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春日部 24
しおりを挟む町屋は毎日俺に謝ってくる。
試しに3Pさせようとした日から。もう一週間も経つのに何回も謝ってくる。よっぽど申し訳ねぇと思ってんだな、ってのは分かったから、赦すって言ってんだけど気が収まらねぇようで「坊主にする」なんて言ってきたけど、想像するだけで笑けてくっから、止めろって言ってる。
あと、謝る以外にも毎日「大好き」って言ってくる。俺の機嫌取る為か知らねぇけど、言われる度にすげぇ照れるから勘弁してほしい。
でも、町屋は頬をピンクに染めて俺をじっと見つめてくっから、なんか止めろって言いづれぇ。
まぁ、照れ臭ぇだけで嬉しくはあるから、最近は「俺もだよ」って言って頭撫でてやってる。
その後は高確率で押し倒される。
セックスも、前にも増して丁寧で優しい。アブノーマルなプレイすんのは俺に悪いと思ってんのか、ノーマルな、ひたすら俺が気持ち良いセックスだけしてる。
他人が入ってこなきゃ、別にどんなプレイしてもいいって言ったはずだけど、気を使ってんだと思う。
俺がすげぇ怒ったから。
あん時俺は、町屋に「してみたら?」って言われたショックと、マナトに触れられて気持ち悪ぃのを何とか耐えて掘られる覚悟をしてた。それなのに、してみたら?なんて言った本人が止めやがって、すんげぇ頭にきた。
俺は町屋以外の誰ともやりたくなんてねぇのに、けしかけたのはそっちだろって。
そんくらい半端な気持ちなら、始めっから親友のケツなんて差し出すな。
事前に何も言わねぇで騙し討ちするくらいにやりたいことじゃなかったのかよ、って。
あともう一つ頭にきてたことも合わさって、気付いたら頭突きしてた。
町屋はすげぇ痛そうにしてたけど、俺も相当痛かった。今は治まったけど、コブができてた。
思ったより強く当たっちまったのは、町屋がマナトのケツを見てたのが気に入らなかったから。
スポーツ用みてぇな変なパンツを履いて、ケツが丸見えどころか穴まで見えそうなマナトをじっと見てた町屋。
俺が嫌だって言ったら、ひょっとして町屋がマナトにハメんのか?って思ったら、目の前が真っ赤になった。それだけは絶対駄目だ、って。
そこで気付いたこともあった。
町屋を取られたくない、って気持ちは初めて湧いてきた感情のはずなのに、ちょっと覚えがあったこと。
アイツの初体験の話聞いた時。
手慣れた感じで腕枕された時。
喧嘩に巻き込まれて首に擦り傷付けてきた時。
程度は違うけど同じ種類の感情だって気付いた。当時はモヤモヤしたよく分かんねえ感情、って認識だったけど、そん時にはっきり分かった。
これは嫉妬だ、って。
俺は、他の男のこと匂わされるとムカムカしてモヤモヤして苛ついてた。結構昔から。
でも、それって普通のことなんだよな。
俺は親友の一番で唯一になりてぇんだから。
町屋も同じ気持ちを持ってなきゃオカシイのに、俺のケツ差し出すわ、他の男のケツ、ガン見するわで、頭にきた。
でも、頭にきたからって町屋を切り捨てられるわけじゃねぇから。
俺には町屋が必要で、町屋がせめて喜んでくれんなら、すっげぇ嫌だけど俺のケツだけはくれてやってもいい、って思った。町屋のチンチンは絶対誰にもやらねぇけど。
だから町屋のチンチンは俺が握ってた。
でも、止めんじゃねぇって怒ったけど、実際は止めてくれてほんとに良かった。
やっぱりケツに町屋以外のモンが入んのは気持ちわりぃから。
あのままやってたら多分吐いてた。
ケツ穴は性器じゃねぇし、腸は内臓だ。そんな大事なトコ、町屋にしか許したくねぇ。
「こんなこと二度としない」って町屋は言ってたし、今も反省してるみてぇだから、この先そんなことはねぇと思う。そこは町屋を信じようと思う。
★
「じゃ、行ってくる。」
「うん、いってらっしゃい。運転気を付けてね。」
日曜日、バイトに行く俺を町屋は玄関で見送ってくれたんだけど、頬にキスしてきてびっくりした。
「お前、なにしてんだよ。俺たちは新婚さんじゃねぇんだぞ。」
「あははー、親友でしょ。分かってるってー。」
「ったく、帰ってきた時、アレは絶対やんなよ?」
「アレって?」
「アレだよ、アレ。お風呂? それともワ・タ・シ? ってヤツだよ。」
「あー、アレね。了解。」
「だからやんなよ?」
「はーい。」
ニコニコして手を振る町屋に、俺も手を振って玄関を出た。
アイツは絶対やってくるんだろうな、なんて考えたらエレベーターの中で一人で笑っちまった。
今日は車で通勤する。
今日のバイト先には駐車場があって、使用許可ももらってある。
マンションのエントランスから出て、200メートル離れた駐車場に向かおうとした時、男と目が合った。
ジロジロと遠慮のない視線に嫌な予感がした。
歩き出すと同じ方向に歩いてきたから確信した。
この男は過去の女絡みで俺に用があるんだろう。
こんなことはよくあることだ。
でも、ここ一年、誰にも手を出してねぇから気が緩んでた。
スマホの録音機能をオンにして、防犯カメラがある位置で立ち止まると、俺は男と向き合った。
男は、二十代半ばくらい。オレより少し長身で、目の下に隈が出来てはいるがワイルド系のイケメンだ。
こんな彼氏がいて俺にちょっかい出してくる女は、よっぽどメンクイなんだろな、と呆れる。
「俺に、何の用っすか?」
男は、返事もしないで俺へ手を伸ばしてきた。
もう殴んのかよ、ってビビったけど、その方が話は早いかと、拳を受けてやることにした。
受け流してダメージは少なく、吹っ飛び方は派手に。
ちゃんと防犯カメラの視界に入っていることも確認済み。
伊達に場数は踏んでねぇ。
けど、伸びてきた手は俺のシャツに触れただけだった。
気味が悪くて手で払いのけると、男は顔を歪ませた。
「やっぱり、これ、トモのシャツだ。」
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