202 / 227
※174
しおりを挟む「海??」
「うん。去年行けなかったから・・・」
一昨年は海に行った。たまたま休みがあったから。
去年は忙しくて行けなかった。でも今年はシフトが連休だから、行けるには行ける。
行ける、けど・・。
「いいんだけど」
「本当!?え、けどって?」
「泳がなくていい?」
「・・・なぜ?」
泳ぐために行くのに?というニュアンス。つい、口ごもる。
多分、言ってもあの手この手で丸め込もうとするんだろうな。黙っておきたいけど、ここまで食いついてくるから、結局言わないといけないか。
「・・・胸」
「はい」
「・・・ちょっとふっくらしてるし・・あと、乳首が・・・」
言って、恥ずかしくて、つい俯く。
一昨年より胸は膨らんでるわ(ぱっと見はわからないだろうけど・・・)、乳首は大きくなってるわ・・・。誰も気にしないだろうけど、おれは気になるんだもん。多分気温差でたっちゃうし、走ったら揺れるだろうし・・・。
「・・・そ、だね・・・そうか。うん・・・じゃぁやめようか」
驚くくらいすんなりと引き下がったので、ぎょっとしてしまう。
和多流くんは残念そうにしていたけど、涼くんの体が大事だから、と言った。
そう言われると一緒に泳ぎたかったなと思ってしまうわけで。
「足だけ、とか」
「うん。歩くのも楽しいよね」
「・・・違ってたらごめん。何か計画してた?」
「・・・あ、うん・・ほら、前に行ったホテル・・・海沿いの・・・あそこね、部屋によっては内風呂があるみたいなんだ。部屋も和室があるみたいで・・・あとホテルの系列で近くに離れの宿があるから、そこもいいかなーって・・・せっかくだから旅行・・・」
「は、離れって、高いよね・・?」
「・・・・お互いの誕生日ってことで、いかがでしょうか。少し遅めの・・・」
おれと和多流くんの誕生日は、同じ月の月初と月末。一昨年は別で祝い、去年は中間あたりでまとめてお祝いをした。お互いに忙しく、それでもいいか打診したところそれがいいね、ということになり、今年もそのスタイルで行くようだ。
「前と同じところでいいの?」
「うん。四季を網羅したい」
「網羅したいの!?」
「だって、結構いいホテルだったし、眺めも良かったし・・・。それに、海鮮丼、気に入ってたでしょ。ビュッフェも」
「あ、うん。イクラ丼すごくおいしかった・・!ビュッフェもまた食べたい」
「でしょ?だからね、行きたいなーって。前は冬に行ったから、今年は夏。来年もし、もし行けたら春か秋がいいな。おれらにお金があればだけど」
「・・・えへへ」
嬉しい・・・。
来年の約束までできるなんて。
絶対に行きたいと思った。景色がきれいだろうな。
「で、夏に離れの宿でいかがでしょうか」
「・・・内風呂ある?」
「離れだからね」
「でへへ」
「えー??なぁに?やらしいこと考えた?おれもおれも!」
「違うよ。豪華だなーって思っただけ」
「いや、今の笑い方は絶対にやらしいやつだった。ほら、乳首立ってるもん」
シャツの上からつままれる。くすぐったくて身をよじると、そのまま倒された。
抵抗はしない。だって嬉しいもん。
*************************
「宿、予約とれてよかったね」
「うん。すぐ予約したしね。早期割引だったし、ラッキーだった。涼くんがしっかり休みを死守してくれたおかげです」
「働き方改革様様だね」
「でも結構イレギュラー出勤も多かったじゃん」
「ちゃんと代休とってたよ」
「とれてるけど、そわそわしました」
「ごめんね」
手を握ると、目尻を下げた。別に初めてでもないのに、和多流くんはまだ嬉しそうな顔をしてくれるんだよね。こういうところ、いいなって思うしありがたいなって思う。
「・・・あのさ?」
「え?」
「・・・うんと、ですね?あー・・・」
「なぁに?」
急に歯切れが悪くなった。海が見えてきて、インターを降りる。海に向かうのかと思ったら、海岸を通り過ぎていった。
「あれ?海鮮丼は?」
「明日にしよっかなーって・・」
「あ、帰りに?うん、それもいいね。どこ行くの?」
「・・・ドライブ」
「ドライブ?ふふ、うん」
「まぁ、その、宿はこっちだし・・海岸っていうより岩場なんだけど・・・」
「人が少なそうだね。いいね」
「・・・・お願いがありまして」
「お願い?」
しばらく車を走らせて、駐車場に車を停めて、岩場へ降りる。和多流くんの手にはいつのまにか紙袋があって、何だろうと首をかしげる。
潮風を体に浴びながら海を眺めて少しだけ歩いた。
「あはは、滑らないようにしないとね」
「ん」
「人がいないねぇ。朝早いからかな」
「そうかも」
「で、お願いってなぁに?」
中々切り出さないから、痺れを切らして振り返ると、紙袋を差し出された。持ってみると意外と重みがあって、中を覗き込む。浮き輪と海パン、あともう一枚何かが入っていた。
「え?」
「やっぱり海に入りたいです」
「えー!?でもおれ、」
「それ、ラッシュガード!買ったから!プレゼント!」
