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第1部・序章/出会い編
38.幸甚
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4人がその場を去った後も、リアはその場に立ち尽くしていた。
「……っ、クソッ……」
その場に、握ったままの刀を投げ捨てる。
こんな事をしたって、ユキが戻ってくるわけではない。
「……ユキ、……会いたい……ユキ……」
親に捨てられた時だって、魔力が無いが故にどんなに努力したとて、これ以上の出世は望めないと告げられた時だって……涙なんて、出なかったのに。全てを受け入れる事が出来たのに……。
ユキが居てくれるだけでいい。他に何も要らないし、望まない。何もかもなげうってでもいい。
だから、もう一度……
『……ア……リアーー…………!!』
遠くで、ユキの声が聞こえた気がした。
そう、もう一度だけでもいいあの声が聞きたい……
「……リアーーーー!」
また、自分を呼ぶ声が聞こえる。
「……えっ……」
……幻聴なんかじゃない。
今、確かに聞こえた。
聞き間違うはずなんてない。
リアは、声が聞こえた方を振り向いた。
遠くから、こちらに走ってくる人影が見える。
あれは……あの姿は…………
見間違うわけがない。
愛する人の姿を。
この数ヶ月、どんなに待ち望んだだろう。
「…………き、ユキ…………!!!!」
いても経ってもいられず、リアは人影に向かって走り出していた。
……君のことを、考えない日なんてなかった。
何度絶望して、泣き明かしただろう。
こんなみっともない姿、誰にも見せた事がない。
このまま、消えてなくなりたかった。
いっそ、嫌われて立ち去られた方が楽だった。
ユキのいない世界を、もうどう生きればいいのか分からなくなっていた。
二度と会うことは叶わない……そう思ってた相手が、いま、私の胸の中に飛び込んできてくれた。
「…………っ、ユキ、ユキ…………」
「リアっ……リア…………」
痛いくらいに抱き合った2人は、これまでもこれからももう無いんじゃないかと言うくらい、互いに涙で顔をぐちゃぐちゃにして、しゃくり上げながら泣いた。
話したい事、伝えたい事、たくさんあるのに。
『おかえり』『ただいま』
そんな言葉さえ言えずに、俺たちは何度も……何度も名前を呼びあった。
なぁ、リア。
もし……もう一度、君に会えたら
そんな奇跡が起こったら
1番に言いたい言葉があるんだ。
この言葉を伝えたくて……
俺は、人生を賭けたんだ。
一頻り泣いて、由貴は少し恥ずかしそうに顔をあげた。
真っ直ぐの瞳でリアを見つめると、満面の笑みで言葉を紡ぐ。
「リア……
好きだ。」
「……っ、クソッ……」
その場に、握ったままの刀を投げ捨てる。
こんな事をしたって、ユキが戻ってくるわけではない。
「……ユキ、……会いたい……ユキ……」
親に捨てられた時だって、魔力が無いが故にどんなに努力したとて、これ以上の出世は望めないと告げられた時だって……涙なんて、出なかったのに。全てを受け入れる事が出来たのに……。
ユキが居てくれるだけでいい。他に何も要らないし、望まない。何もかもなげうってでもいい。
だから、もう一度……
『……ア……リアーー…………!!』
遠くで、ユキの声が聞こえた気がした。
そう、もう一度だけでもいいあの声が聞きたい……
「……リアーーーー!」
また、自分を呼ぶ声が聞こえる。
「……えっ……」
……幻聴なんかじゃない。
今、確かに聞こえた。
聞き間違うはずなんてない。
リアは、声が聞こえた方を振り向いた。
遠くから、こちらに走ってくる人影が見える。
あれは……あの姿は…………
見間違うわけがない。
愛する人の姿を。
この数ヶ月、どんなに待ち望んだだろう。
「…………き、ユキ…………!!!!」
いても経ってもいられず、リアは人影に向かって走り出していた。
……君のことを、考えない日なんてなかった。
何度絶望して、泣き明かしただろう。
こんなみっともない姿、誰にも見せた事がない。
このまま、消えてなくなりたかった。
いっそ、嫌われて立ち去られた方が楽だった。
ユキのいない世界を、もうどう生きればいいのか分からなくなっていた。
二度と会うことは叶わない……そう思ってた相手が、いま、私の胸の中に飛び込んできてくれた。
「…………っ、ユキ、ユキ…………」
「リアっ……リア…………」
痛いくらいに抱き合った2人は、これまでもこれからももう無いんじゃないかと言うくらい、互いに涙で顔をぐちゃぐちゃにして、しゃくり上げながら泣いた。
話したい事、伝えたい事、たくさんあるのに。
『おかえり』『ただいま』
そんな言葉さえ言えずに、俺たちは何度も……何度も名前を呼びあった。
なぁ、リア。
もし……もう一度、君に会えたら
そんな奇跡が起こったら
1番に言いたい言葉があるんだ。
この言葉を伝えたくて……
俺は、人生を賭けたんだ。
一頻り泣いて、由貴は少し恥ずかしそうに顔をあげた。
真っ直ぐの瞳でリアを見つめると、満面の笑みで言葉を紡ぐ。
「リア……
好きだ。」
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