4 / 94
【本編 プロローグ】 除名追放
【第三話】 ※ウォークガル視点
しおりを挟む
「将軍、ハイゼが出ていったようです」
副官のミドガンがテントに入ってきてそう報告してきた。
「うむ、これで邪魔者は居なくなったな」
我が輩は爽快な気分だった。
ハイゼという名の兵士が補給隊長として我が軍に就任して以来、我が輩はそいつが気に入らなかった。
事あるごとに我が輩に意見するのだ。
ただの意見ならまだいい。
あろう事か、作戦を全否定ばかりするのである。
戦争で最も大切なのは、兵力と勢い。それに尽きるのだ。
それなのにアイツは「負傷兵の治療が優先です」だとか「次の補給が来るまで待ちましょう」など、消極的な意見ばかり言ってくる。
圧倒的な多数で敵軍を蹂躙し、味方の士気を上げる。その勢いで進めば次の敵も容易く討てるのだ。
現に我が輩はその作戦を続けてきたおかげでガデステラ帝国で最強の将軍と呼ばれるようになったのだ。
「いやー、これで我が軍もますます勢いが増しますな」
「これなら敵の王都まですぐに攻め込めますぞ」
「うむ、間違いない!」
軍議の為に集まっていた将校達も気分が良さそうだった。
やはりアイツが居なくなって良かった。
「ウォークガル将軍、軍議を始めましょう」
ミドガンが言った。
将校の一人が台上に地図を広げ、それを囲むようにして座った。
現在我が軍はガデステラ帝国の西にある隣国、エムルバート王国に侵攻している途中だった。
すでに進撃を開始して四ヶ月が経っている。
最終的な侵攻目標はエムルバート王国の王都だが、このペースではまだ二ヶ月は掛かりそうだ。
それも元補給隊長のハイゼが我が輩の作戦に異を唱えて侵攻速度を遅らせたせいに決まっている。
確かに、今の我が軍は度重なる戦闘によって一万人近くの負傷兵を抱えているが、そんなもの問題ではない。
怪我をしているとは言え、走れる脚と武器を振る腕があれば兵士は戦えるのだ。
たとえ戦死しても、帝国軍最強の我が輩の指揮する戦闘で死ねるのだ。本望であろう。
そもそも、無傷の兵士は九万人居て、負傷兵も合計すれば十万の大軍である。
エムルバート王国のような小国に対しては、むしろ多過ぎるくらいだ。
「敵軍の位置は分かったか」
地図を見ながら我が輩は言った。
「偵察の報告によりますと、半日ほど進んだ所に敵軍が陣を張っています」
「敵兵の数は」
「多くて五万。我が軍の半数です」
ミドガンは持っていた書類を見ながら答えた。
「たった半分か、少ないな」
敵軍は虫の息なのだろう。
これだけの兵力差ならば、簡単に殲滅出来る。
「日の出と共に進軍を開始する。敵陣に到着次第、突撃だ」
我が輩は声高々にそう言った。
「「御意!」」
将校達が起立し、敬礼して返事をする。
いつもなら、ここでアイツは反対するのだろうが、これからはそれも無いのだ。
なんと喜ばしいことだろう。
「そうだ、ミドガン。アイツの後任として副隊長のライプニッツを隊長に任命する。お前から彼にそう伝えてくれ」
「了解です。直ちに」
ミドガンは敬礼し、他の将校達と共にテントから出ていった。
「おい、酒とメシを運んでこい」
外で待機している兵士にそう命令すると、暫くして食事を運んできた。
「酒が無いぞ」
「そ、それが将軍閣下、酒はもう無いのです・・・・・・」
「何だと!」
戦に酒は欠かせない。
我が輩にとって酒は血と同じくらい大切なのだ。
「と言われましても、次の補給を待たないと・・・・・・」
食事を持ってきた兵は恐る恐るそう言った。
「もういい、下がれ」
ここで無闇に怒っても仕方がない。
ただ、次の補給は待ってられない。
酒が無いなら、敵から奪えば良いのだ。
我が輩は食事を食べ始め、物足りなく思いながら、そのまま寝た。
副官のミドガンがテントに入ってきてそう報告してきた。
「うむ、これで邪魔者は居なくなったな」
我が輩は爽快な気分だった。
ハイゼという名の兵士が補給隊長として我が軍に就任して以来、我が輩はそいつが気に入らなかった。
事あるごとに我が輩に意見するのだ。
ただの意見ならまだいい。