「はぁ!?誕生日当日にも桃うさ、買ってきたよね!?」
「あれは誕生日!これは普段の感謝の気持ち!」
「ちょっと無理があるでしょ!」
「入りたいの!!海でイチャイチャしたいの!!一昨年はまだちょっと、その、かっこつけてたから・・・あんまりべたべた触れなかったし・・・!」
「・・・・・つまり、不完全燃焼だったってわけ?」
「そうです!」
「・・・くっついてイチャイチャすんの?海で?周りが見たら引くよ」
「・・・ひどいー・・・恋人じゃん・・・彼氏じゃん・・・いいじゃん・・・」
「どんな人たちでも人目をはばからずにイチャイチャしてら引くでしょ。絶対に変なことするじゃん」
「しません」
「嘘だね」
「しませんって」
「絶対、」
「しないってば!!しないしない!!だから、・・・一緒にはいろ。ね?」
真剣な顔でお願いされた。ここまで必死で真剣なら、大丈夫かな。少し考えて頷くと、パッと笑顔になる。それを見て、本当に普通に一緒に入りたかっただけなんだって、理解した。
車に戻って砂浜まで走り、車内で着替えを済ませて外に出る。
和多流くんが浮き輪を膨らましてくれた。
・・・本当は入りたかったから、嬉しかったりして。しかも浮き輪、ちょっと、憧れてたし・・・。シャチとかイルカとかも、乗ってみたかったけど・・・。
「この浮き輪、大きいね。膨らますの大変だったでしょ」
「自動のポンプにすればよかった。足踏みは大変だね」
「おれ、使っていいの?」
「うん。おれも掴まるけど」
「ラッシュガード、ありがとう。ピンクのラインが入ってるから目立つね」
「見失わないようにそれにしたんだ。白地の方が暑くないしね。さ、入ろ」
和多流くんはTシャツを脱いで海パン一枚になった。周りの人たちがちらっと見てくる。
そりゃそうだ。鍛えた体、きれいだもん。
顔もかっこいいし。ふふん。おれのだもんね。
ざぶざぶと海に入る。冷たいけど、気持ちいい。浮き輪の中に座って空を見ると、太陽がまぶしかった。
「もっと向こう、行こうか」
「うん。連れてって」
「・・・ふふっ。うん」
「え?」
「前は言われなかったから、嬉しかった」
前に来たときは浮き輪もなかった。適当に2人で泳いでいたくらいだ。
腕を入れて、ぐんっと引っ張ってくれる。少し深いところに来ると、浮き輪に掴まってゆらゆらと揺れを楽しんだ。
「ははっ。楽しいね」
「うん。クラゲとかいないかな」
「まだじゃないかな。・・・涼くん」
「なに?」
「めっちゃくちゃ好きだわ」
「は!?」
「来られてよかったー。一昨年はまだ少しぎこちなかったもん。去年は都合がつかなかったし。今年は連休だったから泊りで来られて、よかった。戻ったらなんか食べよっか。サービスエリアで買ったやつ」
「・・うん。おれも、楽しいよ。本当は入りたかったから」
「あ、そうなの?」
「当たり前じゃん。でも、・・・体が、うん」
「買ってよかった。一緒に入れて、よかった。・・・あのね」
「うん?」
きゅっと指先を握られた。ジーっと見つめられて少し恥ずかしくなる。和多流くんに見上げられるってなかなかないから、新鮮だ。
握り返すと、目を閉じた。
「キスは、変なことかな」
「え!?・・・ひ、人が、いなければ・・・」
「見えないよ、こんなところ。ね、いい?」
ん、と顔を寄せられた。あたりを見渡してちょんっと触れる。
照れ臭くなって2人で笑った。
存分に海を楽しんで砂浜に戻る。広げたワンタッチテントに戻ってお茶を飲むと、和多流くんは適当に体を拭いてごろんと寝転がった。
「これさ、いつの間に買ったの?」
「海に行くって決めてから」
「じゃぁ結構前に買ったんだ?」
「そ。便利だ。これ、ピクニックの時も使える」
「そうだね。たくさん使お」
「丸見えだからエッチは無理だなー」
バチンっと腹筋を叩く。
慌てて起き上がって謝ってきたけど、無視をした。
すぐそういうことを言うんだから。
・・・でも、好きそうだよね。なんか、そういう、企画ものみたいなDVDとか出てきたことあるし・・・(すぐ捨ててたけど)。和多流くんって性に対してアクティブだよね。おれは部屋でするのが一番安心できるけど、外でしたがることもあるし。ちゃんとプライベートな空間でないと安心できないって、言ってるのに。たまにまんざらでもなくて応じてしまうのが良くないのは分かってるんだけどさ。
「涼くん、ごめんなさい。もう言いません」
「・・・」
「涼くん~~・・・」
知らない。無視。
ラッシュガードが肌にくっついて少し気持ち悪いので、テントの中だしと思って脱いだ。脱いだだけ。なのに。
「あ・・・!!」
じっと見ていたのだろう。和多流くんが静かに叫んで鼻を押さえて上を向いた。
「・・・ねぇ!ごめん、お馬鹿なの!?」
「いや、う、急に脱ぐなんて思わなくって・・!あー、やばいやばい!」
「あーあ・・・。ほら・・・」
カバンからティッシュを出して渡すと、慌てて押し当てた。
ゴロンと寝っ転がったので、おでこに保冷剤を当ててみる。
まったくもー・・・。海パン、変に、膨らんでるし・・・!
