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吐露 ※エンリ視点
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「クローバーの言っていた"売人"の件、進展はないのか。」
社用車の後部座席の隣から、聞こえてくる少し掠れた低い声は、相変わらず私を落ち着かない気分にさせる。
「……はい。クローバーの周辺を洗っていますが、有力な情報は今のところありません。加えて、辻馬車の御者も、いるはずの目撃者も見つからないままです。申し訳ありません。」
本当ならば会話などせず無視をしたいが、目的地までの道のりは長い。聞こえなかった振りをして沈黙を貫くのにも限度があるだろう。
そもそも二人でなどいたくないのだが、今朝打ち合わせが終わった後、社長から突然打診をされ回避出来なかったのだ。
中年のオスの住み処の片付けと、持ち出したい物の搬出の手伝い。
『忙しかったら断ってくれていいのだけれど』と前置きをされ、社長と同行する仕事を頂けるのかと思い、全く忙しくないと迂闊に返事をしてしまったのがいけなかった。中年のオスから直接言われていれば間違いなく断っていたのに。それを予測し、このオスは社長の口から言わせたのかもしれない。覗き見の一件からこのオスは何かと私に絡んでくるのだ。
運転席と後部座席はスモークガラスで区切られている。開閉式の小窓は付いてるがほぼ個室だ。そんな場所で圧迫感のあるこのオスと腕が触れ合う位に近くにいなければならないのは本当に苦痛だ。しかもオスの家は遠く、車が通れないような細い道もある為、歩かねばならない。
思わず漏れた溜め息を、隣にいるオスは違う意味に取ったようだった。
「いや、あんたはよくやってるよ。大変だろう?」
「いえ、わたくしは指示を出しているだけですから。」
「それにしたって、通常の業務をしながらだと辛いだろう。」
そう思うのであれば、今日、こんな用事に私を指名したりなどしないでほしい。とは、言わずに『いいえ』とだけ返事を返しておく。
ここで話を合わせて『そうですね』などと言ってしまえば、社長に進言されて屋敷に出入り出来る秘書を増やされる可能性がある。実際何度か社長からも打診されているのだ。私はボスの第一秘書の座を誰かと分け合いたくない。
せっかく、上級学校進学への協力と交換条件で『絶対秘書にはならない』という約束を若きオスに取り付けさせたというのに、冗談じゃない。
それに実際無理はしていない。仕事はやり甲斐があり苦痛ではないし、社に戻れば何でも言うことを聞く優秀な部下もいる。たまに、餌をやらねばならないが。
「…しかし、御者まで見付からないとなると、事故ではない可能性もあるのか?」
「その方向でも動いております。」
「さすがだな。」
「いえ。」
本心から感心しているような言葉に、波立っていた心が少しだけ落ち着いた。
クローバーが死んだのは釈放された当日。もし何らかの意図があって殺されたのだとしたら、犯人はその日に釈放されたことを知る人物、警察関係者ということになる。しかし、さすがにガードが固く調査はあまり進んでいない。
このオスを釈放させる為に警察に赴き、すでに私の面が割れてしまっているので、下手に動くことが出来ず、正攻法で調査をしている為、時間がかかってしまっているのだ。
会話が途切れたのを切っ掛けに、胸ポケットから手帳を出し適当にペンを走らせて仕事をしている振りをする。もう話しかけてくるな、という雰囲気を作る。が、そんな空気を読まないオスはまた何やら話し始めた。
「そろそろ始まった頃かな。」
「……。」
「ああ、アンタは知らないのか。」
決して馬鹿にしたような口調ではないが、このオスに『知らないのか』と言われればムッとしてしまう。無視を決め込むつもりが、返事をしてしまう。
「何のことでしょうか。」
「ミツコとシュウは今日、セックスするんだよ。」
「――――は?セックス!?」
中年のオスが発した言葉に動揺してしまい、素が出てしまうが取り繕う余裕などなかった。そんな私を中年のオスはまじまじと見ている。
「セックスってよりは性教育、か。まぁすることは一緒だろうけど。シュウの過去の呪縛を解いてやるのが目的らしい。ヒカルが提案したらしいよ。」
「……。」
確かに幼きオスはずっと塞ぎ込んでいた。私も含む全員が、幼きオスに元気を取り戻してもらう為に色々なことをした。しかし、効果は無く、もっと長期化するものなのだと考えていた。それがセックス一回で解決するのならば、社長は迷うこと無く実行するだろう。元々オスの為だったら何でもする方だ。
しかし、若きオスが提案とは、いくら幼きオスの為だといっても、さぞ辛いだろう。
本人曰く『社長に性処理係をクビにされた』状態になってから、若きオスはかなり落ち込んでいた。そして、やっとそこから這い上がり、どうやったら社長の傍にいられるのかを模索し、上級学校に進学することを決めた。社長と少しでも近い位置にいて、支え、役に立ちたいとの思いからだ(この時私は約束を取り付けた)。
傍にいて支える、ということは自分の気持ちよりも『オスを救いたい』という社長の思いを優先させることが出来なくてはいけない。私は実際そうしている。しかし、それは自分に全くチャンスが無いことを知っているからだ。
私がオスだったなら、同じようにはできない。
若きオスに感情移入をしてしまっていると、手の甲に何かが触れた。かさついた中年のオスの手だった。無意識に膝の上で握りこぶしを作っていたようで、それを手の平で包み込まれた。
「っ、何を。」
手を退かそうとするが、力が強くうまくいかない。ここで魔力を使えばはね除けられるが、それは負けのような気がしてしまい出来ない。
「……エンリは、オスが羨ましい?」
私の気持ちを読んでいるかのような発言にドキリとする。
「……何故わたくしが、オスを羨ましがらなければならないのです?」
「じゃあ、憎い?」
オスが、憎いか。
憎いとまでは思っていない。
シュゼ様を初め、オスは皆酷い目に遭っている。社長が救わなければ野垂れ死にをしていただろう。誰も愛さないのだから、社長がオスを愛することは運命的に定められていること、そう思って自分に折り合いを付けている。
だが、この目の前にいるオスはどうだ。
差別対象のオスとして生まれたくせに、何にも怯えず自信に満ち溢れ、屈することもない。それなのに、社長の愛まで得る資格がある。
私がこの男を苦手とするのは、羨ましくて、憎かったからなのか。
「……憎くなど、ありません。」
奥歯を噛み締め、やっと声を出した。
「嘘だろう。」
「……嘘ではありません。手を離してください。」
離せと言ったのに手は更に強く包まれ、密着した部分が熱くなった。
「エンリ、自分を押さえ込むな。いつか爆発する。オスなど嫌いだと口に出してみろ。ミツコが好きなんだろう?ライバルのことを憎く思うのは当然の感情なんだ。」
――オスが、ライバル。
何かが弾ける音がし、堰き止めていた感情が溢れ出す。いけないと思うのに勝手に口が開いた。
「っ、お前なんかに何が分かるっ!オスを嫌えば、私はボスから切り捨てられる!そういった人間を私は何人も目にしてきた。」
中年のオスは、子供のかんしゃくのような私の叫びを黙って凪いだ瞳で聞いている。それが何だか悔しく、握られていない方の手で、拳を作り胸を突いた。鍛え上げられた平たい胸はびくともせず私を受け止める。
「どんなに美しい人間でも、ボスを、勃起させることさえできないっ。オスであれば愛してもらえるのにっ、子どもだって抱いてもらえるのにっ。私は、唇に触れることすら許されない。フタナリというだけでっ!!不公平だ!オスなんて、嫌いだ!大っ嫌いだ!!っ、きらい、だ。…ううっ。」
いつの間にか流れていた涙が喉に詰まった。そのタイミングで中年のオスは私を抱き締めた。
鼻先がオスの首元に埋まり、今まで嗅いだことのない香りがした。一気に身体が熱くなる。今まで叫んでいたのに、全く声が出ない。
離せと言えないのも、魔力ではね除けられないのも、意思を無視して流れている涙のせいなのか。
「もっと吐き出せ、エンリ。」
背中をポンポンと優しく叩かれて、更に涙が止まらない。
「っ、ひっぐ、わたしが、いちばん嫌いなのは、お前だ。でかくて、ゴツゴツしてて、偉そうだし、変な臭いがする。」
「ふはは。俺たちはあんたらのように浄化魔法が使えないからな。ちょっとは我慢しろ。」
本当に変な臭いなのだ。でも、なんだが、落ち着く気もする。
目を瞑ると眠ってしまいそうだった。やはり疲れているのだろうか。
今頃、社長はシュウを組み敷いているのか。ことが上手く運び、立ち直ってくれればいいと願う。ヒカルもあまり傷つかないでほしいとも思う。
私はオスが嫌いだが、シュウもヒカルも不幸になれだなんて、思ってはいない。
ガイナのことは大が付くくらい嫌いだが、土俵にも上がれていない私を『ライバル』と評してくれた分だけは、優しく接してやろう。
オスが嫌い。
言葉に出すことで心が軽くなった気がする。
まるで憑き物が落ちたようだ。
このまま寝たら良い夢が見られそうだ。
逞しい腕に包まれたまま、私は微睡みに身を任せた。
社用車の後部座席の隣から、聞こえてくる少し掠れた低い声は、相変わらず私を落ち着かない気分にさせる。
「……はい。クローバーの周辺を洗っていますが、有力な情報は今のところありません。加えて、辻馬車の御者も、いるはずの目撃者も見つからないままです。申し訳ありません。」
本当ならば会話などせず無視をしたいが、目的地までの道のりは長い。聞こえなかった振りをして沈黙を貫くのにも限度があるだろう。
そもそも二人でなどいたくないのだが、今朝打ち合わせが終わった後、社長から突然打診をされ回避出来なかったのだ。
中年のオスの住み処の片付けと、持ち出したい物の搬出の手伝い。
『忙しかったら断ってくれていいのだけれど』と前置きをされ、社長と同行する仕事を頂けるのかと思い、全く忙しくないと迂闊に返事をしてしまったのがいけなかった。中年のオスから直接言われていれば間違いなく断っていたのに。それを予測し、このオスは社長の口から言わせたのかもしれない。覗き見の一件からこのオスは何かと私に絡んでくるのだ。
運転席と後部座席はスモークガラスで区切られている。開閉式の小窓は付いてるがほぼ個室だ。そんな場所で圧迫感のあるこのオスと腕が触れ合う位に近くにいなければならないのは本当に苦痛だ。しかもオスの家は遠く、車が通れないような細い道もある為、歩かねばならない。
思わず漏れた溜め息を、隣にいるオスは違う意味に取ったようだった。
「いや、あんたはよくやってるよ。大変だろう?」
「いえ、わたくしは指示を出しているだけですから。」
「それにしたって、通常の業務をしながらだと辛いだろう。」
そう思うのであれば、今日、こんな用事に私を指名したりなどしないでほしい。とは、言わずに『いいえ』とだけ返事を返しておく。
ここで話を合わせて『そうですね』などと言ってしまえば、社長に進言されて屋敷に出入り出来る秘書を増やされる可能性がある。実際何度か社長からも打診されているのだ。私はボスの第一秘書の座を誰かと分け合いたくない。
せっかく、上級学校進学への協力と交換条件で『絶対秘書にはならない』という約束を若きオスに取り付けさせたというのに、冗談じゃない。
それに実際無理はしていない。仕事はやり甲斐があり苦痛ではないし、社に戻れば何でも言うことを聞く優秀な部下もいる。たまに、餌をやらねばならないが。
「…しかし、御者まで見付からないとなると、事故ではない可能性もあるのか?」
「その方向でも動いております。」
「さすがだな。」
「いえ。」
本心から感心しているような言葉に、波立っていた心が少しだけ落ち着いた。
クローバーが死んだのは釈放された当日。もし何らかの意図があって殺されたのだとしたら、犯人はその日に釈放されたことを知る人物、警察関係者ということになる。しかし、さすがにガードが固く調査はあまり進んでいない。
このオスを釈放させる為に警察に赴き、すでに私の面が割れてしまっているので、下手に動くことが出来ず、正攻法で調査をしている為、時間がかかってしまっているのだ。
会話が途切れたのを切っ掛けに、胸ポケットから手帳を出し適当にペンを走らせて仕事をしている振りをする。もう話しかけてくるな、という雰囲気を作る。が、そんな空気を読まないオスはまた何やら話し始めた。
「そろそろ始まった頃かな。」
「……。」
「ああ、アンタは知らないのか。」
決して馬鹿にしたような口調ではないが、このオスに『知らないのか』と言われればムッとしてしまう。無視を決め込むつもりが、返事をしてしまう。
「何のことでしょうか。」
「ミツコとシュウは今日、セックスするんだよ。」
「――――は?セックス!?」
中年のオスが発した言葉に動揺してしまい、素が出てしまうが取り繕う余裕などなかった。そんな私を中年のオスはまじまじと見ている。
「セックスってよりは性教育、か。まぁすることは一緒だろうけど。シュウの過去の呪縛を解いてやるのが目的らしい。ヒカルが提案したらしいよ。」
「……。」
確かに幼きオスはずっと塞ぎ込んでいた。私も含む全員が、幼きオスに元気を取り戻してもらう為に色々なことをした。しかし、効果は無く、もっと長期化するものなのだと考えていた。それがセックス一回で解決するのならば、社長は迷うこと無く実行するだろう。元々オスの為だったら何でもする方だ。
しかし、若きオスが提案とは、いくら幼きオスの為だといっても、さぞ辛いだろう。
