追放された補給隊長、流れ着いた王国で戦術知識を評価されて将軍になれました。〜え?元いた帝国が宣戦布告しただって?それなら受けて立ちましょう〜

尾関 天魁星

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【本編 プロローグ】 除名追放

【第三話】 ※ウォークガル視点

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「将軍、ハイゼが出ていったようです」
 
 副官のミドガンがテントに入ってきてそう報告してきた。
 
「うむ、これで邪魔者は居なくなったな」
 
 我が輩は爽快な気分だった。
 
 ハイゼという名の兵士が補給隊長として我が軍に就任して以来、我が輩はそいつが気に入らなかった。
 
 事あるごとに我が輩に意見するのだ。
 
 ただの意見ならまだいい。
 あろう事か、作戦を全否定ばかりするのである。
 
 戦争で最も大切なのは、兵力と勢い。それに尽きるのだ。
 
 それなのにアイツは「負傷兵の治療が優先です」だとか「次の補給が来るまで待ちましょう」など、消極的な意見ばかり言ってくる。
 
 圧倒的な多数で敵軍を蹂躙し、味方の士気を上げる。その勢いで進めば次の敵も容易く討てるのだ。
 
 現に我が輩はその作戦を続けてきたおかげでガデステラ帝国で最強の将軍と呼ばれるようになったのだ。
 
「いやー、これで我が軍もますます勢いが増しますな」
「これなら敵の王都まですぐに攻め込めますぞ」
「うむ、間違いない!」
 
 軍議の為に集まっていた将校達も気分が良さそうだった。
 
 やはりアイツが居なくなって良かった。
 
「ウォークガル将軍、軍議を始めましょう」
 
 ミドガンが言った。
 
 将校の一人が台上に地図を広げ、それを囲むようにして座った。
 
 現在我が軍はガデステラ帝国の西にある隣国、エムルバート王国に侵攻している途中だった。
 
 すでに進撃を開始して四ヶ月が経っている。
 
 最終的な侵攻目標はエムルバート王国の王都だが、このペースではまだ二ヶ月は掛かりそうだ。
 
 それも元補給隊長のハイゼが我が輩の作戦に異を唱えて侵攻速度を遅らせたせいに決まっている。
 
 確かに、今の我が軍は度重なる戦闘によって一万人近くの負傷兵を抱えているが、そんなもの問題ではない。
 
 怪我をしているとは言え、走れる脚と武器を振る腕があれば兵士は戦えるのだ。
 
 たとえ戦死しても、帝国軍最強の我が輩の指揮する戦闘で死ねるのだ。本望であろう。
 
 そもそも、無傷の兵士は九万人居て、負傷兵も合計すれば十万の大軍である。
 
 エムルバート王国のような小国に対しては、むしろ多過ぎるくらいだ。
 
「敵軍の位置は分かったか」
 
 地図を見ながら我が輩は言った。
 
「偵察の報告によりますと、半日ほど進んだ所に敵軍が陣を張っています」
 
「敵兵の数は」
 
「多くて五万。我が軍の半数です」
 
 ミドガンは持っていた書類を見ながら答えた。
 
「たった半分か、少ないな」
 
 敵軍は虫の息なのだろう。
 
 これだけの兵力差ならば、簡単に殲滅出来る。
 
「日の出と共に進軍を開始する。敵陣に到着次第、突撃だ」
 
 我が輩は声高々にそう言った。
 
「「御意!」」
 
 将校達が起立し、敬礼して返事をする。
 
 いつもなら、ここでアイツは反対するのだろうが、これからはそれも無いのだ。
 
 なんと喜ばしいことだろう。
 
「そうだ、ミドガン。アイツの後任として副隊長のライプニッツを隊長に任命する。お前から彼にそう伝えてくれ」
 
「了解です。直ちに」
 
 ミドガンは敬礼し、他の将校達と共にテントから出ていった。
 
「おい、酒とメシを運んでこい」
 
 外で待機している兵士にそう命令すると、暫くして食事を運んできた。
 
「酒が無いぞ」
 
「そ、それが将軍閣下、酒はもう無いのです・・・・・・」
 
「何だと!」
 
 戦に酒は欠かせない。
 我が輩にとって酒は血と同じくらい大切なのだ。
 
「と言われましても、次の補給を待たないと・・・・・・」
 
 食事を持ってきた兵は恐る恐るそう言った。
 
「もういい、下がれ」
 
 ここで無闇に怒っても仕方がない。
 
 ただ、次の補給は待ってられない。
 
 酒が無いなら、敵から奪えば良いのだ。
 
 我が輩は食事を食べ始め、物足りなく思いながら、そのまま寝た。
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