「バカ!!」
「だ、だって・・・結構我慢してて・・・」
「すぐそっちに、」
「しょうがないじゃん。好きな人と海に来てんだよ?責めないでよ。大目に見てよ。すぐ怒るんだから・・・」
「なぁに?」
「・・・ごめんなさい」
睨みつけるとしゅんとした。
・・・まぁ、その、嬉しくないわけじゃないけど・・・。見境がないからな・・・。
ぼーっと海を眺めていると、和多流くんの手がぱた、と落ちた。
鼻血は止まっていて、静かに寝息を立てていた。朝も早かったし、運転もしてくれたし、泳いだもんね。疲れたよね。
バスタオルをかけて隣に寝転ぶ。
考えたこと、なかったな。恋人と海に来て、こんな風に寝転がって、ぼんやりすること。それがすごく気持ちよくて安心できるってこと。
知らなかったんだ。何もかも。
こんなに嬉しいんだね。
こんなに穏やかなんだね。
風が吹いてテントの中に入ってくる。柔らかな潮風はいい香りだ。
******************************
「間に合ってよかった・・・」
「ついつい、寝ちゃったねぇ・・・」
とても気持ちがよかったのだろう。和多流くんはずいぶん長いこと眠っていた。おれもうとうとしてしまって隣で少し寝て、起きたら少し陽が傾いていた。
慌ててシャワーを浴びて着替えを済ませて、砂浜に戻ってきた。
夕日がきれいで、まぶしかった。
「あー、何で寝ちゃったのかなー・・。もっと泳ごうと思ったのに」
「明日また入る?」
「んー?まぁ明日考えよ。夕日見られてよかった」
テントを畳んでレジャーシートの上に並んで座る。地元の人だろうか、犬の散歩をしたり波打ち際で遊んでいた。
「風が涼しいね」
「ね」
「・・・愛してるよ」
小さく言われて、体が跳ねる。
ぱっと顔を向けると、顎を支えられて上に持ち上げられた。そのまま唇が重なってすぐに離れていく。
「わ、」
「人がいてもいいじゃん。したいよ」
「あ、ん、と・・・あっ」
「ん、」
何度も何度も、キスをした。
柔らかくて、温かい唇。人の目なんて気にならなくなるくらい、たくさんした。
夕日が沈みかけてきたとき、和多流くんが離れた。
「いっぱいしたね」
「ん、うん・・・」
「もっとしたいよ」
「和多流く、」
「行こうか」
立ち上がり、手を差し出された。支えてもらって立ち上がり、手を繋いで車に乗り込む。
黙ったまま宿へ到着すると、さっさと受付を済ませて石畳を歩いた。
風が吹くとざわざわと木が、竹が、揺れる。涼しくてつい立ち止まると、そっとカバンを持ってくれた。
「あ、ありがと・・・」
「うん。いこ」
早足で離れに向かう。なんか、怒ってる??口数が少ない。もう少し庭とか、見て回りたかったんだけどな・・・。
こんなにいい雰囲気なんだし、手とか、繋いで・・・浴衣とか、うん・・・。
「この部屋だね」
カードキーをかざすと、引き戸を開いた。玄関に下駄が二足並べておいてある。履いていいのかな。
「すごーい・・・見てー。畳きれいだね。いい匂いだね」
畳のいい香りがした。
和室から見える庭もきれいだし、内風呂はもちろん露天風呂だった。
お茶とお茶菓子がテーブルに可愛く置いてあって、心が躍る。
荷物を運びこんだ和多流くんを振り返ると、じっとおれを見つめていた。
「お茶淹れる?飲もうよ。あ、ご飯ってここで食べられるんだっけ」
「お風呂入ろう」
「え?お茶菓子・・・」
「後ででいいよね」
ぎゅっと腕を掴まれた。その手が熱くて、驚いた。
引っ張られて体当たりすると、しっかりと抱きとめてくれる。するすると指先で頬を撫でて、両手で顔を包んで持ち上げた。
「一回だけ」
「あの、時間が、」
「一回だけだから。約束する。あとは、ご飯食べて・・・それから・・・」
「え、え、あの、お散歩は?景色がきれいだし、」
「後でいいでしょ?おれは涼くんを抱きたい」
かーっと全身が熱くなる。目を逸らすとかぶりつくようにキスをされた。
口内を優しくかき混ぜられる。背中に腕を回して応えると、そっと畳の上に倒された。
怒ってるんじゃなくて、したかったんだ・・・。
何度も何度もしてるのに、まだあんなふうに、求めてくれるんだ。
嬉しいやら恥ずかしいやら。
和多流くんはシャツを脱ぐとおれの下に敷いて、短パンに手をかけた。脱がせやすいように、そっと腰を上げた。
**************************
「ふひぃ・・・」
「変な声だなー」
じゃぶ、と湯船につかると、変な声が出てしまった。
のんびり足を伸ばしてたっぷりと木の香りのするお風呂につかるなんて、人生で想像したこともなかった。
和多流くんが隣に座り、顔をぬぐって空を見上げた。
「あー・・きれいだね」
「うん~・・・」
「風、結構涼しいね。あ、食事はこの部屋に届くよ」
結局、結局3回もしてしまった。
1回と言っていたのに、最後なんておれから求めてしまった。なんとなく離れがたかったんだ。
海のにおいをまとった和多流くんが格好良くて、途中でたまらない気持ちになって、ついつい求めてしまった。
「その前にお散歩する?」
「うん。する」
「浴衣着ようね」
「前のと同じかなぁ」
「ううん。受付で選べたから選んでおいたよ。きっと似合うよ」
「えー?そうだったの?おれも選びたかったなぁ。なんで教えてくれなかったの」
「早く済ませて部屋に入りたかったからです。出よう」
腕をひかれ、温泉から上がる。
はい、と着替えを渡されたのでパンツを広げると、以前の旅行でおれが買ったおそろいのジョックストラップパンツだった。
和多流くんもそれを履いて、浴衣に袖を通した。ベージュの無地の浴衣。帯は紺。わぁあ・・・。すごく、すごく・・・。
「エッチ・・・」
「え?」
「あ、あ、違います。あの、ごめん」
「涼くんは白ね。淡くアジサイの絵が織ってあってきれいだよ」
「ありがと・・・」
「・・・エッチ。興奮した?」
ビクッと肩が跳ねる。
顔が熱い。
浴衣に腕を通すと、そっと帯を巻いてくれた。
「似合う!可愛いね」
「わ、」
引き寄せられてお尻を撫でられた。ちゅ、ちゅ、と優しく唇を吸われる。
心臓が大きく音を立てていて、和多流くんに聞こえないか心配になった。
緩く胸を押して距離をとろうとしたけど、あっけなく抱き込まれて更に深くキスをされた。
膝の力が抜ける。寄りかかるとまたころんっと畳の上に寝かされた。
「うー・・・」
「んー?いや?」
「外、行く・・・」
「うん・・・」
「・・・お、押し付けないで!」
「涼くんもたってるじゃん」
「押し付けるからでしょ!」