あろう事か、作戦を全否定ばかりするのである。
戦争で最も大切なのは、兵力と勢い。それに尽きるのだ。
それなのにアイツは「負傷兵の治療が優先です」だとか「次の補給が来るまで待ちましょう」など、消極的な意見ばかり言ってくる。
圧倒的な多数で敵軍を蹂躙し、味方の士気を上げる。その勢いで進めば次の敵も容易く討てるのだ。
現に我が輩はその作戦を続けてきたおかげでガデステラ帝国で最強の将軍と呼ばれるようになったのだ。
「いやー、これで我が軍もますます勢いが増しますな」
「これなら敵の王都まですぐに攻め込めますぞ」
「うむ、間違いない!」
軍議の為に集まっていた将校達も気分が良さそうだった。
やはりアイツが居なくなって良かった。
「ウォークガル将軍、軍議を始めましょう」
ミドガンが言った。
将校の一人が台上に地図を広げ、それを囲むようにして座った。
現在我が軍はガデステラ帝国の西にある隣国、エムルバート王国に侵攻している途中だった。
すでに進撃を開始して四ヶ月が経っている。
最終的な侵攻目標はエムルバート王国の王都だが、このペースではまだ二ヶ月は掛かりそうだ。
それも元補給隊長のハイゼが我が輩の作戦に異を唱えて侵攻速度を遅らせたせいに決まっている。
確かに、今の我が軍は度重なる戦闘によって一万人近くの負傷兵を抱えているが、そんなもの問題ではない。
怪我をしているとは言え、走れる脚と武器を振る腕があれば兵士は戦えるのだ。
たとえ戦死しても、帝国軍最強の我が輩の指揮する戦闘で死ねるのだ。本望であろう。
そもそも、無傷の兵士は九万人居て、負傷兵も合計すれば十万の大軍である。
エムルバート王国のような小国に対しては、むしろ多過ぎるくらいだ。
「敵軍の位置は分かったか」
地図を見ながら我が輩は言った。
「偵察の報告によりますと、半日ほど進んだ所に敵軍が陣を張っています」
「敵兵の数は」
「多くて五万。我が軍の半数です」
ミドガンは持っていた書類を見ながら答えた。
「たった半分か、少ないな」
敵軍は虫の息なのだろう。
これだけの兵力差ならば、簡単に殲滅出来る。
「日の出と共に進軍を開始する。敵陣に到着次第、突撃だ」
我が輩は声高々にそう言った。
「「御意!」」
将校達が起立し、敬礼して返事をする。
いつもなら、ここでアイツは反対するのだろうが、これからはそれも無いのだ。
なんと喜ばしいことだろう。
「そうだ、ミドガン。アイツの後任として副隊長のライプニッツを隊長に任命する。お前から彼にそう伝えてくれ」
「了解です。直ちに」
ミドガンは敬礼し、他の将校達と共にテントから出ていった。
「おい、酒とメシを運んでこい」
外で待機している兵士にそう命令すると、暫くして食事を運んできた。
「酒が無いぞ」
「そ、それが将軍閣下、酒はもう無いのです・・・・・・」
「何だと!」
戦に酒は欠かせない。
我が輩にとって酒は血と同じくらい大切なのだ。
「と言われましても、次の補給を待たないと・・・・・・」
食事を持ってきた兵は恐る恐るそう言った。
「もういい、下がれ」
ここで無闇に怒っても仕方がない。
ただ、次の補給は待ってられない。
酒が無いなら、敵から奪えば良いのだ。
我が輩は食事を食べ始め、物足りなく思いながら、そのまま寝た。
0
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。


宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる
グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。
『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。
2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。
主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる