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【本編 第一章】 デルギベルク戦役編
【第六十九話】 ※レハール視点
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ハイゼの作戦は、一見すれば意味が無いように思えるが、実に巧妙だとレハールは思った。
ハイゼを先頭に突撃していった騎馬隊は、作戦通り、敵陣を駆けている間に三隊に分かれた。
それぞれハイゼ、ヘルケルト、そして自分が指揮をとっている。
一隊あたり三百騎にまで減ることになったが、それぞれの騎馬隊が敵軍を掻き乱すため、敵の混乱はこれまでよりも多いように思えた。
正面に、騎馬隊を食い止めようと槍を並べる部隊が現れた。
レハールはその部隊を無視し、合図を出して騎馬隊の進む向きを変えた。
そして、槍を並べている部隊の後方から、ヘルケルトの騎馬隊が襲い掛かる。
連携がきれいに決まったと、レハールは思った。
槍を並べていた部隊に、生き残った兵は居なかった。
そろそろ頃合いだろうと思い、敵軍から離脱して隊列を整えた。
他の二隊もほとんど同時に敵軍から離脱しているのが見える。
「よし、もう一度突撃する。敵を惑わすだけでいい。離脱したら、全力で駆けるのだ」
大声で叫び、駆け出す。
まだ混乱の中に居た敵軍は、さらに慌てた。
ハイゼもヘルケルトの騎馬隊も、再び攻撃を始めた。
しかし、さっき程の勢いは出さなかった。
立ち塞がろうとする部隊は避け、ほとんど駆けているだけだった。
時々剣や槍が突き出されてくるので、それを払うだけである。
そして、すぐに離脱する。
この突撃で、死んだ兵は出なかった。
離脱した騎馬隊は、そのまま止まることなく全力で駆けた。
敵軍に向かうのではない、むしろ、敵とは全く関係の無い方向に駆けさせた。
ハイゼとヘルケルトは、それぞれ三回目の突撃に入っていた。
ハイゼの作戦は、上手くいったようだ。
こうして騎馬隊を分散させて、一隊ずつ時間差で敵軍から離れさせる。
こうする事で、敵軍の指揮官は補給部隊の襲撃に向かった事に気付かないのだ。
二番目にヘルケルト。
そして最後にハイゼの騎馬隊が離脱する算段だった。
別々に移動した騎馬隊は、林の付近の事前に決めた場所で集まる事になっている。
思うさまに、駆けた。
自分がしたい戦いとは、こういう事なのだと、レハールは考えていた。
大軍の将軍として、どっしり構えるよりも、こうして動き回った方が気持ちが良かった。
一刻もしないうちに、補給部隊がいる林が見えてきた。
さすがに馬が潰れてしまうため、この時に疾駆はさせなかった。
「馬は林の周りに停めておけ。補給部隊は、走って襲うぞ」
それぞれの兵が自分の馬を木に停めていると、予定通りヘルケルトの騎馬隊が到着した。
「追手はいないな」
レハールがそう言うと、ヘルケルトは満足そうにうなづいた。
ハイゼを先頭に突撃していった騎馬隊は、作戦通り、敵陣を駆けている間に三隊に分かれた。
それぞれハイゼ、ヘルケルト、そして自分が指揮をとっている。
一隊あたり三百騎にまで減ることになったが、それぞれの騎馬隊が敵軍を掻き乱すため、敵の混乱はこれまでよりも多いように思えた。
正面に、騎馬隊を食い止めようと槍を並べる部隊が現れた。
レハールはその部隊を無視し、合図を出して騎馬隊の進む向きを変えた。
そして、槍を並べている部隊の後方から、ヘルケルトの騎馬隊が襲い掛かる。
連携がきれいに決まったと、レハールは思った。
槍を並べていた部隊に、生き残った兵は居なかった。
そろそろ頃合いだろうと思い、敵軍から離脱して隊列を整えた。
他の二隊もほとんど同時に敵軍から離脱しているのが見える。
「よし、もう一度突撃する。敵を惑わすだけでいい。離脱したら、全力で駆けるのだ」
大声で叫び、駆け出す。
まだ混乱の中に居た敵軍は、さらに慌てた。
ハイゼもヘルケルトの騎馬隊も、再び攻撃を始めた。
しかし、さっき程の勢いは出さなかった。
立ち塞がろうとする部隊は避け、ほとんど駆けているだけだった。
時々剣や槍が突き出されてくるので、それを払うだけである。
そして、すぐに離脱する。
この突撃で、死んだ兵は出なかった。
離脱した騎馬隊は、そのまま止まることなく全力で駆けた。
敵軍に向かうのではない、むしろ、敵とは全く関係の無い方向に駆けさせた。
ハイゼとヘルケルトは、それぞれ三回目の突撃に入っていた。
ハイゼの作戦は、上手くいったようだ。
こうして騎馬隊を分散させて、一隊ずつ時間差で敵軍から離れさせる。
こうする事で、敵軍の指揮官は補給部隊の襲撃に向かった事に気付かないのだ。
二番目にヘルケルト。
そして最後にハイゼの騎馬隊が離脱する算段だった。
別々に移動した騎馬隊は、林の付近の事前に決めた場所で集まる事になっている。
思うさまに、駆けた。
自分がしたい戦いとは、こういう事なのだと、レハールは考えていた。
大軍の将軍として、どっしり構えるよりも、こうして動き回った方が気持ちが良かった。
一刻もしないうちに、補給部隊がいる林が見えてきた。
さすがに馬が潰れてしまうため、この時に疾駆はさせなかった。
「馬は林の周りに停めておけ。補給部隊は、走って襲うぞ」
それぞれの兵が自分の馬を木に停めていると、予定通りヘルケルトの騎馬隊が到着した。
「追手はいないな」
レハールがそう言うと、ヘルケルトは満足そうにうなづいた。
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