「そんなにいや?」
嫌じゃないよ。バカバカ。
でも一回落ち着かないと、ずーっとしてそうなんだもん。
下駄を履いて外に出ると、きゅっと手を握られた。カラコロと音を立てて散歩をする。石畳で転ばないようにしないと。
ちらほらと話し声が聞こえるので、他の宿泊客だろうか。食事前にみんな散歩を楽しんでいるみたいだった。
薄暗い竹林の中で人の気配がするのは、少しドキドキする。誰かとすれ違わないといいな。手、離したくない。
「風が気持ちいいね」
「そうだね。ホテルの方の喫茶店でかき氷、やってるんだって」
「へぇ・・・食べたいな」
「好き?」
「あんまり食べたこと、ないんだ」
「そっかー。じゃぁ食べなくちゃね。確かルームサービス、こっちでやってた気がするから見てみようか。あぁ、そこ段差」
くんっと引っ張られて和多流くんにぶつかる。しっかりと支えてくれた。
かっこいいな。引く手あまただったろうし、選び放題だっただろう。なのにおれのことを選んでくれて、おれにかっこいいって思われたいって言ってくれて、可愛いってたくさん言ってくれて、大好きって、言葉でも体でも表してくれる。おれも釣り合うようになりたい。和多流くんにかっこいいって、思われたい。付き合えてよかったって思ってほしい。
「あ、ありがと・・。こっち、いこ」
路地を曲がって進む。少し意識して先導するように歩くと、それに合わせてついてきてくれた。嬉しかった。
「結構歩いたね。足、痛くない?」
「ん?うん。全然。涼くんは?」
「平気。こっち曲がったら戻っちゃうかな」
「かな。蛍とかはいないね」
「ねー。いないねぇ。でもライトアップがきれいだね」
「うん。一緒に来てくれてありがとうね」
「え!?それ、おれのセリフだよ!連れてきてくれてありがとう」
「ずーっとずーっと、夢だったんだ。涼くんと旅行。冬に来た時もすごく幸せだった。今も、幸せ」
「夢?」
「うん。おれ、たくさん夢があるよ。全部叶えるまで一緒にいてね」
「・・・あの、お、教えてって言ったら、教えてくれる・・・?」
少し考えると、黙って首を横に振った。にこっと微笑んで、内緒、とおれの唇を撫でる。
「言ったらまた、叶ったら終わっちゃうんだって落ち込むでしょ?」
「落ち込まないよ。お、おれにだって夢くらい、あるし!」
「言わないでね。叶っちゃったら泣いちゃうから」
言えるわけ、ない。
死ぬまで一緒にいたいとか、言えるわけないじゃん。
重いかなって思うけど、でも、和多流くんは喜んでくれそう。でも言わないんだ。言ったら調子に乗るもん。
「お腹すいてきたね」
「ね。戻ろうか」
「おいで」
肩を抱かれた。顔をあげるとまた唇が重なって、ぎゅーっと胸が締め付けられた。
触れるだけのキスを何度も繰り返して、そっと離れる。足元も、心も体も、ふわふわした。
大きな手が浴衣を少しだけはだけさせ、滑り込んでくる。体を跳ねさせても手は止まらず、するすると肌を撫でてさらに浴衣を引っ張った。
「和多流くんっ、」
「きれいだね」
「ちょっと、外、」
「少しだけ」
ちゅ、ちゅ、と唇で肌に触れて滑っていく。
柔らかい刺激が気持ちよくて、すべてを許してしまいそうになる。必死に理性を保って首を振って、がぶっと肩に噛みつく。
「いて、」
「和多流くん!もぉ・・・!外は嫌だってば・・・」
「だってきれいだったから・・・」
「理由になってないよ」
「・・・綺麗だなって思ったものに触れたらいけない?すごくすごくきれいで、独り占めしたいんだよ。誰にも見られたくないし、誰の物にもなってほしくない。おれだけのものにしたい」
「も、もう和多流くんのだけど、でも、あの、」
なんだかすごくガツガツしてる・・・!
くんっと襟を引っ張られて、肩に吸い付かれた。びっくりして声を上げると、いきなり抱き込まれて竹林の中に体をねじ込んだ。
カラコロと別の足音が聞こえてくる。ぎゅーっと和多流くんの浴衣を掴んで隠れて、目を閉じる。心臓がバクバクした。見つかりませんように。
「大丈夫。おれが隠してるからね・・・」
耳元でささやかれて、ぱくっとついばまれた。
「ひゅっ・・・」
声を我慢したら、のどから変な音がした。恥ずかしくて、でも、気持ちよくて、腰がうずいた。
足音は別の方向へ遠のいていく。ほっと息をついてキョロキョロと辺りを見渡して、逃げるように離れへ小走りした。
ドアを閉めると即座に抱え込まれて、押し倒された。
ぐりぐりと下半身を押し付けられる。顎を掴まれて乱暴にキスをされた。
「んぶっ、う、く、」
「我慢できねぇ・・・・ごめんね・・・」
「んや、ご飯・・!楽しみに、してて、」
「うん、知ってる。おれも楽しみ。でも、涼くんがほしい・・・」
「き、来ちゃうから!落ち着いて!後でたくさんしよ・・・!?ね?」
「してくれる?」
「うん、」
「浴衣で?」
「う、うん・・・。あの、どうしたの?すごく余裕がないっていうか、」
「だって海でも我慢してたもん。ていうか昨日からずっと我慢してた。さっきしたけど、足りないよ。余計にもどかしくなった。抱いて抱いて、抱きつぶして、閉じ込めておきたい」
「え!?あ、あの、」
「涼くんにも求めてほしいよ。さっき、嬉しかった・・・。おれのこと求めてくれて、嬉しかったよ・・・・」
「あ、あ、う、」
「好き?」
不安そうに尋ねられた。ぎゅっと耳を引っ張ると痛そうに顔をゆがめて覆いかぶさってくる。
「大好きだよ、バカ・・・」
「ほんと?嬉しい・・・」
「・・・したい、けど、照れるの」
「なんで?」
何でって・・・。
海、似合ってたし・・・砂浜でキス、したし・・・浴衣も、似合ってるし・・・強引な感じもかっこよくて・・照れる。
言わないけど。
「もうご飯、くるもん・・・」
「うん~・・・」
「食べたら、またお風呂・・・」
「お風呂でしようね」
「えー・・・のぼせちゃうよ」
「水もスポーツドリンクも買ってあるよ」
そういうことじゃないんだけどなーなんて思いながらも、ほだされてしまう。
ひょいっと起こされて、引っ張られて、畳に押し倒される。デジャブ!と思ったけどむちゅっと唇が重なる。
食事が来るまでひたすらキスをしていた。こんなにたくさんキスができるなんて、人生で考えたことなかった。
気持ちいい。ふわふわする。空も飛べそうだ。
キンコン、とインターホンのような音がした。少し呼吸を荒くしながら浴衣を整えて、扉を開ける。食事だった。
大きなテーブルにてきぱきと載せられる。
しゃぶしゃぶ・・・!すっごい・・・!!写真で見た時より豪華・・・!