本人曰く『社長に性処理係をクビにされた』状態になってから、若きオスはかなり落ち込んでいた。そして、やっとそこから這い上がり、どうやったら社長の傍にいられるのかを模索し、上級学校に進学することを決めた。社長と少しでも近い位置にいて、支え、役に立ちたいとの思いからだ(この時私は約束を取り付けた)。
傍にいて支える、ということは自分の気持ちよりも『オスを救いたい』という社長の思いを優先させることが出来なくてはいけない。私は実際そうしている。しかし、それは自分に全くチャンスが無いことを知っているからだ。
私がオスだったなら、同じようにはできない。
若きオスに感情移入をしてしまっていると、手の甲に何かが触れた。かさついた中年のオスの手だった。無意識に膝の上で握りこぶしを作っていたようで、それを手の平で包み込まれた。
「っ、何を。」
手を退かそうとするが、力が強くうまくいかない。ここで魔力を使えばはね除けられるが、それは負けのような気がしてしまい出来ない。
「……エンリは、オスが羨ましい?」
私の気持ちを読んでいるかのような発言にドキリとする。
「……何故わたくしが、オスを羨ましがらなければならないのです?」
「じゃあ、憎い?」
オスが、憎いか。
憎いとまでは思っていない。
シュゼ様を初め、オスは皆酷い目に遭っている。社長が救わなければ野垂れ死にをしていただろう。誰も愛さないのだから、社長がオスを愛することは運命的に定められていること、そう思って自分に折り合いを付けている。
だが、この目の前にいるオスはどうだ。
差別対象のオスとして生まれたくせに、何にも怯えず自信に満ち溢れ、屈することもない。それなのに、社長の愛まで得る資格がある。
私がこの男を苦手とするのは、羨ましくて、憎かったからなのか。
「……憎くなど、ありません。」
奥歯を噛み締め、やっと声を出した。
「嘘だろう。」
「……嘘ではありません。手を離してください。」
離せと言ったのに手は更に強く包まれ、密着した部分が熱くなった。
「エンリ、自分を押さえ込むな。いつか爆発する。オスなど嫌いだと口に出してみろ。ミツコが好きなんだろう?ライバルのことを憎く思うのは当然の感情なんだ。」
――オスが、ライバル。
何かが弾ける音がし、堰き止めていた感情が溢れ出す。いけないと思うのに勝手に口が開いた。
「っ、お前なんかに何が分かるっ!オスを嫌えば、私はボスから切り捨てられる!そういった人間を私は何人も目にしてきた。」
中年のオスは、子供のかんしゃくのような私の叫びを黙って凪いだ瞳で聞いている。それが何だか悔しく、握られていない方の手で、拳を作り胸を突いた。鍛え上げられた平たい胸はびくともせず私を受け止める。
「どんなに美しい人間でも、ボスを、勃起させることさえできないっ。オスであれば愛してもらえるのにっ、子どもだって抱いてもらえるのにっ。私は、唇に触れることすら許されない。フタナリというだけでっ!!不公平だ!オスなんて、嫌いだ!大っ嫌いだ!!っ、きらい、だ。…ううっ。」
いつの間にか流れていた涙が喉に詰まった。そのタイミングで中年のオスは私を抱き締めた。
鼻先がオスの首元に埋まり、今まで嗅いだことのない香りがした。一気に身体が熱くなる。今まで叫んでいたのに、全く声が出ない。
離せと言えないのも、魔力ではね除けられないのも、意思を無視して流れている涙のせいなのか。
「もっと吐き出せ、エンリ。」
背中をポンポンと優しく叩かれて、更に涙が止まらない。
「っ、ひっぐ、わたしが、いちばん嫌いなのは、お前だ。でかくて、ゴツゴツしてて、偉そうだし、変な臭いがする。」
「ふはは。俺たちはあんたらのように浄化魔法が使えないからな。ちょっとは我慢しろ。」
本当に変な臭いなのだ。でも、なんだが、落ち着く気もする。
目を瞑ると眠ってしまいそうだった。やはり疲れているのだろうか。
今頃、社長はシュウを組み敷いているのか。ことが上手く運び、立ち直ってくれればいいと願う。ヒカルもあまり傷つかないでほしいとも思う。
私はオスが嫌いだが、シュウもヒカルも不幸になれだなんて、思ってはいない。
ガイナのことは大が付くくらい嫌いだが、土俵にも上がれていない私を『ライバル』と評してくれた分だけは、優しく接してやろう。
オスが嫌い。
言葉に出すことで心が軽くなった気がする。
まるで憑き物が落ちたようだ。
このまま寝たら良い夢が見られそうだ。
逞しい腕に包まれたまま、私は微睡みに身を任せた。
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