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悪魔で、よかった【完】
しおりを挟む「アザリ君、なんか無駄に不安にさせちゃったみたいでごめんね?」
アザリ君は首を横に振ると、私の頬にまだ残っていた涙の水滴を拭ってくれた。まるで割れ物を扱うみたいに、そっと優しく。
「僕、色々考えたんだ。爽子さんの為に何ができるのかって。取り敢えず、ご両親に挨拶に行こう。人間は結婚する時、そうするんだよね。神には誓えないけど、爽子さんのお父さんとお母さんに、必ず幸せにするって誓うから。……すぐにはちょっと無理かもしれないけど。僕も爽子さんも安心出来る形を探して外に出よう。挨拶が済んだら、新婚旅行もしよう。」
「ありがとう。でも、別に外に出なくてもいいよ?結婚の挨拶だって――」
「ううん。頑張ってみる。絶対に魔力欠乏にならないようにしたら、あとは僕が不安を乗り越えるだけだと思うから。ちょっと時間がかかるかもしれないけど、いつか、手を繋いで一緒に外に出よう。」
「そしたら、ディルお義兄さんにも、会ってもいいの?」
「ディル?…………悪魔は……っ、分かった。二人きりじゃないのなら。でも、たっぷり魔力を注いだ後じゃなきゃダメだよ?3回、いや、5回、っ、だめだ、……多分10回くらいしないと。」
「会う体力残ってるかな。」
「……ごめん。」
「大丈夫。そんな情けない顔しないで。ディルさんと話したければ取り敢えず文通でもしてみるから。時間はたくさんあるんだから、二人でいい方法考えよ?それに私はアザリ君がいれば他には何にもいらないよ。」
「っ、爽子さん、ほんとに大好き。大好きすぎて、胸が苦しい。」
がばりと抱き寄せられると、胸からは早い鼓動が聞こえた。
「心臓、大丈夫?」
「大丈夫。……爽子さん、僕の一生を全部、爽子さんに捧げるから。絶対に何があっても爽子さんを離さないから。だから、爽子さんも絶対僕から離れないでね。離れたら、僕は多分、おかしくなっちゃうから。」
「だ、大丈夫。絶対に離れないから。だって私はアザリ君がいないと生きていけないもの。」
アザリ君のルビーのような瞳に、燃え盛る炎みたいな強く熱い想いを感じた。それをちょっとだけ恐く感じたのは奥の方に暗いものが隠れているようにも見えたから。けれどそれは私を誰よりも愛してくれていることの証拠のようにも思う。
「僕だってそうだよ。爽子さんがいない世界なんていらないから。」
生きていけないではなく、世界をいらないと言ってしまうのは、どういう意味なのか。深く考えると恐ろしいことを言われているような気がするけど、離れるつもりもないので、大丈夫だ。
なんにせよ、こんなに強く愛されたことが今まであっただろうか。
素敵で強烈な愛の言葉、――プロポーズに、感動してまた涙が出てきてしまった。
けれど、それを手で拭こうとして視界に入ってきたものに、そう言えばと、現実に戻された。
プロポーズと緊縛。
ギャップが酷すぎて涙が引っ込んだ。
「ねぇ、アザリ君、この話、私を縛る前に出来なかった?」
***********
「爽子さん、この縄、すごく似合ってるね。ピンクに染まった肌にすごく映える。」
アザリ君は、胸の谷間から顔を上げて、嬉しそうにそう言ったけれど、私はなんと答えていいか分からない。
愛撫に翻弄されてしまっているから。
私は恥ずかしい格好をさせられている。
縄で胸だけを縛られ、上半身は服こそ着ているがボタンは外され、ブラは押し下げられて裸の胸が露出している。
その先端は唾液に濡れ硬く尖っていて、空気が触れるだけでも吐息を洩らしてしまうほどに、感度が高められていた。
下半身はすっぽんぽんである。
指はぬかるみに入れられたままで、いいところをマッサージするように動いている。
アザリ君は、宣言通り私をいかせてくれた。何度も。
「爽子さんが、気持ちいい顔してくれると、僕もすごく気持ちがいい。もっと、感じて。僕の手で、舌で、いっぱい乱れてほしい」と言って。
胸も、陰核も襞も、届く範囲で中も。
私の反応を見ながら、丹念に指と舌で奉仕されて爆ぜ、おかしくなりそうだった。
「爽子さんの、ここ、剥いたら真ん丸で可愛い。皮の中にこんなにきれいな真珠を隠してたんだね。……あ、中からは、いっぱいとろとろの蜜が溢れてきたよ。」
アザリ君の、おそらく自覚がないであろう言葉責めも、羞恥を煽って、私を絶頂へと導く手伝いをしている。
「やっ、恥ずかしい、から、……あっ、あんまり見ないでっ。」
「ごめん、じゃ、また舐めてあげるね。」
「っ、ひゃ。だめ、またいっちゃうっ。」
股の間にあるアザリ君の綺麗な顔が、私の出した液で汚れてしまう。この間まで女を知らなかった彼にこんなことをさせて、背徳感で脳みそがグツグツと沸騰してしまいそうだ。
「だ、だめっ…吸っちゃだめっ。んんっ、アザリ君っ、いっちゃう……っ、あああーーっ。」
達する度にアザリ君は、すごく嬉しそうな顔をしてギュッと抱き締めてくれる。
いくのも気持ちがいいけれど、その抱擁も気持ちが良くて、いつまでも胸の中にいたくなる。
何度も何度も達して、やっとアザリ君は私の中に入ってきた。散々慣らされた膣は待ちわびていたものを締め付けながら、あっけなく達した。アザリ君も、ほぼ同時にいったようだった。
そこで私が力尽きて、今日はもうおしまいということになった。
アザリ君は、し足りないみたいだったけど我慢してくれた。
布団の中で微睡みながら、愛する人に腕枕をしてもらう幸せを噛み締める。
「アザリ君のご両親に、ご挨拶したいなぁ。私も、アザリ君を幸せにするって、誓いたい。」
ふわふわと夢心地の私に、アザリ君は、少し悲しい顔をして首を横に振った。
「挨拶はしなくていい。出来ないから。母には会わせてもらえないし、父も母の側から離れることはない。自分の子どもにでさえ魔力を持ち始めたら、母と隔離したんだ。」
小さい頃に母親と引き離されたのなら、アザリ君は寂しい少年時代を過ごしたのだろう。
私は、これから伝えることが、彼の心の中に一生残るように願いを込めて、アザリ君のおでこと自分の額を合わせた。
「私がアザリ君の家族だよ。ずっと側にいるからね。あと、ディルお義兄さんも、ね。」
アザリ君は、整った顔をくしゃりと歪ませ、一筋涙を溢した。
「どうしよう、僕、17年間生きてきて、今が一番幸せ。」
「……。」
私は泣いているアザリ君の頭を撫でながら、冷や汗を流した。
やっぱり年下だった。
でも、これから先、何百年だか分からない未来があるのだ。きっと私達の年の差なんて誤差の範囲だ。
だから、そっちはいいとして。
淫行。
飲酒強要。
こっちはまずい。
しかし、倫理的にはアウトでも私は罰せられることはない。
私たちは夫婦で、悪魔と魔女だから。
――ホント、アザリ君が、悪魔でよかった。
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