そわそわしながら火を見つめ、出汁が温まるまでじっと待つ。
「外は暑いけど、部屋が涼しいからしゃぶしゃぶでよかったかもね」
「楽しみ・・・。こんなにお肉・・・!見て、レタスも丸々一個だ」
「うん。ふふっ。野菜から食べようか。あ、シイタケでっかいなぁ」
「あ、おれがやるよ」
「ん?一緒にやろ?・・・ごめん、ご飯よそってくれない?おれ、ご飯をよそってもらうの好きなんだよね」
「え?なんで?」
「なんか・・・これからご飯なんだなーって実感する。おかずが並ぶよりも、ご飯をよそって渡してくれる時が一番思うんだ」
そうなんだ。
あまり深く考えたことがなかったけど・・・。和多流くんがそう思ってくれるなら、これからもたっくさんよそっちゃおう。
なんだか嬉しくなってこんもりとお茶碗に盛ると、和多流くんはやりすぎじゃない?と笑った。
「茶碗蒸しおいしい」
「こっちも食べる?」
「和多流くんが食べなよ」
「んー・・・でも、おいしいんでしょ?」
「もー、いいってば。あ、これお餅?締めに入れるの?」
「そうそう。ふふっ」
「ん?」
「楽しそうでよかった」
「楽しいよ。あ、レタス美味しい」
「うん」
「食べて。ねぇ、お肉大きいよ。見て」
「うん、うん」
「ポン酢がいいなぁ。えへへ。和多流くんもどーぞ」
「ありがと」
「食べて」
「うん」
「お酒美味しい?」
「うん」
「日本酒?」
「うん。・・・ね、もっと喋って?」
「え?」
「幸せ。好きな人が目の前にいて、笑ってくれてるのが、幸せ・・・」
目元が赤くて、驚いた。酔っているのかと思って慌ててとっくりを下げようとすると、パシッと手を取られた。そのまま立ち上がり、おれの隣に腰掛けてお皿を寄せる。
「隣がいいな」
「う、うん」
「・・・涼くん、大好き。おれのこと・・・ずっと、好きでいてね」
「・・・当たり前じゃん・・・あ、ちょ、」
肩を抱かれ、首筋に顔を埋める。すんすんと匂いを嗅いでから、そっと吸い付いた。
少しピリッとした。
「すぐ消えちゃうけどさ・・・つけたくて、たまんない」
「・・・」
「・・・可愛い」
ちゅ、と音を立てて目元にキスをされる。
恥ずかしくて、照れくさくて、目を合わせることができなかった。
食べようか、と優しく背中を撫でられて黙って頷く。
そっと盗み見るとしっかりと目が合った。かぷ、と噛み付くようにキスをされた。
******************************
「ん゛っ、んあ、」
「ごめん、余裕なくて、ごめんね」
「ら、らい、じょぶ、・・・!さっきも、したから、は、い、っっ・・・ゔ~・・・!あぅう~・・・!」
ふかふかの枕を掴んで、快楽に耐える。
和多流くんのペニスはいつもよりも激しく脈打って、おれの中を捲り上げた。
電気が眩しい。消してと頼んだけど、嫌だと断られた。仰向けに倒されて腰を掴み、早く入りたいと腰を押し付けられた。
息を荒くして見下ろす和多流くんが可愛くて、格好良くて、何度も頷いて、足を広げた。
「ん、奥、届いた・・・きもち・・・」
「わたく、」
震える指先を伸ばして、浴衣をそっと割って素肌に触れる。汗ばんでいてしっとりしていた。
「涼くん、気持ちい?」
「ん、う、うんっ、うんっ、」
「苦しくない?」
「う、んっ!熱い、」
「・・・もっと見せて。おれに見せて。涼くん」
そっと体を離して、見下ろしてくる。
明かりが恥ずかしいけど、目を合わすと羞恥心が込み上げるけど、必死に見つめる。
「・・・キレイ、」
「あ、」
「・・・愛してる」
「お、おれも、」
「愛してるがなんなのか知ったの、涼くんと知り合ってから」
「え?!」
「だって、誰も教えてくれなかったもん。愛し方なんて、知らなかった。涼くんと知り合って、好きだなってずっとずっと思ってて、そしたら、ようやく見えてきたんだよ。昔のこととか・・・あのとき、おれは愛されてたのかなって。あれが愛なら、おれのこの気持ちも愛なのかなって」
「うん、うん、」
「伝え方も分からなかったけど、初めて頑張って伝えたとき、言葉にしてようやく、安心できたよ。おれも人を愛せるんだって。受け取ってくれる人がいるんだって。ありがと。ありがとね。ずっと、愛していたいです」
「お、おれだって、おれだって愛していたいよ。お願い、愛していたいから、どこにも行かないで。おれのこと、離さないで。離さないから。絶対に離さないから」
「うん。おれも離さないよ。くっついていようね。・・・ごめん、ごめんね、」
和多流くんは笑いながら目元を拭った。
ゴシゴシと、乱暴に。
起き上がってしがみつき、手を解いて指を絡める。目元を舐めるとそっと瞼を閉じた。
いつもおれにしてくれるように、何度も何度も舐める。
「和多流くんの泣き虫」
「うん、」
「笑って」
「ん、」
