言葉を話している。だからある程度は分かることができる世界だと思ったところでこれだ。
こんな生物までいる世界でリツに倒せる蟲とやらがいるのかさえ怪しい。
けれど、それが何か。本当に言霊が効くのかを見なければ始まらない。
その後にきちんとこの世界の事を知らなければならないと思う。
それから、リツのためなのか国のためなのかは分からないけれど力を尽くそうとしてくれているこの人の事も。
リツは自分に、噛んで含む様に言い聞かせる。
「絶対に酔わない。三半規管は強くなっている……」
何度も言葉にする。
それからリツは手を引かれて茶色いドラゴンの背中に乗った。
リツの後ろにウィリアムが乗る。
ベルトの様な紐をでウィリアムとリツの間が繋がれる。
リツがバランスを崩した時に落下しないための物だろう。
ドラゴンが羽を羽ばたかせる。
到底浮かないだろうと思っていた巨体がふわりと宙に浮く。
それから高く高く羽ばたいて、屋敷が小さく見える。
リツは思わず、声を漏らす。
見渡した地平は緑が多く、空は青く美しい。
「国境付近から蟲たちは押し寄せてきている」
地球と同じように太陽が東から昇るならそちらの方向をウィリアムは指さす。
それからドラゴンは一気に加速した。
風を切ってどんどん進んでいくドラゴンはほとんど揺れない。
ただ、猛烈なスピードで風をきって進んでいくのでおしゃべりどころではない。
先に言っておいて欲しいとリツは思ってから、バイクみたいですよなんて同じ尺度で話ができない事を思い出した。
丁度バイクと反対に後ろに乗っているウィリアムがドラゴンを操縦して前に座るリツを抱き込む様にぴったりとくっついている。
ドラゴンの皮膚は蛇のようにすべすべとしていて固い。
どんどんと後ろに流されていく景色を見て、自分の住んでいた場所と全く違う景色にリツは思わずこぶしをぎゅっと握った。
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