「・・・大好きだよ。たくさんエッチなことして、美味しいご飯食べて、たまに喧嘩して、仲直りして、過ごしていこうね」
「うん。・・・このまましていい?」
「え?あ、う、うん・・・」
あ、そ、そうか。繋がったままだった。
きゅっとお尻を締めると、和多流くんは可愛い声を漏らしておれを見上げた。
か、可愛い・・・。もっと見たい・・・。
両手で顔を包んで見つめると、腰を撫でられた。
「あ、」
「・・・締め付け、すごい・・・」
「う、ん、・・・!和多流くんの、中で跳ねてる、」
「きもちーもん。・・・キスして」
腰を緩く動かしながらキスをする。
もっと気持ち良くなってほしくて舌を絡め、徐々に腰の動きを激しくする。2人の呼吸が荒くなってきて、それに興奮して、つい、キスも激しくなる。
「ん、涼くん、腰の動き方エッロ・・・もっとして」
「んはっ、うんっ、キスしよ、好きだよ」
「うん・・・」
「あっ!」
きゅうっと乳首を摘まれた。
甘い痺れ。
たまらない気持ちになる。
「あ、あ、」
「ははっ、すげー・・・」
ガクガクと腰が跳ねる。
指で挟まれ転がされ、大きく勃ち上がった。もう、誰にも見せられない。
恥ずかしくてたまらない。でも、和多流くんが大きくしたんだって思うと、なぜか嬉しさが勝る。
「んぅ、う、あ、あぁ~・・・」
「可愛い顔、見せて」
「あー、あー・・・もぉ・・・」
「乳首好き?」
「う、しゅき、触って、ください、あ、もっと・・・」
「・・・海で触って欲しかった?」
「は、はひっ、」
きゅーっと引っ張られる。頷くと、手が離された。ジンジンする。それも気持ちいい。こんなに真っ赤で、こんなに大きくなって、和多流くん好みになってしまった。
指先で優しく撫でられて、だらしない声が漏れる。
「あぅうぅ~・・・」
「言って?乳首、どうされたい?」
「もっと、摘んで・・・!あ、な、撫でて、」
「こう?」
「ふぁあ~・・・!しょ、れぇ・・・!」
「素直でいい子。寝転がって?これつけてあげる」
カバンを手繰り寄せ、ポケットから袋を出した。スポイトのようなものを取り出すと、透明な吸い口部分にリングを嵌め込む。
「これで乳首、吸うね?吸ったらリングをはめるから。締め付けが気持ちいいんだって。やってみようね」
「え、え、」
「これが気持ちよかったら、リングに突起がついたやつも買ってみよう?ちくちくして気持ちいいかな。痛いかな。今度一緒に見ようね。吸うね?」
「あぁっ!!」
スポイトで乳首を吸われる。少し痛みがあったけど、和多流くんの顔を見たらどうでも良くなった。すごくワクワクした目。可愛くて、ついつい許してしまう。
「リング、はめるね?」
「うん・・・あっ、あ、や、やだこれ、や、」
スポイトに嵌めたリングをスライドさせて、乳首にはめる。
ギューっと強めの締め付け。スポイトが外されて反対の乳首にもつけられる。
膨らんだ乳首は充血していた。
「ふ、ふうっ、ふぅっ、う、」
「痛くない?」
「へ、き・・・で、でも、触らないで、」
「どうして?ぷっくりしてて、可愛いよ?撫でてあげるね」
「いや!ダメ!今ダメ!」
指の腹で優しく撫でられたとき、一気に快楽が駆け抜けた。
腰を反らし、押しつけて、乳首に走る電流のような快楽を受け止める。
「あ゛ぁーーーー!!」
「あはっ。そんなにいいんだ。買ってよかったぁ・・・」
ピンっと弾かれてペニスからカウパーが溢れる。
「だめ!いく!」
「いいよ。可愛いよ」
「んぁっ!?」
「ローションたらしたからね。ほら、ぬるぬるだね」
「あ゛ー!あ゛ぁーー!んぁあぁ!」
「コリコリだ。ほら、ほら」
「ひぃっ!?い、い、!っっ、・・・お゛、」
だ、だめっ・・・!
壊れる、・・・!
「あ゛ーーーーーーーー!?」
「ゔっ、・・・!す、げっ・・・!可愛いっ」
ゴリゴリと腰を押し付けられる。
もう、どこでいってるのか、分からない。
喘ぎ声が止まらなくて、快楽も、痙攣も止まらない。
気持ちいい。気持ちいいよ。壊れちゃうよ。
直して、和多流くん。
「涼、くん・・・気持ちかった・・・中、すごい・・・」
「は、はへ、はひ、も、いく、いく、」
「は、はぁ・・・外すね?ちょっと、強すぎたね・・・ん、やべ、汗止まんない」
「んきゅっ、」
リングが外されて、また腰が震える。あ、い、くっ・・・!
ガクガクと痙攣して、果てる。
和多流くんは嬉しそうに笑った。
そこからもう、和多流くんの思いのまま。
布団はしっとりと濡れて、おれも和多流くんも汗と体液でびっしょり。力が入らなくて指先が震える。
「ご、ごめ、ごめんなさい、いっちゃったの、」
「いいよ・・・たくさんいこ?おれもたくさんしたもん・・・」
「きゅ、きゅうけ、したいよぉ、」
「ん。しよ?お風呂行こうね」
「お茶、」
「うん、うん」
体が離れて、和多流くんが腰を引いた。
うっ・・・絶対、開いてる・・・!
だって、痙攣してるもん・・・。
冷蔵庫からお茶を取り出して、渡してくれる。
起き上がって飲むと、さりさりと手の甲で頬を撫でて柔らかく笑った。
「もっとしたい。また後で、いい?」
「うん・・・」
「可愛い。・・・辛くない?大丈夫?」
「うん、平気・・・」
「お腹も、平気?」
「うん。・・・た、たまに痛いけどね」
「痛い時はすぐ言ってね」
「・・・おっきいからね、和多流くんの」
「・・・あまり煽らないでいただけると・・・」
見ると、緩く立ち上がっていた。
元気すぎる・・・。
そそくさとお風呂に向かうと、小走りで追いかけてきて抱き抱えられた。
笑いながら2人で入り、くっついたまま空を見上げる。
「さっきより星が多いねぇ・・・」
「ねー。・・・あ」
「え?」
「・・・おれ、昔こんな景色、見たな」
「いつ?」
「中学の頃・・・。ほら、犀川のことリンチしてた人たちをボコボコにした話し、したでしょ。あの時、確かおれ、謹慎くらってさ。じいさんが迎えにきてくれて、そのまま山に連れて行かれて、車の中で一晩中しゃべって、空、見てたなぁ」
「そうなんだ。いいね。おれ、そういうのしたことない」
「置き去りにされるかと思ったけどね」
「そんなことしないよぉ。和多流くんのこと大事にしてくれるおじいさんだもん。今度おれとも行こうね」
「うん。星空見に、行こうか。・・・こっち向いて?」
和多流くんの体にぺたりと倒れ掛かると、くいっと顎を持ち上げられた。
触れるだけのキスをして、顔を見合わせて笑う。
「和多流くん、あの、乳首舐めても、いい?」
「えっ」
「おれもしてあげたい・・・」
「・・・うん。あの、最近、乳首もいいなーなんて思ってます・・・」
「そうなの?」
「たまにね?たまに。・・・涼くんのエッチな顔が至近距離で見られるので、結構、いいです」
照れたように目を逸らす。
すりすりと乳首に唇を擦り付けると、柔らかく立ち上がった。
「それ、可愛い」
「ん?ふふ・・・んっ」
「う、」
「ん、ん、」
ちゅるちゅると音を立てて吸い付く。
気持ちいい・・・。舐めてるだけなのに、お尻が疼くし、和多流くんに可愛がってもらってる気がしてくる。
それから、愛おしくなる。素肌は硬いように見えて柔らかだし、温かくて和多流くんの匂いもする。おれが舐めてるだけなのに、興奮して呼吸が荒くなるのも可愛くてたまらないんだ。
「あー・・・やばいな。ごめん、もうバキバキです」
「ん、えへへ。縁に腰掛けて?」
「・・・こんな贅沢していいのかなあ・・・。嬉しいけど、バチが当たるかも」
「おれがしたいんだから、バチが当たるのはおれだよ」
縁に腰掛けた和多流くんの足の間に座る。
勃ち上がったペニスを咥えてゆっくり飲み込むと、ブルっと足が震えた。
「あー・・・やば・・・。涼くん、暑くない?のぼせない?」
「ん、へ、き・・・ん、く、ゔぐ、」
喉の奥まで入れて、きゅっとすぼめて、そのままゆっくり出し入れする。舌を絡めて、時々頬の内側に擦り付けて、膨らみを柔らかく揉みながら根元を押さえる。
「あ゛っ・・・ったく、相変わらず、エッロいな・・・!」
「ん、ふ、・・・ふ、ぅ、」
「・・・あの、さ、ん、」
「ん?」
ちろっと上目遣いで見ると、ペニスが跳ねた。
和多流くんは嬉しそうに笑う。
「うん、それ、ほしかった・・・たまんね・・・」
「ゔ、」
唾液をたくさん絡めて必死にしゃぶっていると、頭に手を置かれた。
ぐっと引き寄せられて、髪を掴まれて揺らされる。
こんなことされたら普通嫌になるし、怖いはずなのに。
ちっとも嫌じゃないし、怖くないし、むしろ、もっとしてあげたいって、思っちゃう。
もっと気持ち良くなってほしい。
もっと、もっと。
おれで感じて、おれを、感じて。
「ん、はっ・・・だめ、いく、」
「ぶ、んぶっ、」
「いきたくねぇなぁ・・・はぁっ、だめだ、いく、」
「ん゛っ!」
「ゔぅっ!?あ゛ぁ・・・!」
強く吸い付くと、口いっぱいに広がった。
唾液を絡めすぎて飲み込めず、むせてしまう。
和多流くんは慌てたようにおれを抱き寄せて、膝に乗せた。
「大丈夫?」
「けほ、けほ、ゔん、こぼしちゃったぁ・・・」
「いいんだよ」
「もっかい、するっ。飲むっ」
「涼くん顔も体も赤いよ。ごめん、無理させたね。おいで」
抱かれたまま部屋に戻り、浴衣を羽織らせてくれる。
エアコンの温度を下げると、布団の上に寝かせてくれた。
「少しのぼせたね。お水と・・・あ、そうだ。待っててね」
「う・・・」
頭、ぼんやりする・・・。
濡らしたタオルを額に当てて、和多流くんは部屋に備え付けてある電話を取り、何かを頼んだようだった。
氷枕かなぁ・・・。
「ありがとう。気持ちよかったし、幸せ」
「ん・・・」
「もう少し起きてられそう?・・・浴衣、前開けておくね。パンツ履く?」
「履く・・・恥ずかしい・・・」
「火照りが取れてからにしようね。・・・綺麗だね、すごく綺麗」
「う・・・見ないで、」
「気持ち悪くない?」
「うん・・・今気持ちいい・・・涼しい」
「タオル変えるね。冷凍スペースに入れておいたやつ、どうかな」
「あ、きもち・・・」
さっきよりひんやりしていて、気持ちいい。
ため息をつくと、濡れタオルで首元を拭かれた。
「ん、ん、・・・」
「熱いね」
「和多流くん・・・それ気持ちいい」
「ほんと?よかった・・・」
キンコン、とインターホンが鳴った。
玄関を開けて何かを受け取ったみたいだ。
目を開けると、お盆を持っていた。
そこに、大きなかき氷が載っていた。
「わぁあ・・・!」
「食べられそう?いちご味にしたんだ」
「すごい・・・!食べる!」
「よかった」
起こしてもらい、かき氷を見つめる。
一つしかなかった。大きいからわけっこするんだ。
嬉しいな。
「わたくん、あーん」
「え?いいの?」
「あ、違うの・・・?」
「・・・ふふっ。ありがとう。おいしいよ。ほら、ここ練乳たくさんだよ」
「えへへ・・・美味しいねぇ」
「美味しい?」
「うんー。ふふ。あんこも載ってる」
「うん」
「あんまり食べたことなかったんだ。おれ、おまつりとか連れて行ってもらったこと、なくて」
「そうなの?」
「うん。お金もないからあんまり遊びは・・・。大学の頃に全日制の方の学祭を少し覗いて、こっそり食べてみたんだけど、1人だったし・・・。大人になってもろくな人たちと付き合ってなかったから・・・楽しいこととか、知らないままここまできちゃったんだな・・・」
あ、ヤバい。こんな話、する予定なんかなかった。
和多流くんを嫌な気持ちにさせてしまう。
黙ろうとした時、頭を撫でられた。顔を上げると優しく微笑む姿があって、見惚れてしまった。
「これからおれと、嫌ってくらい、もういいよって飽きちゃうくらい、食べようね」
「・・・」
「お祭りも行こうね。前に行ったところは大規模で疲れちゃったしはぐれちゃったから、今度は商店街のほうに行こう。七夕祭り、やってたでしょ?あれは行けなかったけど、お盆にやる夏祭りは行けるかな。2日間やるって。それから、秋にもやるってよ?かき氷もそうだけど、他のものもたくさん食べようね」
「・・・うん、」
「知らないままでいいよ。おれが全部教えてあげるから。ね?だからもっと教えてね」
肩を抱かれ、ちゅ、と小さく音を立ててキスをしてくれた。
知らないままでいいんだ。教えて、くれるんだ。
全部全部、和多流くんに・・・教えてもらえるんだ。
嬉しくて嬉しくて、涙が出そうになる。何度も頷くと、優しく笑ってくれた。
「明日は海鮮丼、食べよう」
「うんっ。いくら、食べたい」
「えー?また?ふふ、好きだねぇ」
「好き」
「おれは何がいいかなー」
「楽しみだね」
「ね」
「かき氷、ありがとう。ちょっと体が冷えてきた」
「よかった」
「・・・あ、あの、」
「ん?」
「・・・ゆ、浴衣、暑い、から、その、」
「・・・おれも暑い。脱ごうか」
浴衣を脱がせてくれる。背中に唇が触れた。
2人でかき氷を食べながら肌に触れ合って、たくさんキスをした。
**************************
「・・・またぁ・・・もぉお~・・・」
「んふふ。トロトロのここ、きもち」
とん、と突かれた。
むずむずして目を開けると、和多流くんが中にいた。
腰がゾワゾワする。
「寝込みはダメってぇ・・・!」
「でも前より早いし、お風呂もすぐそこだよ。ね?だから、しよ?ね・・・」
優しく腰を押し付けられて、喉が狭くなる。
か細い声しか出なくて、和多流くんは背中にキスをした。枕にしがみついて快楽に耐える。
もう昨日から何度したか分からない。
「ん、う、いたっ、いたた、」
「え!?ごめん!大丈夫・・・?」
少しお腹が痛くて唸ると、すぐに離れて行った。これはこれで寂しい・・・。
「ごめんね・・・調子乗っちゃった」
「だ、大丈夫・・・。ちょっと突っ張っただけ・・・」
「お風呂入ろ?」
浴衣を脱ぎ捨てて、和多流くんはおれを横抱きにしてお風呂へ向かった。もぉ、これ、恥ずかしいのに・・・!
「あはは!おれらお風呂入りすぎだね」
「温泉だもん。しょうがないよ。普段入らないんだから今入っておかなきゃ」
「朝ごはんは前食べたビュッフェが楽しそうだったから、そっちにしたよ。帰り支度してホテルの方に行って、朝ごはん食べようね」
「うんっ。好き」
「・・・えー?おれは?おれは好き?」
「へ?」
「・・・言ってほしいなー」
唇を突き出す。
つい大笑いすると、ばしゃ、と顔にお湯をかけられた。
笑いながら拭い、耳元で囁く。
「愛してるよ」
和多流くんはデレーっと顔を崩すと、照れ隠しをするように抱きしめてきた。
名残り惜しむようにお風呂から出て、着替えを済ませる。
・・・楽しかったなぁ。
また来たいけど・・・贅沢だよね。
でも、でも、口にするくらいなら、いいかな。
「和多流くん」
「んー?」
キャリーバッグを玄関に運ぶ背中に声をかける。
柔らかな笑顔で振り返り、首を傾げた。
「また、来たいね」
「・・・うんっ。来ようね。たくさんお金貯めてさ、来よう」
「えへへ。頑張らなきゃ」
「ね。おれも頑張ろ。・・・行こうか」
手を繋いで外に出ると、額に唇が触れて、すぐに離れた。
名残惜しくて振り返る。また来たいな。それで、また、たくさん・・・。
「涼くん」
「ん?」
「次は2泊3日ね。ちゃんとお休みとってね」
「うん。頑張る」
手を強く握り返して、2人で歩く。
夏の風が気持ちよかった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる